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小学生編
HAPPY SUMMER CAMP!⑤
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「パパー! ボクたちもテントつくるのおてつだいするー」
「悪いが後でな。ここは危ないから向こうで待ってろ!」
「えー」
本当は手伝わせてあげたいのは山々だが、急遽テントを4張立てることになったので、芽生たちの相手をする時間も余裕もない。
正直、今は面倒臭いとすら思ってしまった。
あー 俺はこういう時、心が狭くなる。
ちょっと自己嫌悪してしまう。
「あの、よかったらオレが相手しますよ」
「お! 薙くん! どこ行ってたんだ?」
「ちょっとトイレに行っている間に話が進んでいて、驚きました」
翠さんの息子の薙くんが声をかけてくれたので、助かった。
高校1年生の彼は、芽生にとって憧れのお兄さん的な存在のようだ。
「オヤブン~!」
「子分!」
「オヤブン、この子は、ボクのおとうとブンのいっくんです」
「えへへ、いっくんでしゅ。えっと……めーくん、なんていえばいいの?」
「デシ入りさせてくださいだよ!」
「わかった! いっくんもダシいりしてくだちゃい」
「出汁? くくっ、よかったな。可愛い子分が出来て。よーし、じゃあ虫取りにでも行くか」
芽生の顔がパァァーと明るくなる。
いっくんもワクワクしている。
「むちとりには、はっぱさんも、いましゅか」
「葉っぱ? あぁ一杯あるよ」
しかし薙くん一人に、子供二人はちょっと心配だな。やっぱり俺が行くべきか。
「あの、宗吾さん、僕たちがついていきますので」
振り返ると、瑞樹と洋くんが仲良く並んで立っていた。
二人は雰囲気は違えども通じ合うものがあるらしく、すっかり意気投合しているようだ。
「あぁ、よろしく頼む」
「あ、パパ、そうだ! 今日の夜はオヤブンもいっしょでいいかな?」
「ん? なんの話?」
薙くんが芽生をじっと見つめる。
「さっきね、どこでだれがいっしょにねむるのか、決めていたんだよ。ボクといっくんはいっしょのテントだから、オヤブンもいっしょがいいなぁ」
薙くんは少し目を泳がしたが、すぐに快く了解してくれた。
「いいよ! 父さんたちのテントは……たぶん暑くて狭い予感がするから」
「わーい!」
はは、やっぱり瑞樹の予想通り、俺らのテントは今回は託児所だな。
瑞樹と目が合うと、はにかむような可愛い笑みを浮かべていた。
「宗吾さん、僕……ちゃんとお世話しますので、子供たちは一緒でいいですか」
「あぁ、俺もするさ! じゃあ俺たちが一番広いテントにしないとな」
「はい!」
「じゃあ、ちょっとそこの林で遊んできます」
「いってきまーしゅ」
瑞樹、洋くん、薙くんと、芽生といっくんが林に向かってゆっくりと歩き出した。
まるで冒険隊のような背中が、微笑ましい。
「おい、宗吾、ここはこうでいいのか」
「あぁ、それで合ってる。流はテント張るの慣れてんな」
「学生時代はよくテントを担いで放浪していたからな」
「想像できる!」
テントを半分張り終わった所で、ペットボトルの水を飲んでいると、潤がやってきた。
「オレも手伝います」
「菫さんの所にいなくていいのか」
「今、コテージでは、寺の小坊主、小森くん達のお茶会が開かれていて、ちょっと照れ臭いんですよ。オレは力仕事の方が好きなんで」
「ははっ、甘い匂いが充満していそうだな」
「あんこ、あんこ……どうしてキャンプ場なのに、あんなにあんこがあるんでしょうかね」
「ははっ、単純に好きだからだろ。あ、丈さんを知らないか」
「丈さんなら、あそこですよ」
丈さんは周囲の様子に耳を澄ましているようだ。
ふーん、寡黙で群れないタイプの男は、一人で立っているだけでも絵になるもんだな。
クールで知的な外科医として、外では隙がない男なのだろう。
だが、今晩は彼の羽目を外させてみたい。
手強そうだが、覚悟しろよ!
そう思うと口元が緩んだ。
「宗吾、ニヤついてんな~」
「そういう流こそ。だがテントじゃ、手出しできないだろ?」
「いや、そうでもないかも」
「ははっ、テントの壁は薄い。お向かいは女性ばかりのログハウスだ。夜はシルエットも声も筒抜けだから、気をつけろよ」
「心得ているさ!」
流のウキウキした様子に、思わず笑みが零れる。
ハプニングはあったが、俺が企画した旅行だ。
皆が心から楽しんでくれるのが嬉しい。
「あー 動いたら暑くなって、背中が汗でびっしょりだ」
流が上着をヒョイと脱ぎ捨てた。
筋肉隆々とした凜々しく引き締まった上半身は、見惚れるほどだった。
付近で「きゃ~」という黄色い歓声が聞こえたような気がしたので、辺りを見渡すが誰もいなかった。さっきから変だな。グサグサと刺さる視線を浴びているような気がするが、誰もいない。
「お前さ、いい身体してんな」
「宗吾も鍛えているよな?」
「んー、お前には負けそうだ。俺もまたジムに通うかな」
「ジム? そんなところになんて行かず、うちの寺で薪割りをすればいい」
「えー それはまた原始的だなぁ」
「俺みたいになれるぜ!」
ニヤッと不敵に笑う流は……雄々しくて、男の色気満載だ!
****
ひゃあ……っ!
足下を見たことがないような足を持った虫が這いつくばっていくのが視界に入り、心の中で悲鳴をあげた。
僕は……本当は虫が大の苦手だ。
公にはしていないので、誰も知らないが。
いや、流はきっと気付いているだろう。
ぞわぞわと鳥肌を立てていると、背後から包み込むような柔らかい声がした。
「住職さまぁ~ 潤くんのコテージのリビングを、日中は解放してくれるそうですよ。行きましょう」
「コテージのリビングか、いいね」
「はい! 今から甘いお茶会ですよぅ」
小森くんが無邪気に僕の手を引っ張ってくれる。小森くんの存在は僕にとっても大きい。この子の無邪気さが、月影寺をいつも邪悪なものから守ってくれている。
コテージのリビングルームは、温もりのある空間だった。
「菫さん、お邪魔してすみません」
「翠さん。いえいえ、とんでもないです。ここは是非皆さんの共用スペースとして使って下さいね」
「ありがとうございます。お茶会って、やっぱり『あんこ』だったのですね」
テーブルには管野くんが持ってきた差し入れのお饅頭が、ずらりと並んでいた。
「テント張りと虫取りが終わったら、ここで一服してもらおうと思って、準備中です。それまで翠さんと管野くんに、手伝って欲しいことがあるんですが」
「なんです?」
「さっき宗吾さんに頼まれたんですが、この布を切ってガーランドを作ろうと思って」
青や水色や白い布を出された。
「ガーランド?」
「こういうのです」
「あぁ、旗?」
「まぁそんな感じです。借りたテントが地味なので、これで飾りつけをしてグランピング感を出そうって盛り上がってしまって。あ、私アウトドア用品の店員なので張り切ってしまうんです」
「いいですね。キャンプもグランピングも僕は初めてなので、楽しいです」
そうか、キャンプって、食事だけでなく空間も手作りなんだな。
皆でテントを張って周囲を飾り付ける。心地良いスペースを知恵を出し合って作る。『家族の家』とはまた別の、『仲間の家』を作っている最中なのか。
どこか苦しく切ない青春時代を送った僕だから、今、その作業に加わっていること自体にワクワクしてくる。
これは洋くんと瑞樹くんにも、同じ事が言えるのかも。
僕達……いくつになっても青春を味わう権利はあるはずだ。
それが……まさに今なんだね。
僕もせっかく袈裟を脱いでいるのだから、少し羽目を外して楽しみたい。
今を楽しもう!
ここに集う仲間と共に―
「悪いが後でな。ここは危ないから向こうで待ってろ!」
「えー」
本当は手伝わせてあげたいのは山々だが、急遽テントを4張立てることになったので、芽生たちの相手をする時間も余裕もない。
正直、今は面倒臭いとすら思ってしまった。
あー 俺はこういう時、心が狭くなる。
ちょっと自己嫌悪してしまう。
「あの、よかったらオレが相手しますよ」
「お! 薙くん! どこ行ってたんだ?」
「ちょっとトイレに行っている間に話が進んでいて、驚きました」
翠さんの息子の薙くんが声をかけてくれたので、助かった。
高校1年生の彼は、芽生にとって憧れのお兄さん的な存在のようだ。
「オヤブン~!」
「子分!」
「オヤブン、この子は、ボクのおとうとブンのいっくんです」
「えへへ、いっくんでしゅ。えっと……めーくん、なんていえばいいの?」
「デシ入りさせてくださいだよ!」
「わかった! いっくんもダシいりしてくだちゃい」
「出汁? くくっ、よかったな。可愛い子分が出来て。よーし、じゃあ虫取りにでも行くか」
芽生の顔がパァァーと明るくなる。
いっくんもワクワクしている。
「むちとりには、はっぱさんも、いましゅか」
「葉っぱ? あぁ一杯あるよ」
しかし薙くん一人に、子供二人はちょっと心配だな。やっぱり俺が行くべきか。
「あの、宗吾さん、僕たちがついていきますので」
振り返ると、瑞樹と洋くんが仲良く並んで立っていた。
二人は雰囲気は違えども通じ合うものがあるらしく、すっかり意気投合しているようだ。
「あぁ、よろしく頼む」
「あ、パパ、そうだ! 今日の夜はオヤブンもいっしょでいいかな?」
「ん? なんの話?」
薙くんが芽生をじっと見つめる。
「さっきね、どこでだれがいっしょにねむるのか、決めていたんだよ。ボクといっくんはいっしょのテントだから、オヤブンもいっしょがいいなぁ」
薙くんは少し目を泳がしたが、すぐに快く了解してくれた。
「いいよ! 父さんたちのテントは……たぶん暑くて狭い予感がするから」
「わーい!」
はは、やっぱり瑞樹の予想通り、俺らのテントは今回は託児所だな。
瑞樹と目が合うと、はにかむような可愛い笑みを浮かべていた。
「宗吾さん、僕……ちゃんとお世話しますので、子供たちは一緒でいいですか」
「あぁ、俺もするさ! じゃあ俺たちが一番広いテントにしないとな」
「はい!」
「じゃあ、ちょっとそこの林で遊んできます」
「いってきまーしゅ」
瑞樹、洋くん、薙くんと、芽生といっくんが林に向かってゆっくりと歩き出した。
まるで冒険隊のような背中が、微笑ましい。
「おい、宗吾、ここはこうでいいのか」
「あぁ、それで合ってる。流はテント張るの慣れてんな」
「学生時代はよくテントを担いで放浪していたからな」
「想像できる!」
テントを半分張り終わった所で、ペットボトルの水を飲んでいると、潤がやってきた。
「オレも手伝います」
「菫さんの所にいなくていいのか」
「今、コテージでは、寺の小坊主、小森くん達のお茶会が開かれていて、ちょっと照れ臭いんですよ。オレは力仕事の方が好きなんで」
「ははっ、甘い匂いが充満していそうだな」
「あんこ、あんこ……どうしてキャンプ場なのに、あんなにあんこがあるんでしょうかね」
「ははっ、単純に好きだからだろ。あ、丈さんを知らないか」
「丈さんなら、あそこですよ」
丈さんは周囲の様子に耳を澄ましているようだ。
ふーん、寡黙で群れないタイプの男は、一人で立っているだけでも絵になるもんだな。
クールで知的な外科医として、外では隙がない男なのだろう。
だが、今晩は彼の羽目を外させてみたい。
手強そうだが、覚悟しろよ!
そう思うと口元が緩んだ。
「宗吾、ニヤついてんな~」
「そういう流こそ。だがテントじゃ、手出しできないだろ?」
「いや、そうでもないかも」
「ははっ、テントの壁は薄い。お向かいは女性ばかりのログハウスだ。夜はシルエットも声も筒抜けだから、気をつけろよ」
「心得ているさ!」
流のウキウキした様子に、思わず笑みが零れる。
ハプニングはあったが、俺が企画した旅行だ。
皆が心から楽しんでくれるのが嬉しい。
「あー 動いたら暑くなって、背中が汗でびっしょりだ」
流が上着をヒョイと脱ぎ捨てた。
筋肉隆々とした凜々しく引き締まった上半身は、見惚れるほどだった。
付近で「きゃ~」という黄色い歓声が聞こえたような気がしたので、辺りを見渡すが誰もいなかった。さっきから変だな。グサグサと刺さる視線を浴びているような気がするが、誰もいない。
「お前さ、いい身体してんな」
「宗吾も鍛えているよな?」
「んー、お前には負けそうだ。俺もまたジムに通うかな」
「ジム? そんなところになんて行かず、うちの寺で薪割りをすればいい」
「えー それはまた原始的だなぁ」
「俺みたいになれるぜ!」
ニヤッと不敵に笑う流は……雄々しくて、男の色気満載だ!
****
ひゃあ……っ!
足下を見たことがないような足を持った虫が這いつくばっていくのが視界に入り、心の中で悲鳴をあげた。
僕は……本当は虫が大の苦手だ。
公にはしていないので、誰も知らないが。
いや、流はきっと気付いているだろう。
ぞわぞわと鳥肌を立てていると、背後から包み込むような柔らかい声がした。
「住職さまぁ~ 潤くんのコテージのリビングを、日中は解放してくれるそうですよ。行きましょう」
「コテージのリビングか、いいね」
「はい! 今から甘いお茶会ですよぅ」
小森くんが無邪気に僕の手を引っ張ってくれる。小森くんの存在は僕にとっても大きい。この子の無邪気さが、月影寺をいつも邪悪なものから守ってくれている。
コテージのリビングルームは、温もりのある空間だった。
「菫さん、お邪魔してすみません」
「翠さん。いえいえ、とんでもないです。ここは是非皆さんの共用スペースとして使って下さいね」
「ありがとうございます。お茶会って、やっぱり『あんこ』だったのですね」
テーブルには管野くんが持ってきた差し入れのお饅頭が、ずらりと並んでいた。
「テント張りと虫取りが終わったら、ここで一服してもらおうと思って、準備中です。それまで翠さんと管野くんに、手伝って欲しいことがあるんですが」
「なんです?」
「さっき宗吾さんに頼まれたんですが、この布を切ってガーランドを作ろうと思って」
青や水色や白い布を出された。
「ガーランド?」
「こういうのです」
「あぁ、旗?」
「まぁそんな感じです。借りたテントが地味なので、これで飾りつけをしてグランピング感を出そうって盛り上がってしまって。あ、私アウトドア用品の店員なので張り切ってしまうんです」
「いいですね。キャンプもグランピングも僕は初めてなので、楽しいです」
そうか、キャンプって、食事だけでなく空間も手作りなんだな。
皆でテントを張って周囲を飾り付ける。心地良いスペースを知恵を出し合って作る。『家族の家』とはまた別の、『仲間の家』を作っている最中なのか。
どこか苦しく切ない青春時代を送った僕だから、今、その作業に加わっていること自体にワクワクしてくる。
これは洋くんと瑞樹くんにも、同じ事が言えるのかも。
僕達……いくつになっても青春を味わう権利はあるはずだ。
それが……まさに今なんだね。
僕もせっかく袈裟を脱いでいるのだから、少し羽目を外して楽しみたい。
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