1,670 / 1,730
小学生編
冬から春へ 62
しおりを挟む
「今日は給食よ。樹くん、いきなりだけど大丈夫?」
「せんせい! いっくんは、ほいくえんで、いつもきゅうしょくだったから、だいじょうぶだよ」
だけどね、ようちえんのおべんとうはつめたくて、たくさんはいっていて、びっくりしちゃった。
ほいくえんだと、きゅうしょくのまえには、ろうかがいいにおいになって、ほかほかのごはんとおかずがおへやにとどくの。かっぽうぎをきた、やさしいおばさんがとどけてくれるの。
でもね、ようちえんはみんなおなじのあかいおべんとうばこで、ほいくえんのきゅうしょくとは、ぜんぜんちがったよ。
きょうはちゃんとはやくたべないと、がんばらないと。
でもかたいハンバーグも、オレンジいろのウインナーも、つめたいたまごやきも、いつもとちがってむずかしいよぅ。
「あらあら、樹くん、全然進んでないわよ。好き嫌いしないでがんばろうね」
「うん」
がんばらないと、またいっくんひとりぼっち。
おいていかれちゃうよ。
でもね、がんばっても、がんばっても、しろいごはんがぎっしりでへらないよ。
ないちゃ、だめ。
もうなかない。
がんばるもん。
うつむいていると、まえのせきのおんなのこが、こえをかけてくれたよ。
「いつきくんは、おべんと、にがて?」
「あ……えっとね、にがてっていうか、たべたことないものばかりで、むずかしいんだ」
「あ! わたしもなの。ねぇねぇ、いっしょにがんばらない?」
「うん!」
きょうはひとりじゃないんだ。
いっしょにがんばってくれるこがいるんだ。
そうおもったら、うれしくなったよ。
ひとりでもがんばらなくちゃいけないけど、だれかといっしょなら、もっと、がんばれるときってあるよ!
パパもがんばってるよ。
いっくん、パパにあいたいよ。
パパもいっくんにあいたいって、いってくれたよ。
だから、いまは、おじいちゃんとおばあちゃんとがんばってるっていっていたよ。
いっくんもおともだちと、がんばってみるよ!
****
出掛けようと思ったら雨が降ってきたわ。
天気予報通りね。
芽生くんがつかってねと渡してくれた、小さな傘を持って、槙は抱っこで幼稚園に向かった。
すっかり腰の調子も良くなったわ。
生活が安定して、心も身体も健康になったみたい。
いっくん、今日は幼稚園どうだったかしら?
幼稚園の給食は、食べ慣れない物ばかりで苦戦しちゃったかも。
幼稚園の給食は業者さんの物だから、みんな慣れるまで大変だって言っていた。
うーん、心配だわ。
心配ばかりしていたら、いっくんの負担になるって分かっているのに、私ってば駄目ね。
以前は目まぐるしい程忙しくて、細かい心配をする暇はなかった。
あ、そうか。
心配してもらえるって、それだけの時間を注いでもらっていることなのね。
疎遠になっている実家の両親を、ふと思い出した。
何もしてくれないと恨んでばかりだったけれども、私にも優しい温かい思い出がちゃんと沢山あるわ。
母のお弁当、母の優しい手、父の逞しい背中。
私も手を掛けて育ててもらった人間なのね。
降り注ぐ太陽や月の光のように、惜しみなく愛情を注いでもらったから、今、私は愛を知っているのね。
お父さんとお母さんにとって遅くに授かった私は、他の子と比べて自分の親が年老いていることが嫌で自ら疎遠になって……美樹くんが亡くなった時もいっくんを出産した時も、出来るだけ頼りたくなくて、自ら離れてしまった。
今度、私から連絡をしてみよう。きっと心配しているわ。
私が疎遠になるにつれ、次第に両親も私に手を差し伸べてこなくなった。それを、捨てられたと決めつけてしまったの。
私は、いつの間にか損得勘定で動く人になってしまっていた。
潤くんと出会ってから、潤くんのご両親、お兄さん家族と出会い、月影寺の皆さんと交流したり、縁というものを強く意識するようになったの。
月影寺の翠さんが仰っていたわ。
「良いご縁を結べば、良いことがありますよ」
本当にその通りね! 今回の火事も、私たち夫婦だけで意固地になって生きていたら、路頭に迷う所だったわ。
沢山の手、差し出される手を取ってみよう。
人に甘えるのは、悪いことではない。心を大きく開いていけば、優しい気持ちを沢山受け止められるわ。
「ママぁー!」
お迎えの列の中に、いっくんの笑顔を見つけた。
昨日はいっくんの姿が見えなくて焦ったけれども、今日はちゃんといてくれる。
笑顔の花を咲かせて、立っていた。
「いっくん! 雨が降ってきたので、傘を持ってきたわよ」
「ママぁ、ありがとう! うれしいよぅ! きょうはおともだちとあそべたよ。サッカーボールのえ、ほめられちゃった。それからね、きゅうしょくをいっしょにがんばってたべてくれる、おともだちもできたの」
いっくんのは頬は薔薇色で、目はキラキラと輝いていた。
「よかったわね」
「うん、いっくん、とーっても、うれしかった」
子供の明るい言葉は、大人にとって栄養よ。
子供の笑顔は、万能薬だわ。
****
午後から予報通り雨が降ってきた。
僕は会社から出てすぐに、花材が濡れないようにと、を花に寄せて傾けた。
すると背後から声をかけられた。
「ひゃっほー 葉山先輩じゃないですか」
「……金森くん」
久しぶりに他部署に移動した、元部下の金森鉄平に会った。
「先輩も外出ですか」
「今から銀座のお店に生け込みに行く所なんだ。君も?」
「オレは先輩に花材を届けに行くところですよ。それにしても、雨の日の外回りって最悪ですよね。めんどくせーってなりません?」
うーん、相変わらずだなと、顔をしかめてしまった。
彼が持っている花は雨にぐっしょり濡れてしまっていた。
そんなに乱暴に扱っては、花が可哀想だ。
「天気は関係ないよ。僕たちは花を生かすのが仕事なのだから」
「でも、雨はうざいっすよね。大っ嫌いです」
「……雨が可哀相だよ」
「ははっ、葉山先輩みたいにお人好しには考えられませんよ。あ、信号変わった。オレは向こうなんて、じゃ!」
……相変わらずだな。
晴れの日には晴れの日の良さ、雨の日には雨の日の良さがあるのを、君は知らないのか。
365日ずっと晴れていたら、草花が干からびて枯れてしまうよ。
そして人生は良い時と悪い時の繰り返しだというのも、知らないのか。
今日という日は、二度とやってこない。かけがえのない大切な日。だから、僕はどんな日でも受け入れていこう。人に寄り添うように、天気にも寄り添って。
良いことも悪いことも、波のように押し寄せては引いていくのが、人生だ。
だから、自分の足でしっかり立っていないと、荒波に攫われてしまうよ。
そのためにも、僕は僕を見失わない。
あっ、信号が変わった。
さぁ、進もう。
帰る場所があるから、寄り添える人がいるから、僕は僕らしく生きて行ける。
信号を渡りきると、ふと透明の傘を頭上に感じた。
宗吾さん?
今は傍にいないのに、彼の存在を身近に感じられた。
今の僕には、透明の傘をスッと差してくれる人がいる。辛いことや悲しいことがあっても、その衝撃を柔らげて、一緒に受け止めてくれる人がいる。
大好きな人との心の中での逢瀬が、また僕を元気づけてくれる。
だから、雨も悪くない。
「せんせい! いっくんは、ほいくえんで、いつもきゅうしょくだったから、だいじょうぶだよ」
だけどね、ようちえんのおべんとうはつめたくて、たくさんはいっていて、びっくりしちゃった。
ほいくえんだと、きゅうしょくのまえには、ろうかがいいにおいになって、ほかほかのごはんとおかずがおへやにとどくの。かっぽうぎをきた、やさしいおばさんがとどけてくれるの。
でもね、ようちえんはみんなおなじのあかいおべんとうばこで、ほいくえんのきゅうしょくとは、ぜんぜんちがったよ。
きょうはちゃんとはやくたべないと、がんばらないと。
でもかたいハンバーグも、オレンジいろのウインナーも、つめたいたまごやきも、いつもとちがってむずかしいよぅ。
「あらあら、樹くん、全然進んでないわよ。好き嫌いしないでがんばろうね」
「うん」
がんばらないと、またいっくんひとりぼっち。
おいていかれちゃうよ。
でもね、がんばっても、がんばっても、しろいごはんがぎっしりでへらないよ。
ないちゃ、だめ。
もうなかない。
がんばるもん。
うつむいていると、まえのせきのおんなのこが、こえをかけてくれたよ。
「いつきくんは、おべんと、にがて?」
「あ……えっとね、にがてっていうか、たべたことないものばかりで、むずかしいんだ」
「あ! わたしもなの。ねぇねぇ、いっしょにがんばらない?」
「うん!」
きょうはひとりじゃないんだ。
いっしょにがんばってくれるこがいるんだ。
そうおもったら、うれしくなったよ。
ひとりでもがんばらなくちゃいけないけど、だれかといっしょなら、もっと、がんばれるときってあるよ!
パパもがんばってるよ。
いっくん、パパにあいたいよ。
パパもいっくんにあいたいって、いってくれたよ。
だから、いまは、おじいちゃんとおばあちゃんとがんばってるっていっていたよ。
いっくんもおともだちと、がんばってみるよ!
****
出掛けようと思ったら雨が降ってきたわ。
天気予報通りね。
芽生くんがつかってねと渡してくれた、小さな傘を持って、槙は抱っこで幼稚園に向かった。
すっかり腰の調子も良くなったわ。
生活が安定して、心も身体も健康になったみたい。
いっくん、今日は幼稚園どうだったかしら?
幼稚園の給食は、食べ慣れない物ばかりで苦戦しちゃったかも。
幼稚園の給食は業者さんの物だから、みんな慣れるまで大変だって言っていた。
うーん、心配だわ。
心配ばかりしていたら、いっくんの負担になるって分かっているのに、私ってば駄目ね。
以前は目まぐるしい程忙しくて、細かい心配をする暇はなかった。
あ、そうか。
心配してもらえるって、それだけの時間を注いでもらっていることなのね。
疎遠になっている実家の両親を、ふと思い出した。
何もしてくれないと恨んでばかりだったけれども、私にも優しい温かい思い出がちゃんと沢山あるわ。
母のお弁当、母の優しい手、父の逞しい背中。
私も手を掛けて育ててもらった人間なのね。
降り注ぐ太陽や月の光のように、惜しみなく愛情を注いでもらったから、今、私は愛を知っているのね。
お父さんとお母さんにとって遅くに授かった私は、他の子と比べて自分の親が年老いていることが嫌で自ら疎遠になって……美樹くんが亡くなった時もいっくんを出産した時も、出来るだけ頼りたくなくて、自ら離れてしまった。
今度、私から連絡をしてみよう。きっと心配しているわ。
私が疎遠になるにつれ、次第に両親も私に手を差し伸べてこなくなった。それを、捨てられたと決めつけてしまったの。
私は、いつの間にか損得勘定で動く人になってしまっていた。
潤くんと出会ってから、潤くんのご両親、お兄さん家族と出会い、月影寺の皆さんと交流したり、縁というものを強く意識するようになったの。
月影寺の翠さんが仰っていたわ。
「良いご縁を結べば、良いことがありますよ」
本当にその通りね! 今回の火事も、私たち夫婦だけで意固地になって生きていたら、路頭に迷う所だったわ。
沢山の手、差し出される手を取ってみよう。
人に甘えるのは、悪いことではない。心を大きく開いていけば、優しい気持ちを沢山受け止められるわ。
「ママぁー!」
お迎えの列の中に、いっくんの笑顔を見つけた。
昨日はいっくんの姿が見えなくて焦ったけれども、今日はちゃんといてくれる。
笑顔の花を咲かせて、立っていた。
「いっくん! 雨が降ってきたので、傘を持ってきたわよ」
「ママぁ、ありがとう! うれしいよぅ! きょうはおともだちとあそべたよ。サッカーボールのえ、ほめられちゃった。それからね、きゅうしょくをいっしょにがんばってたべてくれる、おともだちもできたの」
いっくんのは頬は薔薇色で、目はキラキラと輝いていた。
「よかったわね」
「うん、いっくん、とーっても、うれしかった」
子供の明るい言葉は、大人にとって栄養よ。
子供の笑顔は、万能薬だわ。
****
午後から予報通り雨が降ってきた。
僕は会社から出てすぐに、花材が濡れないようにと、を花に寄せて傾けた。
すると背後から声をかけられた。
「ひゃっほー 葉山先輩じゃないですか」
「……金森くん」
久しぶりに他部署に移動した、元部下の金森鉄平に会った。
「先輩も外出ですか」
「今から銀座のお店に生け込みに行く所なんだ。君も?」
「オレは先輩に花材を届けに行くところですよ。それにしても、雨の日の外回りって最悪ですよね。めんどくせーってなりません?」
うーん、相変わらずだなと、顔をしかめてしまった。
彼が持っている花は雨にぐっしょり濡れてしまっていた。
そんなに乱暴に扱っては、花が可哀想だ。
「天気は関係ないよ。僕たちは花を生かすのが仕事なのだから」
「でも、雨はうざいっすよね。大っ嫌いです」
「……雨が可哀相だよ」
「ははっ、葉山先輩みたいにお人好しには考えられませんよ。あ、信号変わった。オレは向こうなんて、じゃ!」
……相変わらずだな。
晴れの日には晴れの日の良さ、雨の日には雨の日の良さがあるのを、君は知らないのか。
365日ずっと晴れていたら、草花が干からびて枯れてしまうよ。
そして人生は良い時と悪い時の繰り返しだというのも、知らないのか。
今日という日は、二度とやってこない。かけがえのない大切な日。だから、僕はどんな日でも受け入れていこう。人に寄り添うように、天気にも寄り添って。
良いことも悪いことも、波のように押し寄せては引いていくのが、人生だ。
だから、自分の足でしっかり立っていないと、荒波に攫われてしまうよ。
そのためにも、僕は僕を見失わない。
あっ、信号が変わった。
さぁ、進もう。
帰る場所があるから、寄り添える人がいるから、僕は僕らしく生きて行ける。
信号を渡りきると、ふと透明の傘を頭上に感じた。
宗吾さん?
今は傍にいないのに、彼の存在を身近に感じられた。
今の僕には、透明の傘をスッと差してくれる人がいる。辛いことや悲しいことがあっても、その衝撃を柔らげて、一緒に受け止めてくれる人がいる。
大好きな人との心の中での逢瀬が、また僕を元気づけてくれる。
だから、雨も悪くない。
79
お気に入りに追加
832
あなたにおすすめの小説
好きだったよ
fuka
恋愛
普通の女子高生 柊加奈(ひいらぎ かな)の彼氏は校内一のイケメン古谷 敬(ふるや けい)。でも、敬はいつも女の子と遊んでばかり。それでも加奈のことを好きだと言ってくれる敬の言葉を信じて耐えてきた加奈。しかしある日、加奈は決定的な場面を目撃してしまって…
亡くなった王太子妃
沙耶
恋愛
王妃の茶会で毒を盛られてしまった王太子妃。
侍女の証言、王太子妃の親友、溺愛していた妹。
王太子妃を愛していた王太子が、全てを気付いた時にはもう遅かった。
なぜなら彼女は死んでしまったのだから。
一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!
当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。
しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。
彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。
このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。
しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。
好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。
※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*)
※他のサイトにも重複投稿しています。
兄たちが弟を可愛がりすぎです
クロユキ
BL
俺が風邪で寝ていた目が覚めたら異世界!?
メイド、王子って、俺も王子!?
おっと、俺の自己紹介忘れてた!俺の、名前は坂田春人高校二年、別世界にウィル王子の身体に入っていたんだ!兄王子に振り回されて、俺大丈夫か?!
涙脆く可愛い系に弱い春人の兄王子達に振り回され護衛騎士に迫って慌てていっもハラハラドキドキたまにはバカな事を言ったりとしている主人公春人の話を楽しんでくれたら嬉しいです。
1日の話しが長い物語です。
誤字脱字には気をつけてはいますが、余り気にしないよ~と言う方がいましたら嬉しいです。
上手に啼いて
紺色橙
BL
■聡は10歳の初めての発情期の際、大輝に噛まれ番となった。それ以来関係を継続しているが、愛ではなく都合と情で続いている現状はそろそろ終わりが見えていた。
■注意*独自オメガバース設定。■『それは愛か本能か』と同じ世界設定です。関係は一切なし。
恋人に捨てられた私のそれから
能登原あめ
恋愛
* R15、シリアスです。センシティブな内容を含みますのでタグにご注意下さい。
伯爵令嬢のカトリオーナは、恋人ジョン・ジョーに子どもを授かったことを伝えた。
婚約はしていなかったけど、もうすぐ女学校も卒業。
恋人は年上で貿易会社の社長をしていて、このまま結婚するものだと思っていたから。
「俺の子のはずはない」
恋人はとても冷たい眼差しを向けてくる。
「ジョン・ジョー、信じて。あなたの子なの」
だけどカトリオーナは捨てられた――。
* およそ8話程度
* Canva様で作成した表紙を使用しております。
* コメント欄のネタバレ配慮してませんので、お気をつけください。
* 別名義で投稿したお話の加筆修正版です。
最終目標はのんびり暮らすことです。
海里
BL
学校帰りに暴走する車から義理の妹を庇った。
たぶん、オレは死んだのだろう。――死んだ、と思ったんだけど……ここどこ?
見慣れない場所で目覚めたオレは、ここがいわゆる『異世界』であることに気付いた。
だって、猫耳と尻尾がある女性がオレのことを覗き込んでいたから。
そしてここが義妹が遊んでいた乙女ゲームの世界だと理解するのに時間はかからなかった。
『どうか、シェリルを救って欲しい』
なんて言われたけれど、救うってどうすれば良いんだ?
悪役令嬢になる予定の姉を救い、いろいろな人たちと関わり愛し合されていく話……のつもり。
CPは従者×主人公です。
※『悪役令嬢の弟は辺境地でのんびり暮らしたい』を再構成しました。
挙式後すぐに離婚届を手渡された私は、この結婚は予め捨てられることが確定していた事実を知らされました
結城芙由奈
恋愛
【結婚した日に、「君にこれを預けておく」と離婚届を手渡されました】
今日、私は子供の頃からずっと大好きだった人と結婚した。しかし、式の後に絶望的な事を彼に言われた。
「ごめん、本当は君とは結婚したくなかったんだ。これを預けておくから、その気になったら提出してくれ」
そう言って手渡されたのは何と離婚届けだった。
そしてどこまでも冷たい態度の夫の行動に傷つけられていく私。
けれどその裏には私の知らない、ある深い事情が隠されていた。
その真意を知った時、私は―。
※暫く鬱展開が続きます
※他サイトでも投稿中
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる