狙われた楽園~20〷年日本国滅亡への序章~

44年の童貞地獄

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公安ファイル:潜行する共栄教会の脅威

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東京・霞が関の公安警察庁舎。
捜査二課課長の小峯仁警視は、机に山積みされた書類に目を通している。
ここ数年、"共栄教会コンヨンキョフェ"という名の団体が浮上してきていた。
最初は韓国からやって来たキリスト教系のただの新興カルト宗教と見られていたが、報告書を読み進めるにつれてその全貌は暴力的で、組織犯罪まがいの危険な存在に変わっていた。
しかもその規模は今年に入って無視できないほど巨大になり、それが加速している。

小峯は深く眉間にしわを寄せ「これは単なるカルトの問題ではないな…」とつぶやく。

捜査の進行を見守っていた公安警察内部では、共栄教会の教義や行動が徐々に明るみに出ていた。
表向きは自己啓発や心の平安をうたいながら背後で行われているのは、信者たちの徹底的な洗脳、犯罪への加担、そして北朝鮮とのつながりである。

「新たなレポートです、課長」

若手捜査官の板橋将貴が手渡したファイルを受け取った小峯は、ページをめくりながらため息をついた。
ファイルの内容は、信者の勧誘や洗脳の過程、さらに最近の暴力事件や強盗事件まで詳細に記されていた。

「彼らは半グレや暴力団とも結託している可能性があります。ここにあるのは彼らが組織的に犯罪を実行している証拠です」板橋が真剣な面持ちで説明する。

報告書には、信者かその関係者と疑われる者たちが強盗やピッキング、果ては拉致にまで手を染めている疑いがあることが記されていた。
彼らは「持っている者から奪え。それはお前から奪ったものだ」という狂った教義を信じ込み、犯罪を正当化している可能性もある。

「近年成功者や富裕層を狙った強盗事件も増えていますが、もしそのうちいくつかが彼らの仕業としたら、信仰を利用して犯罪を実行していることが厄介です」板橋は言葉を続ける。

その教義により、信者たちは他者の富や成功を「自分たちが奪われたもの」と捉え、それを取り戻すことを正当な行為とみなす。
この教えは、貧困層から中流階級、さらには社会的成功者に至るまで広がり、教団への依存を強める構造を持っていた。

「しかも彼らの中には、警察官や自衛官らしき公務員もいるという報告もあります。取り込まれた公務員が内部情報を漏らし、さらに組織内の腐敗を助長する危険性があります」

小峯は静かに耳を傾けた。
特に自衛官や警官などの公務員が教団の勧誘に乗る場合、社会的インフラが揺らぐリスクは計り知れない。

「共栄教会の勧誘は非常に巧妙です。最初は自己啓発セミナーやビジネスサポートと称して近づき、徐々に信者を引き込みます。さらに、信者たちは自らが正義の一員だと思い込まされ、犯罪を実行してしまう」

ここで問題なのは、教団が日本国内で暴力団や半グレ組織と提携しているだけでなく北朝鮮とのつながりを持っている可能性だった。
捜査によると、教団は違法な資金源を求め、海外の犯罪組織と結託して資金洗浄も行っている節があるという。
これにより、共栄教会は国内外での活動資金を得て信者数を増やしていくし、北朝鮮に資金が流れていることも十分考えられる。

「韓国でも共栄教会が絡んだとみられる事件が過去20年の間に続発している。有名なところでは元Kポップアイドルのク・スンヒが顔に重度の熱傷を負わされ自殺に追い込まれ、実業家のパク・ジンホが行方不明。元メジャーリーガーでサムスン・ライオンズのキム・チャンホも襲撃され半身不随にされた事件も、この教団が背後にいる可能性があると指摘されている」

小峯は報告書をめくり、韓国での事件に目を通しながら思わず舌打ちをした。
こうした事件に共栄教会が関与している可能性は否定できず、その影響力は日本にも及ぼうとしていたのだ。

「彼らの資金は北朝鮮やその他の国に流れていることが考えられるし、国際的な犯罪ネットワークとのつながりも無視できないな」

さらに、教団が暴力的な行動を取る一方で、日本国内のリベラル政党や新左翼とも接触しているという情報もあった。
共栄教会は社会的弱者に寄り添う顔を見せる一方で、裏では暴力や犯罪を駆使してその影響力を拡大しているのだ。

「この組織は、何としてでも手を打たなければならない」

小峯は板橋にそう言うと、書類をデスクに戻し、次の作戦会議の準備にかかった。
共栄教会の活動を暴くには、今まで以上に精密な捜査が必要だ。
信者の一人一人が深く洗脳され、組織犯罪にまで手を染めているからである。

その捜査の中には、情報を提供してくれる信者もいれば、内部の腐敗に手を貸す者もいる。
信者に紛れ込ませた情報提供者からの報告も、全ては信頼できるわけではなかったのだ。

会議室に戻った時、小峯は捜査二課のベテラン捜査官、石黒勉警部補の姿を見た。
石黒は若手だった平成ひと桁の頃にオウム真理教の捜査にも携わっており、その経験からこの新たな脅威に敏感だった。

「石黒さん、今回の教団どう見てますか?」

石黒は少し間を置いてから、低い声で言った。

「オウムの時もカルトの恐ろしさを思い知ったが、この共栄教会はそれ以上に危険じゃないですかね。あの頃とは比べ物にならない。彼らは宗教を隠れ蓑にし、成功者から金を巻き上げ、暴力団や半グレと手を組んでいるみたいですし。しかも、国際的な犯罪ネットワークとも関係している。この組織、いつ爆発するかわかりません。」

その言葉に、一瞬部屋の空気が重くなった。
石黒の目は真剣そのもので、小峯もその言葉の重さを感じた。

「オウム真理教以上に危険か…」

石黒は小峯の言葉にうなずく。
「もし、この組織が今より勢力を増して暴走したら、我々がその暴挙を止める術はなくなるでしょう」

小峯は窓の外に目をやった。
夕暮れの霞が関の街並みが静かに広がっている。
だが、その静けさの中で、何かが着実に蠢いている気配を感じずにはいられなかった。

「もし、彼らが一線を越えたら、我々が、我が国が受けるダメージは計り知れない。最悪の事態を防ぐためには、もう猶予はないな…」

石黒は、長年の経験からその脅威を的確に感じ取っている。
そして小峯もまた、共栄教会という組織がただの新興宗教ではない、国家の安全を脅かす存在であることを強く確信していた。

「とにかく、徹底的に調べ上げましょう。まだ確定的な証拠は少ないが、彼らの尻尾を掴むのは時間の問題だ。これ以上、この国に新たな脅威をのさばらせるわけにはいかない」

石黒は頷き、部屋を後にした。
その背中を見送りながら、小峯は再び机の上に積み上げられた書類に目を戻す。
そして、彼の胸の中で決意が一層強固なものとなった。
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