上 下
885 / 1,730
小学生編

特別番外編 『ある日の僕』

しおりを挟む
 本日……終日外出するため、短い特別番外編になります。(といっても1600文字になっていました😌)本編はとても大切なシーンなので、明日落ち着いて続きを書きますね。本日はコメディタッチなので、お気楽にお楽しみください💕




『ある日の僕』

****

「葉山、今日のランチは外に行こうぜ」
「珍しいな」
「ちょっと買いたいものがあってさ」
「またお饅頭? それとも最中? 今日はどこまで付き合わされるのかな?」

 からかうように言うと、菅野が照れ臭そうに笑った。

「へへ、東銀座にある『海也最中』っていうのが有名で、一緒に並びに行こうぜ! なっ、頼む!」
「くすっ、いいよ」

 今年の夏、親友の菅野が、突然恋に落ちた。

 相手はとても可愛い小坊主くん。

 あんこが大好きな食いしん坊、子栗鼠《こりす》みたいな子で、あの菅野がデレデレになっている。

 何より嬉しいのが、菅野が幸せそうにしていること。

 しかも小森くんは月影寺の小坊主くんなので、洋くんたちとの縁が更に繋がり、まるで家族ぐるみのような付き合いを、菅野と出来ることが嬉しい。

「でもさ、そんなにあんこを食べてばかりで、小森くんは太らないの?」
「こもりんは小柄で細っこいから、もうちょっと太った方がいいのさ」
「なんで?」

 意味も無く気軽に聞くと……菅野が「それはその、その……そのだなぁ……」と言葉に詰まってしまった。

 そこではたと気付く。

「菅野……もしかして、もっと……進んだ?」
「え! あ……わー、それを真っ昼間から聞く?」
「あ! ご、ごめん! 忘れて」

 ぼ、僕、何を聞くつもりだったのか。
 菅野と小森くんがチューをしたと聞いた時、あんなに赤面したのに、そんなことに興味を持つなんて恥ずかしいよ。

「へへ、何だか俺たちテンションあがってんな」
「ぼ、僕は別に」
「嬉しいよ」
「え?」
「葉山とこんなプライベートな話が出来るようになってさ」
「う、うん」
「なぁ、今度また遊びに行っていいか」
「いいけど」
「やった! 宗吾さんに話があるんだ」
「また?」
「俺の師匠だから」

 菅野と宗吾さんが話している内容を想像し、頬が火照ってきた。

 まるで僕らの情交を覗かれているようで、恥ずかしいんだ。

「宗吾さんってさ、いろんなアイテムを知っているよな」
「アイテムって……え? 僕はそんなの使われたことないけど……あっ」

 墓穴――

「葉山? あ、おい、まさか変な想像した?」
「し、してない! 僕は練乳どまりだって!」
「ちょっ!」
「あっ!」

 ううううう、更に墓穴だ。

「も、もう行くよ」

 ぴゅーっと消えたいほど恥ずかしい。

 なんだか最近の菅野って、宗吾さん化してないか。気をつけないとヘンタイ道まっしぐらだぞ。

「待て、待てって~ ほら付き合ってくれたお礼だよ」

『海也最中』を手土産に自宅に戻ると、宗吾さんがすぐに見つけてニヤッと笑った。

「どうかしましたか」
「これ、菅野がお礼にくれたのか」
「まぁそうですが」
「じゃあ、俺の伝授は成功したのか」
「今度は何を伝授したんです?」
「内緒さ」
「もう……っ」
「みーずき、そう怒るなって、彼、素質があるよ」
「何の? あ……待って、言わないでいいです!」

 
 僕の恋人は、僕を今日も甘やかす。  

 僕は溺愛されていると自覚してしまうほど、愛されている。

 僕は、宗吾さんの包み込むような大らかな愛が愛おしくて嬉しくて、とても居心地の良い場所をいつももらっている。

 裸にされ布団に巻き込まれ、宗吾さんの温かな手の愛撫を受けていると……

 脇腹あたりで手の動きが止まった。

「あれ? 瑞樹、ちょっと太った?」
「え?」
「さては、菅野につきあって、あんこばかり食べているからなぁ」

 ガーン! 確かに痩せすぎだった身体が、少しだけ肉付きよくなったような?

「あ、勘違いするな。抱き心地がいいって意味だぞ」
「も、もう……知りません」
「おいで、どんな瑞樹も好きだよ」
「宗吾さんこそ、練乳の食べ過ぎで太りますよ」
「練乳? お、今日もご所望か」
「ち、違いますって!」

 その後、僕たちは一度大笑いして額を合わせて見つめ合った。

「あいつらに負けないように……あんこに負けないように、俺たちも愛し合おう」
「はい……」

 そこからは、宗吾さんが力強く僕を求め、僕も彼に夢中になった。

 好き、好きという気持ちで、頭の中が一杯になる。

 宗吾さんに酔いしれて、恋に溺れて――
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

『別れても好きな人』 

設樂理沙
ライト文芸
 大好きな夫から好きな女性ができたから別れて欲しいと言われ、離婚した。  夫の想い人はとても美しく、自分など到底敵わないと思ったから。  ほんとうは別れたくなどなかった。  この先もずっと夫と一緒にいたかった……だけど世の中には  どうしようもないことがあるのだ。  自分で選択できないことがある。  悲しいけれど……。   ―――――――――――――――――――――――――――――――――  登場人物紹介 戸田貴理子   40才 戸田正義    44才 青木誠二    28才 嘉島優子    33才  小田聖也    35才 2024.4.11 ―― プロット作成日 💛イラストはAI生成自作画像

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!

当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。 しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。 彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。 このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。 しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。 好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。 ※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*) ※他のサイトにも重複投稿しています。

お腹の子と一緒に逃げたところ、結局お腹の子の父親に捕まりました。

下菊みこと
恋愛
逃げたけど逃げ切れなかったお話。 またはチャラ男だと思ってたらヤンデレだったお話。 あるいは今度こそ幸せ家族になるお話。 ご都合主義の多分ハッピーエンド? 小説家になろう様でも投稿しています。

あなたの子ですが、内緒で育てます

椿蛍
恋愛
「本当にあなたの子ですか?」  突然現れた浮気相手、私の夫である国王陛下の子を身籠っているという。  夫、王妃の座、全て奪われ冷遇される日々――王宮から、追われた私のお腹には陛下の子が宿っていた。  私は強くなることを決意する。 「この子は私が育てます!」  お腹にいる子供は王の子。  王の子だけが不思議な力を持つ。  私は育った子供を連れて王宮へ戻る。  ――そして、私を追い出したことを後悔してください。 ※夫の後悔、浮気相手と虐げられからのざまあ ※他サイト様でも掲載しております。 ※hotランキング1位&エールありがとうございます!

公爵様、契約通り、跡継ぎを身籠りました!-もう契約は満了ですわよ・・・ね?ちょっと待って、どうして契約が終わらないんでしょうかぁぁ?!-

猫まんじゅう
恋愛
 そう、没落寸前の実家を助けて頂く代わりに、跡継ぎを産む事を条件にした契約結婚だったのです。  無事跡継ぎを妊娠したフィリス。夫であるバルモント公爵との契約達成は出産までの約9か月となった。  筈だったのです······が? ◆◇◆  「この結婚は契約結婚だ。貴女の実家の財の工面はする。代わりに、貴女には私の跡継ぎを産んでもらおう」  拝啓、公爵様。財政に悩んでいた私の家を助ける代わりに、跡継ぎを産むという一時的な契約結婚でございましたよね・・・?ええ、跡継ぎは産みました。なぜ、まだ契約が完了しないんでしょうか?  「ちょ、ちょ、ちょっと待ってくださいませええ!この契約!あと・・・、一体あと、何人子供を産めば契約が満了になるのですッ!!?」  溺愛と、悪阻(ツワリ)ルートは二人がお互いに想いを通じ合わせても終わらない? ◆◇◆ 安心保障のR15設定。 描写の直接的な表現はありませんが、”匂わせ”も気になる吐き悪阻体質の方はご注意ください。 ゆるゆる設定のコメディ要素あり。 つわりに付随する嘔吐表現などが多く含まれます。 ※妊娠に関する内容を含みます。 【2023/07/15/9:00〜07/17/15:00, HOTランキング1位ありがとうございます!】 こちらは小説家になろうでも完結掲載しております(詳細はあとがきにて、)

懐妊を告げずに家を出ます。最愛のあなた、どうかお幸せに。

梅雨の人
恋愛
最愛の夫、ブラッド。 あなたと共に、人生が終わるその時まで互いに慈しみ、愛情に溢れる時を過ごしていけると信じていた。 その時までは。 どうか、幸せになってね。 愛しい人。 さようなら。

処理中です...