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日本人教徒への冷酷な態度
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2040年、高麗連邦で北朝鮮化がさらに進む中、救世真皇イ・リキョンは日本への移住を決断する。
表向きは、「教団の世界的拠点を日本に移し、理想郷の建設を加速させるため」という名目だったが、内心では自らの安全を確保するための一手だった。
高麗連邦の誕生以降、イは連邦政府に大いに尽力してきた。
共栄教会が北主導の統一を支援し、反対派を抑え込むための情報網や財力を提供したのは事実だ。
だが、イはその協力がいつか牙を剥かれるだろうと見抜いていた。
独裁的な北朝鮮体制の特性上、「用済み」とされた瞬間に消されることは避けられない。
「我々は次の段階に進む。理想郷を築くための第一歩だ」
側近たちにそう語ったイの言葉には、どこまでが真実でどこまでがウソかは分からないが、「御意のままに」と彼らは口をそろえた。
イの移住が発表されると、日本支部の信者たちは歓喜に沸く。
「救世真皇様が私たちの国にいらっしゃるなんて…!」
日本支部によって港区麻布に用意された豪邸の前にはイ・リキョンを出迎えるために多くの信者たちが集まり、旗や横断幕を掲げていた。
「救世真皇様!お待ちしておりました!」
声を枯らして歓声を上げる彼らの姿は、まるで神を迎えるようだった。
黒塗りのリムジンが静かに豪邸の前に停まると、イ・リキョンが車から降り立った。
長身で鋭い眼差しを持つ彼は、群衆に一瞥をくれるものの、どこか冷ややかな表情だった。
周囲を囲むのは、韓国から同行した取り巻きの幹部たち。
彼らは日本支部の信者たちを無言で見下ろし、完全な壁を作るようにイを護衛する。
まるで日本人に指一本触れさせやしないとでも言うように。
そして豪邸近くの日本支部の建物内で開かれた歓迎会で事件は起こる。
この歓迎会では日本各地の支部長クラスや幹部たちが集まり、精一杯のもてなしを用意。
料理は日本料理の名店から取り寄せた懐石料理が並び、酒は最高級の日本酒が揃えられている。
支部長の池田和康は緊張しながら挨拶に立った。
「救世真皇様が日本にいらっしゃることは、我々にとって最大の喜びです。この地でさらに教えを広め、理想郷の実現に向けて尽力いたします!」
イリキョンは池田の言葉を聞き流し、テーブルの料理に目をやった。
しかし、その表情は明らかに不機嫌だった。
「これが私へのもてなしだというのか?」
イリキョンは箸を持ち上げ、少しだけ口にした後、顔をしかめた。
「こんな味気ないものを私に食べさせるとは。何事だ!」
その場が凍りつく中、イリキョンは立ち上がり、取り巻きに向かって一言だけ告げる。
「出るぞ!!」
「お待ちください」と必死になだめようとする日本人幹部達を韓国人の屈強な取り巻きが「가까이 하지 마!(近寄るな!)」と突き飛ばして会場を去る。
それを見送りながら池田や幹部たちは顔を真っ青にし、おろおろと立ち尽くしていた。
「どうすれば…」
幹部たちの間で動揺が広がったが、さらにイ・リキョンを怒らせる事件が起こる。
数日後、イ・リキョンが麻布の豪邸に滞在しているとの報道を受け、右翼団体が豪邸前に押しかけたのだ。
「何しに来た!日本にお前たちの居場所はない!」
「日本を占領する気か?半島へ帰れ!!」
「似非宗教のカルトは出ていけ!!」
右翼は大音量でスピーカーを使い、イや共栄教会を罵倒し、非難するデモが繰り広げる。
支部の日本人幹部はそれを無視して警察に対応を任せていたが、イリキョンは激怒。
「あのやかましい無礼者どもは一体何だ!」
彼は日本人幹部を呼びつけて睨みつけ、怒りを爆発させた。
「日本支部は何をしている?なぜ私にこんな恥をかかせるのだ!」
池田や水上智靖を豪邸に呼びつけたイリキョンは、彼らを徹底的に罵倒した。
「お前たちは何も分かっていない。それに理想郷の建設には覚悟が必要だ!あのような盾突く連中と戦うこともせずにそれができると思っているのか!!」
さらに、教団の支援を受けていた新栄同盟の党首である西川優也も呼び出された。
「西川、お前は政治家としてこのような事態を黙って見ているのか!」
イリキョンの詰問に西川は怯えながら頭を下げるしかなかった。
「申し訳ありません、救世真皇様。早急に対処いたします」
イの激怒に対し、西川も池田もただ平身低頭するしかなかった。
歓迎会や右翼のデモを経て、イリキョンの日本支部への態度はさらに厳しくなった。
「日本人はアジア全体に対して原罪を背負っている。その自覚が足りない」
彼は朝鮮半島でいまだくすぶるどころか蒸し返されている歴史問題を取り上げて、日本人信者たちに向かって繰り返しこの言葉を投げかけるようになる。
「お前たちは恵まれた環境に胡座をかいている。理想郷を築く覚悟がない者には、未来を託せない」
日本支部の信者たちは、その言葉を恐れとともに受け入れるしかなかった。
一方で、イリキョンは明確に日本を拠点にすると宣言していないものの、その行動や指示からはそれが意図されていることが明らかだったが、それについて口を挟める日本人教徒は存在しない。
イは完全に日本人を拒絶して高麗人や中国人教徒以外と会おうとせず、日本人への命令は彼らを通して伝えられるようになる。
こうして、イリキョンが日本で新たな一歩を踏み出したものの、日本支部内には動揺が広がり始めていた。
「救世真皇様のお考えにどう応えるべきか…」
池田や水上は頭を抱えながらも、韓国人幹部から高飛車に伝えられるイの命令に従うしかない。
その一方で、日本支部の信者たちは、冷たい視線の裏に隠された真意に気づくことはなかった――イリキョンの本当の狙いが、日本を完全に掌握し、教団の世界的な拠点として利用することであるということを。
表向きは、「教団の世界的拠点を日本に移し、理想郷の建設を加速させるため」という名目だったが、内心では自らの安全を確保するための一手だった。
高麗連邦の誕生以降、イは連邦政府に大いに尽力してきた。
共栄教会が北主導の統一を支援し、反対派を抑え込むための情報網や財力を提供したのは事実だ。
だが、イはその協力がいつか牙を剥かれるだろうと見抜いていた。
独裁的な北朝鮮体制の特性上、「用済み」とされた瞬間に消されることは避けられない。
「我々は次の段階に進む。理想郷を築くための第一歩だ」
側近たちにそう語ったイの言葉には、どこまでが真実でどこまでがウソかは分からないが、「御意のままに」と彼らは口をそろえた。
イの移住が発表されると、日本支部の信者たちは歓喜に沸く。
「救世真皇様が私たちの国にいらっしゃるなんて…!」
日本支部によって港区麻布に用意された豪邸の前にはイ・リキョンを出迎えるために多くの信者たちが集まり、旗や横断幕を掲げていた。
「救世真皇様!お待ちしておりました!」
声を枯らして歓声を上げる彼らの姿は、まるで神を迎えるようだった。
黒塗りのリムジンが静かに豪邸の前に停まると、イ・リキョンが車から降り立った。
長身で鋭い眼差しを持つ彼は、群衆に一瞥をくれるものの、どこか冷ややかな表情だった。
周囲を囲むのは、韓国から同行した取り巻きの幹部たち。
彼らは日本支部の信者たちを無言で見下ろし、完全な壁を作るようにイを護衛する。
まるで日本人に指一本触れさせやしないとでも言うように。
そして豪邸近くの日本支部の建物内で開かれた歓迎会で事件は起こる。
この歓迎会では日本各地の支部長クラスや幹部たちが集まり、精一杯のもてなしを用意。
料理は日本料理の名店から取り寄せた懐石料理が並び、酒は最高級の日本酒が揃えられている。
支部長の池田和康は緊張しながら挨拶に立った。
「救世真皇様が日本にいらっしゃることは、我々にとって最大の喜びです。この地でさらに教えを広め、理想郷の実現に向けて尽力いたします!」
イリキョンは池田の言葉を聞き流し、テーブルの料理に目をやった。
しかし、その表情は明らかに不機嫌だった。
「これが私へのもてなしだというのか?」
イリキョンは箸を持ち上げ、少しだけ口にした後、顔をしかめた。
「こんな味気ないものを私に食べさせるとは。何事だ!」
その場が凍りつく中、イリキョンは立ち上がり、取り巻きに向かって一言だけ告げる。
「出るぞ!!」
「お待ちください」と必死になだめようとする日本人幹部達を韓国人の屈強な取り巻きが「가까이 하지 마!(近寄るな!)」と突き飛ばして会場を去る。
それを見送りながら池田や幹部たちは顔を真っ青にし、おろおろと立ち尽くしていた。
「どうすれば…」
幹部たちの間で動揺が広がったが、さらにイ・リキョンを怒らせる事件が起こる。
数日後、イ・リキョンが麻布の豪邸に滞在しているとの報道を受け、右翼団体が豪邸前に押しかけたのだ。
「何しに来た!日本にお前たちの居場所はない!」
「日本を占領する気か?半島へ帰れ!!」
「似非宗教のカルトは出ていけ!!」
右翼は大音量でスピーカーを使い、イや共栄教会を罵倒し、非難するデモが繰り広げる。
支部の日本人幹部はそれを無視して警察に対応を任せていたが、イリキョンは激怒。
「あのやかましい無礼者どもは一体何だ!」
彼は日本人幹部を呼びつけて睨みつけ、怒りを爆発させた。
「日本支部は何をしている?なぜ私にこんな恥をかかせるのだ!」
池田や水上智靖を豪邸に呼びつけたイリキョンは、彼らを徹底的に罵倒した。
「お前たちは何も分かっていない。それに理想郷の建設には覚悟が必要だ!あのような盾突く連中と戦うこともせずにそれができると思っているのか!!」
さらに、教団の支援を受けていた新栄同盟の党首である西川優也も呼び出された。
「西川、お前は政治家としてこのような事態を黙って見ているのか!」
イリキョンの詰問に西川は怯えながら頭を下げるしかなかった。
「申し訳ありません、救世真皇様。早急に対処いたします」
イの激怒に対し、西川も池田もただ平身低頭するしかなかった。
歓迎会や右翼のデモを経て、イリキョンの日本支部への態度はさらに厳しくなった。
「日本人はアジア全体に対して原罪を背負っている。その自覚が足りない」
彼は朝鮮半島でいまだくすぶるどころか蒸し返されている歴史問題を取り上げて、日本人信者たちに向かって繰り返しこの言葉を投げかけるようになる。
「お前たちは恵まれた環境に胡座をかいている。理想郷を築く覚悟がない者には、未来を託せない」
日本支部の信者たちは、その言葉を恐れとともに受け入れるしかなかった。
一方で、イリキョンは明確に日本を拠点にすると宣言していないものの、その行動や指示からはそれが意図されていることが明らかだったが、それについて口を挟める日本人教徒は存在しない。
イは完全に日本人を拒絶して高麗人や中国人教徒以外と会おうとせず、日本人への命令は彼らを通して伝えられるようになる。
こうして、イリキョンが日本で新たな一歩を踏み出したものの、日本支部内には動揺が広がり始めていた。
「救世真皇様のお考えにどう応えるべきか…」
池田や水上は頭を抱えながらも、韓国人幹部から高飛車に伝えられるイの命令に従うしかない。
その一方で、日本支部の信者たちは、冷たい視線の裏に隠された真意に気づくことはなかった――イリキョンの本当の狙いが、日本を完全に掌握し、教団の世界的な拠点として利用することであるということを。
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