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成就編
深まる絆 25
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退場門付近で待ち構えていると芽生くんが小走りで戻ってきて、僕たちを見つけると、晴れやかにピースしてくれた。
体操服に貼ってもらった『2等』というシールが光っているね。
「芽生くんカッコ良かったよ、気持ち良く走り切れて、よかったね」
「うん! お兄ちゃんもパパも、ちゃんと見てくれてありがとう!」
敬老席に座るお母さんとも目が合った。お母さんも芽生くんのゴールをしっかり見られたようで、嬉しそうに目を細めていた。
「あーメイくんのお兄ちゃんだぁ!」
「わ! あっ……こんにちは」
いつの間に……幼稚園の女の子達に、また取り囲まれていた。
「今日もかっこいい! セイフク姿もいいけど、こっちもイイ♡」
「うんうん、ジーンズもステキ。お兄ちゃんって、アイドルなんでしょう。すごいねぇ」
先日のお迎え時の騒ぎを思い出し、ギョッとした。
「ええっ? いや、違うって」
「もう~かくしたってムダよぅ。ねぇねぇラブレターよんでくれた?」
「え、えっと……」
わわわ……今時の女の子って、みんなこんな感じなのか。
困ったな、どう対応すべきなのか。
「こら~何しているの。早く自分の席に戻りなさい! 」
ふぅ先生が呼びに来てくれたので、一難去った。
……いや、去っていなかった。
隣で一部始終を聞いていた宗吾さんが、くるりと僕の方を向いた。
わわ、参ったな。ジドっと探るような顔つきだ。
「瑞樹、今のなんだ? 」
「さ、さぁ?」(……何でしょうね)
「制服姿って、君、いつの間に、そんなコスプレを? 」
「してません!! 」(宗吾さんってば、ハロウィンが近いからって、そんな発想を? )
「じゃあラブレターって、なんだ? 」
うっ今日の宗吾さん、しつこい……
ラブレターに関しては、知りませんと言えないのが辛い。
「まぁ瑞樹がアイドルっていうのは当たっているよな。ははっ」
「ははっ……」(乾いた笑いが……)
「おっと、この話の続きは夜にな」
「う……はい? 」(夜? 今日はもう僕はきっとヘトヘトで無理ですよ)
そこに……助け船が!
「宗吾っお前って奴は、公衆の面前で瑞樹君にちょっかい出すな」
宗吾さんの頭をペシッと小気味よく叩いたのは、憲吾さんだった。
「痛っ、兄さん! もう来たんですか。てっきり昼飯頃かと」
「弁当より芽生の競技が大事だ」
「へぇ~いいんですか。弁当は瑞樹のお手製ですが」
「う……コホン、それも、とても楽しみだ」
「くすくす、憲吾さんってば張り切って……本当は朝から場所取りまでする勢いだったのよ」
後ろには、美智さんが控えていた。
「美智さん! あの……具合は大丈夫ですか」
「えぇ瑞樹くん、先日はありがとう。今日は調子がいいから来ちゃった」
「嬉しいです。あのテントの下にお母さんがいます。あちらに妊婦さん用の席もあるそうなので」
「わぁそうなのね。イマドキって待遇が進んでいるのね。ありがたいわ」
美智さんが肩から掛けているバッグには、ピンクのバッジがついていた。
『おなかに赤ちゃんがいます』というサインのマタニティマークか。なるほど、これならお腹が大きくなる前から分かりやすくて安心だ。
そうこうしているうちに、午前の最終種目、組体操が始まるようだ。
「宗吾さん、そろそろ行きましょう」
「瑞樹、今日は滅茶苦茶、忙しいな」
「はい! でも……なんだか『幸せな忙しさ』ですね」
「あぁそうだ。いい質の忙しさだ」
「あ……なるほど」
忙しさには、実は2種類ある。
文字どおり『心を亡くす』ものと、『充実した』ものだ。
心を亡くす忙しさは時間に追われて気忙しく……心も体もヘトヘトになってしまうが、充実した忙しさには『達成感』や『充実感』がある。
今日の僕らは、芽生くんの運動会を満喫しようと積極的に飛び回っている。
仕方なくではなく、自分からどんどん動いている。
だからこれは、宗吾さんの言う通り『いい質の忙しさ』だ。
「宗吾さん、僕たち忙しいですが、充実していますね」
「そうだよ。そんな忙しさから生まれる充実した気持ちを、君と分かち合えるのが、嬉しいよ」
体操服に貼ってもらった『2等』というシールが光っているね。
「芽生くんカッコ良かったよ、気持ち良く走り切れて、よかったね」
「うん! お兄ちゃんもパパも、ちゃんと見てくれてありがとう!」
敬老席に座るお母さんとも目が合った。お母さんも芽生くんのゴールをしっかり見られたようで、嬉しそうに目を細めていた。
「あーメイくんのお兄ちゃんだぁ!」
「わ! あっ……こんにちは」
いつの間に……幼稚園の女の子達に、また取り囲まれていた。
「今日もかっこいい! セイフク姿もいいけど、こっちもイイ♡」
「うんうん、ジーンズもステキ。お兄ちゃんって、アイドルなんでしょう。すごいねぇ」
先日のお迎え時の騒ぎを思い出し、ギョッとした。
「ええっ? いや、違うって」
「もう~かくしたってムダよぅ。ねぇねぇラブレターよんでくれた?」
「え、えっと……」
わわわ……今時の女の子って、みんなこんな感じなのか。
困ったな、どう対応すべきなのか。
「こら~何しているの。早く自分の席に戻りなさい! 」
ふぅ先生が呼びに来てくれたので、一難去った。
……いや、去っていなかった。
隣で一部始終を聞いていた宗吾さんが、くるりと僕の方を向いた。
わわ、参ったな。ジドっと探るような顔つきだ。
「瑞樹、今のなんだ? 」
「さ、さぁ?」(……何でしょうね)
「制服姿って、君、いつの間に、そんなコスプレを? 」
「してません!! 」(宗吾さんってば、ハロウィンが近いからって、そんな発想を? )
「じゃあラブレターって、なんだ? 」
うっ今日の宗吾さん、しつこい……
ラブレターに関しては、知りませんと言えないのが辛い。
「まぁ瑞樹がアイドルっていうのは当たっているよな。ははっ」
「ははっ……」(乾いた笑いが……)
「おっと、この話の続きは夜にな」
「う……はい? 」(夜? 今日はもう僕はきっとヘトヘトで無理ですよ)
そこに……助け船が!
「宗吾っお前って奴は、公衆の面前で瑞樹君にちょっかい出すな」
宗吾さんの頭をペシッと小気味よく叩いたのは、憲吾さんだった。
「痛っ、兄さん! もう来たんですか。てっきり昼飯頃かと」
「弁当より芽生の競技が大事だ」
「へぇ~いいんですか。弁当は瑞樹のお手製ですが」
「う……コホン、それも、とても楽しみだ」
「くすくす、憲吾さんってば張り切って……本当は朝から場所取りまでする勢いだったのよ」
後ろには、美智さんが控えていた。
「美智さん! あの……具合は大丈夫ですか」
「えぇ瑞樹くん、先日はありがとう。今日は調子がいいから来ちゃった」
「嬉しいです。あのテントの下にお母さんがいます。あちらに妊婦さん用の席もあるそうなので」
「わぁそうなのね。イマドキって待遇が進んでいるのね。ありがたいわ」
美智さんが肩から掛けているバッグには、ピンクのバッジがついていた。
『おなかに赤ちゃんがいます』というサインのマタニティマークか。なるほど、これならお腹が大きくなる前から分かりやすくて安心だ。
そうこうしているうちに、午前の最終種目、組体操が始まるようだ。
「宗吾さん、そろそろ行きましょう」
「瑞樹、今日は滅茶苦茶、忙しいな」
「はい! でも……なんだか『幸せな忙しさ』ですね」
「あぁそうだ。いい質の忙しさだ」
「あ……なるほど」
忙しさには、実は2種類ある。
文字どおり『心を亡くす』ものと、『充実した』ものだ。
心を亡くす忙しさは時間に追われて気忙しく……心も体もヘトヘトになってしまうが、充実した忙しさには『達成感』や『充実感』がある。
今日の僕らは、芽生くんの運動会を満喫しようと積極的に飛び回っている。
仕方なくではなく、自分からどんどん動いている。
だからこれは、宗吾さんの言う通り『いい質の忙しさ』だ。
「宗吾さん、僕たち忙しいですが、充実していますね」
「そうだよ。そんな忙しさから生まれる充実した気持ちを、君と分かち合えるのが、嬉しいよ」
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