狙われた楽園~20〷年日本国滅亡への序章~

44年の童貞地獄

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医療現場の地獄絵図

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9:00 AM。TBSの朝の情報番組『ラヴィット!』が、バラエティ豊かなトピックを紹介していた最中、「ニュース速報」のテロップが流れた。
緊急の雰囲気がスタジオに漂い、画面はそのままニュースデスクへと切り替わる。
キャスターの表情は緊迫し、画面下には「代々木上原駅で車両火災、放火か?負傷者多数」の文字が点滅している。

「緊急速報をお伝えします。本日午前7時30分頃、東京メトロ千代田線の代々木上原駅で重大な車両火災が発生しました。複数の目撃情報によりますと、通勤ラッシュの中、突然車内で火炎が広がり、大規模な混乱が生じています。現在も現場では消防と警察が対応中で、駅構内の一部が封鎖されています」

映像は現場の様子に切り替わり、千代田線の車両がまだ黒煙を上げている場面が映し出された。
窓ガラスが割れ、外に噴き出した煙が駅のホームに充満している。
消防隊員たちがホースを手に消火作業に追われ、あたりには焦げた臭いが漂っているのが伝わってくるようだ。
煙の中で混乱する乗客や救助隊の姿が慌ただしく動き回っている。

「現場からの最新情報によりますと、現在までに確認されているだけで5人が死亡、重度の火傷を負った方が25名、さらに軽傷者は50名以上にのぼるとのことです。都内の病院へと次々に搬送され、緊急の治療が行われております。警察はこれを放火事件とみて、捜査を進めている模様です」

再びスタジオに戻り、キャスターは悲痛な表情を浮かべながら説明を続ける。

「目撃者によると、突然車内にガソリンのような液体が撒かれ、次の瞬間、激しい火の手が上がったとのことです。現場ではパニックになった乗客たちが窓を割り、逃れようとしましたが、火の勢いが強く、多くの人が避難に手間取った様子が伺えます。」

画面は再度現場に切り替わり、燃え尽きた車両の外観が映される。黒煙がなおも立ち上り、消防隊が懸命にホースで水をかけ続ける中、車内のシートや荷物が燃え落ちており、無残な焦げ跡が広がっていた。救急車が次々と到着し、担架に乗せられた負傷者たちが急いで運ばれていく。

「代々木上原駅周辺をご利用の方々は、警察の指示に従い、現場付近には近づかないようお願いいたします。最新の情報が入り次第、続報をお伝えいたします。今後の番組内容は急遽変更となり、この悲惨な事件についての報道を続けます」


そのころ、都内各所の病院では負傷者たちが運び込まれていた。
まず新宿区の東京医科大学病院では火傷の重症患者を優先して対応するため、急遽ICUの病床が追加で確保され、処置が行われている。

「三度熱傷の患者、TBSA(Total Body Surface Area)40%以上。即座に気道確保を!」

医師が鋭い声で指示を飛ばし、救急隊員たちが酸素マスクを装着した患者を運び込んだ。
火傷で顔の皮膚がただれ、気道も損傷しているため、喉から血混じりの泡が漏れる。
「苦しい…痛い…助けて…」と泣き叫ぶ声がかすれて途切れ、必死に呼吸をしようとするが、意識が遠のく。
救急隊員たちが慌てて酸素チューブを挿入し、酸素を供給するが、皮膚が焼けただれた痛みに涙が止まらず、医師たちはモルヒネの投与を急いでいた。

渋谷区の日本赤十字社医療センターのERでは、次々と運び込まれる負傷者の対応に追われ、血圧測定や点滴のセットアップが次々と進められていた。
火傷がひどい患者は、皮膚がただれ、黒く焦げた部分と剥離してピンク色に露出した部分が混在。
床には血液と体液が飛び散り、ひどい火傷を負った患者たちが呻き声を上げている。
腕や脚の皮膚が溶けて黒く焦げ、剥離した部分からピンク色の肉が露出しており、そこに触れるたびに患者たちは身をよじらせて叫んだ。
「あああああああああ!やめて、痛い!助けて!」と絶叫する女性の叫び声が病院中に響く。
医師は冷静に「LRでボーラス輸液、ショック防止のために急いで!」と叫びながら、苦痛に満ちた患者の表情を見つめていた。

「この患者、全層熱傷だ。輸液を大量に必要とするぞ!」

医師たちはLR(Lactated Ringer's)やNS(Normal Saline)などの輸液剤を迅速にセットし、フルイドチャレンジを開始する。
泣き叫ぶ患者たちの痛みを少しでも和らげるために、医療スタッフはモルヒネやフェンタニルといった鎮痛剤の投与を急いで準備する。

目黒区の東京共済病院では、外科医が応急処置のためにデブリドマン(壊死組織の除去)を始めていた。
皮膚が溶けて縮れ、広範囲にわたる火傷が見られる患者に対し、「外傷性ショックを防ぐために、できるだけ早くデブリドマンを。あとは皮膚移植の準備だ」と冷静な声で指示を出しつつ、同時に患者のバイタルサインを確認する。防護服に身を包んだ看護師たちは迅速に動き、ドレッシング材を用意して患部を保護しようとしていた。

世田谷区の国立成育医療研究センターでは、比較的軽傷の患者も多く搬送されてきたが、それでも真っ赤に腫れあがった腕や脚を見せながら痛みに呻く女性たちが待合室に並んでいた。
「深部二度熱傷。ブリスターが破裂して感染のリスクが高い。抗生剤を投与して、軟膏を塗布するように」と医師が的確に処置を進め、看護師たちが患者に優しく声をかけながら包帯を巻く。
負傷者の肌からはまだ煙の匂いが漂い、焦げた髪の毛がかすかに残っていた。

千代田区の東京逓信病院では、火事による重度熱傷患者の治療を迅速に進めるため、緊急のトリアージが行われていた。
「呼吸困難を訴えている患者がいます!早く気道管理を!」救急隊員たちがストレッチャーに乗せられたままの患者に酸素マスクを押し当て、必死に呼吸を助けようとしていたが、女性たちは痛みによって意識が朦朧としている。「熱傷ショックの兆候だ。血圧が下がっている。ボーラスで輸液を!」医療スタッフたちが急ぎながらも冷静に指示を出し、混乱する患者たちの治療にあたっていた。

あまりに悲惨な現場に一部の救急隊員たちや医療スタッフは顔をしかめながらも、なんとか負傷者たちを助けようと懸命に動く。
室内には痛みと苦痛で絶叫する声が響き、医師たちが一刻も早く命をつなぎ止めるために必死に治療を続けている。

だが、全員を助けることはできそうになかった。
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