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小学生編
HAPPY SUMMER CAMP!㉑
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いっくんと潤がギュッと抱き合っている姿に、僕はほっとした。
そうだよ、潤……そうやっていっくんを暖かく包んであげて欲しい。
僕が目を細めて二人を見つめていると、背後から腰のあたりをギュと抱きしめられた。
「お兄ちゃん!」
「芽生くん、どうしたの?」
「お兄ちゃんもギュッしてあげるね」
「芽生くんってば」
「えへっ」
僕はしゃがんで、逆に芽生くんをギュッと抱きしめた。
「芽生くんも抱っこしていい?」
「えー ボクはもうお兄ちゃんだよ?」
「それでも……芽生くんを抱っこしたいな」
「うん! いいよ! お兄ちゃん、だーいすき!」
「芽生くん、今日は美味しそうな匂いがするね」
「パパのカレー、とってもおいしいね。あのね……パパね……さいしょはカレーもつくれなかったんだよ」
芽生くんが時々教えてくれる玲子さんが出て行ってからの日々は、なかなかシビアだ。
でもその過去があって、今がある。
宗吾さんも僕にも、悲しく辛い過去がある。
芽生くんにも……
人は生きていれば多かれ少なかれ傷を負う。
時には、傷つけ合うこともある。
でも……その傷を癒やしてくれるも、人なんだ。
だから僕はここにいる。
「きょうのパパのカレー、とってもとってもおいしい」
「それはね、みーんなでたのしくつくったからだよ」
「そうだね。スパイスも利いているしね」
「うん! 丈せんせいもかっこいいねー おいしゃさんって、すごいなぁ、なんでもできるんだね」
「うんうん、スパイスの達人だね」
芽生くんとカレーを食べながら話していると、隣に宗吾さんがやってきた。
「美味しいか」
「はい! あの、お疲れ様です」
宗吾さんの着ていたTシャツは汗で色が変わり、額からは汗が滴り落ちていた。
「火の近くは、暑いですよね」
「あぁ、汗が背中を滝のように落ちていくよ」
僕はハンドタオルを取りだして、そっと額の汗を拭いてあげた。
「お疲れ様です」
「サンキュ! あぁ……優しい瑞樹に癒やされる」
「宗吾さんのカレー、とっても美味しいです」
「よかったよ。流と合作だ」
「息が合うっていいですね」
「そうだな、流とはノリが一緒だからな。でも丈さんもかなり面白い」
「すっかり仲間入りですね」
こういう時、やっぱり宗吾さんは魅力的な人だと思う。
周りにいる人を、いつの間にか大きな輪で包み込める人だ。
世の中には、僕もそうだけれども、自ら輪に入るのが苦手な人もいる。
そんな人を更に大きな輪で取り込める人なんだ。
大きな心、広い心……北海道の大地のように揺らぎない愛で、僕を包んでくれる人。
「瑞樹? どうした?」
「ひゃ! つ、冷たいです」
いきなりクーラーボックスから取りだしたばかりの缶ビールを頬にあてられ、驚いてしまった。
「はは、君でもそんな驚いた顔や変な声を出すんだな」
「も、もうっ」
「ここが火照っていたからさ~」
ほっぺたをツンツンされて、真っ赤になる。
「瑞樹、そう照れんなよ。見渡してみろよ。それぞれが大切な相手といいムードになっている」
「あ……確かに」
翠さんと流さんが、薙くんを挟んでカレーを食べている。
「薙、辛いの大丈夫?」
「父さん、オレをいくつだと思ってんの?」
「そういえば昔は薙もアニメキャラの箱を抱えていたよね。懐かしいな」
「思い出さなくていいからっ」
「兄さん、辛いの大丈夫か」
「ん、この程度なら食べられるよ」
「昔、母さんが作った激辛カレーに突然泣いたよな。耳まで真っ赤にして」
「お、思い出さなくていいからっ」
くすっ、いつもの図式が出来ている。
翠さんが薙くんを構って、流さんが翠さんを構う。
洋くんと丈さんは……
「丈、白衣が汚れるから、もう脱げよ」
「だが、洋のお気に入りだろ? 私の白衣姿は」
「……ここはギャラリーが多いんだよ」
「誰も見ていないが」
「いやっ、茂みの向こうから変な視線を感じるんだ」
「洋がそういうのなら脱ぐよ。私には……洋が全てなんだ」
「お、お前……こんなところで」
洋くんは真っ赤になっているが、満更でもないようだ。
さてと菅野とこもりんは……?
「あーん」
「パク」
「あーん」
「パク! パク!」
炭火焼きのお肉を菅野がふぅふぅ冷まして、小森くんが大きな口をあけて食べている。
えっと……あれは餌付け?
「菅野くーん、あんこばかりでは何ですから、このお団子にカレーをかけてみましょうか」
「いや……それはやめておけ。こもりんにはあんこが似合う!」
「あんこが似合う……?」
「そうだ、あんこが似合うこもりんが好きだ。ってあれ? なんか日本語が変か」
「変じゃありません。あんこ党にようこそ~」
こもりんにぱふっと抱きつかれてタジタジな菅野だが、すごく楽しそう!
潤と菫さんといっくんは、すっかり家族だな。
「いっくん、おかわりしゅるー!」
「お、偉いな」
今……潤の大きな手は、いっくんを抱っこし、おんぶし、撫でてあげるために存在する。
あと……菫さんを愛するためにもね!
もしかしたら、いっくんに……早い段階で弟か妹がやってくるかもしれないね。
「瑞樹ぃ~ 頬をそんなに染めて、さっきから周りばかり見渡して……ちょっと妬けるぞ」
「え?」
「俺は? 俺はどうだ? 俺を見ろ!」
宗吾さんの大きな手に両頬を挟まれて、じっと見つめられる。
皆それぞれの世界だ。
僕も……恥ずかしがらずにここは素直に伝えよう。
「宗吾さんが、大好きです」
「ありがとう。瑞樹、アイしてる!」
その時、夜空に満開の花が咲いた!
そうだよ、潤……そうやっていっくんを暖かく包んであげて欲しい。
僕が目を細めて二人を見つめていると、背後から腰のあたりをギュと抱きしめられた。
「お兄ちゃん!」
「芽生くん、どうしたの?」
「お兄ちゃんもギュッしてあげるね」
「芽生くんってば」
「えへっ」
僕はしゃがんで、逆に芽生くんをギュッと抱きしめた。
「芽生くんも抱っこしていい?」
「えー ボクはもうお兄ちゃんだよ?」
「それでも……芽生くんを抱っこしたいな」
「うん! いいよ! お兄ちゃん、だーいすき!」
「芽生くん、今日は美味しそうな匂いがするね」
「パパのカレー、とってもおいしいね。あのね……パパね……さいしょはカレーもつくれなかったんだよ」
芽生くんが時々教えてくれる玲子さんが出て行ってからの日々は、なかなかシビアだ。
でもその過去があって、今がある。
宗吾さんも僕にも、悲しく辛い過去がある。
芽生くんにも……
人は生きていれば多かれ少なかれ傷を負う。
時には、傷つけ合うこともある。
でも……その傷を癒やしてくれるも、人なんだ。
だから僕はここにいる。
「きょうのパパのカレー、とってもとってもおいしい」
「それはね、みーんなでたのしくつくったからだよ」
「そうだね。スパイスも利いているしね」
「うん! 丈せんせいもかっこいいねー おいしゃさんって、すごいなぁ、なんでもできるんだね」
「うんうん、スパイスの達人だね」
芽生くんとカレーを食べながら話していると、隣に宗吾さんがやってきた。
「美味しいか」
「はい! あの、お疲れ様です」
宗吾さんの着ていたTシャツは汗で色が変わり、額からは汗が滴り落ちていた。
「火の近くは、暑いですよね」
「あぁ、汗が背中を滝のように落ちていくよ」
僕はハンドタオルを取りだして、そっと額の汗を拭いてあげた。
「お疲れ様です」
「サンキュ! あぁ……優しい瑞樹に癒やされる」
「宗吾さんのカレー、とっても美味しいです」
「よかったよ。流と合作だ」
「息が合うっていいですね」
「そうだな、流とはノリが一緒だからな。でも丈さんもかなり面白い」
「すっかり仲間入りですね」
こういう時、やっぱり宗吾さんは魅力的な人だと思う。
周りにいる人を、いつの間にか大きな輪で包み込める人だ。
世の中には、僕もそうだけれども、自ら輪に入るのが苦手な人もいる。
そんな人を更に大きな輪で取り込める人なんだ。
大きな心、広い心……北海道の大地のように揺らぎない愛で、僕を包んでくれる人。
「瑞樹? どうした?」
「ひゃ! つ、冷たいです」
いきなりクーラーボックスから取りだしたばかりの缶ビールを頬にあてられ、驚いてしまった。
「はは、君でもそんな驚いた顔や変な声を出すんだな」
「も、もうっ」
「ここが火照っていたからさ~」
ほっぺたをツンツンされて、真っ赤になる。
「瑞樹、そう照れんなよ。見渡してみろよ。それぞれが大切な相手といいムードになっている」
「あ……確かに」
翠さんと流さんが、薙くんを挟んでカレーを食べている。
「薙、辛いの大丈夫?」
「父さん、オレをいくつだと思ってんの?」
「そういえば昔は薙もアニメキャラの箱を抱えていたよね。懐かしいな」
「思い出さなくていいからっ」
「兄さん、辛いの大丈夫か」
「ん、この程度なら食べられるよ」
「昔、母さんが作った激辛カレーに突然泣いたよな。耳まで真っ赤にして」
「お、思い出さなくていいからっ」
くすっ、いつもの図式が出来ている。
翠さんが薙くんを構って、流さんが翠さんを構う。
洋くんと丈さんは……
「丈、白衣が汚れるから、もう脱げよ」
「だが、洋のお気に入りだろ? 私の白衣姿は」
「……ここはギャラリーが多いんだよ」
「誰も見ていないが」
「いやっ、茂みの向こうから変な視線を感じるんだ」
「洋がそういうのなら脱ぐよ。私には……洋が全てなんだ」
「お、お前……こんなところで」
洋くんは真っ赤になっているが、満更でもないようだ。
さてと菅野とこもりんは……?
「あーん」
「パク」
「あーん」
「パク! パク!」
炭火焼きのお肉を菅野がふぅふぅ冷まして、小森くんが大きな口をあけて食べている。
えっと……あれは餌付け?
「菅野くーん、あんこばかりでは何ですから、このお団子にカレーをかけてみましょうか」
「いや……それはやめておけ。こもりんにはあんこが似合う!」
「あんこが似合う……?」
「そうだ、あんこが似合うこもりんが好きだ。ってあれ? なんか日本語が変か」
「変じゃありません。あんこ党にようこそ~」
こもりんにぱふっと抱きつかれてタジタジな菅野だが、すごく楽しそう!
潤と菫さんといっくんは、すっかり家族だな。
「いっくん、おかわりしゅるー!」
「お、偉いな」
今……潤の大きな手は、いっくんを抱っこし、おんぶし、撫でてあげるために存在する。
あと……菫さんを愛するためにもね!
もしかしたら、いっくんに……早い段階で弟か妹がやってくるかもしれないね。
「瑞樹ぃ~ 頬をそんなに染めて、さっきから周りばかり見渡して……ちょっと妬けるぞ」
「え?」
「俺は? 俺はどうだ? 俺を見ろ!」
宗吾さんの大きな手に両頬を挟まれて、じっと見つめられる。
皆それぞれの世界だ。
僕も……恥ずかしがらずにここは素直に伝えよう。
「宗吾さんが、大好きです」
「ありがとう。瑞樹、アイしてる!」
その時、夜空に満開の花が咲いた!
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