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小学生編
心をこめて 57
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「パパ、お兄ちゃん、いってきまーす!」
「芽生くん、行ってらっしゃい!」
「芽生、ファイトだぞ!」
「うん!」
パパとお兄ちゃんが、ブンブン手をふってくれているよ。
なんだか1年生の時を思い出すよ。
はじめて学校にひとりで行った日みたい。
あー ボク、やっと学校に行けるんだね。
やっとみんなに会える!
そう思ったら、うれしくて、スキップしたくなったよ。
マンションの下に行ったら、いつも一緒に行っている上級生のお兄さんとお姉さんが待っていてくれたよ。
「あー メイくんだ!」
「芽生! もういいのか」
「うん! もう大丈夫になったよ
「芽生くん、よかったわね」
「ありがとう」
みんなにシンパイかけちゃった。
でも、どうしてあんな病気になったのかな? とつぜんすぎて、びっくりしたよ。まさかボクがニュウインするなんて、思ってもいなかった。
病気って、自分ではヤダッって思っても、さけられないんだね。
病院で出会ったみんな、元気かな?
みんなも早く退院できるといいな。
ボク、今日から小学校にまた通えるよ!
がんばってくるね!
今までは当たり前のように通えていたから、朝……眠いと、ちょっと行くのやだなって思ったこともあったんだ。
でもね、病気になって分かったよ。
こうやって通えるのって、すごいことなんだね。
お兄ちゃんが前にパパと話していた言葉を、思い出したよ。
……
芽生くんには毎日を大切に過ごして欲しいです。
明日も同じ日が来るとは限らないから……
……
あの時はよく意味がわからなかったけれども、今なら分かるよ。家族がいつもいっしょにいられるのって、すごいことなんだね。
病院でひとりになって、強く思ったよ。
早くお家に帰りたいと、ずっと願っていたんだ。
早くパパと会いたいし、お兄ちゃんに抱っこしてほしかったから。
「芽生くん、入院ってとっても寂しかったよね」
「うん、さみしかったよ」
「分かる! お姉ちゃんも幼稚園の時入院したことあるのよ。その時はお家が恋しくて泣いちゃった。芽生くん、本当に頑張ったね」
そうか、同じマンションのお姉ちゃんも入院したことあるのか。ボクだけじゃないんだね。
「うん、ボクもいっぱい泣いちゃった」
「メイくんってカッコいいのね」
「えっ? 泣くのがカッコいいの?」
「そうじゃなくて、泣いたと言えることがカッコいいわ。私は負けず嫌いで、その時は素直に言えなかったから」
「そうなんだね。でもお姉ちゃんもカッコいいよ」
「どうして?」
「だって今ボクに言いにくいことを教えてくれて、励ましてくれたから」
学校の門が見えてきたよ。
「芽生ー!」
「めいくん」
「メーイ!」
わぁ! クラスのお友達のお顔がいっぱい。
「芽生くん、良かったね。行っておいで」
「芽生、みんな呼んでいるぞ」
「お兄ちゃん、お姉ちゃん、今日もありがとう。行ってくるね!」
「あぁ、また明日な!」
「うん!」
なつかしくてうれしくて、ボクも走ってみんなのところに行ったよ。
みんな肩をくんだり、手をにぎったり、くっつかれて、もみくちゃにされちゃった。
うれしい!
みんなー 会いたかったよ。
「芽生、休み時間あそぼー」
「芽生くん、お昼休み遊べる?」
「芽生、図書館行こうな」
ボクがすっぽかしちゃった約束、またしてくれるんだね。
「ありがとう。もどってきたよ」
「おかえり! メイ!」
****
「元気に行けましたね」
「やっとだな。あぁ、良かった。ふぅ、ほっとしたよ」
「宗吾さん?」
宗吾さんが壁にもたれてズルズルと脱力してしまった。
「だっ、大丈夫ですか」
「悪ぃ……ホッとしたら力が抜けちまった。足に力が入らん。格好悪いな」
そんな宗吾さんが愛おしい。
「そんなことないです。本当に良かったです。僕も本当に嬉しいんです」
廊下にしゃがんで、宗吾さんと肩を寄せ合った。
「瑞樹、ありがとう。今回、君の存在がどんなに支えになったか。俺一人じゃ、うまく周囲に甘えられなかった。君がいなかったら、意固地になって、結局前みたいにメイに寂しい思いをさせてしまっただろう」
「宗吾さん……僕、今回のことを通じて思いました。心から嬉しく楽しいことって、一緒に喜んでくれる人……つまり人、家族、友人の存在があってこそ生まれるのですね」
宗吾さんが肩を組んでくれる。
僕たちは恋人であって家族、そして同士だ。
「あぁ、そうだ。俺たちはこれからもかけがえのない人の存在を大切にしていこう。瑞樹……愛してるよ」
顎を掬われ唇を優しく重ねられる。
久しぶりに感じる宗吾さんの温もり。
安堵の溜め息が入り混ざり、幸せな時間がやってくる。
やっと……やっと、ここまで辿り着けた。
「あっ……」
「瑞樹、瑞樹……ありがとう、ありがとうな」
「宗吾さん、僕こそ……ありがとうございます」
ギュッと抱きしめられる。
僕の幸せな存在に……
「これからも一緒に暮らして、沢山笑顔になれる瞬間を作っていこう! 今日から、またよろしくな」
「はい、こちらこそ宜しくお願いします。芽生くんが愛おしくて堪りません。僕の家族……そう言える喜びで一杯です。宗吾さんを愛しています」
ありったけの心をこめて、伝えた。
愛していると。
心の底から愛していると。
心をこめて 了
「芽生くん、行ってらっしゃい!」
「芽生、ファイトだぞ!」
「うん!」
パパとお兄ちゃんが、ブンブン手をふってくれているよ。
なんだか1年生の時を思い出すよ。
はじめて学校にひとりで行った日みたい。
あー ボク、やっと学校に行けるんだね。
やっとみんなに会える!
そう思ったら、うれしくて、スキップしたくなったよ。
マンションの下に行ったら、いつも一緒に行っている上級生のお兄さんとお姉さんが待っていてくれたよ。
「あー メイくんだ!」
「芽生! もういいのか」
「うん! もう大丈夫になったよ
「芽生くん、よかったわね」
「ありがとう」
みんなにシンパイかけちゃった。
でも、どうしてあんな病気になったのかな? とつぜんすぎて、びっくりしたよ。まさかボクがニュウインするなんて、思ってもいなかった。
病気って、自分ではヤダッって思っても、さけられないんだね。
病院で出会ったみんな、元気かな?
みんなも早く退院できるといいな。
ボク、今日から小学校にまた通えるよ!
がんばってくるね!
今までは当たり前のように通えていたから、朝……眠いと、ちょっと行くのやだなって思ったこともあったんだ。
でもね、病気になって分かったよ。
こうやって通えるのって、すごいことなんだね。
お兄ちゃんが前にパパと話していた言葉を、思い出したよ。
……
芽生くんには毎日を大切に過ごして欲しいです。
明日も同じ日が来るとは限らないから……
……
あの時はよく意味がわからなかったけれども、今なら分かるよ。家族がいつもいっしょにいられるのって、すごいことなんだね。
病院でひとりになって、強く思ったよ。
早くお家に帰りたいと、ずっと願っていたんだ。
早くパパと会いたいし、お兄ちゃんに抱っこしてほしかったから。
「芽生くん、入院ってとっても寂しかったよね」
「うん、さみしかったよ」
「分かる! お姉ちゃんも幼稚園の時入院したことあるのよ。その時はお家が恋しくて泣いちゃった。芽生くん、本当に頑張ったね」
そうか、同じマンションのお姉ちゃんも入院したことあるのか。ボクだけじゃないんだね。
「うん、ボクもいっぱい泣いちゃった」
「メイくんってカッコいいのね」
「えっ? 泣くのがカッコいいの?」
「そうじゃなくて、泣いたと言えることがカッコいいわ。私は負けず嫌いで、その時は素直に言えなかったから」
「そうなんだね。でもお姉ちゃんもカッコいいよ」
「どうして?」
「だって今ボクに言いにくいことを教えてくれて、励ましてくれたから」
学校の門が見えてきたよ。
「芽生ー!」
「めいくん」
「メーイ!」
わぁ! クラスのお友達のお顔がいっぱい。
「芽生くん、良かったね。行っておいで」
「芽生、みんな呼んでいるぞ」
「お兄ちゃん、お姉ちゃん、今日もありがとう。行ってくるね!」
「あぁ、また明日な!」
「うん!」
なつかしくてうれしくて、ボクも走ってみんなのところに行ったよ。
みんな肩をくんだり、手をにぎったり、くっつかれて、もみくちゃにされちゃった。
うれしい!
みんなー 会いたかったよ。
「芽生、休み時間あそぼー」
「芽生くん、お昼休み遊べる?」
「芽生、図書館行こうな」
ボクがすっぽかしちゃった約束、またしてくれるんだね。
「ありがとう。もどってきたよ」
「おかえり! メイ!」
****
「元気に行けましたね」
「やっとだな。あぁ、良かった。ふぅ、ほっとしたよ」
「宗吾さん?」
宗吾さんが壁にもたれてズルズルと脱力してしまった。
「だっ、大丈夫ですか」
「悪ぃ……ホッとしたら力が抜けちまった。足に力が入らん。格好悪いな」
そんな宗吾さんが愛おしい。
「そんなことないです。本当に良かったです。僕も本当に嬉しいんです」
廊下にしゃがんで、宗吾さんと肩を寄せ合った。
「瑞樹、ありがとう。今回、君の存在がどんなに支えになったか。俺一人じゃ、うまく周囲に甘えられなかった。君がいなかったら、意固地になって、結局前みたいにメイに寂しい思いをさせてしまっただろう」
「宗吾さん……僕、今回のことを通じて思いました。心から嬉しく楽しいことって、一緒に喜んでくれる人……つまり人、家族、友人の存在があってこそ生まれるのですね」
宗吾さんが肩を組んでくれる。
僕たちは恋人であって家族、そして同士だ。
「あぁ、そうだ。俺たちはこれからもかけがえのない人の存在を大切にしていこう。瑞樹……愛してるよ」
顎を掬われ唇を優しく重ねられる。
久しぶりに感じる宗吾さんの温もり。
安堵の溜め息が入り混ざり、幸せな時間がやってくる。
やっと……やっと、ここまで辿り着けた。
「あっ……」
「瑞樹、瑞樹……ありがとう、ありがとうな」
「宗吾さん、僕こそ……ありがとうございます」
ギュッと抱きしめられる。
僕の幸せな存在に……
「これからも一緒に暮らして、沢山笑顔になれる瞬間を作っていこう! 今日から、またよろしくな」
「はい、こちらこそ宜しくお願いします。芽生くんが愛おしくて堪りません。僕の家族……そう言える喜びで一杯です。宗吾さんを愛しています」
ありったけの心をこめて、伝えた。
愛していると。
心の底から愛していると。
心をこめて 了
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