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小学生編
光の庭にて 14
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宗吾さんも芽生くんも熟睡していたので、僕はそっと宿坊を抜け出して、月影寺の中庭を歩き出した。
ずっと気になっていたんだ。
この美しい庭をゆっくり歩いてみたいと。
昨日から降り続いた雨は止んでおり、竹林には清々しい空気が流れ、生まれたての朝日が降り注いでいた。
新緑の葉に残る雨の雫が、光を含んでキラキラと輝いているのも目映い。
「ここは……まるで光の庭だな」
目を細めて辺りを見渡すと、突然茂みがガサッと揺れて白い影が現れた。
「てるてる坊主のおばけっ?」と一瞬身構えてしまったが、現れたのは白いリネンシャツを着た洋くんだった。
「よ……洋くん!」
「あれ、瑞樹くんじゃないか」
確か……洋くんは朝が苦手だったはずだが、もうすっかり身支度も調えていたので、驚いてしまった。
「瑞樹くん、おはよう。随分早起きだな」
「洋くんこそ、どこかへ行く所だった?」
「あぁ、お墓参りに行こうと思って」
「お墓?」
「……俺の両親の墓があるんだ」
「そうだったのか。あの、僕も一緒に行っても?」
洋くんは嬉しそうに頷いてくれた。
「あぁいいよ。ちょうど瑞樹くんを両親に紹介したかったんだ」
竹林を抜けた先に、古めかしい墓地があった。
「瑞樹くん……俺が春休みに忙しかったのは、実は父親のルーツを探しに京都に行っていたからなんだ」
そうだったのか。僕が父を探したように洋くんもお父さんを探していたのか。
「ずっとよく分からなかったんだ。父の記憶が殆どなくて」
僕もずっとそうだったので、その気持ちよく分かるよ。僕の場合は記憶を封印していたので、思い出せなかった訳だが。
「それで分かったの?」
「あぁ……その過程で父の兄……つまり俺にとって伯父さんと出逢えたんだ」
そうか、洋くんが少し変わった気がしたのは『確かなもの』を得たからだったのか。
「あ……ごめん。俺のことばかり話して……あぁ、こんなんじゃ駄目だな、瑞樹くんとの距離感が上手く掴めなくて」
洋くんが申し訳なさそうに俯いてしまったので、それは違うと思った。
僕も両親亡き後……誰かと親密になるのが苦手で怖かった。だから洋くんが戸惑う気持ちが分かるよ。
「とんでもないよ。話を続けて欲しいな。僕を信じて大切なことを教えてくれて嬉しいよ」
「そうなのか」
「そうだ。あそこの石段に腰掛けて話さない?」
「あぁ」
「僕もね……この冬に大切な人と再会したんだ。父のことも僕のこともよく知っている人で……その人が僕の本当にお父さんになってくれたんだよ」
僕もまだ身内以外に話していなかったくまさんのことを、洋くんに話せた。
「そうだったのか。瑞樹くんにもそんな人が現れたのか」
「うん、洋くんと同じタイミングだったんだね」
「……確かなものの存在が、俺の意識を変えてくれたようだ」
「洋くんに自信がついたみたいだね」
洋くんは口数が多い方ではないが、一言一言に重みがある。
「そうだ……昨日の話だが……キャンプなんて大丈夫かな。俺はそういうのに行ったことがないから、上手く立ち回れるか心配だな」
「そんなの関係ないよ。洋くんは洋くんのペースでいたらいい。盛り上げてくれる人ならいるしね」
「ははっ、宗吾さんって明るくて決断力がすごいな。キャンプの話もあっという間に決まって驚いたよ」
「皆の日程が合うといいね、頑張って調整しよう」
「あぁ」
洋くんが照れ臭そうに片手を僕に向けてあげたので、その意図を汲んで、その手を軽く叩いてみた。
ハイタッチは心と心の触れ合いだ。
「ありがとう! 俺もこんなこと……ずっと……してみたかった」
「洋くん、僕たち、一緒にいろいろ挑戦してみよう。キャンプでは僕たちも弾けてみよう」
「ははっ、そうだな」
洋くんのご両親に、僕もお参りした。
「はじめまして、僕は葉山瑞樹です。僕は洋くんの友人です。この夏、僕たちは一緒にキャンプに行ってきます。もっと彼と親交を深めたいと思っていたので楽しみです」
「ありがとう。戻ろうか。宗吾さんが心配しているんじゃ」
「そうだね、勝手に抜け出してきてしまったから」
戻る道には、紫陽花が綺麗に咲いていた。それを二人で優雅に眺めていると、大きな声が響いてきた。
「おーい! 瑞樹ぃ~」
「あ、宗吾さん!」
「どこに行ってたんだ」
「朝の散歩を洋くんとしていました」
「そうか。いいことがあったみたいだな」
「あ……はい!」
「俺もあったぞ。昨日SNSに拡散した花手水のアクセス数を見てくれ。これで月影寺も暫く安泰だな。それに美しい花手水を生けた人は誰かって話題になっているぞ」
「えぇ!」
気恥ずかしかったが、役に立てて嬉しかった。
その後には流さんお手製の昼食までご馳走になって、僕らは次の約束をして、帰路についた。
月影寺には、光の庭がある。
降り注ぐ光は、月光のように静かで穏やかな光だ。
そして……梅雨が明け夏がやってきたら……僕は彼らとサマーキャンプに行く。
僕たちは、そこで共通の思い出を作る。
こうやって人と人は親交を深めていくんだね。
****
軽井沢――
「いっくん、ご飯よ」
「ママぁ……」
保育園から帰ってから、いっくんの様子がおかしいわ。
「どうしたのかなぁ。ママにはナイショ?」
「ううん……あのねあのね……なこちゃんもゆーくんもたすくくんも、みーんな、なつやすみがあるんだって」
「夏休み?」
「うん! あのねあのね、みんなきゃっぷにいくんだって」
きゃっぷ? って何だろ?
「そうなのね、夏休みかぁ」
今年は夏休みは取れないかな。結婚して潤くんがこの家に住んでくれるようになったのは嬉しいけれども、ワンルームのアパートでは正直親子3人で暮らすのには手狭過ぎるの。引っ越し費用を貯めるために遊んでいる場合じゃ……
「あ、パパだ。おかえりなしゃーい」
「本当だ、潤くんお帰りなさい」
いっくんと私は潤くんが大好き。だから潤くんが帰宅すると一気に活気づく。
「ただいま!」
「パパぁ~ いっくんね、きゃっぷにいきたい」
「キャップ?」
「うん、なつやすみにみんないくんだって、いいなぁ」
「うん? 菫さん、なんだろ?」
「さぁ……よく分からないの」
三歳くらいの子供の言葉って難しいわ。
「あ、そうだ……瑞樹くんなら分かるかも」
「そうだな、ちょっと兄さんに聞いてみるよ」
****
「もしもし兄さん」
「潤! ちょうど今、電話しようと思っていたんだよ」
「そうなのか。俺も聞きたいことがあって」
「何かな? 僕で役立つことならいいけど」
「いっくんが夏休みにキャップに行きたいって言うんだけど、どこのことか分かるか」
キャップ? キャップって……
「あ……もしかしてキャンプじゃないのかな?」
「あぁそうか! なんで思いつかなかったのか。キャンプかぁ……道具も持っていないし厳しいかな。じゃあ……ありがとうな」
潤ががっかりした声で電話を切ろうとしたので、慌てて呼び止めた。
「あ、待って! 丁度、潤をキャンプに招待しようと思っていたんだ」
「え?」
「あのね、宗吾さんがプロデュースしたキャンプ場のログハウスの宿泊券があるんだ。僕の友人一家と夏休みに行くんだけど、潤もどうかな?」
「ええ? だが……兄さんの大切な友達と行くんだろう……」
潤が変な遠慮をしているのが、ひしひしと伝わってきた。
「潤、兄さんに遠慮はいらないんだよ。せっかく結婚式を挙げたのに新婚旅行にも行ってないんだから、夏休みに1泊くらい、いいんじゃないかな? 兄さんも潤に会いたいし……いっくんのことも見てあげるから、菫さんとゆっくり過ごしにおいでよ」
「ゴクッ……菫さんと夜……二人きり……」
んん? 潤の喉が鳴ったのが、電話越しにも聞こえた。
僕、変なスイッチ押していないよな?
「とにかく、8月で二人が休めそうな日を教えてくれないか」
「兄さん……ありがとう! 誘ってくれて、すげー嬉しいよ」
「良かった。芽生くんもいっくんが来てくれたら喜ぶし、前向きに考えて」
「あぁ! 前のめりで考える!」
「くすっ」
なんだか兄らしいことを出来た気がして、僕もご機嫌になってしまった。
電話を切ると、宗吾さんに腰を抱かれた。
「瑞樹、ご機嫌そうだな」
腰からヒップにかけて……身体の線を優しく撫でられる。
「あ……あの……今日も?」
「どうもキャンプでは俺たち、子守りに徹するような気がするから、その分を今からたっぷり蓄えておかないと」
「え……あ、せめて……電気を」
「今日は君のことを、よく見たいんだ」
「あ……もうっ……っ」
ベッドサイトの照明に浴びながら、宗吾さんにベッドに押し倒された。
宗吾さんは、僕の光だ。
明るい光で僕を導いて包んでくれる人だ。
僕にとって……光の庭はここだ。
「あ……んんっ……あっ」
「瑞樹……瑞樹っ」
揺さぶられる身体。
ふと見上げると……宗吾さんの逞しい身体から迸る汗が雫のように見え、照明を通すとキラキラと輝いて見えた。
夏は、すぐそこまで来ている。
間もなく梅雨が明ける!
今年の夏は、サマーキャンプに行く。
希望に満ちあふれた未来が手を伸ばせば存在することの喜びを感じながら、僕は身体の力を抜いて、宗吾さんに全てを委ねていく。
『光の庭にて』 了
****
明日から『 Happy Summer Camp』を連載します!
ずっと気になっていたんだ。
この美しい庭をゆっくり歩いてみたいと。
昨日から降り続いた雨は止んでおり、竹林には清々しい空気が流れ、生まれたての朝日が降り注いでいた。
新緑の葉に残る雨の雫が、光を含んでキラキラと輝いているのも目映い。
「ここは……まるで光の庭だな」
目を細めて辺りを見渡すと、突然茂みがガサッと揺れて白い影が現れた。
「てるてる坊主のおばけっ?」と一瞬身構えてしまったが、現れたのは白いリネンシャツを着た洋くんだった。
「よ……洋くん!」
「あれ、瑞樹くんじゃないか」
確か……洋くんは朝が苦手だったはずだが、もうすっかり身支度も調えていたので、驚いてしまった。
「瑞樹くん、おはよう。随分早起きだな」
「洋くんこそ、どこかへ行く所だった?」
「あぁ、お墓参りに行こうと思って」
「お墓?」
「……俺の両親の墓があるんだ」
「そうだったのか。あの、僕も一緒に行っても?」
洋くんは嬉しそうに頷いてくれた。
「あぁいいよ。ちょうど瑞樹くんを両親に紹介したかったんだ」
竹林を抜けた先に、古めかしい墓地があった。
「瑞樹くん……俺が春休みに忙しかったのは、実は父親のルーツを探しに京都に行っていたからなんだ」
そうだったのか。僕が父を探したように洋くんもお父さんを探していたのか。
「ずっとよく分からなかったんだ。父の記憶が殆どなくて」
僕もずっとそうだったので、その気持ちよく分かるよ。僕の場合は記憶を封印していたので、思い出せなかった訳だが。
「それで分かったの?」
「あぁ……その過程で父の兄……つまり俺にとって伯父さんと出逢えたんだ」
そうか、洋くんが少し変わった気がしたのは『確かなもの』を得たからだったのか。
「あ……ごめん。俺のことばかり話して……あぁ、こんなんじゃ駄目だな、瑞樹くんとの距離感が上手く掴めなくて」
洋くんが申し訳なさそうに俯いてしまったので、それは違うと思った。
僕も両親亡き後……誰かと親密になるのが苦手で怖かった。だから洋くんが戸惑う気持ちが分かるよ。
「とんでもないよ。話を続けて欲しいな。僕を信じて大切なことを教えてくれて嬉しいよ」
「そうなのか」
「そうだ。あそこの石段に腰掛けて話さない?」
「あぁ」
「僕もね……この冬に大切な人と再会したんだ。父のことも僕のこともよく知っている人で……その人が僕の本当にお父さんになってくれたんだよ」
僕もまだ身内以外に話していなかったくまさんのことを、洋くんに話せた。
「そうだったのか。瑞樹くんにもそんな人が現れたのか」
「うん、洋くんと同じタイミングだったんだね」
「……確かなものの存在が、俺の意識を変えてくれたようだ」
「洋くんに自信がついたみたいだね」
洋くんは口数が多い方ではないが、一言一言に重みがある。
「そうだ……昨日の話だが……キャンプなんて大丈夫かな。俺はそういうのに行ったことがないから、上手く立ち回れるか心配だな」
「そんなの関係ないよ。洋くんは洋くんのペースでいたらいい。盛り上げてくれる人ならいるしね」
「ははっ、宗吾さんって明るくて決断力がすごいな。キャンプの話もあっという間に決まって驚いたよ」
「皆の日程が合うといいね、頑張って調整しよう」
「あぁ」
洋くんが照れ臭そうに片手を僕に向けてあげたので、その意図を汲んで、その手を軽く叩いてみた。
ハイタッチは心と心の触れ合いだ。
「ありがとう! 俺もこんなこと……ずっと……してみたかった」
「洋くん、僕たち、一緒にいろいろ挑戦してみよう。キャンプでは僕たちも弾けてみよう」
「ははっ、そうだな」
洋くんのご両親に、僕もお参りした。
「はじめまして、僕は葉山瑞樹です。僕は洋くんの友人です。この夏、僕たちは一緒にキャンプに行ってきます。もっと彼と親交を深めたいと思っていたので楽しみです」
「ありがとう。戻ろうか。宗吾さんが心配しているんじゃ」
「そうだね、勝手に抜け出してきてしまったから」
戻る道には、紫陽花が綺麗に咲いていた。それを二人で優雅に眺めていると、大きな声が響いてきた。
「おーい! 瑞樹ぃ~」
「あ、宗吾さん!」
「どこに行ってたんだ」
「朝の散歩を洋くんとしていました」
「そうか。いいことがあったみたいだな」
「あ……はい!」
「俺もあったぞ。昨日SNSに拡散した花手水のアクセス数を見てくれ。これで月影寺も暫く安泰だな。それに美しい花手水を生けた人は誰かって話題になっているぞ」
「えぇ!」
気恥ずかしかったが、役に立てて嬉しかった。
その後には流さんお手製の昼食までご馳走になって、僕らは次の約束をして、帰路についた。
月影寺には、光の庭がある。
降り注ぐ光は、月光のように静かで穏やかな光だ。
そして……梅雨が明け夏がやってきたら……僕は彼らとサマーキャンプに行く。
僕たちは、そこで共通の思い出を作る。
こうやって人と人は親交を深めていくんだね。
****
軽井沢――
「いっくん、ご飯よ」
「ママぁ……」
保育園から帰ってから、いっくんの様子がおかしいわ。
「どうしたのかなぁ。ママにはナイショ?」
「ううん……あのねあのね……なこちゃんもゆーくんもたすくくんも、みーんな、なつやすみがあるんだって」
「夏休み?」
「うん! あのねあのね、みんなきゃっぷにいくんだって」
きゃっぷ? って何だろ?
「そうなのね、夏休みかぁ」
今年は夏休みは取れないかな。結婚して潤くんがこの家に住んでくれるようになったのは嬉しいけれども、ワンルームのアパートでは正直親子3人で暮らすのには手狭過ぎるの。引っ越し費用を貯めるために遊んでいる場合じゃ……
「あ、パパだ。おかえりなしゃーい」
「本当だ、潤くんお帰りなさい」
いっくんと私は潤くんが大好き。だから潤くんが帰宅すると一気に活気づく。
「ただいま!」
「パパぁ~ いっくんね、きゃっぷにいきたい」
「キャップ?」
「うん、なつやすみにみんないくんだって、いいなぁ」
「うん? 菫さん、なんだろ?」
「さぁ……よく分からないの」
三歳くらいの子供の言葉って難しいわ。
「あ、そうだ……瑞樹くんなら分かるかも」
「そうだな、ちょっと兄さんに聞いてみるよ」
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「もしもし兄さん」
「潤! ちょうど今、電話しようと思っていたんだよ」
「そうなのか。俺も聞きたいことがあって」
「何かな? 僕で役立つことならいいけど」
「いっくんが夏休みにキャップに行きたいって言うんだけど、どこのことか分かるか」
キャップ? キャップって……
「あ……もしかしてキャンプじゃないのかな?」
「あぁそうか! なんで思いつかなかったのか。キャンプかぁ……道具も持っていないし厳しいかな。じゃあ……ありがとうな」
潤ががっかりした声で電話を切ろうとしたので、慌てて呼び止めた。
「あ、待って! 丁度、潤をキャンプに招待しようと思っていたんだ」
「え?」
「あのね、宗吾さんがプロデュースしたキャンプ場のログハウスの宿泊券があるんだ。僕の友人一家と夏休みに行くんだけど、潤もどうかな?」
「ええ? だが……兄さんの大切な友達と行くんだろう……」
潤が変な遠慮をしているのが、ひしひしと伝わってきた。
「潤、兄さんに遠慮はいらないんだよ。せっかく結婚式を挙げたのに新婚旅行にも行ってないんだから、夏休みに1泊くらい、いいんじゃないかな? 兄さんも潤に会いたいし……いっくんのことも見てあげるから、菫さんとゆっくり過ごしにおいでよ」
「ゴクッ……菫さんと夜……二人きり……」
んん? 潤の喉が鳴ったのが、電話越しにも聞こえた。
僕、変なスイッチ押していないよな?
「とにかく、8月で二人が休めそうな日を教えてくれないか」
「兄さん……ありがとう! 誘ってくれて、すげー嬉しいよ」
「良かった。芽生くんもいっくんが来てくれたら喜ぶし、前向きに考えて」
「あぁ! 前のめりで考える!」
「くすっ」
なんだか兄らしいことを出来た気がして、僕もご機嫌になってしまった。
電話を切ると、宗吾さんに腰を抱かれた。
「瑞樹、ご機嫌そうだな」
腰からヒップにかけて……身体の線を優しく撫でられる。
「あ……あの……今日も?」
「どうもキャンプでは俺たち、子守りに徹するような気がするから、その分を今からたっぷり蓄えておかないと」
「え……あ、せめて……電気を」
「今日は君のことを、よく見たいんだ」
「あ……もうっ……っ」
ベッドサイトの照明に浴びながら、宗吾さんにベッドに押し倒された。
宗吾さんは、僕の光だ。
明るい光で僕を導いて包んでくれる人だ。
僕にとって……光の庭はここだ。
「あ……んんっ……あっ」
「瑞樹……瑞樹っ」
揺さぶられる身体。
ふと見上げると……宗吾さんの逞しい身体から迸る汗が雫のように見え、照明を通すとキラキラと輝いて見えた。
夏は、すぐそこまで来ている。
間もなく梅雨が明ける!
今年の夏は、サマーキャンプに行く。
希望に満ちあふれた未来が手を伸ばせば存在することの喜びを感じながら、僕は身体の力を抜いて、宗吾さんに全てを委ねていく。
『光の庭にて』 了
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明日から『 Happy Summer Camp』を連載します!
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