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小学生編
新緑の輝き 4
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「お兄ちゃん、今日はじぶんのお部屋でねむるね」
「えっ、そうなの?」
「……うん、もう3年生だから、ひとりで眠るよ」
芽生くん?
やっぱり様子が少し変だ。
心配だな。
……
学校にお迎えに行くと、芽生くんはしょんぼりした様子で鉄棒にもたれていた。
久しぶりの学校で疲れたのかな?
最初はそう思ったが、帰り道「もう一人で帰れる! お迎えに来なくていい」と急に言い出したので驚いてしまった。
確かにそういう時期なのかもしれないが、唐突過ぎて違和感を抱いた。
昨日までは「あのね、3年生になってもお迎えに来てくれる? 夜、暗くなるとこわいから、もう少しそうしてくれたらうれしいなぁ」と甘えてくれていたのに、急にどうしたのだろう?
動揺しつつ、僕は必死に頭の中を整理した。
「あ、もしかして……」
思い当たったのは、誰かに何か言われたのかもしれないという事だった。
もしかして、先生の言葉?
この位の年齢の子供にとって、先生の一言は重たい。
中学年になったことを意識させるような厳しいことを言われたのかもしれない。
その予感は当たった。
甘えと甘える。
似て非なる物。
それを芽生くんにはしっかり伝えたい!
……
「じゃあ寝付くまで添い寝しようか」
「いいの?」
「もちろんだよ」
「うん!」
ほっとした笑顔。
「お兄ちゃん、ボクのベッドにはくまちゃんと羊のメーくんがいるからせまいよ」
「お兄ちゃん、つぶさないようそっと入るね」
「えへへ、お兄ちゃーん、もっとこっちきて」
僕にくっついて甘える仕草。
可愛いね。
成長したと言っても、まだ小さな身体を優しく抱きしめてあげた。
「大丈夫だよ。困ったことがあったらお兄ちゃんやパパに話してごらん。ひとりで抱えこんではいけないよ」
「うん、わかった。今日の帰り道もありがとう」
「どういたしまして。いつでも僕は芽生くんが大事だよ」
「うん、お兄ちゃん、だーいすき! えへへ。ボクも今度お手紙に書くよ」
芽生くんがすやすやと眠りにつくまで、何度も背中を撫でてあげた。
ぐっすりお休み。
僕が不安な時、よくお母さんがこうやって背中を擦ってくれた事を思い出した。
「みーくん、大丈夫よ。こわくないわよ。お母さんになんでも話して。一人で頑張りすぎちゃダメよ」
安定した寝息が聞こえてきたので、そっとベッドを抜け出した。
廊下に出るとお風呂場から灯りが漏れていた。
宗吾さん、今は入浴中なんだ。
僕は自分の部屋に戻り、もう一度潤からの手紙を開いた。
何度読んでも嬉しい事が書いてある。
潤、ありがとう。
本当にありがとう。
こんなに素敵なメッセージを手紙にしたためてくれるなんて。
僕で良かったんだね。
僕が葉山の家に引き取られた時、広樹兄さんとの間に横入りしたような形になってしまい、ずっと心苦しかったんだ。だから当時はいつも潤に引け目を感じて、心の中で詫び続けていた。
だから幼い潤の我が儘も度の過ぎた悪戯も、僕にとっては試練だと思って耐え忍んでしまった。
僕がいつもそんな調子だから、潤だって心のやり場がなく、ますますエスカレートしてしまったんだ。
僕たちは長い期間上手くいっていなかった。
だからこそ今日の手紙には感動したよ。
僕たちの関係は良好だ!
僕はその晩、潤に返事を書いた。
心を込めて。
ありったけの心をこめて!
『じゅーん、手紙をありがとう。嬉しくて嬉しくて、何回も何回も読み直したよ。遠回りした分、僕たち幸せになれるんだね。潤、僕の方こそありがとう! 僕の弟になってくれてありがとう! 潤の優しい所、逞しい所、パパになった潤、パパになる潤、全部好きだよ。兄さんは潤が好きだ。広樹兄さんと三兄弟、仲良くやっていこう」
伝えたいことが迸る。物事には動きだすタイミングがある。
僕と潤の関係はまだまだこれからだ。
これから更に絆を深めていこう。
「瑞樹、そろそろ寝るぞ。明日も早いからな」
「あ、はい」
「潤に手紙を書いていたのか」
「はい、嬉しくて。僕も手紙を書いてみたくなりました」
「羨ましいな。俺も欲しいけど、同じ家に住んでいたらもらえないよな~」
実は宗吾さんにも書きたくなって書いてしまったのだが、同じ家に住んでいて変かなと渡すのを躊躇していたんだ。
「宗吾さんにもちゃんとありますよ」
「え? 本当に」
「はい、照れ臭いですが、宗吾さんに……」
数え切れない程の愛の言葉は交わしてきたが、文字で残すのは初めてだ。
優しいけど残酷な言葉を一馬に残された過去があるから、文字で残すのに臆病になっていた。
でも潤からストレートな嬉しい言葉をもらったせいか、僕も書きたくなったんだ。
「瑞樹、俺……嬉しいよ」
「あの……これです」
すると宗吾さんもパジャマのポケットから手紙を出してくれた。
「これは俺からの返事な」
「えっ……」
「以心伝心だよ。俺たちは心が通じあっているからな」
嬉しい事も分け合って、僕たちはこうやって愛を深めていく。
「えっ、そうなの?」
「……うん、もう3年生だから、ひとりで眠るよ」
芽生くん?
やっぱり様子が少し変だ。
心配だな。
……
学校にお迎えに行くと、芽生くんはしょんぼりした様子で鉄棒にもたれていた。
久しぶりの学校で疲れたのかな?
最初はそう思ったが、帰り道「もう一人で帰れる! お迎えに来なくていい」と急に言い出したので驚いてしまった。
確かにそういう時期なのかもしれないが、唐突過ぎて違和感を抱いた。
昨日までは「あのね、3年生になってもお迎えに来てくれる? 夜、暗くなるとこわいから、もう少しそうしてくれたらうれしいなぁ」と甘えてくれていたのに、急にどうしたのだろう?
動揺しつつ、僕は必死に頭の中を整理した。
「あ、もしかして……」
思い当たったのは、誰かに何か言われたのかもしれないという事だった。
もしかして、先生の言葉?
この位の年齢の子供にとって、先生の一言は重たい。
中学年になったことを意識させるような厳しいことを言われたのかもしれない。
その予感は当たった。
甘えと甘える。
似て非なる物。
それを芽生くんにはしっかり伝えたい!
……
「じゃあ寝付くまで添い寝しようか」
「いいの?」
「もちろんだよ」
「うん!」
ほっとした笑顔。
「お兄ちゃん、ボクのベッドにはくまちゃんと羊のメーくんがいるからせまいよ」
「お兄ちゃん、つぶさないようそっと入るね」
「えへへ、お兄ちゃーん、もっとこっちきて」
僕にくっついて甘える仕草。
可愛いね。
成長したと言っても、まだ小さな身体を優しく抱きしめてあげた。
「大丈夫だよ。困ったことがあったらお兄ちゃんやパパに話してごらん。ひとりで抱えこんではいけないよ」
「うん、わかった。今日の帰り道もありがとう」
「どういたしまして。いつでも僕は芽生くんが大事だよ」
「うん、お兄ちゃん、だーいすき! えへへ。ボクも今度お手紙に書くよ」
芽生くんがすやすやと眠りにつくまで、何度も背中を撫でてあげた。
ぐっすりお休み。
僕が不安な時、よくお母さんがこうやって背中を擦ってくれた事を思い出した。
「みーくん、大丈夫よ。こわくないわよ。お母さんになんでも話して。一人で頑張りすぎちゃダメよ」
安定した寝息が聞こえてきたので、そっとベッドを抜け出した。
廊下に出るとお風呂場から灯りが漏れていた。
宗吾さん、今は入浴中なんだ。
僕は自分の部屋に戻り、もう一度潤からの手紙を開いた。
何度読んでも嬉しい事が書いてある。
潤、ありがとう。
本当にありがとう。
こんなに素敵なメッセージを手紙にしたためてくれるなんて。
僕で良かったんだね。
僕が葉山の家に引き取られた時、広樹兄さんとの間に横入りしたような形になってしまい、ずっと心苦しかったんだ。だから当時はいつも潤に引け目を感じて、心の中で詫び続けていた。
だから幼い潤の我が儘も度の過ぎた悪戯も、僕にとっては試練だと思って耐え忍んでしまった。
僕がいつもそんな調子だから、潤だって心のやり場がなく、ますますエスカレートしてしまったんだ。
僕たちは長い期間上手くいっていなかった。
だからこそ今日の手紙には感動したよ。
僕たちの関係は良好だ!
僕はその晩、潤に返事を書いた。
心を込めて。
ありったけの心をこめて!
『じゅーん、手紙をありがとう。嬉しくて嬉しくて、何回も何回も読み直したよ。遠回りした分、僕たち幸せになれるんだね。潤、僕の方こそありがとう! 僕の弟になってくれてありがとう! 潤の優しい所、逞しい所、パパになった潤、パパになる潤、全部好きだよ。兄さんは潤が好きだ。広樹兄さんと三兄弟、仲良くやっていこう」
伝えたいことが迸る。物事には動きだすタイミングがある。
僕と潤の関係はまだまだこれからだ。
これから更に絆を深めていこう。
「瑞樹、そろそろ寝るぞ。明日も早いからな」
「あ、はい」
「潤に手紙を書いていたのか」
「はい、嬉しくて。僕も手紙を書いてみたくなりました」
「羨ましいな。俺も欲しいけど、同じ家に住んでいたらもらえないよな~」
実は宗吾さんにも書きたくなって書いてしまったのだが、同じ家に住んでいて変かなと渡すのを躊躇していたんだ。
「宗吾さんにもちゃんとありますよ」
「え? 本当に」
「はい、照れ臭いですが、宗吾さんに……」
数え切れない程の愛の言葉は交わしてきたが、文字で残すのは初めてだ。
優しいけど残酷な言葉を一馬に残された過去があるから、文字で残すのに臆病になっていた。
でも潤からストレートな嬉しい言葉をもらったせいか、僕も書きたくなったんだ。
「瑞樹、俺……嬉しいよ」
「あの……これです」
すると宗吾さんもパジャマのポケットから手紙を出してくれた。
「これは俺からの返事な」
「えっ……」
「以心伝心だよ。俺たちは心が通じあっているからな」
嬉しい事も分け合って、僕たちはこうやって愛を深めていく。
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