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小学生編
白薔薇の祝福 34
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今日は五月五日。
芽生くん9歳の誕生日だ。
僕は忙しなく朝の支度をしながら、そわそわとしていた。
芽生くん、今日もお見送りしてくれるかな?
まだぐっすり夢の中だけれども、9歳になった君に会ってから行きたいよ。
僕を見つけてくれた時、君はまだ4歳だったね。
間もなく5歳になろうとしている春先に、僕たちは出会った。
あれから沢山の時間を共にした。
そして今は毎日、僕の世界に君がいてくれる。
僕の生き甲斐といっても過言でないよ。
一緒に暮らすようになってから、本当に毎日君の成長を楽しみに見守ってきたんだ。
そんな芽生くんがもう9歳だなんて、驚くばかりだ。
同時に最近の君は、頼もしくもあるよ。
でも……くすっ、まだまだ寝顔は赤ちゃんだね。
僕は君の赤ちゃん時代を写真でしか知らないけれども、とても親しく感じるんだ。
「瑞樹、そろそろ朝飯食べないとな」
「あ、はい」
「芽生はぐっすりだな」
「ですね」
イベント中、僕たちは家を6時過ぎには出なくてはならない。
必然的に起床は5時台、流石に芽生くんはまだ夢の中だ。
それでも毎日僕たちが出掛ける寸前に起きて、お見送りしてくれる。
そのことが、どんなに嬉しいか。
僕と宗吾さんの元気の源だ。
「瑞樹、君と同じ職場なのも今日で最後だな。名残惜しいよ」
「あ……それは僕もです」
宗吾さんに自然と優しく抱きしめられる。
僕より一回りも大きな宗吾さんの身体に包まれると、僕の心はとても落ち着くんだ。
トクントクンと規則正しい宗吾さんの心臓の耳を傾けると、命の音が僕をどんどん鼓舞していく。
どうやら……僕は女性を包み込んで愛するよりも、こうやって僕より大きな人に包まれて安心したい人間のようだ。かといって女性になりたいわけではなく、僕は僕でいたい。
ありのままの僕を愛して欲しい。
そして僕もありのままの宗吾さんを愛したい。
「あー 俺、本当に瑞樹が好きだよ」
「僕も宗吾さんが好きです」
「素直で可愛いなぁ、君は……こんなに人を好きになれるなんて……毎日好きが続いていくなんてな」
包容力の塊の宗吾さんに包まれると、本当に心が落ち着く。宗吾さんは自分に正直な人なので、愛の言葉も惜しみなく注いでくれる。
それが嬉しくて、嬉しくて――
「あの、また機会を作りたいですね。僕と宗吾さんで一緒に何かを作り上げたいです」
「おぉ! 俺もそう言おうと思っていたんだ。まさか瑞樹から言ってくれるとはな。君は本当に前向きになったな」
仕上げのキスを交わし、僕たちは食卓に向かった。
今日も朝から和定食が並んでいる。
宗吾さんのお母さんは、僕達のために、この数日早起きして毎朝旅館の朝ご飯のような豪華な朝食を作ってくれた。
炊きたてのご飯、焼きたての魚、作りたての味噌汁に、大好物の卵焼き。
お母さんのご飯には、愛情というエッセンスがたっぷりだ。
いくつになってもお母さんの手作りは、嬉しい。
「お母さんご馳走様です。食器は僕が下げます。本当はお茶碗も洗いたいのですが時間がなくてすみません。あと早起きさせてしまってすみません」
「まぁ、瑞樹は相変わらずね。そんなに遠慮しないの、私がやりたいことをやっているだけなんだから。それにね、早起きは年寄りの得意分野よ。朝起きてやることがあるってありがたいわ。息子はとっくに手が離れてしまったし……私も独り身になって寂しかったから、あなたたちが頼ってくれるのが、心から嬉しいのよ」
言葉はやはり魔法だと思う。
言葉が足されることで、心がしっかりと繋がっていく。
「お母さん、今日はイベントに来てくれるのですよね」
「えぇ、芽生と一緒に行くの、楽しみにしているわ」
「僕もです」
ニコッと微笑むと、お母さんもニコッとしてくれる。
僕は笑顔が好きだから、嬉しい。
「瑞樹は本当に可愛い子ね、こんなに可愛い息子を持てて幸せよ」
お母さんが僕の肩を抱き寄せてくれると、ぐっと込み上げて来るものがある。
ふいに泣けてくる。
天国のお母さんにも教えてあげたいな。
僕はこの地上に一人残されてしまったけれども、今はこんなにも愛し愛されているということを。
いつか宗吾さんと芽生くんを連れて、雲の上の世界に遊びに行けたらいいのに……僕が青い車を運転し、空を駆け上りたいよ。
夢の中でもいいから、叶うといい。
「じゃあ行ってきます」
「行ってらっしゃい。あとでね」
そこでパタパタと天使の足音が聞こえてくる。
「芽生くん!」
「お兄ちゃん、パパー おはよう!」
「おー 芽生、9歳になったな」
「芽生くん、お誕生日おめでとう」
「えへへ、ありがとう~! 今日はボクも会いに行けるんだ! やったぁ!」
「待ってる」
僕は芽生くんをありったけの愛情を込めて抱きしめた。
芽生くん、9歳おめでとう。
この1年、充実したものとなりますように。
****
離婚して芽生との生活に途方に暮れていたのは、もう遠い過去だ。
今はこんなに息子の成長を手放しで喜んでくれる人がいる。
玄関先で朝から瑞樹と芽生が笑顔で抱き合っていた。
愛情は目に見えないが、こんな風に行動や言葉から溢れ出てくるものなんだな。
瑞樹、瑞樹、瑞樹――
君と出逢えて良かった。
俺の息子をここまで愛してくれてありがとう。
愛は無限だ。
瑞樹への愛、息子への愛。
君がくれるありがとうと微笑みを、俺も届けたい。
「宗吾、あなたまた一段といい表情をするようになったのね」
「母さん、俺、どんな顔してる?」
「ふふふ、それはもう最高の笑顔、瑞樹と芽生と同じ笑顔よ」
「そうか! 俺たちは家族だからな!」
芽生くん9歳の誕生日だ。
僕は忙しなく朝の支度をしながら、そわそわとしていた。
芽生くん、今日もお見送りしてくれるかな?
まだぐっすり夢の中だけれども、9歳になった君に会ってから行きたいよ。
僕を見つけてくれた時、君はまだ4歳だったね。
間もなく5歳になろうとしている春先に、僕たちは出会った。
あれから沢山の時間を共にした。
そして今は毎日、僕の世界に君がいてくれる。
僕の生き甲斐といっても過言でないよ。
一緒に暮らすようになってから、本当に毎日君の成長を楽しみに見守ってきたんだ。
そんな芽生くんがもう9歳だなんて、驚くばかりだ。
同時に最近の君は、頼もしくもあるよ。
でも……くすっ、まだまだ寝顔は赤ちゃんだね。
僕は君の赤ちゃん時代を写真でしか知らないけれども、とても親しく感じるんだ。
「瑞樹、そろそろ朝飯食べないとな」
「あ、はい」
「芽生はぐっすりだな」
「ですね」
イベント中、僕たちは家を6時過ぎには出なくてはならない。
必然的に起床は5時台、流石に芽生くんはまだ夢の中だ。
それでも毎日僕たちが出掛ける寸前に起きて、お見送りしてくれる。
そのことが、どんなに嬉しいか。
僕と宗吾さんの元気の源だ。
「瑞樹、君と同じ職場なのも今日で最後だな。名残惜しいよ」
「あ……それは僕もです」
宗吾さんに自然と優しく抱きしめられる。
僕より一回りも大きな宗吾さんの身体に包まれると、僕の心はとても落ち着くんだ。
トクントクンと規則正しい宗吾さんの心臓の耳を傾けると、命の音が僕をどんどん鼓舞していく。
どうやら……僕は女性を包み込んで愛するよりも、こうやって僕より大きな人に包まれて安心したい人間のようだ。かといって女性になりたいわけではなく、僕は僕でいたい。
ありのままの僕を愛して欲しい。
そして僕もありのままの宗吾さんを愛したい。
「あー 俺、本当に瑞樹が好きだよ」
「僕も宗吾さんが好きです」
「素直で可愛いなぁ、君は……こんなに人を好きになれるなんて……毎日好きが続いていくなんてな」
包容力の塊の宗吾さんに包まれると、本当に心が落ち着く。宗吾さんは自分に正直な人なので、愛の言葉も惜しみなく注いでくれる。
それが嬉しくて、嬉しくて――
「あの、また機会を作りたいですね。僕と宗吾さんで一緒に何かを作り上げたいです」
「おぉ! 俺もそう言おうと思っていたんだ。まさか瑞樹から言ってくれるとはな。君は本当に前向きになったな」
仕上げのキスを交わし、僕たちは食卓に向かった。
今日も朝から和定食が並んでいる。
宗吾さんのお母さんは、僕達のために、この数日早起きして毎朝旅館の朝ご飯のような豪華な朝食を作ってくれた。
炊きたてのご飯、焼きたての魚、作りたての味噌汁に、大好物の卵焼き。
お母さんのご飯には、愛情というエッセンスがたっぷりだ。
いくつになってもお母さんの手作りは、嬉しい。
「お母さんご馳走様です。食器は僕が下げます。本当はお茶碗も洗いたいのですが時間がなくてすみません。あと早起きさせてしまってすみません」
「まぁ、瑞樹は相変わらずね。そんなに遠慮しないの、私がやりたいことをやっているだけなんだから。それにね、早起きは年寄りの得意分野よ。朝起きてやることがあるってありがたいわ。息子はとっくに手が離れてしまったし……私も独り身になって寂しかったから、あなたたちが頼ってくれるのが、心から嬉しいのよ」
言葉はやはり魔法だと思う。
言葉が足されることで、心がしっかりと繋がっていく。
「お母さん、今日はイベントに来てくれるのですよね」
「えぇ、芽生と一緒に行くの、楽しみにしているわ」
「僕もです」
ニコッと微笑むと、お母さんもニコッとしてくれる。
僕は笑顔が好きだから、嬉しい。
「瑞樹は本当に可愛い子ね、こんなに可愛い息子を持てて幸せよ」
お母さんが僕の肩を抱き寄せてくれると、ぐっと込み上げて来るものがある。
ふいに泣けてくる。
天国のお母さんにも教えてあげたいな。
僕はこの地上に一人残されてしまったけれども、今はこんなにも愛し愛されているということを。
いつか宗吾さんと芽生くんを連れて、雲の上の世界に遊びに行けたらいいのに……僕が青い車を運転し、空を駆け上りたいよ。
夢の中でもいいから、叶うといい。
「じゃあ行ってきます」
「行ってらっしゃい。あとでね」
そこでパタパタと天使の足音が聞こえてくる。
「芽生くん!」
「お兄ちゃん、パパー おはよう!」
「おー 芽生、9歳になったな」
「芽生くん、お誕生日おめでとう」
「えへへ、ありがとう~! 今日はボクも会いに行けるんだ! やったぁ!」
「待ってる」
僕は芽生くんをありったけの愛情を込めて抱きしめた。
芽生くん、9歳おめでとう。
この1年、充実したものとなりますように。
****
離婚して芽生との生活に途方に暮れていたのは、もう遠い過去だ。
今はこんなに息子の成長を手放しで喜んでくれる人がいる。
玄関先で朝から瑞樹と芽生が笑顔で抱き合っていた。
愛情は目に見えないが、こんな風に行動や言葉から溢れ出てくるものなんだな。
瑞樹、瑞樹、瑞樹――
君と出逢えて良かった。
俺の息子をここまで愛してくれてありがとう。
愛は無限だ。
瑞樹への愛、息子への愛。
君がくれるありがとうと微笑みを、俺も届けたい。
「宗吾、あなたまた一段といい表情をするようになったのね」
「母さん、俺、どんな顔してる?」
「ふふふ、それはもう最高の笑顔、瑞樹と芽生と同じ笑顔よ」
「そうか! 俺たちは家族だからな!」
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