879 / 1,730
小学生編
日々うらら 3
しおりを挟む
パパが帰ってきたよ。やったー! やったー!
ボクは宿題をかかえてお部屋に飛び込んだあと、うれしくってピョンピョンとびはねちゃった。
よかった~ さっきお兄ちゃん泣きそうになっていたから、しんぱいになっちゃった。
お兄ちゃん、もう、だいじょうぶだよ~!
だってパパが帰ってきたもん!
きっときっと、ぜんぶうまくいくよ!
ボクのパパって、すごいんだよ。
今ごろ、お兄ちゃんのごきげんもよくなっているだろうなぁ。
あっちのお部屋で、パパにマホウかけてもらっているのかな?
お兄ちゃんといっしょの毎日ね、とってもたのしかったかれども、パパもいたらよろこぶだろうなとか、パパがいたら何のスパゲティたべたかな? ってすこし考えちゃった。
もちろん、逆にお兄ちゃんがいなかったら、同じことをかんがえるよ。!
ボクたちは三人でチームなんだね。
ひとりいないだけで、さみしいんだね。
あのね、しゅくだいのこと……ごめんなさい。
毎日たのしくて、朝顔のかんさつばかりしていたんだ。だってお兄ちゃんにキレイに咲いた白い朝顔を、毎日見せてあげたかったんだもん!
それから江ノ島で一緒にひろった貝がらの写真立てもがんばったよ! 三人の思い出がいっぱいだもん!
あ、いけない。いけない。はやくやんないと~
わー かんじ……むずかしいな。
わー さんすうもむずかしいな。
よーし! がんばるよ!
****
仕事が忙しかったこともあり、ここ数日は特に目まぐるしい日々だった。
宿題の確認は、家事をしながら……
「芽生くん、ところで……ちゃんと宿題やってる?」
「うん! 朝顔のかんさつ、毎日しているよ。お兄ちゃん、見て~」
「わぁ、丁寧によく観察しているね」
「えへへ」
あの言葉に嘘はない。僕がワークや絵日記まで、しっかり確認しなかったせいだ。でも、どうしよう? もう明日から新学期なのに、今からこんなに出来ないよ。
間に合わないと思うと、急に足下がグラグラ揺れ出して、その場にしゃがみこんでしまった。どうやら完全にキャパオーバーしたようで、パニックになっていた。
息苦しくて胸を押さえた時だった。宗吾さんの声が降ってきたのは……!
あのタイミングで宗吾さんが現れてくれなかったら、大変なことになっていたかもしれない。絶妙のタイミングで宗吾さんが帰って来てくれた。 もうそれだけで、涙がボロボロと零れてしまったよ。
「瑞樹、おい、こっちを見ろよ」
「うっ……うう……あっ」
僕……さっきから寝室で熱いキスを受けている。
涙で視界が濡れて大好きな人の顔がよく見えない。
「みーずき?」
頬を宗吾さんの大きな両手で挟まれ、顔を覗き込まれた。
宗吾さんが心配そうに目を細め、次々に溢れてくる涙を唇でチュッと吸ってくれる。
優しい人、温かい人。
「みーずき、大丈夫だよ。悪いことばかり考えんな。引き摺られるな」
「でも……僕……宿題はいつも計画的にやっていたので、どうしたらいいのか……全然分らなくて」
「あー、悪い、悪い! あれは俺に似た。俺の瑞樹はそういう所、ちゃんとしてるもんな」
「うっ……宗吾さん、宗吾さん……」
これでは僕が子供みたいだ。
宗吾さんに縋るように抱きつき、宗吾さんの唇を必死に追いかけていた。
「あー、やっぱり可愛いな、俺の瑞樹、大好きだ」
宗吾さんの懐に抱かれ、あやすように慰めるように背中を何度も撫でてもらううちに、僕はすっかり蕩けてきていた。
安心感が半端ない。だから好きだ。宗吾さんが好きだ。
離れていた分だけ込み上げてくる熱情に、身体が火照ってきた。
「うぉ……このまま抱きたくなるから、今は、ここまでな」
「あ、はい……」
お互い深呼吸し、コツンと額を合わせて微笑みあった。
「あの、お帰りなさい……出張お疲れさまでした」
「ん、サンキュ。君の方こそ、お疲れさん。仕事に家事に育児、任せっきりでごめんな」
「芽生くんと二人の生活も楽しかったです。でも宗吾さんが一緒だったら、もっと楽しいだろうなって思っていました。今日はスパゲティを食べたんですけれど……宗吾さんがいたら大盛りかな? ミートソースを豪快に食べるんだろうなって想像して、笑ってしまいました」
「ははっ、光栄だよ。俺も出張先で飯を食う時、一人で眠る時、起きた時、いつも君たちを思いだしていたよ。早く帰国して三人で過ごしたいと願っていたさ」
「宗吾さん……っ」
キュッと力を込めて抱きしめてもらい、彼の厚い胸板に顔を押しつけて、彼の匂いを確かめた。
「良かった……無事にここに帰って来てくれて」
ほろりと飛び出した言葉に、結局……また泣いてしまった。心配かけてしまうのに……止まらない。
意識していなかったが……僕、とても不安だったんだ。
この毎日が幸せ過ぎて、幸せがまたすり抜けていかないか。
僕を置いて――いってしまわないか。
「急に不安になってしまって……」
「あー、やっぱり放っておけないな」
「ごめんなさい。こんな考え……宗吾さんを縛ってしまうのに」
「いいんだ。そんな瑞樹も大好きだ」
キス、キス、キス。
雨のように降ってくるキスに、心満たされて蕩けていく。
お互いに優しく微笑み合って
日々、うらら――
「今からまたいつもの日々だ。俺がいて、瑞樹がいて芽生がいる世界に戻ったよ」
「はい……はい! そうですね」
ボクは宿題をかかえてお部屋に飛び込んだあと、うれしくってピョンピョンとびはねちゃった。
よかった~ さっきお兄ちゃん泣きそうになっていたから、しんぱいになっちゃった。
お兄ちゃん、もう、だいじょうぶだよ~!
だってパパが帰ってきたもん!
きっときっと、ぜんぶうまくいくよ!
ボクのパパって、すごいんだよ。
今ごろ、お兄ちゃんのごきげんもよくなっているだろうなぁ。
あっちのお部屋で、パパにマホウかけてもらっているのかな?
お兄ちゃんといっしょの毎日ね、とってもたのしかったかれども、パパもいたらよろこぶだろうなとか、パパがいたら何のスパゲティたべたかな? ってすこし考えちゃった。
もちろん、逆にお兄ちゃんがいなかったら、同じことをかんがえるよ。!
ボクたちは三人でチームなんだね。
ひとりいないだけで、さみしいんだね。
あのね、しゅくだいのこと……ごめんなさい。
毎日たのしくて、朝顔のかんさつばかりしていたんだ。だってお兄ちゃんにキレイに咲いた白い朝顔を、毎日見せてあげたかったんだもん!
それから江ノ島で一緒にひろった貝がらの写真立てもがんばったよ! 三人の思い出がいっぱいだもん!
あ、いけない。いけない。はやくやんないと~
わー かんじ……むずかしいな。
わー さんすうもむずかしいな。
よーし! がんばるよ!
****
仕事が忙しかったこともあり、ここ数日は特に目まぐるしい日々だった。
宿題の確認は、家事をしながら……
「芽生くん、ところで……ちゃんと宿題やってる?」
「うん! 朝顔のかんさつ、毎日しているよ。お兄ちゃん、見て~」
「わぁ、丁寧によく観察しているね」
「えへへ」
あの言葉に嘘はない。僕がワークや絵日記まで、しっかり確認しなかったせいだ。でも、どうしよう? もう明日から新学期なのに、今からこんなに出来ないよ。
間に合わないと思うと、急に足下がグラグラ揺れ出して、その場にしゃがみこんでしまった。どうやら完全にキャパオーバーしたようで、パニックになっていた。
息苦しくて胸を押さえた時だった。宗吾さんの声が降ってきたのは……!
あのタイミングで宗吾さんが現れてくれなかったら、大変なことになっていたかもしれない。絶妙のタイミングで宗吾さんが帰って来てくれた。 もうそれだけで、涙がボロボロと零れてしまったよ。
「瑞樹、おい、こっちを見ろよ」
「うっ……うう……あっ」
僕……さっきから寝室で熱いキスを受けている。
涙で視界が濡れて大好きな人の顔がよく見えない。
「みーずき?」
頬を宗吾さんの大きな両手で挟まれ、顔を覗き込まれた。
宗吾さんが心配そうに目を細め、次々に溢れてくる涙を唇でチュッと吸ってくれる。
優しい人、温かい人。
「みーずき、大丈夫だよ。悪いことばかり考えんな。引き摺られるな」
「でも……僕……宿題はいつも計画的にやっていたので、どうしたらいいのか……全然分らなくて」
「あー、悪い、悪い! あれは俺に似た。俺の瑞樹はそういう所、ちゃんとしてるもんな」
「うっ……宗吾さん、宗吾さん……」
これでは僕が子供みたいだ。
宗吾さんに縋るように抱きつき、宗吾さんの唇を必死に追いかけていた。
「あー、やっぱり可愛いな、俺の瑞樹、大好きだ」
宗吾さんの懐に抱かれ、あやすように慰めるように背中を何度も撫でてもらううちに、僕はすっかり蕩けてきていた。
安心感が半端ない。だから好きだ。宗吾さんが好きだ。
離れていた分だけ込み上げてくる熱情に、身体が火照ってきた。
「うぉ……このまま抱きたくなるから、今は、ここまでな」
「あ、はい……」
お互い深呼吸し、コツンと額を合わせて微笑みあった。
「あの、お帰りなさい……出張お疲れさまでした」
「ん、サンキュ。君の方こそ、お疲れさん。仕事に家事に育児、任せっきりでごめんな」
「芽生くんと二人の生活も楽しかったです。でも宗吾さんが一緒だったら、もっと楽しいだろうなって思っていました。今日はスパゲティを食べたんですけれど……宗吾さんがいたら大盛りかな? ミートソースを豪快に食べるんだろうなって想像して、笑ってしまいました」
「ははっ、光栄だよ。俺も出張先で飯を食う時、一人で眠る時、起きた時、いつも君たちを思いだしていたよ。早く帰国して三人で過ごしたいと願っていたさ」
「宗吾さん……っ」
キュッと力を込めて抱きしめてもらい、彼の厚い胸板に顔を押しつけて、彼の匂いを確かめた。
「良かった……無事にここに帰って来てくれて」
ほろりと飛び出した言葉に、結局……また泣いてしまった。心配かけてしまうのに……止まらない。
意識していなかったが……僕、とても不安だったんだ。
この毎日が幸せ過ぎて、幸せがまたすり抜けていかないか。
僕を置いて――いってしまわないか。
「急に不安になってしまって……」
「あー、やっぱり放っておけないな」
「ごめんなさい。こんな考え……宗吾さんを縛ってしまうのに」
「いいんだ。そんな瑞樹も大好きだ」
キス、キス、キス。
雨のように降ってくるキスに、心満たされて蕩けていく。
お互いに優しく微笑み合って
日々、うらら――
「今からまたいつもの日々だ。俺がいて、瑞樹がいて芽生がいる世界に戻ったよ」
「はい……はい! そうですね」
12
お気に入りに追加
832
あなたにおすすめの小説
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
『別れても好きな人』
設樂理沙
ライト文芸
大好きな夫から好きな女性ができたから別れて欲しいと言われ、離婚した。
夫の想い人はとても美しく、自分など到底敵わないと思ったから。
ほんとうは別れたくなどなかった。
この先もずっと夫と一緒にいたかった……だけど世の中には
どうしようもないことがあるのだ。
自分で選択できないことがある。
悲しいけれど……。
―――――――――――――――――――――――――――――――――
登場人物紹介
戸田貴理子 40才
戸田正義 44才
青木誠二 28才
嘉島優子 33才
小田聖也 35才
2024.4.11 ―― プロット作成日
💛イラストはAI生成自作画像
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!
当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。
しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。
彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。
このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。
しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。
好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。
※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*)
※他のサイトにも重複投稿しています。
お腹の子と一緒に逃げたところ、結局お腹の子の父親に捕まりました。
下菊みこと
恋愛
逃げたけど逃げ切れなかったお話。
またはチャラ男だと思ってたらヤンデレだったお話。
あるいは今度こそ幸せ家族になるお話。
ご都合主義の多分ハッピーエンド?
小説家になろう様でも投稿しています。
あなたの子ですが、内緒で育てます
椿蛍
恋愛
「本当にあなたの子ですか?」
突然現れた浮気相手、私の夫である国王陛下の子を身籠っているという。
夫、王妃の座、全て奪われ冷遇される日々――王宮から、追われた私のお腹には陛下の子が宿っていた。
私は強くなることを決意する。
「この子は私が育てます!」
お腹にいる子供は王の子。
王の子だけが不思議な力を持つ。
私は育った子供を連れて王宮へ戻る。
――そして、私を追い出したことを後悔してください。
※夫の後悔、浮気相手と虐げられからのざまあ
※他サイト様でも掲載しております。
※hotランキング1位&エールありがとうございます!
公爵様、契約通り、跡継ぎを身籠りました!-もう契約は満了ですわよ・・・ね?ちょっと待って、どうして契約が終わらないんでしょうかぁぁ?!-
猫まんじゅう
恋愛
そう、没落寸前の実家を助けて頂く代わりに、跡継ぎを産む事を条件にした契約結婚だったのです。
無事跡継ぎを妊娠したフィリス。夫であるバルモント公爵との契約達成は出産までの約9か月となった。
筈だったのです······が?
◆◇◆
「この結婚は契約結婚だ。貴女の実家の財の工面はする。代わりに、貴女には私の跡継ぎを産んでもらおう」
拝啓、公爵様。財政に悩んでいた私の家を助ける代わりに、跡継ぎを産むという一時的な契約結婚でございましたよね・・・?ええ、跡継ぎは産みました。なぜ、まだ契約が完了しないんでしょうか?
「ちょ、ちょ、ちょっと待ってくださいませええ!この契約!あと・・・、一体あと、何人子供を産めば契約が満了になるのですッ!!?」
溺愛と、悪阻(ツワリ)ルートは二人がお互いに想いを通じ合わせても終わらない?
◆◇◆
安心保障のR15設定。
描写の直接的な表現はありませんが、”匂わせ”も気になる吐き悪阻体質の方はご注意ください。
ゆるゆる設定のコメディ要素あり。
つわりに付随する嘔吐表現などが多く含まれます。
※妊娠に関する内容を含みます。
【2023/07/15/9:00〜07/17/15:00, HOTランキング1位ありがとうございます!】
こちらは小説家になろうでも完結掲載しております(詳細はあとがきにて、)
懐妊を告げずに家を出ます。最愛のあなた、どうかお幸せに。
梅雨の人
恋愛
最愛の夫、ブラッド。
あなたと共に、人生が終わるその時まで互いに慈しみ、愛情に溢れる時を過ごしていけると信じていた。
その時までは。
どうか、幸せになってね。
愛しい人。
さようなら。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる