狙われた楽園~20〷年日本国滅亡への序章~

44年の童貞地獄

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禁断の支援

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日本国の与党・自由民主党の衆議院議員である西川優也は53歳という政界では若手ともいえる年齢でありながら、党内左派のリーダーとして確固たる地位を築いてきた。
しかし近年党内の保守派との対立が深まり、支持基盤が揺らぎつつあった。
特に環境政策や社会保障の改革を推し進めようとする彼の姿勢は経済成長を重視する保守派から強い反発を受け、徐々に孤立してもいたのだ。

そんな中、資金面でも窮地に立たされた西川に支援を申し出る団体が現れる。
それは「IBSL(インターナショナル・ビジネス・サポート・リンク)」というビジネス支援団体で、同団体は新興企業やスタートアップへの支援を行い、強力な資金力と広範なネットワークを持つことで注目を集めていた。
特に急速に成長しているアジア市場における企業とのつながりを持ち、国内外で影響力を拡大しているという。

接触をはかってきたこの団体のことを秘書らに十分調査させた後、この団体の関係者と会うことを決めた西川は会合場所となった都内のリッツ・カールトン東京のラウンジに足を踏み入れた。
ここで待っているのはIBSLのシニアディレクターである水上智靖。
水上は以前、あるIT企業で執行役員を務めていたが、突然そのポジションを捨てて今はIBSLに転身している。
その経緯に西川は興味を抱いていた。
ラウンジの落ち着いた照明とクラシック音楽が漂う中、そこのソファーに豪華な内装にも負けない存在感を持つ水上が座っていた。

「西川先生、お待ちしておりました」

水上は微笑みを浮かべながら立ち上がり、西川を迎えた。
彼の態度は一見誠実で穏やかそのものである。
しかし、西川はその裏に何か隠しているような雰囲気をちらりと感じ取っていた。

西川は席に座りながら、水上の動きを観察する。
秘書からの調査の報告ではIBSLが近年急成長をとげ、その資金力とネットワークには定評があるが、外国人投資家、特に中国系や韓国系企業とのつながりが深いという話が気にかかっていたためにまずそこを突く。
外国企業や団体からの献金は法律で明確に禁止されているために、いまだ不透明なこの団体の背後関係を探る必要があったからだ。

「IBSLのことは色々聞いています。特に、ここ数年での急成長は驚異的です。アジア市場でも強い影響力を持っていると伺っていますが、その背後にはどのような支援があるんですか?」

西川は軽く探りを入れた。
水上はすこしも表情を変えず、柔らかな笑顔を浮かべ続けて答えた。

「確かに、我々は国際的なパートナーシップを築いています。特に中国や韓国の企業とは強力なつながりを持っていますが、それはビジネスとしての必要性に基づくものです。資金力の強化と市場拡大のために、アジア市場は重要な拠点ですから」

その言葉に、西川は一応納得したように見せたが、心の中ではまだ疑念が渦巻いていた。
より気になることに、秘書を通じて調査させた情報によると、IBSLの背後には韓国発祥の共栄教会というカルト宗教団体がある可能性が高いという報告が上がっていたのだ。

共栄教会は、韓国で発祥したカルト団体で、信者を洗脳して暴力的な手段で勢力を拡大、証拠はないが凶悪犯罪すら躊躇しないという噂があり、その背後には北朝鮮とのつながりがあるとも言われている。
そしてさまざまな団体やNPOを隠れ蓑にして日本国内での影響力を拡大しているという話を耳にした西川は、この団体との接触が本当に安全かどうかを疑っていた。

しかし、今の西川には選択肢が少なかった。
党内での支持が低下して政治資金も不足している状況で、IBSLのような強力な団体からの支援は彼の派閥にとってまさに渡りに船だったのだ。
だが、共栄教会の影を無視するにはあまりにも大きなリスクが伴う。

「IBSLの成長には驚かされていますが、一部で共栄教会とのつながりがあるという話も耳にしています。その点については、どうお考えですか?」

西川は慎重に言葉を選びながら問いかけた。
水上は少し間を置いてから、笑みを絶やさずに答えた。

「共栄教会…確かにそういう噂も耳にしたことはありますが、我々IBSLとは何の関係もありません。あくまでビジネス支援を目的とした団体であり、宗教的な背景は一切持っていません。先生、心配には及びません。我々は純粋に、日本のビジネスと経済の発展に貢献することを目指しています」

水上の言葉は落ち着いていて、説得力があった。
しかし、西川は内心まだ不安を抱いている。
秘書からもたらされた情報では、共栄教会がビジネス界に食い込んでいるとの警告があったが、その具体的な証拠はまだ不十分だったのだ。
だが、IBSLの資金力とネットワークは西川にとって魅力的であり、これを逃す手はない。

結局、西川はIBSLからの支援を受ける決断を下した。
これにより、彼の派閥は再び活気を取り戻し、若手企業家やスタートアップからの支持も急増していくだろう。
資金も潤沢に流れ込み、党内での影響力を再び盛り返すのは間違いない。

だが、西川の心には依然として不安が残っていた。
IBSLの背後に潜む共栄教会の影、そしてその資金源に関する疑惑が消え去ることはなかったのだ。

夜のラウンジを後にする西川は、ふと立ち止まって自問した。

「これで本当にいいのか…?」

彼の派閥が勢いを取り戻すことが期待されるが、その代償が何であるかはまだ見えていなかった。
共栄教会というカルト宗教がじわじわと政界に食い込み始めている――その危険性にこの時の西川はまだ完全には気づいていなかったのだ。
そして彼が後世、日本を売り渡した日本史上最悪の売国奴として糾弾されるであろうことも。
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