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小学生編
花明かりに導かれて 18
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僕の家?
そんな夢のようなことを、願ってもいいのだろうか。
その答えは、夜空に瞬く星が教えてくれた。
……
「瑞樹、応援しているぞ。俺もマイホームを建てたんだ。君と一緒に暮らしたあの家を覚えているか」
「みーくんがいつか結婚して、新居を構えるの……ママ、ひそかに夢見ていたのよ。この前、青い車には乗せてもらったから、次はお家に遊びにいきたいわ」
「おにいちゃんのおうちって、ひみつきち、みたいなの? ぼく、またいっしょにあそびたいな」
……
今、瞬きをしたら、涙が流れそうだ。
遊びに来て欲しい。見守っていて欲しい。
「瑞樹? ご両親に報告していたのか」
「はい……あの、僕も夢を持とうと思いました」
「よかったよ。君は変わったな。どんどんいい方向に向かっている。ただ幸せなだけじゃない。明日も明後日もそうであろうと前に進むようになったんだ」
宗吾さんに布団の中で、きゅっと優しく抱きしめられる。
「くまさんとの出会いが、僕を勇気づけてくれました。お父さんのこと、沢山思い出せて良かったです」
「そうだな。お父さんのことを話す君は、とても嬉しそうだ。やっぱり男親の存在って大事なんだな」
「そんな風に見てくれていたのですね」
確かにそうかもしれない。
宗吾さんと暮らすようになってから、お母さんや夏樹のことはポロポロと思い出せたのに、お父さんだけは闇の向こうだった。
「僕のお父さん、背も高くてカッコよかったんです。自慢のお父さんでした」
「そうか、俺たちも芽生にとってそうありたいな」
「はい、そうですね。芽生くんは、いつも天使のように可愛いです」
隣で寝息を立てているあどけない寝顔を見つめ、ふっと目を細めた。
「芽生の天使化は瑞樹のお陰だよ。瑞樹の接し方が優しく愛情深いから、どんどん吸収ししている。今日だって熊田さんのことを率先して仲間に入れようとしてくれて、俺の方が学ぶことも多いよ」
「僕もです」
「なぁ、俺たち、同じ目標を持ったな。家族の家を建てることと、父親として前進していくこと、瑞樹となら出来ると思えるんだ。俺一人だったら、今頃……挫折していたかもな。ありがとうな」
「僕の方こそ……僕をお父さんにしてくれて、ありがとうございます」
母親的役割も含めてのお父さんだ。
僕は僕らしく生きている。
****
帰りの電車は混んでいたので、俺の膝にいっくんをちょこんと座らせた。
「キツくないか」
「うん!あ、パパぁ、はっぱさんだよ。くもさんだよ。とりさんだよ」
移りゆく窓の外を指さしては、可愛い声で教えてくれるのが可愛くて溜まらない。
俺の目尻はずっと下がりっぱなしだ。
世の中の父親って、みんなこんな気持ちになるのか。
「いっくんってば、はしゃいじゃって」
隣で菫さんも幸せそうに朗らかに笑ってくれる。
「無事に紹介出来てよかった」
「オレ、大丈夫だったかな?」
「うん、うん! 潤くんの誠意、伝わったわ。お父さんね、顔にはあまり出さないけれども嬉しそうだったわ」
「よかったよ」
「私も函館のご家族に受け入れていただけるかなぁ。ちょっと心配」
「母さんには一度会っているし大丈夫だよ。いっくんをひとりでこんなにいい子に育てた菫さんだ。みんな大歓迎だよ」
菫さんと話していると、いっくんがモゾモゾと動き出した。
これは……
「おしっこか」
「……う……ん……もれちゃう」
「きゃー! いっくん、トイレ行かないと!」
「オレが連れていくよ」
「いいの?」
「当たり前だよ」
「じわんとしちゃう。男の子の……させるの難しくて」
「ははっ、こればかりは男同士の方が勝手知ったるだよな」
二人の間に……妙な間が流れる。
うはぁ~照れ臭くなるよ。
「そ、そうよね」
「ぱぱぁ、もれちゃうよぅ。ぐすっ」
「ごめんごめん、よーし、トイレに急行だ」
「わぁい。しゅしゅ、ぽぽっ」
子供のトイレの介助なんてしたことないが、してもらったことはある。
小さい時、公園の汚いトイレが怖くて、兄さんについてきてもらったんだ。
照れ臭いのと……頼りになるなと思ったのと、いろんな感情がごちゃ混ぜになって、「ひとりで出来るからもういい!」って、トイレの中で突き飛ばしてしまった。。
ほんと……ごめんな。
「パパ、こわいでしゅ」
「大丈夫だよ」
「ほら、つかまって」
「ううん……いっくん、まだ、おむつがいいなぁ」
「いっくん」
3歳になったばかりだもんなぁ……もしかして、おむつ……取ったばかりなのか。
「いっくんは、えらいな」
「パパぁ……なでなでして」
いっくんが甘えてくれるのが嬉しい。今までお父さんに甘えられなかった分、俺には沢山甘えて欲しいよ。
だってまだ三歳だ。たった3年しか生きていないんだよ。
父になって知る感情は……多少の後悔や反省もあるが、希望に満ち溢れている。
前へ前へ進もう! いっくんと共に。
「でたよ~ できたよ」
「えらいぞ」
そんな夢のようなことを、願ってもいいのだろうか。
その答えは、夜空に瞬く星が教えてくれた。
……
「瑞樹、応援しているぞ。俺もマイホームを建てたんだ。君と一緒に暮らしたあの家を覚えているか」
「みーくんがいつか結婚して、新居を構えるの……ママ、ひそかに夢見ていたのよ。この前、青い車には乗せてもらったから、次はお家に遊びにいきたいわ」
「おにいちゃんのおうちって、ひみつきち、みたいなの? ぼく、またいっしょにあそびたいな」
……
今、瞬きをしたら、涙が流れそうだ。
遊びに来て欲しい。見守っていて欲しい。
「瑞樹? ご両親に報告していたのか」
「はい……あの、僕も夢を持とうと思いました」
「よかったよ。君は変わったな。どんどんいい方向に向かっている。ただ幸せなだけじゃない。明日も明後日もそうであろうと前に進むようになったんだ」
宗吾さんに布団の中で、きゅっと優しく抱きしめられる。
「くまさんとの出会いが、僕を勇気づけてくれました。お父さんのこと、沢山思い出せて良かったです」
「そうだな。お父さんのことを話す君は、とても嬉しそうだ。やっぱり男親の存在って大事なんだな」
「そんな風に見てくれていたのですね」
確かにそうかもしれない。
宗吾さんと暮らすようになってから、お母さんや夏樹のことはポロポロと思い出せたのに、お父さんだけは闇の向こうだった。
「僕のお父さん、背も高くてカッコよかったんです。自慢のお父さんでした」
「そうか、俺たちも芽生にとってそうありたいな」
「はい、そうですね。芽生くんは、いつも天使のように可愛いです」
隣で寝息を立てているあどけない寝顔を見つめ、ふっと目を細めた。
「芽生の天使化は瑞樹のお陰だよ。瑞樹の接し方が優しく愛情深いから、どんどん吸収ししている。今日だって熊田さんのことを率先して仲間に入れようとしてくれて、俺の方が学ぶことも多いよ」
「僕もです」
「なぁ、俺たち、同じ目標を持ったな。家族の家を建てることと、父親として前進していくこと、瑞樹となら出来ると思えるんだ。俺一人だったら、今頃……挫折していたかもな。ありがとうな」
「僕の方こそ……僕をお父さんにしてくれて、ありがとうございます」
母親的役割も含めてのお父さんだ。
僕は僕らしく生きている。
****
帰りの電車は混んでいたので、俺の膝にいっくんをちょこんと座らせた。
「キツくないか」
「うん!あ、パパぁ、はっぱさんだよ。くもさんだよ。とりさんだよ」
移りゆく窓の外を指さしては、可愛い声で教えてくれるのが可愛くて溜まらない。
俺の目尻はずっと下がりっぱなしだ。
世の中の父親って、みんなこんな気持ちになるのか。
「いっくんってば、はしゃいじゃって」
隣で菫さんも幸せそうに朗らかに笑ってくれる。
「無事に紹介出来てよかった」
「オレ、大丈夫だったかな?」
「うん、うん! 潤くんの誠意、伝わったわ。お父さんね、顔にはあまり出さないけれども嬉しそうだったわ」
「よかったよ」
「私も函館のご家族に受け入れていただけるかなぁ。ちょっと心配」
「母さんには一度会っているし大丈夫だよ。いっくんをひとりでこんなにいい子に育てた菫さんだ。みんな大歓迎だよ」
菫さんと話していると、いっくんがモゾモゾと動き出した。
これは……
「おしっこか」
「……う……ん……もれちゃう」
「きゃー! いっくん、トイレ行かないと!」
「オレが連れていくよ」
「いいの?」
「当たり前だよ」
「じわんとしちゃう。男の子の……させるの難しくて」
「ははっ、こればかりは男同士の方が勝手知ったるだよな」
二人の間に……妙な間が流れる。
うはぁ~照れ臭くなるよ。
「そ、そうよね」
「ぱぱぁ、もれちゃうよぅ。ぐすっ」
「ごめんごめん、よーし、トイレに急行だ」
「わぁい。しゅしゅ、ぽぽっ」
子供のトイレの介助なんてしたことないが、してもらったことはある。
小さい時、公園の汚いトイレが怖くて、兄さんについてきてもらったんだ。
照れ臭いのと……頼りになるなと思ったのと、いろんな感情がごちゃ混ぜになって、「ひとりで出来るからもういい!」って、トイレの中で突き飛ばしてしまった。。
ほんと……ごめんな。
「パパ、こわいでしゅ」
「大丈夫だよ」
「ほら、つかまって」
「ううん……いっくん、まだ、おむつがいいなぁ」
「いっくん」
3歳になったばかりだもんなぁ……もしかして、おむつ……取ったばかりなのか。
「いっくんは、えらいな」
「パパぁ……なでなでして」
いっくんが甘えてくれるのが嬉しい。今までお父さんに甘えられなかった分、俺には沢山甘えて欲しいよ。
だってまだ三歳だ。たった3年しか生きていないんだよ。
父になって知る感情は……多少の後悔や反省もあるが、希望に満ち溢れている。
前へ前へ進もう! いっくんと共に。
「でたよ~ できたよ」
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