1,203 / 1,730
小学生編
実りの秋 24
しおりを挟む
芽生くんの運動会を見ながら、私は過去を振り返っていた。
……
「瑞樹、今日はあなたの運動会だけど観に行けないわ。うちは花屋だから日曜日はお客様が多いのよ。店番をしてくれる人もいないから休むわけにいかないの……どうか分かってね」
夏前に引き取った男の子は、か細い声でコクンと頷いた。
「……はい、分かっています」
「お昼はこれを食べてね」
「はい……分かりました。ありがとうございます。あの……じゃあ行ってきます」
惣菜パンを手渡すと大事そうにランドセルの中にしまって、とぼとぼと登校して行った。
そのまま消えてしまいそうな後ろ姿に、泣きそうになった。
聞き分けのいい大人しい子だけれども、寂しい思いをさせてしまっているのは、重々承知だった。なんとかして行ってあげたいと思ったけれども……この家は私が働かないと食べていけないの。だからどうか分かってね。
主人が元気な頃は、私も手作りのお弁当を持って広樹の運動会に行ったわ。午後は主人とバトンタッチしたので、全部を見ることは出来なかったし、家族が全員揃うことはなかったけれども、とても幸せで充実した日々だった。
若くして子供を遺しこの世を去った主人の遺志を継いだのはいいけれども、一人で花屋を切り盛りしていくのは、想像よりもずっと大変だった。
花の仕入れ、準備、店の切り盛り。
それに加えて、まだ幼い潤の世話。
ごめんね、ごめんね……瑞樹。
あなたが施設に送り込まれたり、心ない親戚にたらい回しにされるよりはマシかと思って引き取ったのに、寂しい思いばかりさせて。
子供時代は振り返れば一瞬で、今、この一瞬一瞬が大切なのは分かっているのに。
「ふぁ~ 母さん、ごめん。寝坊しちまった」
「おはよう。広樹、潤を起こして来てくれる?」
「あれ? 瑞樹は?」
「今日はあの子……運動会なのよ」
「あっ、そうか」
暫くして……広樹は真面目な顔で、開店準備中の私の所にやってきた。
「母さん……あのさ、瑞樹の運動会に行けないの?」
「……行きたいのはやまやまだけど、そんなの無理に決まっているでしょう」
「あっお弁当は? 小学校は親と一緒に食べるのに、どうするんだ?」
「……パンを持たせたわ」
「えっ、それはいくらなんでも寂しいぜ。俺が行ってくるよ。残ったご飯でおにぎりを作っていい?」
せめておにぎり位握ってあげればよかったと、その時になって気付いたわ。
忙しさに忙殺されるとは、このことね。
「ありがとう。そうしてあげて。広樹に頼ってばかりでごめんね」
「母さんは謝ってばかりだな。俺……瑞樹の気持ちも分かるんだ。俺も10歳の時、父さんを亡くしたから」
「あ……」
広樹も、あの時10歳だった。
「瑞樹には少しでも幸せになって欲しいから、守ってやりたいんだ。母さん、その役目を俺がしてもいい?」
「もちろんよ。お母さんがしてあげたかったことをあの子にしてあげて」
「……母さんにだって……出来るよ。いつかゆっくり瑞樹と触れ合うことが出来るさ」
……
「そうか……今がその時なんだわ」
「ん? お母さん……何か言った?」
瑞樹が甘い笑顔を浮かべて、私を見つめてくれた。
幼い時から変わらない可憐な顔立ちに、懐かしさが込み上げてくる。
「瑞樹、親孝行してくれてありがとうね」
「僕が親孝行を?」
不思議そうに小首を傾げる瑞樹。
あの日の寂しさで彩られた瞳は、今は甘く、はにかんだ笑顔で埋められているのね。良かったわ。
「今、とても幸せなのね」
「うん、みんないてくれるから……」
「私もね……本当はずっと運動会に行きたかった。手作りのお弁当を子供達と一緒に食べたかったの」
「じゃあ……お母さんの夢も、今日叶ったの?」
「そうよ、だから嬉しいわね」
「良かった。僕の夢とお母さんの夢が揃って」
瑞樹は優しい笑顔で、私にお茶をついでくれた。
「ここは日差しが強いから、お母さんも水分をしっかり取らないと」
「ありがとう」
労り労られ、人は生きていく。
「瑞樹くん、そろそろ君の出番だよ」
「憲吾さん、ありがとうございます」
宗吾さんが隣で明るく笑う。
「まったく俺の兄貴は、スケジュールチェックに余念がないな。いいシーンだったのに」
「悪い。これは職業病だな。だが私にも出来ないことがある」
「何です?」
「……彩芽のミルクと食事とおむつの時間だけは、管理できないのだ」
「当たり前ですよ。相手も生きているんだから」
「本当に宗吾の言う通りだよ。予測不可能な中に人は生きているんだな。だからこそ相手を大切にしたくなるんだな。あっ、イタタ……」
腕をあげようとした憲吾さんが、突然顔をしかめた。
「さっきの大玉送りで、どこか痛めたんですか」
「あんなに飛び跳ねたのは久しぶりでな」
「あーあ、兄貴は頭ばかり使ってないでもう少し体力もつけないと。彩芽ちゃんの相手が務まらないですよ」
「そうだな」
いつまでも聞いていたくなる和やかな兄弟の会話だった。
「じゃあ行ってきますね」
「瑞樹ぃ~ 何を借りるんだろな? なぁ『カッコイイ男』だったら絶対に俺を選べよ。くまさんや兄貴や芽生じゃなくて俺だぞ」
「くすっ、そんな借りものがあるんですか」
「毎年人も混ざっているのが恒例だぞ。よしっ、行ってこい!」
宗吾さんにトンと背中を押されて歩き出した。
去年は芽生くん自身が運動会に半分しか参加できなかったので、一切保護者競技には参加しなかった。幼稚園の時は宗吾さんと一緒に参加したが……ひとりで門に向かうのはドキドキするな。少し怯んでしまうよ。
「お兄ちゃん、がんばって~」
「うん!」
そこに芽生くんの声がしたので、顔を上げられた。
皆が見てくれている。
僕も頑張ろう。
まるで僕が小学生に戻ったみたいだ。
僕も小さな子供だった。
『今から借りもの競争を始めます。徒競走と同じルールでスタートしお題の書かれたカードを目指して下さい。では位置について~」
僕は後方に並んでいたので、皆がカードを見てはギョッとして、辺りを見渡す様子を興味深く観察した。なるほど……眼鏡の人、帽子を被っている人などお題は様々のようだ。
僕が引くカードには、なんと書かれているのだろう?
あまり難しくないお題だといいな。
ドキドキしながらカードを開けてみると、自然と笑顔が溢れた。
僕は迷わずにお父さんとお母さんに向かって、手を差し出した。
「お父さん、お母さん、一緒に来て下さい」
「えっ、私でいいの?」
「み、みーくん、俺でいいのか」
「はい! 二人しかいませんよ」
「一体なんて書いてあったの?」
「これです!」
カードに書かれた文字は『ラブラブの新婚さん』
「まぁ!」
「た、たしかにそうだな」
照れまくる二人の手を引いてグランドを走った。
くまさんもお母さんも顔を真っ赤にしていたけれど、僕の心は弾んでいた。
こんな風にお父さんとお母さんと、校庭を走れる日がやって来るなんて!
「お兄ちゃーん、おじいちゃん、おばあちゃん、がんばってー!」
芽生くんの可愛いエールが、僕たちの進む道をキラキラと輝かせてくれた。
こんなに賑やかな運動会があるなんて。
僕は……幸せで、幸せで……堪らないよ。
……
「瑞樹、今日はあなたの運動会だけど観に行けないわ。うちは花屋だから日曜日はお客様が多いのよ。店番をしてくれる人もいないから休むわけにいかないの……どうか分かってね」
夏前に引き取った男の子は、か細い声でコクンと頷いた。
「……はい、分かっています」
「お昼はこれを食べてね」
「はい……分かりました。ありがとうございます。あの……じゃあ行ってきます」
惣菜パンを手渡すと大事そうにランドセルの中にしまって、とぼとぼと登校して行った。
そのまま消えてしまいそうな後ろ姿に、泣きそうになった。
聞き分けのいい大人しい子だけれども、寂しい思いをさせてしまっているのは、重々承知だった。なんとかして行ってあげたいと思ったけれども……この家は私が働かないと食べていけないの。だからどうか分かってね。
主人が元気な頃は、私も手作りのお弁当を持って広樹の運動会に行ったわ。午後は主人とバトンタッチしたので、全部を見ることは出来なかったし、家族が全員揃うことはなかったけれども、とても幸せで充実した日々だった。
若くして子供を遺しこの世を去った主人の遺志を継いだのはいいけれども、一人で花屋を切り盛りしていくのは、想像よりもずっと大変だった。
花の仕入れ、準備、店の切り盛り。
それに加えて、まだ幼い潤の世話。
ごめんね、ごめんね……瑞樹。
あなたが施設に送り込まれたり、心ない親戚にたらい回しにされるよりはマシかと思って引き取ったのに、寂しい思いばかりさせて。
子供時代は振り返れば一瞬で、今、この一瞬一瞬が大切なのは分かっているのに。
「ふぁ~ 母さん、ごめん。寝坊しちまった」
「おはよう。広樹、潤を起こして来てくれる?」
「あれ? 瑞樹は?」
「今日はあの子……運動会なのよ」
「あっ、そうか」
暫くして……広樹は真面目な顔で、開店準備中の私の所にやってきた。
「母さん……あのさ、瑞樹の運動会に行けないの?」
「……行きたいのはやまやまだけど、そんなの無理に決まっているでしょう」
「あっお弁当は? 小学校は親と一緒に食べるのに、どうするんだ?」
「……パンを持たせたわ」
「えっ、それはいくらなんでも寂しいぜ。俺が行ってくるよ。残ったご飯でおにぎりを作っていい?」
せめておにぎり位握ってあげればよかったと、その時になって気付いたわ。
忙しさに忙殺されるとは、このことね。
「ありがとう。そうしてあげて。広樹に頼ってばかりでごめんね」
「母さんは謝ってばかりだな。俺……瑞樹の気持ちも分かるんだ。俺も10歳の時、父さんを亡くしたから」
「あ……」
広樹も、あの時10歳だった。
「瑞樹には少しでも幸せになって欲しいから、守ってやりたいんだ。母さん、その役目を俺がしてもいい?」
「もちろんよ。お母さんがしてあげたかったことをあの子にしてあげて」
「……母さんにだって……出来るよ。いつかゆっくり瑞樹と触れ合うことが出来るさ」
……
「そうか……今がその時なんだわ」
「ん? お母さん……何か言った?」
瑞樹が甘い笑顔を浮かべて、私を見つめてくれた。
幼い時から変わらない可憐な顔立ちに、懐かしさが込み上げてくる。
「瑞樹、親孝行してくれてありがとうね」
「僕が親孝行を?」
不思議そうに小首を傾げる瑞樹。
あの日の寂しさで彩られた瞳は、今は甘く、はにかんだ笑顔で埋められているのね。良かったわ。
「今、とても幸せなのね」
「うん、みんないてくれるから……」
「私もね……本当はずっと運動会に行きたかった。手作りのお弁当を子供達と一緒に食べたかったの」
「じゃあ……お母さんの夢も、今日叶ったの?」
「そうよ、だから嬉しいわね」
「良かった。僕の夢とお母さんの夢が揃って」
瑞樹は優しい笑顔で、私にお茶をついでくれた。
「ここは日差しが強いから、お母さんも水分をしっかり取らないと」
「ありがとう」
労り労られ、人は生きていく。
「瑞樹くん、そろそろ君の出番だよ」
「憲吾さん、ありがとうございます」
宗吾さんが隣で明るく笑う。
「まったく俺の兄貴は、スケジュールチェックに余念がないな。いいシーンだったのに」
「悪い。これは職業病だな。だが私にも出来ないことがある」
「何です?」
「……彩芽のミルクと食事とおむつの時間だけは、管理できないのだ」
「当たり前ですよ。相手も生きているんだから」
「本当に宗吾の言う通りだよ。予測不可能な中に人は生きているんだな。だからこそ相手を大切にしたくなるんだな。あっ、イタタ……」
腕をあげようとした憲吾さんが、突然顔をしかめた。
「さっきの大玉送りで、どこか痛めたんですか」
「あんなに飛び跳ねたのは久しぶりでな」
「あーあ、兄貴は頭ばかり使ってないでもう少し体力もつけないと。彩芽ちゃんの相手が務まらないですよ」
「そうだな」
いつまでも聞いていたくなる和やかな兄弟の会話だった。
「じゃあ行ってきますね」
「瑞樹ぃ~ 何を借りるんだろな? なぁ『カッコイイ男』だったら絶対に俺を選べよ。くまさんや兄貴や芽生じゃなくて俺だぞ」
「くすっ、そんな借りものがあるんですか」
「毎年人も混ざっているのが恒例だぞ。よしっ、行ってこい!」
宗吾さんにトンと背中を押されて歩き出した。
去年は芽生くん自身が運動会に半分しか参加できなかったので、一切保護者競技には参加しなかった。幼稚園の時は宗吾さんと一緒に参加したが……ひとりで門に向かうのはドキドキするな。少し怯んでしまうよ。
「お兄ちゃん、がんばって~」
「うん!」
そこに芽生くんの声がしたので、顔を上げられた。
皆が見てくれている。
僕も頑張ろう。
まるで僕が小学生に戻ったみたいだ。
僕も小さな子供だった。
『今から借りもの競争を始めます。徒競走と同じルールでスタートしお題の書かれたカードを目指して下さい。では位置について~」
僕は後方に並んでいたので、皆がカードを見てはギョッとして、辺りを見渡す様子を興味深く観察した。なるほど……眼鏡の人、帽子を被っている人などお題は様々のようだ。
僕が引くカードには、なんと書かれているのだろう?
あまり難しくないお題だといいな。
ドキドキしながらカードを開けてみると、自然と笑顔が溢れた。
僕は迷わずにお父さんとお母さんに向かって、手を差し出した。
「お父さん、お母さん、一緒に来て下さい」
「えっ、私でいいの?」
「み、みーくん、俺でいいのか」
「はい! 二人しかいませんよ」
「一体なんて書いてあったの?」
「これです!」
カードに書かれた文字は『ラブラブの新婚さん』
「まぁ!」
「た、たしかにそうだな」
照れまくる二人の手を引いてグランドを走った。
くまさんもお母さんも顔を真っ赤にしていたけれど、僕の心は弾んでいた。
こんな風にお父さんとお母さんと、校庭を走れる日がやって来るなんて!
「お兄ちゃーん、おじいちゃん、おばあちゃん、がんばってー!」
芽生くんの可愛いエールが、僕たちの進む道をキラキラと輝かせてくれた。
こんなに賑やかな運動会があるなんて。
僕は……幸せで、幸せで……堪らないよ。
11
お気に入りに追加
832
あなたにおすすめの小説
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
『別れても好きな人』
設樂理沙
ライト文芸
大好きな夫から好きな女性ができたから別れて欲しいと言われ、離婚した。
夫の想い人はとても美しく、自分など到底敵わないと思ったから。
ほんとうは別れたくなどなかった。
この先もずっと夫と一緒にいたかった……だけど世の中には
どうしようもないことがあるのだ。
自分で選択できないことがある。
悲しいけれど……。
―――――――――――――――――――――――――――――――――
登場人物紹介
戸田貴理子 40才
戸田正義 44才
青木誠二 28才
嘉島優子 33才
小田聖也 35才
2024.4.11 ―― プロット作成日
💛イラストはAI生成自作画像
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!
当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。
しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。
彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。
このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。
しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。
好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。
※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*)
※他のサイトにも重複投稿しています。
お腹の子と一緒に逃げたところ、結局お腹の子の父親に捕まりました。
下菊みこと
恋愛
逃げたけど逃げ切れなかったお話。
またはチャラ男だと思ってたらヤンデレだったお話。
あるいは今度こそ幸せ家族になるお話。
ご都合主義の多分ハッピーエンド?
小説家になろう様でも投稿しています。
あなたの子ですが、内緒で育てます
椿蛍
恋愛
「本当にあなたの子ですか?」
突然現れた浮気相手、私の夫である国王陛下の子を身籠っているという。
夫、王妃の座、全て奪われ冷遇される日々――王宮から、追われた私のお腹には陛下の子が宿っていた。
私は強くなることを決意する。
「この子は私が育てます!」
お腹にいる子供は王の子。
王の子だけが不思議な力を持つ。
私は育った子供を連れて王宮へ戻る。
――そして、私を追い出したことを後悔してください。
※夫の後悔、浮気相手と虐げられからのざまあ
※他サイト様でも掲載しております。
※hotランキング1位&エールありがとうございます!
公爵様、契約通り、跡継ぎを身籠りました!-もう契約は満了ですわよ・・・ね?ちょっと待って、どうして契約が終わらないんでしょうかぁぁ?!-
猫まんじゅう
恋愛
そう、没落寸前の実家を助けて頂く代わりに、跡継ぎを産む事を条件にした契約結婚だったのです。
無事跡継ぎを妊娠したフィリス。夫であるバルモント公爵との契約達成は出産までの約9か月となった。
筈だったのです······が?
◆◇◆
「この結婚は契約結婚だ。貴女の実家の財の工面はする。代わりに、貴女には私の跡継ぎを産んでもらおう」
拝啓、公爵様。財政に悩んでいた私の家を助ける代わりに、跡継ぎを産むという一時的な契約結婚でございましたよね・・・?ええ、跡継ぎは産みました。なぜ、まだ契約が完了しないんでしょうか?
「ちょ、ちょ、ちょっと待ってくださいませええ!この契約!あと・・・、一体あと、何人子供を産めば契約が満了になるのですッ!!?」
溺愛と、悪阻(ツワリ)ルートは二人がお互いに想いを通じ合わせても終わらない?
◆◇◆
安心保障のR15設定。
描写の直接的な表現はありませんが、”匂わせ”も気になる吐き悪阻体質の方はご注意ください。
ゆるゆる設定のコメディ要素あり。
つわりに付随する嘔吐表現などが多く含まれます。
※妊娠に関する内容を含みます。
【2023/07/15/9:00〜07/17/15:00, HOTランキング1位ありがとうございます!】
こちらは小説家になろうでも完結掲載しております(詳細はあとがきにて、)
懐妊を告げずに家を出ます。最愛のあなた、どうかお幸せに。
梅雨の人
恋愛
最愛の夫、ブラッド。
あなたと共に、人生が終わるその時まで互いに慈しみ、愛情に溢れる時を過ごしていけると信じていた。
その時までは。
どうか、幸せになってね。
愛しい人。
さようなら。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる