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第一章
はだける 5
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頬に強い衝撃を受けて目から火花が飛び散った。そのまま地面に倒れ込むと、すかさず男が俺に跨り、もう一人は俺の手を頭上で一つに拘束してくる。
「くっ……やめっ」
衝撃で唇が切れたようで、口腔内にじんわりと血の味が広がっていく。冗談じゃない! こんな所で、こんな奴らに襲われるなんて!
だが二人がかりで屈強な男に抑え込まれては身動きも取れない。本当にこのままじゃ犯されてしまう!
「くそっこいつっ暴れるなよ! 静かにしろっ」
「やめろ! 」
男の手が浴衣の袂から入ってくると、そのおぞましいカサついた指の感覚に背筋が凍るようだ。太腿を鷲掴みにされたかと思うと、ゆっくりと撫であげてくる。
気持ち悪い……
「くっ……信二郎! 信二郎! 」
届かぬかもしれない。だが信二郎の名前を呼び続けることが俺に出来る唯一の抵抗だった。両足を掴まれ左右に広げられ、まるで男のそこを受け入れる女のような姿にさせられて、恐怖と気持ち悪さで身震いした。
もう駄目だ! 悔しい!
こんな奴らに触れられて自由を奪われ無理矢理、男娼のように扱われて、自尊心がズタズタになっていく。
だが、もう一度……もう一度声を絞る。
助けて欲しい。信二郎……お前だから許した躰なんだ。
「うっ……うっ」
ドンっ!
ドスッ!
「おい! お前ら何やってるんだ! どけ!!」
もう駄目だと諦めの境地で俺は目を瞑りその恐ろしい行為から目を逸らした瞬間、突然俺に跨っていた男が横にすっ飛び、ぐぅっとつぶれるような音を立て崩れ落ちた。
「うわぁ! やべえ、逃げろ! 」
もう一人の男は俺を押さえつけていた手を離し、怯えたように後ずさりしていく。目を開けて何が起きたかとあたりを見回すと、足元に一人の男が立っていた。一糸乱れぬ涼し気な表情を浮かべている。
その男は、信二郎と同じくらいの背格好の青年だった。
「君、大丈夫か」
「…あっ……な……んとか」
まだ恐怖で引き攣って、舌がわまらない。
「良かったよ。危なかったな。でもこんな夜道を無防備な姿で歩いていては危ないな」
その男ははだけた俺の浴衣を慣れた手つきで直してながら、ポンポンとあやすように頭を軽く叩いた。それから顎を掬われ顔をじっと覗き込まれたので、恥ずかしくなった。
「君……浴衣姿が随分色っぽいね。これじゃ心配だな。なるほど……男に襲われるわけだ」
「なっ! 俺にはそんな趣味はない! 」
「悪い悪い。あんまり艶っぽいから」
少しだけ意地悪そうに口元を緩めて囁かれ、せっかく助けてもらったのに、俺はかっと怒りで震えてしまった。
「なっ! 」
「さぁ立てる? 」
「……ひとりで出来ます」
ひとりで立ち上がってはみたものの、男に無理矢理襲われそうになった躰は小刻みに震えていた。危なかった。この人が助けてくれなかったら今頃……そう思うとぞくりとしてしまう。きちんとお礼を言おうと、俺は立ち上がり浴衣についた土を払ってから、心を込めて礼をした。
「あの……ありがとうございます」
返事がないので不思議に思いちらっと覗き見すると、その青年は少し考えこむように腕を組んでいた。
「さっき君は助けを求めて……『信二郎』って何度も呼んでいたね」
「えっ!」
聞かれていたのか。俺が必死に助けを呼ぶ声を。あんな状況で考えたのは信二郎に助けてもらうことばかりだった。そのことが無性に恥ずかしかった。
「信二郎って誰? 」
その時、路地の先から息を切らしながら近づいてくる足音が聴こた。
「夕凪! そこか」
「くっ……やめっ」
衝撃で唇が切れたようで、口腔内にじんわりと血の味が広がっていく。冗談じゃない! こんな所で、こんな奴らに襲われるなんて!
だが二人がかりで屈強な男に抑え込まれては身動きも取れない。本当にこのままじゃ犯されてしまう!
「くそっこいつっ暴れるなよ! 静かにしろっ」
「やめろ! 」
男の手が浴衣の袂から入ってくると、そのおぞましいカサついた指の感覚に背筋が凍るようだ。太腿を鷲掴みにされたかと思うと、ゆっくりと撫であげてくる。
気持ち悪い……
「くっ……信二郎! 信二郎! 」
届かぬかもしれない。だが信二郎の名前を呼び続けることが俺に出来る唯一の抵抗だった。両足を掴まれ左右に広げられ、まるで男のそこを受け入れる女のような姿にさせられて、恐怖と気持ち悪さで身震いした。
もう駄目だ! 悔しい!
こんな奴らに触れられて自由を奪われ無理矢理、男娼のように扱われて、自尊心がズタズタになっていく。
だが、もう一度……もう一度声を絞る。
助けて欲しい。信二郎……お前だから許した躰なんだ。
「うっ……うっ」
ドンっ!
ドスッ!
「おい! お前ら何やってるんだ! どけ!!」
もう駄目だと諦めの境地で俺は目を瞑りその恐ろしい行為から目を逸らした瞬間、突然俺に跨っていた男が横にすっ飛び、ぐぅっとつぶれるような音を立て崩れ落ちた。
「うわぁ! やべえ、逃げろ! 」
もう一人の男は俺を押さえつけていた手を離し、怯えたように後ずさりしていく。目を開けて何が起きたかとあたりを見回すと、足元に一人の男が立っていた。一糸乱れぬ涼し気な表情を浮かべている。
その男は、信二郎と同じくらいの背格好の青年だった。
「君、大丈夫か」
「…あっ……な……んとか」
まだ恐怖で引き攣って、舌がわまらない。
「良かったよ。危なかったな。でもこんな夜道を無防備な姿で歩いていては危ないな」
その男ははだけた俺の浴衣を慣れた手つきで直してながら、ポンポンとあやすように頭を軽く叩いた。それから顎を掬われ顔をじっと覗き込まれたので、恥ずかしくなった。
「君……浴衣姿が随分色っぽいね。これじゃ心配だな。なるほど……男に襲われるわけだ」
「なっ! 俺にはそんな趣味はない! 」
「悪い悪い。あんまり艶っぽいから」
少しだけ意地悪そうに口元を緩めて囁かれ、せっかく助けてもらったのに、俺はかっと怒りで震えてしまった。
「なっ! 」
「さぁ立てる? 」
「……ひとりで出来ます」
ひとりで立ち上がってはみたものの、男に無理矢理襲われそうになった躰は小刻みに震えていた。危なかった。この人が助けてくれなかったら今頃……そう思うとぞくりとしてしまう。きちんとお礼を言おうと、俺は立ち上がり浴衣についた土を払ってから、心を込めて礼をした。
「あの……ありがとうございます」
返事がないので不思議に思いちらっと覗き見すると、その青年は少し考えこむように腕を組んでいた。
「さっき君は助けを求めて……『信二郎』って何度も呼んでいたね」
「えっ!」
聞かれていたのか。俺が必死に助けを呼ぶ声を。あんな状況で考えたのは信二郎に助けてもらうことばかりだった。そのことが無性に恥ずかしかった。
「信二郎って誰? 」
その時、路地の先から息を切らしながら近づいてくる足音が聴こた。
「夕凪! そこか」
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