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第2章
時が満ちれば 9
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赤い髪の女をとりあえず部屋に戻し、今宵は休んでもらった。そして王様がお休みになるのを見届け、俺も部屋に戻った。
時折足を痛そうに顔をしかめる王様の表情に、胸がつぶれる思いだ。
何としてでも王様を助けてみせる!だがこれは……王様のためだけではなく、自分のためでもある。
俺は……狡い男だ。身勝手な男だ。
やがてジョウが部屋にやってきた。後ろにもう一人男がいる。
「ジョウ、一体誰を連れてきた?」
「あぁカイを連れて来た」
「カイを?」
「彼が最初に赤い髪の女を発見したそうだ。何かの役に立つかもと思って…」
「そうだったのか、カイだったのか」
カイは俺の部下であるが、同い年の信頼できる友でもあるので、今は近衛隊の副隊長を任せている。俺が近衛隊に入ってからずっと傍にいてくれ、俺の体調など言わずとも気遣ってくれる信頼できる奴だった。
「やあヨウ!今日も相変わらずの美人だな」
いつものようにおどけた口調で話しかけてくる。
「お前はいつもそんな調子だな。しかし赤い髪の女を保護したのが、お前だったとはな」
「そうなんだ、今日はあの日のことを詳しく伝えたくてやってきた。」
「助かる。話してくれ。あの赤い髪の女がどうやってこの王国にやってきたのか知りたい。何かの手かがりになると思うから」
「俺はあの日国境近くの警備を視察するために道を急いでいた。道中大きな樹がある小高い丘で、信じられないほど眩しい光線に包まれた渦を見つけたんだ。ちょうど石の洞穴のような場所に光が集まっていた。驚いて眺めていると雷光が轟きだし、大きな音と閃光に目を瞑ってしまったら次の瞬間、あの赤い髪の女が呆然と立っていたんだよ」
「何だって、雷光と共に?」
「あぁそうなんだよ」
ジョウもはっとしたように反応した。
「ヨウ、そういえばあの女性は、『にほん』という国でも雷光を浴びたと言っていたな」
「雷光か……」
俺の秘めたる力と同じだ。雷光……もしかしたら何かの鍵になるかもしれぬ。
「ヨウ、そういえばあの女はどうしている?」
「今日は王宮に泊まってもらっているが」
「悪いことは言わない。早くあの女が帰りたがっている国へ帰らせた方がいいぞ」
「あぁそうなんだが、どうやったら帰れるかが分からないそうだ」
「やはりそんなことを言っているのか」
「何があったか分からないが、禍々しい星の動きを感じる。何かとてつもなく悪いことが起こりそうだ」
勘の鋭いカイが心配そうに、俺のことを見つめてくる。
「カイ、この話は他言無用だ」
「分かってるよ、ヨウ。お前こそ切羽詰まった顔している、大丈夫か。何か悪い事でも?」
「いや……大丈夫だ」
「数年前までのお前は死んだように暮らしていたが、ここ最近のお前はやる気に満ちていたから安心していたんだぞ」
「おい、カイっ、俺は一応お前の上官だぞ」
ふっ……その通りだ。カイはいつでも俺のことよく見ているな。今はジョウの次にだが。
「ヨウ……お前とはその前に同い年の友だろ?」
にっこりと笑うその横顔は精悍で綺麗に澄んでいた。その笑顔に改めてカイは信頼できる奴だと思った。
時折足を痛そうに顔をしかめる王様の表情に、胸がつぶれる思いだ。
何としてでも王様を助けてみせる!だがこれは……王様のためだけではなく、自分のためでもある。
俺は……狡い男だ。身勝手な男だ。
やがてジョウが部屋にやってきた。後ろにもう一人男がいる。
「ジョウ、一体誰を連れてきた?」
「あぁカイを連れて来た」
「カイを?」
「彼が最初に赤い髪の女を発見したそうだ。何かの役に立つかもと思って…」
「そうだったのか、カイだったのか」
カイは俺の部下であるが、同い年の信頼できる友でもあるので、今は近衛隊の副隊長を任せている。俺が近衛隊に入ってからずっと傍にいてくれ、俺の体調など言わずとも気遣ってくれる信頼できる奴だった。
「やあヨウ!今日も相変わらずの美人だな」
いつものようにおどけた口調で話しかけてくる。
「お前はいつもそんな調子だな。しかし赤い髪の女を保護したのが、お前だったとはな」
「そうなんだ、今日はあの日のことを詳しく伝えたくてやってきた。」
「助かる。話してくれ。あの赤い髪の女がどうやってこの王国にやってきたのか知りたい。何かの手かがりになると思うから」
「俺はあの日国境近くの警備を視察するために道を急いでいた。道中大きな樹がある小高い丘で、信じられないほど眩しい光線に包まれた渦を見つけたんだ。ちょうど石の洞穴のような場所に光が集まっていた。驚いて眺めていると雷光が轟きだし、大きな音と閃光に目を瞑ってしまったら次の瞬間、あの赤い髪の女が呆然と立っていたんだよ」
「何だって、雷光と共に?」
「あぁそうなんだよ」
ジョウもはっとしたように反応した。
「ヨウ、そういえばあの女性は、『にほん』という国でも雷光を浴びたと言っていたな」
「雷光か……」
俺の秘めたる力と同じだ。雷光……もしかしたら何かの鍵になるかもしれぬ。
「ヨウ、そういえばあの女はどうしている?」
「今日は王宮に泊まってもらっているが」
「悪いことは言わない。早くあの女が帰りたがっている国へ帰らせた方がいいぞ」
「あぁそうなんだが、どうやったら帰れるかが分からないそうだ」
「やはりそんなことを言っているのか」
「何があったか分からないが、禍々しい星の動きを感じる。何かとてつもなく悪いことが起こりそうだ」
勘の鋭いカイが心配そうに、俺のことを見つめてくる。
「カイ、この話は他言無用だ」
「分かってるよ、ヨウ。お前こそ切羽詰まった顔している、大丈夫か。何か悪い事でも?」
「いや……大丈夫だ」
「数年前までのお前は死んだように暮らしていたが、ここ最近のお前はやる気に満ちていたから安心していたんだぞ」
「おい、カイっ、俺は一応お前の上官だぞ」
ふっ……その通りだ。カイはいつでも俺のことよく見ているな。今はジョウの次にだが。
「ヨウ……お前とはその前に同い年の友だろ?」
にっこりと笑うその横顔は精悍で綺麗に澄んでいた。その笑顔に改めてカイは信頼できる奴だと思った。
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