偽勇者は救世主である。

Vitch

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廃都での疾走

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 数百年前に滅ぼされた亡国、当時の家屋は面影もなく、柱や壁の残骸のみを残す。
 大地は雑草すらも満足に生えず、動物はネズミ一匹見かけない。
 そんな中を彼 ~ 勇者ヒカリは疾走していた。

「邪魔だァァ!!」

 時折現れる魔物を一閃で屠り、走りを緩めることなく進む。

 ~~ 10分前 ~~
「報告します!
 東に《あの方》が戦闘していると!」

 勇者たちが仮眠を取っている所、そのテントに通信班の一人が飛び込んてきた。

「あの方……!彼女か!?ヒカリ!」

 アスがヒカリに視線を向けると、彼が居た寝床は既にもぬけの殻だった。

「くっ、(俺たちも後を)追うぞ!(騎竜を表に)回せ!」

 ~~ そして今 ~~

 勇者ヒカリか先行し、剣士キヌと、騎竜に乗った聖人セイジンと賢者アスが続いていた。

「《ストレエト音声指向魔法
 ヒカリ!左に5度!」

 アスはヒカリに方向修正を叫ぶ。
 ギリギリ視界に収まる程度に離されていたため、《ストレエト音声指向魔法》を使ったとはいえ届くか不安ではあったが、ヒカリが左方に方向修正したのを確認できた。

「こっちはりすぐりの騎竜に《アクセル走力加速魔法》、加えて《ウインド風魔法》で追い風まで使ってんだぞ。
 視界から逃さねぇのが精一杯て、『流石は勇者』と称えれば良いのか、『化け物』と罵ればいいのか……」

 加えてセイジンから《レスト疲労軽減魔法》に《フロオト重力軽減魔法》、落竜らくばしないための《ストレング身体強化魔法》までかけている。
 セイジンもまた、称えればいいのか呆れればいいのか困惑していた。

 それから二人は五竜身ばしん程を先行しているキヌを見る。
 彼女は同じ魔法を受けているとはいえ、自身の足で疾走しているのだ。

「なに?」
「あの神殿の老害どもが見物だったなと思ってな」

 視線に気づいたキヌにアスはそう返した。

「余裕があるなら先に行くよ」

 更に速度を上げたキヌに、アスとセイジンは『キヌも十分化け物だな』と思った。
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