上 下
1,562 / 1,743
小学生編

HAPPY HOLIDAYS 13

しおりを挟む
 大きな地震が発生しました。
 本当に心配です。
 皆様のご無事を祈っております。
 

 そんな中ですが……創作は平常運転させていただきます。少しでも心が落ち着きますように……
 
 改めまして新年の挨拶を……

 あけまして、おめでとうございます。
 今年も滝沢ファミリーを見守っていただけたら嬉しいです。 新年なので短い内容ですが、私も一日に一度は彼らに会いたくなるので、書いてしまいます。よかったら読んで下さい💞

 以下本文です。

****

 12月に入ってから今日まで、僕の仕事はずっとピークだった。

 早朝出勤して社内業務をこなし、午後は打ち合わせや現場立会い、夜は人手不足からショーウィンドーのディスプレイ作業の助っ人に入り、もうヘトヘトだ。

 そんな多忙の日々でもなんとかやってこなせたのは、僕がもうひとりじゃないから。

 僕には、ほっと寛げる家がある。

 疲れた心と体を温めてくれる家族がいる。




 仕事に集中して迎えた大晦日。
 
 もう23時をとっくに過ぎていた。

「葉山さん、最終チェックをお願いします」
「はい!」

 表参道の駅近く。

 商業施設の新春の装花を隈なく慎重に確認してから、OKを出した。

 人が行き交う場所なので、とても気を遣う仕事だ。

「ふぅ、チェックありがとうございます。あとは片付けておきますので、お疲れ様でした」
「ありがとう、いいのかな?」
「はい、俺たち体力には自信がありますので、任せて下さい」
「じゃあ、お言葉に甘えて」
「そうだ、やっぱり葉山さんもお正月は故郷で過ごされるんですか」
「うん、今年は帰るよ」
「楽しんで来て下さい」
「ありがとう」

 ふるさとか。

 僕は、故郷に帰省する。

 明日の午前中、飛行機に乗って両親に会いに行く。

 そう思うと、グンと元気が出た。

 今から帰れば、年内に家に戻れるかな?

 そう思って駅に行くと、人、人、人でごった返していた。

 なるほど、もうすぐ年が明けるから新年の初詣客が集まっているのか。

 ここは森永神宮が近いから。

 流れに逆らうように満員電車に乗った。

 僕は人混みが苦手なので、息が苦しくなってしまう。

 ギュウギュウの満員電車で、見知らぬ人と至近距離になるのは正直まだ苦手だ。

 予定ではすんなり帰れたらギリギリ間に合うはずだったが、ホームで電車を1本見送ったせいで間に合わなさそうだ。

 少しだけがっかりした。

 年を越す前に、宗吾さんと芽生くんに会いたかったな。

 悲しい気持ちは僕の疲れた身体に負担になっていく。

 疲れていると駄目だな。

 心に余裕がないと、心が沈んでいくのを制御できない。



 最寄り駅の改札に辿り着いたのは、23時53分。

 走っても間に合わないと分かった時、僕は脱力して、しゃがみこんでしまった。

 疲れが一気に押し寄せてくる。

 帰らなくては……

 気持ちを振り絞り顔をあげると、そこには……






 なんと、宗吾さんが立っていた。

 真っ直ぐ、僕に向かって手を差し出してくれる。

「瑞樹、お疲れさん!
「えっ、宗吾さん、どうして? 芽生くんは?」
「今日は母さんの所にいるよ。俺たちも今日は実家に泊まろう。明日は朝早いし、そのまま旅立てるようにしてきたから。君はとにかく何も考えずに早く休め」

 宗吾さんはずるい。

 かっこ良すぎる。

「なぁ、これは今年最後の見せ場なんだ。感動してくれよ」
「くすっ、はい、感動しました。いつも、いつだって……僕の心を支えて拾って持ち上げてくれる人です」

 歩き出すと、ほっとしたのか、ふらりとよろけてしまった。

「おっと、やっぱり、もうヘトヘトだな」

 人通りの少ない道になった途端、宗吾さんがスッとしゃがんで広い背中に乗れと言ってくれた。

「みーくんを迎えにきたんだ。ここに乗れよ」
「そうくん……」
「今日は素直に甘えて欲しい」
「……はい」

 僕は幼い子供のように宗吾さんにおんぶしてもらった。

 お父さんの広い背中を思い出す。

「お、そろそろだな」
「あ、年越しですね」
「今年は俺の背中の上で年越しか」
「……恥ずかしいです」
「それだけ?」
「えっと……嬉しいです」
「そうだろ!」

 遠くに除夜の鐘が聞こえてくる。

 宗吾さんが立ち止まって、公園の時計を見上げた。

「あと30秒だ」
「あっ、ここって……」
「この公園は、俺と瑞樹が出会った場所だよ。俺が君を見初めた地点だ」

 そうか、ここは幼稚園のバス停があった場所だ。あの公園で出会った翌日、ここで宗吾さんに話しかけられた。

 懐かしく振り返ると、あの日の光景が鮮明に浮かんでくる。

 宗吾さんのこと、かなり年上だと思った。
 今とヘアスタイルも全然違って、僕よりずっと大人の男性だと。

 そんな宗吾さんと時を重ね、身体を重ねるようになって数年。僕たちの距離は今、とても近い。

「宗吾さんの演出は、いつも素敵過ぎます」
「ありがとう。よし、ここで年を越そう。そろそろカウントダウンだ」
「はい」
「5、4、3、2、1、瑞樹、あけましておめでとう!」
「宗吾さん、あけましておめでとうございます。今年も1年間宜しくお願いします」
「あぁ、今年も来年もずっと一緒だ。ところで背中に君を乗せて年を越すのは、縁起がいいな」
「そうでしょうか……僕は恥ずかしいですが」
「今年も『いつもいっしょ』を身体で表現しているよな」
「そうですね。いつもいっしょって、いい言葉です」




 優しい言葉がいい。

 難しい言葉では、心が迷子になってしまうから。

 ただ好きだと、ただ一緒にいたいと、ストレートに言ってもらえるのが幸せだ。

 あけましておめでとう!

 僕らの2024年が今から始まる。

しおりを挟む
感想 76

あなたにおすすめの小説

病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない

月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。 人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。 2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事) 。 誰も俺に気付いてはくれない。そう。 2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。 もう、全部どうでもよく感じた。

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

王子を身籠りました

青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。 王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。 再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢

岡暁舟
恋愛
妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢マリアは、それでも婚約者を憎むことはなかった。なぜか? 「すまない、マリア。ソフィアを正式な妻として迎え入れることにしたんだ」 「どうぞどうぞ。私は何も気にしませんから……」 マリアは妹のソフィアを祝福した。だが当然、不気味な未来の陰が少しずつ歩み寄っていた。

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

「君の為の時間は取れない」と告げた旦那様の意図を私はちゃんと理解しています。

あおくん
恋愛
憧れの人であった旦那様は初夜が終わったあと私にこう告げた。 「君の為の時間は取れない」と。 それでも私は幸せだった。だから、旦那様を支えられるような妻になりたいと願った。 そして騎士団長でもある旦那様は次の日から家を空け、旦那様と入れ違いにやって来たのは旦那様の母親と見知らぬ女性。 旦那様の告げた「君の為の時間は取れない」という言葉はお二人には別の意味で伝わったようだ。 あなたは愛されていない。愛してもらうためには必要なことだと過度な労働を強いた結果、過労で倒れた私は記憶喪失になる。 そして帰ってきた旦那様は、全てを忘れていた私に困惑する。 ※35〜37話くらいで終わります。

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

処理中です...