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小学生編

番外編・2024年HALLOWEENリレー『Magical🎃Halloween』②

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 なぁに「トイザウルス」に行けば、買えるだろう。

 カッコいいかどうかは分からないが、ハロウィンの衣装コーナーがあって、大人の仮装も沢山売っていた。

 きっとあそこになら、ある!
 
 そう信じて、私は車を飛ばしてお台場に向かった。

「すみません。羊の仮装はありますか」
「ええっと、あぁ、仮装ではないですが、それっぽいものがあります。あちらです」
「おぉ、良かった! ありがとうございます」


 ところが、案内されたのはベビー用品コーナーだった。

 嫌な予感が……

「こちらです。これは、お耳が羊の耳になっていて全身モコモコで、着ぐるみっぽい感じですよ」
「……ご丁寧にありがとうございます」

 まさか私が着るサイズの物が必要とは言い出せずに、乾いた笑みを浮かべるしかなかった。

 大人の仮装コーナーを自力で見回ったが、カッコいい羊どころか、羊の仮装など存在しなかった。

 困ったな。

 美智に豪語して出てきたのに……

 うーむ、こういう時、私の頭はカチコチで動きが悪い。

 知恵を絞り出さないと。

 唸って唸って……

 そうだ!

 ふと芽生が以前話してくれたことを思い出した。

「おじさん、パパのベッドの下には、魔法の宝箱があるんだよ」
「宗吾の宝箱か。そこには、どんなお宝が入っているんだ?」
「たぶん……いろんな人や動物に変身できるグッズがいっぱい。くまさんとかうさぎさんとか」

 宗吾が持っているかもしれない。

 私は藁をも掴む思いで、宗吾に電話をした。

****

「宗吾、助けてくれ」
「何事だ? 兄さん!」

 時計を見ると、もう20時だ。

 こんな時間に何事だ?

 何か良くないことでも起きたのか。

 血相を変えて耳をそばだてると……

「私を羊にしてくれ」
「はぁ? ひつじ?」
「宗吾の家には熊や兎になれるグッズが沢山あると聞いた。ならば羊にもなれるだろう」
「兄さん、落ち浮いてくださいよ。熊と兎の着ぐるみは兄さんが買ってくれたものですよ。来年はへび年なのになんで突然……」
「私のハロウィンの仮装として必要なんだ。彩芽のリクエストなので叶えてやりたい」

 兄さんは至って真剣だ。

 真剣に俺を頼ってくれていることが分かった。

「よし、兄さんのために一肌脱ぐよ。あれ? でもハロウィンってもう明日じゃないか」
「だから羊になれなくて困っている」

 兄さんが羊になりたいなんて……

 弁護士の兄の口から出た台詞とは思えない。

「ええっと……衣装がないなら作ればいいのでは?」
「そうか!それもそうだな。あぁ、流石宗吾だな。だが私に裁縫は無理だ」
「あぁ、それなら適任の友人がいるから連絡してみますよ」
「頼む」

 月影寺の流なら作れるかも。

 毎年ハロウィンでは凝った衣装を作っているから。

 電話を切ると、瑞樹が心配そうに近づいてきた。

「宗吾さん、憲吾さん、どうされたのですか」
「羊の衣装を作って欲しいんだってさ」
「え? 今度は僕……羊になるのですか」

 瑞樹が自分の身体を見下ろして複雑そうな顔をしている。

「違う違う、羊になるのは兄さんだ」
「えー 憲吾さんですか!」

 瑞樹は素っ頓狂な声を出していた。

「あーちゃんのリクエストだそうだ」
「難題ですね。でも憲吾さん前向きなんですね。僕も応援します」

 瑞樹は相変わらず優しいなぁ。

 というわけで、早速、流に電話をした。

「あー ちょうどハロウィンの衣装を作っている最中だから一緒に作ってやりたいが、あいにく羊の生地がない。そういう時は、あそこだ、あそこ!」
「あ、東銀座の大河さんか」
「そうだ、あの人は動物の生地マニアだからきっとあるぞ」
「そんなマニアあるのか。とにかく電話してみるよ」

 電話を切ろうとしたら、流に呼び止められた。

「宗吾、明日の夜って暇か」
「夕方はマンションでハロウィンのお菓子配りがあるから、その後なら」
「ちょうどいい。良かったら遊びに来いよ。月影寺のハロウィンは楽しいぞ。羊の兄さんたちも一緒に」
「楽しそうだな、遊びに行かせてくれ」
「待ってるぞ」

 さぁ次は大河さんだ。

 事情を話すと快諾してくれた。

「蓮に黒豹の衣装を作ったばかりだから、大人の仮装は任せてくれ。羊の生地もあるぞ」

 というわけで、兄さんに連絡して東銀座の『テーラー桐生』で落ち合った。

「初めまして、私は滝沢憲吾と申します。私を羊にして下さい。カッコいい羊になりたいのです」

 兄さんが切実に訴えると、大河さんが不思議な顔をした。

「カッコいい羊は、一体どなたのリクエストですか」
「三歳の娘です」
「なるほど……」
「兄さん、ちょっといい?」

 蓮さんが大河さんに近づいて耳打した。
 
 兄さんは、その様子をじっと見守っていた。

 鋭い目つきだ。

「あ、彼は俺の弟です」
「黒豹のような弟さんですね。あなたはタイガーのように堂々とされている」
「ありがとうございます。お目が高いお客様だ。流石宗吾さんのお兄様ですね。では採寸をさせて下さい」

 大河さんは華麗な手つきであっという間に採寸し、超特急で仕上げるので、明日の朝、蓮さんがバイクで届けると約束してくれた。

 さぁ、どんな羊の衣装が届くか楽しみだ!

 


 続く


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