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小学生編
誓いの言葉 21
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「で、どうやってお祝いをするつもりだ?」
「うん……僕が……内緒でお母さんのブーケを作るのはどうかな?」
「へぇ、瑞樹が作ってくれるなんて最高だな。母さんきっと喜ぶよ」
「そ、そうかな? だといいんだけど……それでね……」
電話の向こうの瑞樹が、また躊躇うような声を出す。
おいっ、こらっ、俺に甘えろ。
もっと甘えろよ!
そう念じたくなる。
「瑞樹? なぁ、他にも何かあるんだろ? ちゃんと話せよ」
「う、うん……それでね……実は兄さんにもお願いがあって」
「なんだ? 何でも手伝うぞ」
「……くまさんのブートニア……現地で兄さんに作ってもらってもいいかな?」
「ん? 瑞樹がブーケと揃えて作った方がいいんじゃないのか」
瑞樹の意図が読めず、確認してしまった。
「えっと……僕……兄さんと合作したいんだ」
「俺と? くぅ……最高に嬉しいぜ!」
やばい、胸がポカポカだ。
「くまさんは僕のお父さん代わりだから、僕とは既に親しい存在だけど、兄さんにとっては新しいお父さんになるわけだから……親しくなるきっかけになればいいなって……」
あぁ可愛い! 俺の弟はどうしてこんなに可愛いんだと叫んで走り出したくなった。目の前にいたらぎゅーっと抱きしめてやりたくなるほど、健気で優しくて可憐で……溜らない!
「あの……兄さん? 聞いてる?」
「すげーニヤついてた。瑞樹が可愛すぎてヤバイ」
「も、もう……」
「で、いつ母さん達に渡すつもりだ?」
「そうだね。それを少し迷っていて……今から潤に相談してみようかな」
「それがいいな。アイツも仲間だもんな。しかし驚くだろうな」
潤も熊田さんに函館で会っている。
きっと最初は驚くだろうが、すぐに喜ぶだろう。
こうやって幸せの輪というものは、どんどん横に広がっていくのか。
俺は今……それを目の当たりにしている。
「じゃあまた報告するね」
「あぁ待っているよ。瑞樹、おやすみ」
「うん、兄さん、ありがとう」
ずっと何も望まなかった瑞樹が、初めて自分から動いた。
それが母さんの結婚を祝いたいという内容なのが、本当に嬉しいよ。
このサプライズを俺たち三兄弟が成し遂げた時、絆が更に深まるだろう!
****
「菅野、まだいたのか」
「あ、はい、あと少しで終わります」
後片付けをしていると、通りがかったリーダーに話し掛けられた。
今日はリーダの指示通り、ずっと葉山と組んで作業をした。
「右手は腱鞘炎気味だったけど、もう大丈夫だよ。何でも手伝うよ」とふんわりと優しく微笑む葉山だったが、無理してぶり返しては大変だと極力作業の負担を減らしてやった。
それは俺にとって負担ではなく、喜びだった。
いつも控えめで一歩下がってしまう葉山が、函館へ緊急出張という大切な仕事を任され、力を振り絞ってきた。腱鞘炎になるほど手を酷使して来た。
だから労ってやりたかったし、支えてやりたかった。
俺はそれほどまでに同期の葉山を大切に思っている。
「そうか、今日はどうだった?」
リーダーも葉山のことが気になっているようだ。
「手がまだ本調子ではなっかったので、重い物は絶対に持たせませんでした」
「……そうか、ありがとう。やっぱり菅野に任せて正解だったな。君たちはいいコンビだな」
「そう言ってもらえるのは光栄です。葉山は今日はまだ疲れが残っているようだったので、先に帰らせました」
「そうか、懸命な判断だ。それにしても……菅野は上に立つ素質が十分あるな。腕前も見事だし」
「あ、ありがとうございます」
リーダーは、人間味があり広い心で物事を見渡せる人だ。
だから俺も葉山も、リーダーのことが大好きで尊敬している。
「よし、今日は飲みに行くか。奢ってやる」
「え? いいんですか」
「あぁ、頑張ったからな。それ? 片付け、手伝うよ」
「悪いですよ」
「おれにも葉山と菅野のような信頼関係の同期がいたんだ。アイツは……地方に行ったきり帰ってこないが……なんだか懐かしくてな」
ポンと肩に手を置かれると、1日の疲れが吹っ飛んだ。
葉山も今頃、芽生坊と宗吾さんとゆっくり過ごしているだろう。
俺だけ悪いなと思いつつ、リーダーにくっついて外に出た。
「菅野、今度は葉山も誘って三人で飲みに行こう」
「そうですね。葉山も誘い出しましょう」
「あぁ、たまにはいいだろう」
近頃めきめきと明るく積極的になってきた葉山の可愛らしい顔を思い浮かべると、その後、俺の大事なこもりんの顔が浮かんできた。
(かんのくーん、僕……お腹が空きましたよ。あんこに飢えています)
ヤバイなぁ、そんな幻覚が見えて来たぞ。
「あの、リーダー、この辺で美味しい甘味屋さんってありますか」
「そうだな、駅前のハチミツという甘味やさんはどうだ?」
「そこは何がオススメですか」
「この時期なら最中アイスかな」
「最中! いいっすね。買って帰ります」
「ははっ、恋人にお土産か」
「はい!」
俺の恋人は、大のあんこ好きだ。
『あんこは甘い=こもりんも甘い』
そんな方程式が、駆け巡る。
「……葉山にも恋人がいるようだな」
「みたいですね」
ほろ酔い気分のリーダーが珍しく立ち入ったことを聞いてくる。
「大切な人の存在とは……いいものだ。幸せになれるし、幸せにしてあげたくなるよな」
「はい、その通りです」
「……もうすぐ結婚25周年なんだ」
「え? あ、おめでとうございます」
リーダーがプライベートなことを語るのも、珍しい。
「菅野と葉山が、毎日生き生きと帰って行く姿を見ていると、初心を思い出すんだよ」
「わー 俺、そんなに顔に出ていますか」
「まぁ……菅野はバレバレだな。葉山は澄ました顔をしているが、そのうちきっと墓穴を掘ってくれると期待しているよ」
「ははは……それは大いにあり得ます」
なんといっても、瑞樹ちゃんの墓穴はお墨付きだ。(誰の?)
葉山がもっと会社でも打ち解けて、力を発揮していけますように。
そう願いながら、ビールをお代わりした。
「うん……僕が……内緒でお母さんのブーケを作るのはどうかな?」
「へぇ、瑞樹が作ってくれるなんて最高だな。母さんきっと喜ぶよ」
「そ、そうかな? だといいんだけど……それでね……」
電話の向こうの瑞樹が、また躊躇うような声を出す。
おいっ、こらっ、俺に甘えろ。
もっと甘えろよ!
そう念じたくなる。
「瑞樹? なぁ、他にも何かあるんだろ? ちゃんと話せよ」
「う、うん……それでね……実は兄さんにもお願いがあって」
「なんだ? 何でも手伝うぞ」
「……くまさんのブートニア……現地で兄さんに作ってもらってもいいかな?」
「ん? 瑞樹がブーケと揃えて作った方がいいんじゃないのか」
瑞樹の意図が読めず、確認してしまった。
「えっと……僕……兄さんと合作したいんだ」
「俺と? くぅ……最高に嬉しいぜ!」
やばい、胸がポカポカだ。
「くまさんは僕のお父さん代わりだから、僕とは既に親しい存在だけど、兄さんにとっては新しいお父さんになるわけだから……親しくなるきっかけになればいいなって……」
あぁ可愛い! 俺の弟はどうしてこんなに可愛いんだと叫んで走り出したくなった。目の前にいたらぎゅーっと抱きしめてやりたくなるほど、健気で優しくて可憐で……溜らない!
「あの……兄さん? 聞いてる?」
「すげーニヤついてた。瑞樹が可愛すぎてヤバイ」
「も、もう……」
「で、いつ母さん達に渡すつもりだ?」
「そうだね。それを少し迷っていて……今から潤に相談してみようかな」
「それがいいな。アイツも仲間だもんな。しかし驚くだろうな」
潤も熊田さんに函館で会っている。
きっと最初は驚くだろうが、すぐに喜ぶだろう。
こうやって幸せの輪というものは、どんどん横に広がっていくのか。
俺は今……それを目の当たりにしている。
「じゃあまた報告するね」
「あぁ待っているよ。瑞樹、おやすみ」
「うん、兄さん、ありがとう」
ずっと何も望まなかった瑞樹が、初めて自分から動いた。
それが母さんの結婚を祝いたいという内容なのが、本当に嬉しいよ。
このサプライズを俺たち三兄弟が成し遂げた時、絆が更に深まるだろう!
****
「菅野、まだいたのか」
「あ、はい、あと少しで終わります」
後片付けをしていると、通りがかったリーダーに話し掛けられた。
今日はリーダの指示通り、ずっと葉山と組んで作業をした。
「右手は腱鞘炎気味だったけど、もう大丈夫だよ。何でも手伝うよ」とふんわりと優しく微笑む葉山だったが、無理してぶり返しては大変だと極力作業の負担を減らしてやった。
それは俺にとって負担ではなく、喜びだった。
いつも控えめで一歩下がってしまう葉山が、函館へ緊急出張という大切な仕事を任され、力を振り絞ってきた。腱鞘炎になるほど手を酷使して来た。
だから労ってやりたかったし、支えてやりたかった。
俺はそれほどまでに同期の葉山を大切に思っている。
「そうか、今日はどうだった?」
リーダーも葉山のことが気になっているようだ。
「手がまだ本調子ではなっかったので、重い物は絶対に持たせませんでした」
「……そうか、ありがとう。やっぱり菅野に任せて正解だったな。君たちはいいコンビだな」
「そう言ってもらえるのは光栄です。葉山は今日はまだ疲れが残っているようだったので、先に帰らせました」
「そうか、懸命な判断だ。それにしても……菅野は上に立つ素質が十分あるな。腕前も見事だし」
「あ、ありがとうございます」
リーダーは、人間味があり広い心で物事を見渡せる人だ。
だから俺も葉山も、リーダーのことが大好きで尊敬している。
「よし、今日は飲みに行くか。奢ってやる」
「え? いいんですか」
「あぁ、頑張ったからな。それ? 片付け、手伝うよ」
「悪いですよ」
「おれにも葉山と菅野のような信頼関係の同期がいたんだ。アイツは……地方に行ったきり帰ってこないが……なんだか懐かしくてな」
ポンと肩に手を置かれると、1日の疲れが吹っ飛んだ。
葉山も今頃、芽生坊と宗吾さんとゆっくり過ごしているだろう。
俺だけ悪いなと思いつつ、リーダーにくっついて外に出た。
「菅野、今度は葉山も誘って三人で飲みに行こう」
「そうですね。葉山も誘い出しましょう」
「あぁ、たまにはいいだろう」
近頃めきめきと明るく積極的になってきた葉山の可愛らしい顔を思い浮かべると、その後、俺の大事なこもりんの顔が浮かんできた。
(かんのくーん、僕……お腹が空きましたよ。あんこに飢えています)
ヤバイなぁ、そんな幻覚が見えて来たぞ。
「あの、リーダー、この辺で美味しい甘味屋さんってありますか」
「そうだな、駅前のハチミツという甘味やさんはどうだ?」
「そこは何がオススメですか」
「この時期なら最中アイスかな」
「最中! いいっすね。買って帰ります」
「ははっ、恋人にお土産か」
「はい!」
俺の恋人は、大のあんこ好きだ。
『あんこは甘い=こもりんも甘い』
そんな方程式が、駆け巡る。
「……葉山にも恋人がいるようだな」
「みたいですね」
ほろ酔い気分のリーダーが珍しく立ち入ったことを聞いてくる。
「大切な人の存在とは……いいものだ。幸せになれるし、幸せにしてあげたくなるよな」
「はい、その通りです」
「……もうすぐ結婚25周年なんだ」
「え? あ、おめでとうございます」
リーダーがプライベートなことを語るのも、珍しい。
「菅野と葉山が、毎日生き生きと帰って行く姿を見ていると、初心を思い出すんだよ」
「わー 俺、そんなに顔に出ていますか」
「まぁ……菅野はバレバレだな。葉山は澄ました顔をしているが、そのうちきっと墓穴を掘ってくれると期待しているよ」
「ははは……それは大いにあり得ます」
なんといっても、瑞樹ちゃんの墓穴はお墨付きだ。(誰の?)
葉山がもっと会社でも打ち解けて、力を発揮していけますように。
そう願いながら、ビールをお代わりした。
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