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小学生編
マイ・リトル・スター 1
しおりを挟む冬から春――
季節は巡り、4月になっていた。
今日から芽生くんは小学4年生だ。
「パパ、お兄ちゃん、行ってきます! 忘れ物はないよ。全部ちゃんと持ったよ」
「すごいね! 行ってらっしゃい!」
「おー 芽生ー クラス替え楽しみだな」
「うん!」
ランドセルを背負う芽生くんの後ろ姿に、思わず目を細めた。
小さな身体に大きすぎて重そうだったのに、今は軽々と背負って、サイズもぴったりだ。
芽生くんは平均身長より少し高めなので、もう140cm近くある。
出会った時は100cm程だったので、実に40cmも伸びたのか。
僕との差がどんどん近づいてきて、不思議な気分だよ。
一緒に芽生くんを見送っていた宗吾さんも、僕と同じ気持ちのようだ。
「瑞樹、芽生、あんなに大きかったか」
「えぇ、この1年でぐっと伸びたようです」
「俺に似て背が高くなりそうだな。まだまだ伸びそうだ」
「いつか僕が見上げる日が来そうです」
「うーむ、あんなにちっこかった芽生が瑞樹より大きくなるのか。うーむ、まだ実感湧かないよ」
「僕もです」
そのまま向かいあって、額をコツンと合わせた。
「瑞樹、4年生になった芽生のこと、俺たち、広い心で見守って行こうぜ」
「はい!」
もう芽生くんは、僕と宗吾さんの子ども。
そう言ってくれている気がして、胸の奥がポカポカになった。
「10歳か~ ってことは、そろそろ反抗期に入るのか」
「はい、でも成長過程ですので……」
「うーむ、芽生は『イヤイヤ期』があまりなかったから、今度はどうなるか不安だよ」
「そうだったのですね」
大学の教育課程で学んだが、子供の最初の反抗期つまり「第一反抗期」は、2~3歳の『イヤイヤ期』と呼ばれる時期で、保護者の言うことに従わなくなり、「自我」の芽生えから自己主張するようになる。
確かに僕と出会った頃の芽生くんは、我が儘を言わない聞き分けの良い子だった。端から見たら良い子過ぎと判断されたかもしれないが、僕は芽生くんの持って生まれた天真爛漫で優しい性格の現れだと思っている。
そしてこれから迎える反抗期……
2回目の反抗期は「第二反抗期」と呼ばれ、10~12歳頃から保護者や周囲の大人の価値観に対して反発したり、否定したりする状態が続く時期だ。また社会的な制度や通念などに対し反抗的な態度を取るようだ。
宗吾さん同様、確かに不安を覚える。
僕という存在が、端から見てどう映るか。
男同士で愛し合っていることが、どう影響するのか。
芽生くんは素直に今は受け止めてくれているが、この先周囲の目を意識するようになると、周囲からの言葉に傷ついてしまうかもしれない。
そこが心配だ。
「瑞樹、何があっても大丈夫だ。万が一、一時離れることがあっても、芽生は必ず戻ってくる」
「はい。僕は芽生くんが大好きです。そして信じています。きっと大丈夫です」
宗吾さんが僕に優しいキスをしてくれた。
愛情が蜜のようにたっぷりの甘いキスだった。
「瑞樹は何があっても俺の傍にいろよ」
昔だったらそっと去ってしまいそうな状況に陥っても、僕はもうひとりで勝手に消えたりしない。
大好きな人、大切な人の傍にいたいから。
そう願えるようになった自分にエールを送りたい。
「瑞樹、ずっと傍にいて欲しい」
こうやってストレートに求めてくれる人がいるのだから。
季節は春。
木々が芽吹く季節が到来だ。
爽やかな風に身を任せて、しなやかに生きていく。
「はい、約束します。ずっと傍にいます」
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