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小学生編
新緑の輝き 3
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マンションの下に行ったら、同級生が手をふっていたよ。
「芽生、おはようー」
「おはよう!」
「春休み、たのしかった?」
「うん、あっという間だったよ」
「今度はどんな先生になるのかなぁ」
「ワクワク、ドキドキするね」
おしゃべりしながら歩いていたら、あっという間に小学校の校門が見えて来たよ。
あれ? こんなに学校って近かったかな?
前はもっと遠く感じたのにフシギだね。
それにランドセルがもっと重たくて、新学期は荷物も多くて大変だったのに、全然つかれていないよ。
ボク、3年生になったんだな、大きくなったんだな!
始業式で校長先生が、新しいタンニンの先生をショウカイしてくれたよ。他の小学校からやってきた先生なので、はじめて見るお顔だよ。
「わぁ、今度は女の先生なんだね」
「ちょっと怖そうだね」
「んー 話してみたらちがうかもよ?」
始業式のあとは、教室でタンニンの先生のお話をきいたよ。
「いいですか、あなたたちはもう3年生、つまり中学年になったのです。いつまでも1年生や2年生みたいな甘えは許されませんからね。忘れ物は絶対にしないこと! 約束は必ず守ること! 自分でやることをどんどん増やしていきましょう!」
まちがったことは言ってないんだけど……うーん、ボク、大丈夫かな。
放課後、校庭の鉄棒で遊んでいると、お兄ちゃんが迎えに来てくれたよ。
今日は少し暑かったから上着を手に持って、腕まくりをしているね。
夕焼けの中、とってもきれいだった。
きれいでやさしいお兄ちゃんが、ボクは大好き。
「芽生くん、お待たせ」
「お兄ちゃん!」
お兄ちゃんの顔を見たらほっとして飛びつきたくなったけど、先生の言葉を思い出してガマンしたよ。
もう3年生だもん。中学年だもん。ひとりでがんばるもん。
「芽生くん、どうしたのかな? 新学期で疲れちゃった?」
「……えっと……なんでもないよ。3年生になったからだよ」
「……そうなんだね」
「お兄ちゃん、そうだ! ボク、もう一人で帰れるから、お迎えに来なくてもいいよ」
「えっ」
お兄ちゃんがびっくりしたお顔になっちゃったよ。
わーん、ボクのバカバカ!
こんなこと言うつもりじゃなかったのに~!
お兄ちゃんがこうやって迎えにきてくれて、二人で帰る時間が1日のうちで、とっても楽しみなことなのに。
「そうか……でもまだ……もう少しだけ……迎えに来てもいいかな?」
「うん! いいよ! やっぱりそれがいい!」
よかった~!
お兄ちゃん、本当に大好き。
小さなことにも気付いてくれて、いつもボクをほっとさせてくれる。
「芽生くん、ポストを覗いてくれるかな?」
「うん! あっ!」
マンションのポストに、いっくんからのお手紙が届いていたよ。
「わぁ~ いっくんからだ! やったー! やった!」
「よかったね!」
なんだかうれしくなって、マンションのエレベーターの中で、そっとお兄ちゃんと手をつないじゃった。
「ん?」
「えへへ」
「うん!」
お兄ちゃんは沢山おしゃべりをする方じゃないけど、一言一言がとっても優しいんだよ。
「お兄ちゃん、3年生ってタイヘンなんだね」
「……新しい先生が何か言っていたのかな?」
「あのね、もう中学年だから甘えちゃだめだって」
「そうだったんだね。えっと……たぶん、先生が話された『甘え』と芽生くんの考える『甘える』は別だと思うよ。芽生くんが僕に甘えてくれるのは悪い事じゃないよ。むしろ嬉しいことだよ。僕と芽生くんの優しい関係にとって大切なことなんだ。先生の方の『甘え』はたぶん……ズルいとか、他人任せとか……そういう感じなじゃないかな。って、ちょっと難しかったかな?」
むずかしいことは分からないけど、ボク、お兄ちゃんに甘えてもいいんだね。
よかった! ほっとするよ!
「ほっとしたよ! あ、このお手紙、もうあけていい?」
「手を洗ってからね」
「うん!」
急いでランドセルを置いて手を洗ってリビングに行くと、お兄ちゃんがキッチンにいたよ。
「芽生くん、何か飲む? 冷たいの? あたたかいの?」
「えっとお茶がいい」
「了解!」
冷蔵庫から麦茶をくんでもらったので、ゴクゴクのんじゃった。
やっぱりお家っていいな。
お家のお茶の味が好きだな。
ほっとするよ。
「じゃあ開けてみるね」
「今度はなんて書いてあるかな?」
お兄ちゃんとワクワクしていたら、パパも帰ってきたみたい。
「あ、宗吾さんだ。ちょっと待っていて」
「うん」
お兄ちゃんがパパを玄関にお迎えに行ってくれるのって、うれしいな。
パパをお兄ちゃんが大事にしてくれて、パパもお兄ちゃんを大事にしてくれて、ボクは二人からスペシャル大事にしてもらっているんだ。
これって、しあわせだなぁ。
「宗吾さん、お帰りなさい!」
「ただいま、瑞樹。悪い、冷たいお茶をくれるか」
「はい! すごい汗ですね」
「家族に会いたくて、仕事をがんばったんだ」
「うれしいです」
パパってば、お兄ちゃんにべったり甘えているね。
そっか、お兄ちゃんの教えてくれた「甘える」ってこういうことなんだね。
大人になってもこんな風に甘えられる人がいるって、いいね!
ボクも甘えてみようっと。
「パパ、おかえりなさい!」
ボクも玄関に行くと、パパが笑ってくれた。
「芽生、ただいま!」
「あのね、いっくんからお手紙が来たの。一緒に見てくれる?」
「おぅ! 一緒にいいのか。また可愛い絵が描いてあるかな?」
「うん、みんなで見ようよ」
****
僕たちはワクワクと、いっくんからのお手紙の封を切った。
可愛いいっくんは、月影寺の流さんがつけてくれた『エンジェルズ』という言葉がぴったりの男の子だ。だから、いっくんからの手紙は癒し成分たっぷりなので、楽しみだよ。
「あ! ついに文字が書いてあるよ」
「なんて?」
「わぁ~ てれるよ!」
芽生くんが恥ずかしそうに頬を染めながら、手紙を見せてくれた。
『めーくん、だいすき‼』
わぁ……たどたどしい文字もかわいいね。
「わぁ~ いっくんがボクのこと好きだって! うれしいな。ボクもいっくんが大好きだよ」
「よかったなぁ」
「良かったね!」
「うん! あれ、もう1枚入っているよ?」
「ん?」
封筒の中にもう1枚、便箋が入っていた。
きっちり折られ『兄さんへ』と書かれていた。
「『兄さんへ』って、これは瑞樹のことだよな?」
「……これ、潤からでしょうか」
「だろうな。早速読んでみたらどうだ?」
「そうですね」
潤から改めて手紙をもらったことはないので、驚いた。
同時にドキドキした。
四つ折りを開くと……そこには!
ボンっと身体が一気に火照った。
「ちょっと、ま、待って下さい」
「んー なんて書いてあったんだぁ?」
「な、内緒です」
「えー ずるいぞ」
「ちょっとだけ、失礼します」
僕は慌て手紙を抱えて、自室に駆け込んだ。
床にしゃがんで、手紙を読み返した。
『兄さん、大好きだ! オレの兄さんになってくれてありがとう!』
また会う約束もしてくれた。
赤ちゃんが生まれたら会いに来て欲しいとも……
なんて、なんて……嬉しい言葉が並んでいるのか。
その言葉はずっと欲しかったものだったので、僕の目には自然と涙が浮かんでいた。
「うっ……うっ……うう」
文字として残してもらえたことへの喜び。
あの潤がどんな気持ちでこれを書いてくれたのかひしひしと伝わってくるよ。
僕は潤の兄なんだという再認識も出来た!
様々な感情が駆け巡り、照れ臭くて嬉しくて堪らない。
「瑞樹、入ってもいいか」
「宗吾さん!」
「お兄ちゃん、入ってもいい?」
「芽生くん!」
「来て下さい!」
僕は二人を呼び寄せて抱きしめた。
「どうした?」
「どうしたの?」
「嬉しいことが書いてあったんです」
「そうか。良かったな」
「あ……お兄ちゃん、今もしかして、ボクにあまえてくれているの?」
「うん。僕が嬉しかったことを、二人と共有したくて」
「なるほど~ やっぱり潤からのラブレターだったんだな」
「『お兄ちゃん、すき』って書いてあったんだね」
「はい……そうなんです。だからうれしくて」
そこまで言うと、宗吾さんが今度は抱きしめてくれた。そして芽生くんも小さい手で、精一杯僕を抱きしめてくれた。
「なぁ、瑞樹が幸せだと、俺たちも幸せだよ」
「うんうん、パパの言うとおりだよ~ お兄ちゃんよかったねぇ」
「ありがとう、ありがとうございます」
幸せな涙は優しいね。
家族の温もりに包まれて流す涙はあたたかい。
「芽生、おはようー」
「おはよう!」
「春休み、たのしかった?」
「うん、あっという間だったよ」
「今度はどんな先生になるのかなぁ」
「ワクワク、ドキドキするね」
おしゃべりしながら歩いていたら、あっという間に小学校の校門が見えて来たよ。
あれ? こんなに学校って近かったかな?
前はもっと遠く感じたのにフシギだね。
それにランドセルがもっと重たくて、新学期は荷物も多くて大変だったのに、全然つかれていないよ。
ボク、3年生になったんだな、大きくなったんだな!
始業式で校長先生が、新しいタンニンの先生をショウカイしてくれたよ。他の小学校からやってきた先生なので、はじめて見るお顔だよ。
「わぁ、今度は女の先生なんだね」
「ちょっと怖そうだね」
「んー 話してみたらちがうかもよ?」
始業式のあとは、教室でタンニンの先生のお話をきいたよ。
「いいですか、あなたたちはもう3年生、つまり中学年になったのです。いつまでも1年生や2年生みたいな甘えは許されませんからね。忘れ物は絶対にしないこと! 約束は必ず守ること! 自分でやることをどんどん増やしていきましょう!」
まちがったことは言ってないんだけど……うーん、ボク、大丈夫かな。
放課後、校庭の鉄棒で遊んでいると、お兄ちゃんが迎えに来てくれたよ。
今日は少し暑かったから上着を手に持って、腕まくりをしているね。
夕焼けの中、とってもきれいだった。
きれいでやさしいお兄ちゃんが、ボクは大好き。
「芽生くん、お待たせ」
「お兄ちゃん!」
お兄ちゃんの顔を見たらほっとして飛びつきたくなったけど、先生の言葉を思い出してガマンしたよ。
もう3年生だもん。中学年だもん。ひとりでがんばるもん。
「芽生くん、どうしたのかな? 新学期で疲れちゃった?」
「……えっと……なんでもないよ。3年生になったからだよ」
「……そうなんだね」
「お兄ちゃん、そうだ! ボク、もう一人で帰れるから、お迎えに来なくてもいいよ」
「えっ」
お兄ちゃんがびっくりしたお顔になっちゃったよ。
わーん、ボクのバカバカ!
こんなこと言うつもりじゃなかったのに~!
お兄ちゃんがこうやって迎えにきてくれて、二人で帰る時間が1日のうちで、とっても楽しみなことなのに。
「そうか……でもまだ……もう少しだけ……迎えに来てもいいかな?」
「うん! いいよ! やっぱりそれがいい!」
よかった~!
お兄ちゃん、本当に大好き。
小さなことにも気付いてくれて、いつもボクをほっとさせてくれる。
「芽生くん、ポストを覗いてくれるかな?」
「うん! あっ!」
マンションのポストに、いっくんからのお手紙が届いていたよ。
「わぁ~ いっくんからだ! やったー! やった!」
「よかったね!」
なんだかうれしくなって、マンションのエレベーターの中で、そっとお兄ちゃんと手をつないじゃった。
「ん?」
「えへへ」
「うん!」
お兄ちゃんは沢山おしゃべりをする方じゃないけど、一言一言がとっても優しいんだよ。
「お兄ちゃん、3年生ってタイヘンなんだね」
「……新しい先生が何か言っていたのかな?」
「あのね、もう中学年だから甘えちゃだめだって」
「そうだったんだね。えっと……たぶん、先生が話された『甘え』と芽生くんの考える『甘える』は別だと思うよ。芽生くんが僕に甘えてくれるのは悪い事じゃないよ。むしろ嬉しいことだよ。僕と芽生くんの優しい関係にとって大切なことなんだ。先生の方の『甘え』はたぶん……ズルいとか、他人任せとか……そういう感じなじゃないかな。って、ちょっと難しかったかな?」
むずかしいことは分からないけど、ボク、お兄ちゃんに甘えてもいいんだね。
よかった! ほっとするよ!
「ほっとしたよ! あ、このお手紙、もうあけていい?」
「手を洗ってからね」
「うん!」
急いでランドセルを置いて手を洗ってリビングに行くと、お兄ちゃんがキッチンにいたよ。
「芽生くん、何か飲む? 冷たいの? あたたかいの?」
「えっとお茶がいい」
「了解!」
冷蔵庫から麦茶をくんでもらったので、ゴクゴクのんじゃった。
やっぱりお家っていいな。
お家のお茶の味が好きだな。
ほっとするよ。
「じゃあ開けてみるね」
「今度はなんて書いてあるかな?」
お兄ちゃんとワクワクしていたら、パパも帰ってきたみたい。
「あ、宗吾さんだ。ちょっと待っていて」
「うん」
お兄ちゃんがパパを玄関にお迎えに行ってくれるのって、うれしいな。
パパをお兄ちゃんが大事にしてくれて、パパもお兄ちゃんを大事にしてくれて、ボクは二人からスペシャル大事にしてもらっているんだ。
これって、しあわせだなぁ。
「宗吾さん、お帰りなさい!」
「ただいま、瑞樹。悪い、冷たいお茶をくれるか」
「はい! すごい汗ですね」
「家族に会いたくて、仕事をがんばったんだ」
「うれしいです」
パパってば、お兄ちゃんにべったり甘えているね。
そっか、お兄ちゃんの教えてくれた「甘える」ってこういうことなんだね。
大人になってもこんな風に甘えられる人がいるって、いいね!
ボクも甘えてみようっと。
「パパ、おかえりなさい!」
ボクも玄関に行くと、パパが笑ってくれた。
「芽生、ただいま!」
「あのね、いっくんからお手紙が来たの。一緒に見てくれる?」
「おぅ! 一緒にいいのか。また可愛い絵が描いてあるかな?」
「うん、みんなで見ようよ」
****
僕たちはワクワクと、いっくんからのお手紙の封を切った。
可愛いいっくんは、月影寺の流さんがつけてくれた『エンジェルズ』という言葉がぴったりの男の子だ。だから、いっくんからの手紙は癒し成分たっぷりなので、楽しみだよ。
「あ! ついに文字が書いてあるよ」
「なんて?」
「わぁ~ てれるよ!」
芽生くんが恥ずかしそうに頬を染めながら、手紙を見せてくれた。
『めーくん、だいすき‼』
わぁ……たどたどしい文字もかわいいね。
「わぁ~ いっくんがボクのこと好きだって! うれしいな。ボクもいっくんが大好きだよ」
「よかったなぁ」
「良かったね!」
「うん! あれ、もう1枚入っているよ?」
「ん?」
封筒の中にもう1枚、便箋が入っていた。
きっちり折られ『兄さんへ』と書かれていた。
「『兄さんへ』って、これは瑞樹のことだよな?」
「……これ、潤からでしょうか」
「だろうな。早速読んでみたらどうだ?」
「そうですね」
潤から改めて手紙をもらったことはないので、驚いた。
同時にドキドキした。
四つ折りを開くと……そこには!
ボンっと身体が一気に火照った。
「ちょっと、ま、待って下さい」
「んー なんて書いてあったんだぁ?」
「な、内緒です」
「えー ずるいぞ」
「ちょっとだけ、失礼します」
僕は慌て手紙を抱えて、自室に駆け込んだ。
床にしゃがんで、手紙を読み返した。
『兄さん、大好きだ! オレの兄さんになってくれてありがとう!』
また会う約束もしてくれた。
赤ちゃんが生まれたら会いに来て欲しいとも……
なんて、なんて……嬉しい言葉が並んでいるのか。
その言葉はずっと欲しかったものだったので、僕の目には自然と涙が浮かんでいた。
「うっ……うっ……うう」
文字として残してもらえたことへの喜び。
あの潤がどんな気持ちでこれを書いてくれたのかひしひしと伝わってくるよ。
僕は潤の兄なんだという再認識も出来た!
様々な感情が駆け巡り、照れ臭くて嬉しくて堪らない。
「瑞樹、入ってもいいか」
「宗吾さん!」
「お兄ちゃん、入ってもいい?」
「芽生くん!」
「来て下さい!」
僕は二人を呼び寄せて抱きしめた。
「どうした?」
「どうしたの?」
「嬉しいことが書いてあったんです」
「そうか。良かったな」
「あ……お兄ちゃん、今もしかして、ボクにあまえてくれているの?」
「うん。僕が嬉しかったことを、二人と共有したくて」
「なるほど~ やっぱり潤からのラブレターだったんだな」
「『お兄ちゃん、すき』って書いてあったんだね」
「はい……そうなんです。だからうれしくて」
そこまで言うと、宗吾さんが今度は抱きしめてくれた。そして芽生くんも小さい手で、精一杯僕を抱きしめてくれた。
「なぁ、瑞樹が幸せだと、俺たちも幸せだよ」
「うんうん、パパの言うとおりだよ~ お兄ちゃんよかったねぇ」
「ありがとう、ありがとうございます」
幸せな涙は優しいね。
家族の温もりに包まれて流す涙はあたたかい。
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