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恋の行方
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宗吾さんとは、頻繁に会うようになった。
まずは昼休みにランチをした。それから慣れて来ると芽生くんと一緒に動物園や遊園地に行き、約束通り友達からじっくりと歩み寄った。
宗吾さんはバイセクシャルを隠し結婚したが、結局上手く行かずに離婚したそうで、別れ際に奥さんから酷い言葉で罵られ、深く傷ついたままなことも知った。
彼は僕より五歳年上の三十二歳だった。息子の芽生くんは五歳で、溌剌とした性格で可愛らしく、僕によく懐いてくれた。
ただ、好きなまま一馬と別れた僕の気持ちは宙ぶらりんで、なかなか厄介だった。そんな捻じれた心を根気よく解してくれたのも宗吾さんで、だからこそ一馬との思い出をゆっくりと塗り替えていくことが出来た。
初めての深い口づけは、観覧車での天上のキス。
夏には海に行き、秋には鎌倉に……冬には……
僕たちの間には、様々なドラマが生まれた。
恋を育みながら、彼に抱かれる覚悟を育てた。
捨てられるのが怖く、ひとりになるのに怯える僕は、宗吾さんという温かい愛に触れながらも、どうしても慎重になってしまった。
だから結局一年間も、気持ちを整理する時間を与えてもらった。
今日、僕は一馬と暮らした部屋を引き払い、その足で宗吾さんのマンションにやってきた。そして夕食後、芽生くんがしっかり眠ったのを確認してから彼の部屋に向かった。
「入ってもいいですか」
「瑞樹……おいで。やっとだ……やっとここまで来た」
「あっ……」
部屋に入るなり、宗吾さんの胸に深く抱かれた。丁度一年前の今日が、最後に一馬に抱かれた日だった。だから今日がいいと思った。勝手な考えだが、宗吾さんに僕の身体ごと塗り替えて欲しくなった。それに少し前から宗吾さんに抱かれたいと、僕の方も欲情していた。
「あなたが好きです。その、長く待たせて……ごめんなさい」
「君をバス停でずっと見ていたよ。彼氏に笑いかける表情が可愛いなと。だからあの日ひとりで泣いている君を公園で見つけて、どうしても放っておけなかった。弱っている所につけ込んだ気がして、引け目を感じていた」
「そんなことはないです。僕もあの公園で会った時から……」
「その先をちゃんと言って」
熱い口づけを交わされながら、言葉を促された。ひどく官能的な大人のキスをされ、酔ってしまう。
「あっ……あなたのことが気になっていました」
「ありがとう。俺達、芽生と三人で幸せになろう」
「はい。僕でよければ……あなた達と、ずっと一緒にいたいです」
ベッドに押し倒され、パジャマも下着も滑るように優しく脱がされた。
生まれたままの姿の僕に、同じく裸の宗吾さんがガバッと覆い被さった。
彼の重みを全身で感じたくて、僕は力を抜いて受け止めた。
僕が怖くないように、身体への愛撫の合間に沢山の口づけをしてくれる。だから僕はまるで小さな子供のように彼の背中に手を回し、ギュッとしがみついてしまった。
「可愛いよ、とても」
彼の手によって太腿の内側から左右に大きく開かれ、宗吾さんの指先が奥の窄まりに触れてきた。そこは、この一年間しっかりと閉じていた場所だった。
宗吾さんの手はどこまでも優しく、弧を描くようにゆっくりと窪みの周囲を撫で出した。
「瑞樹……ここを使ってもいいか」
「は……いっ……」
僕の声は小さく震えていた。すると宗吾さんが甘く微笑んで、汗で濡れた前髪をかき分け、まるで幼子をあやすように額に口づけしてくれた。どこまでも優しい仕草に安堵した。
大丈夫……大丈夫。
心の中で必死に唱えていると……宗吾さんにも伝わったようだ。
「大丈夫だ。怖くない」
オイルを纏った彼の指を、つぷりと僕の蕾が呑み込んだ。とうとうこの時が……躰の内側に初めて彼を感じた瞬間だ。何度も出し入れされて湿った水音を立てるのが恥ずかしくて、必死にシーツを掴んで耐えた。
「宗吾さん……もう、もう……大丈夫ですから」
「駄目だ。もう少し」
僕の躰はまるで初めて男性を受け入れるかのように、真っ白な気持ちで過敏に反応していた。やがて時間をかけて僕の入り口が宗吾さんの指に馴染んで来た。彼が丹念に中を探ってくる。一番過敏なポイントをグッと指の腹で押された時は、あまりの気持ち良さに腰がビクンと跳ねてしまった。
「あっ……うっ!」
「ここだな」
そこからは、一気に快楽の波に巻き込まれてしまう。
もう委ねよう……あなたに。
宗吾さんは時折ハッとした表情で自分を諫めるように優しく緩やかになり、それでいて次の瞬間にはまた激しく僕を抱いた。
「あっ、うっ……うっ」
小さな喘ぎ声が止まらなくなる。恥ずかしくて閉じたくなる脚を制され、僕はもっと深い快楽の波に連れて行かれた。
もっと宗吾さんの色に染めて欲しい。
一馬の余波に巻き込まれないように!
「あ……んうっ」
僕のモノもしっかり勃ちあがり、先端からは透明の蜜がとろりと溢れていた。
初めて宗吾さんのものを受け入れた時、一馬とは明らかに違うことに一瞬躊躇った。しかし次の瞬間、宗吾さんを好きな気持ちが弾けるように溢れ出た。
「瑞樹、愛してるよ」
「僕も愛しています」
これは現在進行形の愛だ。
宗吾さんと身体を繋げることにより、一層の安心感をもらった。
とても居心地のよい幸せな場所を、もらった。
***
翌年の春休み。
小学生になる芽生くんの入学祝いを兼ねて、僕たちは家族旅行を計画した。
「宗吾さん、僕はそろそろ……『幸せな復讐』をしに行きたいです」
だから行き先は、一馬がいる湯布院の温泉旅館を選んだ。
今の僕を見たら、お前はびっくりするかな。それとも、ほっとするかな。
まずは昼休みにランチをした。それから慣れて来ると芽生くんと一緒に動物園や遊園地に行き、約束通り友達からじっくりと歩み寄った。
宗吾さんはバイセクシャルを隠し結婚したが、結局上手く行かずに離婚したそうで、別れ際に奥さんから酷い言葉で罵られ、深く傷ついたままなことも知った。
彼は僕より五歳年上の三十二歳だった。息子の芽生くんは五歳で、溌剌とした性格で可愛らしく、僕によく懐いてくれた。
ただ、好きなまま一馬と別れた僕の気持ちは宙ぶらりんで、なかなか厄介だった。そんな捻じれた心を根気よく解してくれたのも宗吾さんで、だからこそ一馬との思い出をゆっくりと塗り替えていくことが出来た。
初めての深い口づけは、観覧車での天上のキス。
夏には海に行き、秋には鎌倉に……冬には……
僕たちの間には、様々なドラマが生まれた。
恋を育みながら、彼に抱かれる覚悟を育てた。
捨てられるのが怖く、ひとりになるのに怯える僕は、宗吾さんという温かい愛に触れながらも、どうしても慎重になってしまった。
だから結局一年間も、気持ちを整理する時間を与えてもらった。
今日、僕は一馬と暮らした部屋を引き払い、その足で宗吾さんのマンションにやってきた。そして夕食後、芽生くんがしっかり眠ったのを確認してから彼の部屋に向かった。
「入ってもいいですか」
「瑞樹……おいで。やっとだ……やっとここまで来た」
「あっ……」
部屋に入るなり、宗吾さんの胸に深く抱かれた。丁度一年前の今日が、最後に一馬に抱かれた日だった。だから今日がいいと思った。勝手な考えだが、宗吾さんに僕の身体ごと塗り替えて欲しくなった。それに少し前から宗吾さんに抱かれたいと、僕の方も欲情していた。
「あなたが好きです。その、長く待たせて……ごめんなさい」
「君をバス停でずっと見ていたよ。彼氏に笑いかける表情が可愛いなと。だからあの日ひとりで泣いている君を公園で見つけて、どうしても放っておけなかった。弱っている所につけ込んだ気がして、引け目を感じていた」
「そんなことはないです。僕もあの公園で会った時から……」
「その先をちゃんと言って」
熱い口づけを交わされながら、言葉を促された。ひどく官能的な大人のキスをされ、酔ってしまう。
「あっ……あなたのことが気になっていました」
「ありがとう。俺達、芽生と三人で幸せになろう」
「はい。僕でよければ……あなた達と、ずっと一緒にいたいです」
ベッドに押し倒され、パジャマも下着も滑るように優しく脱がされた。
生まれたままの姿の僕に、同じく裸の宗吾さんがガバッと覆い被さった。
彼の重みを全身で感じたくて、僕は力を抜いて受け止めた。
僕が怖くないように、身体への愛撫の合間に沢山の口づけをしてくれる。だから僕はまるで小さな子供のように彼の背中に手を回し、ギュッとしがみついてしまった。
「可愛いよ、とても」
彼の手によって太腿の内側から左右に大きく開かれ、宗吾さんの指先が奥の窄まりに触れてきた。そこは、この一年間しっかりと閉じていた場所だった。
宗吾さんの手はどこまでも優しく、弧を描くようにゆっくりと窪みの周囲を撫で出した。
「瑞樹……ここを使ってもいいか」
「は……いっ……」
僕の声は小さく震えていた。すると宗吾さんが甘く微笑んで、汗で濡れた前髪をかき分け、まるで幼子をあやすように額に口づけしてくれた。どこまでも優しい仕草に安堵した。
大丈夫……大丈夫。
心の中で必死に唱えていると……宗吾さんにも伝わったようだ。
「大丈夫だ。怖くない」
オイルを纏った彼の指を、つぷりと僕の蕾が呑み込んだ。とうとうこの時が……躰の内側に初めて彼を感じた瞬間だ。何度も出し入れされて湿った水音を立てるのが恥ずかしくて、必死にシーツを掴んで耐えた。
「宗吾さん……もう、もう……大丈夫ですから」
「駄目だ。もう少し」
僕の躰はまるで初めて男性を受け入れるかのように、真っ白な気持ちで過敏に反応していた。やがて時間をかけて僕の入り口が宗吾さんの指に馴染んで来た。彼が丹念に中を探ってくる。一番過敏なポイントをグッと指の腹で押された時は、あまりの気持ち良さに腰がビクンと跳ねてしまった。
「あっ……うっ!」
「ここだな」
そこからは、一気に快楽の波に巻き込まれてしまう。
もう委ねよう……あなたに。
宗吾さんは時折ハッとした表情で自分を諫めるように優しく緩やかになり、それでいて次の瞬間にはまた激しく僕を抱いた。
「あっ、うっ……うっ」
小さな喘ぎ声が止まらなくなる。恥ずかしくて閉じたくなる脚を制され、僕はもっと深い快楽の波に連れて行かれた。
もっと宗吾さんの色に染めて欲しい。
一馬の余波に巻き込まれないように!
「あ……んうっ」
僕のモノもしっかり勃ちあがり、先端からは透明の蜜がとろりと溢れていた。
初めて宗吾さんのものを受け入れた時、一馬とは明らかに違うことに一瞬躊躇った。しかし次の瞬間、宗吾さんを好きな気持ちが弾けるように溢れ出た。
「瑞樹、愛してるよ」
「僕も愛しています」
これは現在進行形の愛だ。
宗吾さんと身体を繋げることにより、一層の安心感をもらった。
とても居心地のよい幸せな場所を、もらった。
***
翌年の春休み。
小学生になる芽生くんの入学祝いを兼ねて、僕たちは家族旅行を計画した。
「宗吾さん、僕はそろそろ……『幸せな復讐』をしに行きたいです」
だから行き先は、一馬がいる湯布院の温泉旅館を選んだ。
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