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だれだ
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矢を背負った勇ましい男の顔には、見覚えがあった。
コイツっ……
オレがこの街で捕まった時……最初にオレに矢を放ち、川岸をしつこく追いかけてきた奴だ。そしてトカプチのことをトーチと呼び、森で犯そうと襲い掛かった奴じゃないか!
湧き上がる怒りを堪えきれず……震える手をマントの奥に隠した。
「アペ……」
思わず相手の名を口に出してしまうと、男は驚いた表情を浮かべた。
そうか、以前会った時の俺は、顔が狼の半獣……そして完獣になっていたから、俺が誰だか分からないのか。
「なんで……俺の名前を、知って? 俺達どこかで会ったか」
今のオレはマントを深く被り半獣の部分をすべて覆い隠しているから、どうやら同じ人間の男だと思っているようだ。
人の顔と獣の顔とでは……こんなにも対応が違うのか……そう思うと、むなしくも腹立たしくもなった。
「どこかであったことがあるのか。お前は……旅人か。この街に用事なら俺が案内しようか」
すっかり油断した姿に腹立たしく、じゃあ、ここで俺が耳と尻尾を出したらどうなるかと興味を持った。
態度が豹変するのか、その背中に背負う矢で俺を狙うのか、また!
あぁ駄目だ。憎しみを抱くと……どんどん獣としての荒い気性が芽生えてしまう。
「さぁ行こう! 街を案内してやるよ」
親切そうに気安く肩に手を回され、もう耐えられない。
オレは一気にマントを脱ぎ捨てた。
「お前……っ、オレが分からないのか」
分かるはずもないだろう!
そう高を括っていた。
ところがアペは俺の獣の耳や尻尾、胸元の毛並みを確かめるように見つめ、声を詰まらせた。
「うっ……」
まるで泣きそうな顔だ。一体なんだ、この反応は?
「お前は……トーチ(トカプチ)の……」
「分かるのか。オレが何者か……誰だか」
「あぁ、あの時は本当にすまなかった」
ガバっと頭を下げられ、驚いてしまった。
同時にトーチがひどい目に遭わされながらも、この男を庇った理由が見えた。大切な幼馴染だとトーチが言った意味が見えて来る。
「ロウ……ロウだろ! 人の顔もカッコいいぜ!」
「オレが怖くないのか」
「お前はトーチが選んだ番だ! 怖くなんてない、ってか普通に男前だよ?」
「『男前』? それはなんだ?」
「男の俺でも惚れちまうほどカッコいいってことさ」
複雑な心境だった。
トカプチが傍にいないと、まだまだ分からないことばかりだ。
「にしても、ロウがひとりで、なんでこんな所にいるんだよ。あっそうか、トーチの家に行くところか」
「いや、オレは……」
「さぁこっちだ。ははっ意外と気弱なのか」
「そんなことない!」
肩を組まれ、俺は森を抜け出した。
こんなに自然にこの森を抜けられるとは思いもしなかったので、不思議な気持ちだ。
「ロウ……俺はお前と友達になりたかったんだ。だから会えて嬉しいよ」
「『友達』? なんだそれ」
「ははっ、まずはトーチも含めて話そう。そうしないとトーチが妬きそうだ!」
コイツっ……
オレがこの街で捕まった時……最初にオレに矢を放ち、川岸をしつこく追いかけてきた奴だ。そしてトカプチのことをトーチと呼び、森で犯そうと襲い掛かった奴じゃないか!
湧き上がる怒りを堪えきれず……震える手をマントの奥に隠した。
「アペ……」
思わず相手の名を口に出してしまうと、男は驚いた表情を浮かべた。
そうか、以前会った時の俺は、顔が狼の半獣……そして完獣になっていたから、俺が誰だか分からないのか。
「なんで……俺の名前を、知って? 俺達どこかで会ったか」
今のオレはマントを深く被り半獣の部分をすべて覆い隠しているから、どうやら同じ人間の男だと思っているようだ。
人の顔と獣の顔とでは……こんなにも対応が違うのか……そう思うと、むなしくも腹立たしくもなった。
「どこかであったことがあるのか。お前は……旅人か。この街に用事なら俺が案内しようか」
すっかり油断した姿に腹立たしく、じゃあ、ここで俺が耳と尻尾を出したらどうなるかと興味を持った。
態度が豹変するのか、その背中に背負う矢で俺を狙うのか、また!
あぁ駄目だ。憎しみを抱くと……どんどん獣としての荒い気性が芽生えてしまう。
「さぁ行こう! 街を案内してやるよ」
親切そうに気安く肩に手を回され、もう耐えられない。
オレは一気にマントを脱ぎ捨てた。
「お前……っ、オレが分からないのか」
分かるはずもないだろう!
そう高を括っていた。
ところがアペは俺の獣の耳や尻尾、胸元の毛並みを確かめるように見つめ、声を詰まらせた。
「うっ……」
まるで泣きそうな顔だ。一体なんだ、この反応は?
「お前は……トーチ(トカプチ)の……」
「分かるのか。オレが何者か……誰だか」
「あぁ、あの時は本当にすまなかった」
ガバっと頭を下げられ、驚いてしまった。
同時にトーチがひどい目に遭わされながらも、この男を庇った理由が見えた。大切な幼馴染だとトーチが言った意味が見えて来る。
「ロウ……ロウだろ! 人の顔もカッコいいぜ!」
「オレが怖くないのか」
「お前はトーチが選んだ番だ! 怖くなんてない、ってか普通に男前だよ?」
「『男前』? それはなんだ?」
「男の俺でも惚れちまうほどカッコいいってことさ」
複雑な心境だった。
トカプチが傍にいないと、まだまだ分からないことばかりだ。
「にしても、ロウがひとりで、なんでこんな所にいるんだよ。あっそうか、トーチの家に行くところか」
「いや、オレは……」
「さぁこっちだ。ははっ意外と気弱なのか」
「そんなことない!」
肩を組まれ、俺は森を抜け出した。
こんなに自然にこの森を抜けられるとは思いもしなかったので、不思議な気持ちだ。
「ロウ……俺はお前と友達になりたかったんだ。だから会えて嬉しいよ」
「『友達』? なんだそれ」
「ははっ、まずはトーチも含めて話そう。そうしないとトーチが妬きそうだ!」
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