上 下
543 / 1,730
成就編

聖なる夜に 8

しおりを挟む
 ソファで寝落ちてしまった芽生くんを、宗吾さんが子供部屋に移動させてくれた。

「芽生くん、寝てしまいましたね」
「あぁ、そろそろ俺たちも寝室に行くか」
「はい」
「今日は抱くよ」
「あ……はいっ」

 お互いリラックスした状態でビールを飲んだせいか、いい感じにほろ酔い気分になっていた。

 最近は仕事が忙しく……先週末から一度も抱かれていない。だから僕の方も宗吾さんが欲しくなっていた。

 先に支度を調えて寝室に入ると、ふと不思議な気配を感じた。部屋には誰もいないはずなのに、よく知っている懐かしい気配を、近くに感じたのだ。

「どうした?」
「あの、実は……今日は少し変なのです」
「どうした?」
「銀座で空を見上げた時から、ずっと弟のことが頭から離れなくて……」
「弟って……夏樹くんか」
「えぇ、もう夏樹はこの世にいないのに、不思議な懐かしさが続いています」
「そうだな。クリスマスも近いから、天国から降りて……近くに遊びに来ているのかもしれないぞ」

 宗吾さんから意外な言葉が返ってきた。そんな夢みたいなことを宗吾さんが言ってくれると思わなかったので、嬉しくなった。

「もし、そうならば会いたいです。夏樹……」
「そうだな……瑞樹が今、幸せに暮らしているのを見てもらおう」
「えっ、あっ……」

 窓辺でカーテンを閉めながら話していると、突然宗吾さんに両肩を掴まれ、濃厚なキスを仕掛けられた。僕の方も……彼の少し乱暴な、強引なキスが心地良かったりするので、困ってしまう。

「ん……もうっ、ふう……いつも性急すぎです」
「悪い。だが今回はもう1週間も我慢した。辛かったよ」
「……僕も同じです」

 そのまま僕をベッドに僕を押し倒してくる宗吾さんは、今日は大きなクマのぬいぐるみのようだ。寒くなってきたので……茶色いもふもふのフリースを、ガウン代わりに着ているからかな。

 何だか妙に可愛くなってしまい、目を細めて彼を見上げた。

「ふっ、じっとしていますから、好きにしていいですよ」
「いい子だな」

 彼の手がパジャマの裾から潜ってきて、胸を大きな手のひらでギュッと揉まれる。女の子のように……僕の平らな胸を弄られるのは、やはり恥ずかしいけれども、乳首に指が掠める度に、ビクンビクンと腰が淫らに跳ねてしまう。

「ん……あぁ、なんだか、やっぱり恥ずかしいです」

 何故だか……幼い弟の顔がちらついて離れない。でも僕が思いだす夏樹の顔は……腕の中で冷たくなっていた時ではなく、草原を僕と走り回っていた時の、爽やかで明るい笑顔だった。

 恋も愛も知らずに逝ってしまった君だけれども──

 願わくば、天国で運命の人と巡り合って欲しい。もしも僕の願いが叶うのなら、大人の恋を経験し……こんな風に人に愛し愛されて、愛情という温もりを知って、過ごして欲しい。

 君への……果てしない夢、願いを、宗吾さんに抱かれながら、祈っていた。

 長い時間をかけて……キスの雨を全身に浴びていると、閉め損ねたカーテンの隙間から、雨音が聞こえて来た。

「あれ? 急に雨が降り出しましたね。天気予報と違うようですが……」 
「そうだな。今日は雨音を隠れ蓑に、君を沢山啼かせるよ」
「んっ……んっ、あぁ!」
「そうだ。もっと感じてくれ。清楚な瑞樹も艶めいて乱れる瑞樹も……好きだ」
「んっ……」




 宗吾さんは言葉でも、僕を甘やかす。

 だから僕は彼との情事に溺れてしまう。

 今年のクリスマスには、雪が見たい。

 大沼に降ったような清らかな雪を……

 雪の欠片を見てみたい。
 
 夏樹とは、春夏秋冬……外を走り回った。

 雪で埋もれる雪原も!










しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

『別れても好きな人』 

設樂理沙
ライト文芸
 大好きな夫から好きな女性ができたから別れて欲しいと言われ、離婚した。  夫の想い人はとても美しく、自分など到底敵わないと思ったから。  ほんとうは別れたくなどなかった。  この先もずっと夫と一緒にいたかった……だけど世の中には  どうしようもないことがあるのだ。  自分で選択できないことがある。  悲しいけれど……。   ―――――――――――――――――――――――――――――――――  登場人物紹介 戸田貴理子   40才 戸田正義    44才 青木誠二    28才 嘉島優子    33才  小田聖也    35才 2024.4.11 ―― プロット作成日 💛イラストはAI生成自作画像

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!

当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。 しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。 彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。 このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。 しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。 好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。 ※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*) ※他のサイトにも重複投稿しています。

お腹の子と一緒に逃げたところ、結局お腹の子の父親に捕まりました。

下菊みこと
恋愛
逃げたけど逃げ切れなかったお話。 またはチャラ男だと思ってたらヤンデレだったお話。 あるいは今度こそ幸せ家族になるお話。 ご都合主義の多分ハッピーエンド? 小説家になろう様でも投稿しています。

あなたの子ですが、内緒で育てます

椿蛍
恋愛
「本当にあなたの子ですか?」  突然現れた浮気相手、私の夫である国王陛下の子を身籠っているという。  夫、王妃の座、全て奪われ冷遇される日々――王宮から、追われた私のお腹には陛下の子が宿っていた。  私は強くなることを決意する。 「この子は私が育てます!」  お腹にいる子供は王の子。  王の子だけが不思議な力を持つ。  私は育った子供を連れて王宮へ戻る。  ――そして、私を追い出したことを後悔してください。 ※夫の後悔、浮気相手と虐げられからのざまあ ※他サイト様でも掲載しております。 ※hotランキング1位&エールありがとうございます!

公爵様、契約通り、跡継ぎを身籠りました!-もう契約は満了ですわよ・・・ね?ちょっと待って、どうして契約が終わらないんでしょうかぁぁ?!-

猫まんじゅう
恋愛
 そう、没落寸前の実家を助けて頂く代わりに、跡継ぎを産む事を条件にした契約結婚だったのです。  無事跡継ぎを妊娠したフィリス。夫であるバルモント公爵との契約達成は出産までの約9か月となった。  筈だったのです······が? ◆◇◆  「この結婚は契約結婚だ。貴女の実家の財の工面はする。代わりに、貴女には私の跡継ぎを産んでもらおう」  拝啓、公爵様。財政に悩んでいた私の家を助ける代わりに、跡継ぎを産むという一時的な契約結婚でございましたよね・・・?ええ、跡継ぎは産みました。なぜ、まだ契約が完了しないんでしょうか?  「ちょ、ちょ、ちょっと待ってくださいませええ!この契約!あと・・・、一体あと、何人子供を産めば契約が満了になるのですッ!!?」  溺愛と、悪阻(ツワリ)ルートは二人がお互いに想いを通じ合わせても終わらない? ◆◇◆ 安心保障のR15設定。 描写の直接的な表現はありませんが、”匂わせ”も気になる吐き悪阻体質の方はご注意ください。 ゆるゆる設定のコメディ要素あり。 つわりに付随する嘔吐表現などが多く含まれます。 ※妊娠に関する内容を含みます。 【2023/07/15/9:00〜07/17/15:00, HOTランキング1位ありがとうございます!】 こちらは小説家になろうでも完結掲載しております(詳細はあとがきにて、)

懐妊を告げずに家を出ます。最愛のあなた、どうかお幸せに。

梅雨の人
恋愛
最愛の夫、ブラッド。 あなたと共に、人生が終わるその時まで互いに慈しみ、愛情に溢れる時を過ごしていけると信じていた。 その時までは。 どうか、幸せになってね。 愛しい人。 さようなら。

処理中です...