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その後の話
『重陽の節句』2
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見上げれば君の優しい顔。
少し心配そうに愛おしむように、俺を見下ろしている
そんな君に、この躰のすべてを捧げる。
好きにしていい、好きにして欲しい。
君が好きだから。
部屋に立ち籠る菊の豊穣な香は、俺たちを深く深く酔わしていく。丈の中将の手が俺の胸から腰をなでるように蠢いていくと、くすぐったいような、気持ちいいような感覚が交互に訪れ、体がぴくぴくと小さく跳ねてしまう。
「んっ……ん……くすぐったい」
「我慢しろ。すぐに気持ちよくなる」
ちゅっちゅっと音を立ててツンと尖った乳首を優しく執拗に舐められると、体の奥深い部分がドクドクと疼いてくる。
「んっ」
何度も躰を重ねたのに、俺の躰は丈の中将に抱かれるとまるで初めてのように喜び、彼を迎え入れるのに必死になってしまう。
夜のしじまにただ響くのは、俺の声のみ。
我慢しても漏れてしまう女のような嬌声が恥ずかしい。
「洋月、また唇をそんなにきつく噛んで……駄目だ」
「だが……」
声が漏れてしまう。
「血が滲んでいるぞ、さぁ緩めて……君の綺麗な声が聴きたいから」
そう言いながら丈の中将の指が、俺の唇をするっと優しくなでる。
「綺麗だなんて。姫ではない男の声だから……嫌だ」
「そうだ。君は姫じゃない」
「……」
「姫じゃない君が好きだ」
そう言われてふと女装していた頃のことを思い出してしまった。月夜姫だった頃の俺のこと。
「ふふっ」
「んっ何を笑う?」
「だって君はあの月夜姫の姿をした俺のことを、すぐに見抜けなかったくせに」
「なっ」
「ねぇ聞いていいか。あの時、月夜姫をこうやって抱きたいって思っていたのか」
「洋月っ」
丈の中将がまんざらでもないといった様子で珍しく表情露わに顔を赤らめた。そんな丈の中将の背中に手を回し、ぎゅっと俺の方から抱き留める。
「大丈夫。どちらも俺だから……いいんだよ。あの時そう思っていてくれたのなら、嬉しい位さ」
あまりに幸せで、あまりに満ち足りていて、二度と思い出したくないと思っていたあの頃のことも、君と過ごした大切な一つの思い出として蘇らせることができるようになった。
過去を消したい。
この世から消え去りたい。
そう思っていた俺の辛く悲しい過去。
抱かれてはいけない人に抱かれ、躰を許し続けた長い年月。
その過去を思い出すことなんて、もう二度とないと思っていたのに、全く君って人は……すごい。
「何を考えている? 」
「昔のことを……」
そう伝えると丈の中将の顔が曇り、俺の目を手で塞いだ。
「何を? 」
「思い出すな。嫌なことはすべて忘れろ」
「……違うよ。君と過ごした日々を思い出していた。あの頃は少し君に触れるだけで心が躍るようだった」
「そうだったのか……今はどうだ? こんな姿を見せているのに」
「ふふっ、うん……信じられない位、幸せだ」
そのまま丈の中将の唇が俺の腹へゆっくりと降り、さらに下へと……そして俺のものをそっと口に含んだ。
「あっそんなところ、駄目だ」
「洋月にもっともっと感じて欲しい」
舌を巧みに使われ、裏も表も先も包まれるように舐めまわされ、吸われればもう我慢できなくなる。
「ああっもう離せっ、出てしまう」
「出していい。このまま」
「あっ……ああっ」
頭の中が白く光り、俺は足を突っ張らせたまま白濁としたものを丈の中将の口に放ってしまった。
「あ……すまない」
「いいんだよ。それにしても君のここ随分濡れてしまったな」
丈の中将がおもむろに菊の被綿を手に取った。
「それで何を? 」
「ここを清めないと」
果てたばかりで敏感に震える俺のものに、菊の被綿をそっと被せてくる。
「えっ! 」
「私たちがいつまでもこうやって愛しあえるようにさ」
「ば……馬鹿っ」
「なんだ? 照れているのか。洋月が言い出したことなのに」
「ちっ違うから、もうっ君って人はなんて……いやらしいんだっ! 」
少し心配そうに愛おしむように、俺を見下ろしている
そんな君に、この躰のすべてを捧げる。
好きにしていい、好きにして欲しい。
君が好きだから。
部屋に立ち籠る菊の豊穣な香は、俺たちを深く深く酔わしていく。丈の中将の手が俺の胸から腰をなでるように蠢いていくと、くすぐったいような、気持ちいいような感覚が交互に訪れ、体がぴくぴくと小さく跳ねてしまう。
「んっ……ん……くすぐったい」
「我慢しろ。すぐに気持ちよくなる」
ちゅっちゅっと音を立ててツンと尖った乳首を優しく執拗に舐められると、体の奥深い部分がドクドクと疼いてくる。
「んっ」
何度も躰を重ねたのに、俺の躰は丈の中将に抱かれるとまるで初めてのように喜び、彼を迎え入れるのに必死になってしまう。
夜のしじまにただ響くのは、俺の声のみ。
我慢しても漏れてしまう女のような嬌声が恥ずかしい。
「洋月、また唇をそんなにきつく噛んで……駄目だ」
「だが……」
声が漏れてしまう。
「血が滲んでいるぞ、さぁ緩めて……君の綺麗な声が聴きたいから」
そう言いながら丈の中将の指が、俺の唇をするっと優しくなでる。
「綺麗だなんて。姫ではない男の声だから……嫌だ」
「そうだ。君は姫じゃない」
「……」
「姫じゃない君が好きだ」
そう言われてふと女装していた頃のことを思い出してしまった。月夜姫だった頃の俺のこと。
「ふふっ」
「んっ何を笑う?」
「だって君はあの月夜姫の姿をした俺のことを、すぐに見抜けなかったくせに」
「なっ」
「ねぇ聞いていいか。あの時、月夜姫をこうやって抱きたいって思っていたのか」
「洋月っ」
丈の中将がまんざらでもないといった様子で珍しく表情露わに顔を赤らめた。そんな丈の中将の背中に手を回し、ぎゅっと俺の方から抱き留める。
「大丈夫。どちらも俺だから……いいんだよ。あの時そう思っていてくれたのなら、嬉しい位さ」
あまりに幸せで、あまりに満ち足りていて、二度と思い出したくないと思っていたあの頃のことも、君と過ごした大切な一つの思い出として蘇らせることができるようになった。
過去を消したい。
この世から消え去りたい。
そう思っていた俺の辛く悲しい過去。
抱かれてはいけない人に抱かれ、躰を許し続けた長い年月。
その過去を思い出すことなんて、もう二度とないと思っていたのに、全く君って人は……すごい。
「何を考えている? 」
「昔のことを……」
そう伝えると丈の中将の顔が曇り、俺の目を手で塞いだ。
「何を? 」
「思い出すな。嫌なことはすべて忘れろ」
「……違うよ。君と過ごした日々を思い出していた。あの頃は少し君に触れるだけで心が躍るようだった」
「そうだったのか……今はどうだ? こんな姿を見せているのに」
「ふふっ、うん……信じられない位、幸せだ」
そのまま丈の中将の唇が俺の腹へゆっくりと降り、さらに下へと……そして俺のものをそっと口に含んだ。
「あっそんなところ、駄目だ」
「洋月にもっともっと感じて欲しい」
舌を巧みに使われ、裏も表も先も包まれるように舐めまわされ、吸われればもう我慢できなくなる。
「ああっもう離せっ、出てしまう」
「出していい。このまま」
「あっ……ああっ」
頭の中が白く光り、俺は足を突っ張らせたまま白濁としたものを丈の中将の口に放ってしまった。
「あ……すまない」
「いいんだよ。それにしても君のここ随分濡れてしまったな」
丈の中将がおもむろに菊の被綿を手に取った。
「それで何を? 」
「ここを清めないと」
果てたばかりで敏感に震える俺のものに、菊の被綿をそっと被せてくる。
「えっ! 」
「私たちがいつまでもこうやって愛しあえるようにさ」
「ば……馬鹿っ」
「なんだ? 照れているのか。洋月が言い出したことなのに」
「ちっ違うから、もうっ君って人はなんて……いやらしいんだっ! 」
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