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小学生編
秋色日和 11
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「み、みーくん! だいじゅうぶでしゅか」
ぴょんぴょんとうさぎ飛びで部屋ぐるりと一周すると、スピーカー越しに、いっくんの心配そうな声が響いた。
ん? 僕、張り切りすぎた?
下の階から苦情が来たら大変だ。
うさぎ飛びはやめて、パッと電話に出た。
「いっくん、僕は大丈夫だよ。これで飛び方は分かったかな?」
「あい! あああ、ううん、ちがくて、ああん、みーくん、はやく、はやく、にげてぇ、おおかみさんがきちゃうよぅ」
「え? オオカミ?」
いっくんが怯えた声を出す。
狼と言えば思い当たるのは……
動画撮影をしていた宗吾さんの興奮した雄叫びだ。
「ウォォー 瑞樹ぃ、もうやめちゃうのか」
「宗吾さん、しーっですよ。いっくんが怖がってます」
「え? 悪い! 驚かせるつもりはなかったんだ」
それは知っています。
ただ興奮していただけだって。
すると電話の向こうから潤の苦笑が聞こえた。
「くくくっ、おーい兄さん大丈夫か。オレは時々不安になるよ。宗吾さんに兄さんを任せて大丈夫なのかって」
「ううう、潤もそう思う?」
「……いや、ごめん。そうは思わない。実は最近は兄さんも同類かもって思ってるのさ」
「えぇ! 僕もオオカミなの?」
「それは兄さんが一番よく分かっているんじゃ?」
「うーん」
そう言われると否定しきれない。
ってことは、やっぱり僕も同類?
宗吾さんはクマっぽいと思っていたが、狼も悪くないかも?
野性味があって新鮮だ。
なんて思うんだから、やっぱり同類だ。
「くくっ、だから末永く仲良く幸せにな」
「パパぁ、みーくん、ごぶじでしゅか」
いっくんは僕たちの会話の内容までは理解できないようで、ただただ僕の身の安全を心配してくれていた。
なんて清らかな天使なんだろう。
「いっくん、いいかい? あれはオオカミさんじゃないよ」
「じゃあ、パパ、あれはなんでしゅか。さっきのうなるおこえ、うさぎさんたべちゃいそうだったよぅ。みーくんたべられちゃいそうだったぁ」
「……」
じゅ、潤! そこで無言にならないで!
すごく気まずいよ。
「えっと、そうか、ある意味、食べちゃうかもしれないな」
あー ちょっと、それはいらないから。
「えーん、えーん、みーくん、ごぶじでしゅかー」
「いっくん、ごめんごめん、泣かすつもりじゃ。あれは……コホン! 実は宗吾さんだ」
「えぇ、そーくんは、おおかみしゃんでしたか。そっか、そーくんでしたか。ええっとぉ……おおかみしゃんも……か、かっこいいですね。おおかみしゃんあるきも、みたいでしゅ」
いっくん、そこは気を遣わなくてもいいから。
そこに芽生くんが飛んで来た。
「いっくん、オオカミくんの話ならボクが教えてあげる」
「あ! めーくん、あいたいでしゅ」
「うん、ボクもだよ。絵本があるんだよ」
「おはなちでしゅか。よんでくだちゃい」
「えへへ、いいかい? お兄ちゃんー いっくんに読み聞かせしてもいい?」
「もちろんだよ。宗吾さん、撮ってあげてください」
芽生くんが子供部屋から抱えてきたのは以前北鎌倉の美術館で買ってあげた『トカプチ』という絵本だった。
あの時は僕が芽生くんに読み聞かせてあげたが、月日は流れ、今度は芽生くんがいっくんに読み聞かせをするんだね。
こうやって幸せな物語は次から次へと語り継がれていくのか。
「むかーし、むかしある所に……」
ロウというオオカミと、トカプチという人間の少年が、ある日出会う。
オーロラ色に身体が輝くが、いつもひとりぼっちのオオカミは、全身が凍ってしまう恐ろしい病に冒されていた。
そんな凍えるオオカミと出会った人間の少年は、オオカミを恐れずやさしく抱きしめて暖めてやった。
すると氷がとけて、オオカミの病と孤独は救われ、ふたりはいつまでも草原で仲良く暮らしたという内容だ。
絵本は爽やかな風が吹き抜ける風景の中で、オオカミと少年が四つ葉のクローバーを交換している絵でおしまい。
「いつまでもいつまでも、二人は仲良く暮らしました。おしまい!」
「わぁ、わぁ、しゅごい。いっくんもおともだちだいじにするよ」
「そうだね。ボクといっくんもいつまでも仲良しでいよう」
「あい! いっくんね。めーくんのことだいすき。いっくんのおにーたん」
「えへへ、いっくんは甘えん坊だな」
モニター越しに二人の笑顔が弾けていた。
オオカミと人間という全く違う個性を持つ者同士が尊重しあい、思いやりあう物語は、何度聞いても心地良いね。
大地と自然を愛おしむ優しい水彩画に、すっかり僕の心も寛いでいた。
「そうだ、めーくんのうんどうかいはいつでしゅか。いっくん、こんどはみにいきたいな」
「今度の日曜日だよ」
「パパ、いっくんはいつ?」
「いっくんも29日の日曜日だぞ」
「同じ日なんだね」
「しょうなんだぁ、めーくんおうえんしたかったなぁ」
随分と可愛いことを言ってくれるんだね。
「ボクも応援に行きたかったよ。じゃあ日曜はお互いにがんばろうよ! ボクは空に向かってエールを送るよ」
「おそら?」
「そうだよ。ボクが見上げる青空は、いっくんが見上げる空とつながっているんだって」
「しゅごい!」
「だから、はなれていてもいっしょだよ、いっくん」
芽生くんがいっくんを宥める台詞は、まるで宗吾さんのようだ。
流石親子だね。
「瑞樹、芽生はすっかりお兄ちゃんになったな」
「はい。いっくんと仲良くなって急に成長しましたね」
「人は人に育てられるのさ! それにカッコいい台詞を言ってたな」
「えぇ、宗吾さんかと思いました」
「お? そうか。俺、あんなこと言ってたか」
おどける宗吾さんの手を、そっと握った。
宗吾さんと出逢った頃の僕は、誰に対しても自分に対しても、どこまでも消極的だった。
僕はいつ消えてもいい。
心の奥底でそんな浅はかなことを願っていた。
そんな僕を根気よく励まし、明るい方へと明るい方へと引っ張ってくれた人が宗吾さんだ。
「宗吾さんは、やっぱり最高にカッコいいです」
「はは、そうか、嬉しいよ」
「好きです」
シンプルに好きな人だ。
そっと耳元で囁くと、宗吾さんは耳朶を赤くして照れていた。
「瑞樹からの積極的なアプローチ照れるな。へへっ、嬉しいよ」
「大好きですよ」
「ウォォー やったー!」
宗吾さんが、ガッツポーズで喜びを表現している。
「し、静かに」
「はは、またオオカミ出没だな」
「くすっ、ですね」
大らかで明るくて優しい人。
気持ちの変わらない人。
ずっと傍にいたい人。
大好きです。
さぁ、運動会に向けて僕たちも準備を始めよう。
週末は運動会!
大事な家族の秋のイベントだね。
また一つ大切な思い出が増えるだろう。
1日1日が抱きしめたいほど愛おしく感じるのは、宗吾さんと芽生くんのお陰だ。
今日という日を無事に過ごせたことに感謝して、明日を迎えよう。
ぴょんぴょんとうさぎ飛びで部屋ぐるりと一周すると、スピーカー越しに、いっくんの心配そうな声が響いた。
ん? 僕、張り切りすぎた?
下の階から苦情が来たら大変だ。
うさぎ飛びはやめて、パッと電話に出た。
「いっくん、僕は大丈夫だよ。これで飛び方は分かったかな?」
「あい! あああ、ううん、ちがくて、ああん、みーくん、はやく、はやく、にげてぇ、おおかみさんがきちゃうよぅ」
「え? オオカミ?」
いっくんが怯えた声を出す。
狼と言えば思い当たるのは……
動画撮影をしていた宗吾さんの興奮した雄叫びだ。
「ウォォー 瑞樹ぃ、もうやめちゃうのか」
「宗吾さん、しーっですよ。いっくんが怖がってます」
「え? 悪い! 驚かせるつもりはなかったんだ」
それは知っています。
ただ興奮していただけだって。
すると電話の向こうから潤の苦笑が聞こえた。
「くくくっ、おーい兄さん大丈夫か。オレは時々不安になるよ。宗吾さんに兄さんを任せて大丈夫なのかって」
「ううう、潤もそう思う?」
「……いや、ごめん。そうは思わない。実は最近は兄さんも同類かもって思ってるのさ」
「えぇ! 僕もオオカミなの?」
「それは兄さんが一番よく分かっているんじゃ?」
「うーん」
そう言われると否定しきれない。
ってことは、やっぱり僕も同類?
宗吾さんはクマっぽいと思っていたが、狼も悪くないかも?
野性味があって新鮮だ。
なんて思うんだから、やっぱり同類だ。
「くくっ、だから末永く仲良く幸せにな」
「パパぁ、みーくん、ごぶじでしゅか」
いっくんは僕たちの会話の内容までは理解できないようで、ただただ僕の身の安全を心配してくれていた。
なんて清らかな天使なんだろう。
「いっくん、いいかい? あれはオオカミさんじゃないよ」
「じゃあ、パパ、あれはなんでしゅか。さっきのうなるおこえ、うさぎさんたべちゃいそうだったよぅ。みーくんたべられちゃいそうだったぁ」
「……」
じゅ、潤! そこで無言にならないで!
すごく気まずいよ。
「えっと、そうか、ある意味、食べちゃうかもしれないな」
あー ちょっと、それはいらないから。
「えーん、えーん、みーくん、ごぶじでしゅかー」
「いっくん、ごめんごめん、泣かすつもりじゃ。あれは……コホン! 実は宗吾さんだ」
「えぇ、そーくんは、おおかみしゃんでしたか。そっか、そーくんでしたか。ええっとぉ……おおかみしゃんも……か、かっこいいですね。おおかみしゃんあるきも、みたいでしゅ」
いっくん、そこは気を遣わなくてもいいから。
そこに芽生くんが飛んで来た。
「いっくん、オオカミくんの話ならボクが教えてあげる」
「あ! めーくん、あいたいでしゅ」
「うん、ボクもだよ。絵本があるんだよ」
「おはなちでしゅか。よんでくだちゃい」
「えへへ、いいかい? お兄ちゃんー いっくんに読み聞かせしてもいい?」
「もちろんだよ。宗吾さん、撮ってあげてください」
芽生くんが子供部屋から抱えてきたのは以前北鎌倉の美術館で買ってあげた『トカプチ』という絵本だった。
あの時は僕が芽生くんに読み聞かせてあげたが、月日は流れ、今度は芽生くんがいっくんに読み聞かせをするんだね。
こうやって幸せな物語は次から次へと語り継がれていくのか。
「むかーし、むかしある所に……」
ロウというオオカミと、トカプチという人間の少年が、ある日出会う。
オーロラ色に身体が輝くが、いつもひとりぼっちのオオカミは、全身が凍ってしまう恐ろしい病に冒されていた。
そんな凍えるオオカミと出会った人間の少年は、オオカミを恐れずやさしく抱きしめて暖めてやった。
すると氷がとけて、オオカミの病と孤独は救われ、ふたりはいつまでも草原で仲良く暮らしたという内容だ。
絵本は爽やかな風が吹き抜ける風景の中で、オオカミと少年が四つ葉のクローバーを交換している絵でおしまい。
「いつまでもいつまでも、二人は仲良く暮らしました。おしまい!」
「わぁ、わぁ、しゅごい。いっくんもおともだちだいじにするよ」
「そうだね。ボクといっくんもいつまでも仲良しでいよう」
「あい! いっくんね。めーくんのことだいすき。いっくんのおにーたん」
「えへへ、いっくんは甘えん坊だな」
モニター越しに二人の笑顔が弾けていた。
オオカミと人間という全く違う個性を持つ者同士が尊重しあい、思いやりあう物語は、何度聞いても心地良いね。
大地と自然を愛おしむ優しい水彩画に、すっかり僕の心も寛いでいた。
「そうだ、めーくんのうんどうかいはいつでしゅか。いっくん、こんどはみにいきたいな」
「今度の日曜日だよ」
「パパ、いっくんはいつ?」
「いっくんも29日の日曜日だぞ」
「同じ日なんだね」
「しょうなんだぁ、めーくんおうえんしたかったなぁ」
随分と可愛いことを言ってくれるんだね。
「ボクも応援に行きたかったよ。じゃあ日曜はお互いにがんばろうよ! ボクは空に向かってエールを送るよ」
「おそら?」
「そうだよ。ボクが見上げる青空は、いっくんが見上げる空とつながっているんだって」
「しゅごい!」
「だから、はなれていてもいっしょだよ、いっくん」
芽生くんがいっくんを宥める台詞は、まるで宗吾さんのようだ。
流石親子だね。
「瑞樹、芽生はすっかりお兄ちゃんになったな」
「はい。いっくんと仲良くなって急に成長しましたね」
「人は人に育てられるのさ! それにカッコいい台詞を言ってたな」
「えぇ、宗吾さんかと思いました」
「お? そうか。俺、あんなこと言ってたか」
おどける宗吾さんの手を、そっと握った。
宗吾さんと出逢った頃の僕は、誰に対しても自分に対しても、どこまでも消極的だった。
僕はいつ消えてもいい。
心の奥底でそんな浅はかなことを願っていた。
そんな僕を根気よく励まし、明るい方へと明るい方へと引っ張ってくれた人が宗吾さんだ。
「宗吾さんは、やっぱり最高にカッコいいです」
「はは、そうか、嬉しいよ」
「好きです」
シンプルに好きな人だ。
そっと耳元で囁くと、宗吾さんは耳朶を赤くして照れていた。
「瑞樹からの積極的なアプローチ照れるな。へへっ、嬉しいよ」
「大好きですよ」
「ウォォー やったー!」
宗吾さんが、ガッツポーズで喜びを表現している。
「し、静かに」
「はは、またオオカミ出没だな」
「くすっ、ですね」
大らかで明るくて優しい人。
気持ちの変わらない人。
ずっと傍にいたい人。
大好きです。
さぁ、運動会に向けて僕たちも準備を始めよう。
週末は運動会!
大事な家族の秋のイベントだね。
また一つ大切な思い出が増えるだろう。
1日1日が抱きしめたいほど愛おしく感じるのは、宗吾さんと芽生くんのお陰だ。
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