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成就編
深まる絆 9
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仕事をほぼ定時に終わらせ、世のお父さんと同じく、俺もいそいそとカエルコールをした。
俺を待ってくれる人がいる、家庭がある。それって本当に有難いよな。
当たり前だと思っていたことを維持する大変さを、身をもって知ったから、大切にしたいと思えるよ。
俺も瑞樹も、過去を経験として生かしていきたい人だから。
2コール目で瑞樹の可愛らしい声が聞こえ、一気に和んだ。
「宗吾さん!」
「おー瑞樹、君はもう家か。俺もやっと会社を出たぞ。何か買い物あるか」
瑞樹は、何故だか少し澄ました声だった。それにこの時間だと芽生のお気に入りのアニメソングが聴こえてくるはずだが、妙に静かだな。
「あの、今日はお母さんの所に芽生くんと寄って……そうしたら美智さんがいらして、コロッケが沢山あるので、皆でここで夕食を取りませんか」
なるほど、そういう理由か。
大事な人が、俺の大事な人を大切してくれる。
これ以上の喜びはない。
「へぇお姉さんのコロッケか、美味そうだな。それに、何より君からの申し出が嬉しいよ」
「あ……はい!」
スマホの向こうで頬を染める君の顔が目に浮かぶよ。
俺は瑞樹を誉めるのが好きだ。何度でも何時間でも、褒めてやりたくなる。
彼はいつも俺の言葉を誉め言葉でも謙虚に受け止め、それから心から嬉しそうに微笑んでくれる。
「何か買い物はないか」
「あ……はい。大丈夫だと思います。僕は夕食の仕度を手伝っていますね」
「了解!」
通話を終えても、俺の上機嫌は続く。
帰宅ラッシュの私鉄は朝の満員電車並みの混雑だが、ちっとも苦にならない。
この先の場所、この先の時間には……愛しい人、大切な家族が待っているから。
****
やっぱり揚げたてコロッケにはビールだよな~!
母さんの家にはビールはないだろうから、少し買っていくか。
瑞樹と晩酌したいしな。
駅から実家までの間にある大きなドラッグストアにはビールも売っているので、立ち寄ることにした。
瑞樹はこの銘柄が好きだよな~。おっとこっちも好きだったよな。芽生には特別にジュース買ってやるか。普段は麦茶で通しているもんな、たまにはご褒美も必要だ。
おばあちゃんの家にいる間は、甘やかしてやりたくなるんだ。俺もかつてそうだったから。
小学5年生の運動会で……リレーでバトンを落とし悔し涙を流していると、帰り道に祖母が甘いジュースとアイスを買ってくれたんだよな、懐かしい。
買い物カゴにビールとジュースを入れてレジに向かったが、ふと、アレがそろそろなくなりそうなのを思い出し、Uターンした。
メイがいる時には買いにくいし、瑞樹が一緒の時も、彼が妙に照れるので。
毎回使うわけではないが、時と場合によって必要になるわけさ。
衛生用品売り場に向かおうとしたら、前方を横切った人物に驚いてしまった。
「なんだ瑞樹じゃないか。珍しく白いマスクなんかして……風邪でも急に引いたのか。で、何でここに? あ、そうか。瑞樹もビール飲みたくなったんだな」
ところが彼は何故か、うろうろ、こそこそと慣れない様子で店内を歩いている。なんだかその挙動不審の様子が可愛くって、暫く遠くから見守ってしまった。
しかしあんなに方向音痴だったか。おーい、ビール売り場はどう見てもそっちじゃないぞ。
あまりにうろうろするので、流石に「瑞樹~もうビールなら買ったぞ」と呼び止めようとしたら、突然、予想外な場所で立ち止まってしまった。
んんん? その先は衛生用品の売り場だぞ?
あ! なんだ、もしかしてもしかして、瑞樹もあれを買いに来たのか。
いやぁ参ったな。瑞樹自らが準備してくれるとは……
彼の成長を感じ、しみじみしていると、一度立ち止まって深呼吸した後、ツカツカと更にもっと奥の売り場に侵入して行った。
お、おい? ちょ、ちょっと待てって。
その先は……君にはどうみたって関係のない売り場だぞ?
俺を待ってくれる人がいる、家庭がある。それって本当に有難いよな。
当たり前だと思っていたことを維持する大変さを、身をもって知ったから、大切にしたいと思えるよ。
俺も瑞樹も、過去を経験として生かしていきたい人だから。
2コール目で瑞樹の可愛らしい声が聞こえ、一気に和んだ。
「宗吾さん!」
「おー瑞樹、君はもう家か。俺もやっと会社を出たぞ。何か買い物あるか」
瑞樹は、何故だか少し澄ました声だった。それにこの時間だと芽生のお気に入りのアニメソングが聴こえてくるはずだが、妙に静かだな。
「あの、今日はお母さんの所に芽生くんと寄って……そうしたら美智さんがいらして、コロッケが沢山あるので、皆でここで夕食を取りませんか」
なるほど、そういう理由か。
大事な人が、俺の大事な人を大切してくれる。
これ以上の喜びはない。
「へぇお姉さんのコロッケか、美味そうだな。それに、何より君からの申し出が嬉しいよ」
「あ……はい!」
スマホの向こうで頬を染める君の顔が目に浮かぶよ。
俺は瑞樹を誉めるのが好きだ。何度でも何時間でも、褒めてやりたくなる。
彼はいつも俺の言葉を誉め言葉でも謙虚に受け止め、それから心から嬉しそうに微笑んでくれる。
「何か買い物はないか」
「あ……はい。大丈夫だと思います。僕は夕食の仕度を手伝っていますね」
「了解!」
通話を終えても、俺の上機嫌は続く。
帰宅ラッシュの私鉄は朝の満員電車並みの混雑だが、ちっとも苦にならない。
この先の場所、この先の時間には……愛しい人、大切な家族が待っているから。
****
やっぱり揚げたてコロッケにはビールだよな~!
母さんの家にはビールはないだろうから、少し買っていくか。
瑞樹と晩酌したいしな。
駅から実家までの間にある大きなドラッグストアにはビールも売っているので、立ち寄ることにした。
瑞樹はこの銘柄が好きだよな~。おっとこっちも好きだったよな。芽生には特別にジュース買ってやるか。普段は麦茶で通しているもんな、たまにはご褒美も必要だ。
おばあちゃんの家にいる間は、甘やかしてやりたくなるんだ。俺もかつてそうだったから。
小学5年生の運動会で……リレーでバトンを落とし悔し涙を流していると、帰り道に祖母が甘いジュースとアイスを買ってくれたんだよな、懐かしい。
買い物カゴにビールとジュースを入れてレジに向かったが、ふと、アレがそろそろなくなりそうなのを思い出し、Uターンした。
メイがいる時には買いにくいし、瑞樹が一緒の時も、彼が妙に照れるので。
毎回使うわけではないが、時と場合によって必要になるわけさ。
衛生用品売り場に向かおうとしたら、前方を横切った人物に驚いてしまった。
「なんだ瑞樹じゃないか。珍しく白いマスクなんかして……風邪でも急に引いたのか。で、何でここに? あ、そうか。瑞樹もビール飲みたくなったんだな」
ところが彼は何故か、うろうろ、こそこそと慣れない様子で店内を歩いている。なんだかその挙動不審の様子が可愛くって、暫く遠くから見守ってしまった。
しかしあんなに方向音痴だったか。おーい、ビール売り場はどう見てもそっちじゃないぞ。
あまりにうろうろするので、流石に「瑞樹~もうビールなら買ったぞ」と呼び止めようとしたら、突然、予想外な場所で立ち止まってしまった。
んんん? その先は衛生用品の売り場だぞ?
あ! なんだ、もしかしてもしかして、瑞樹もあれを買いに来たのか。
いやぁ参ったな。瑞樹自らが準備してくれるとは……
彼の成長を感じ、しみじみしていると、一度立ち止まって深呼吸した後、ツカツカと更にもっと奥の売り場に侵入して行った。
お、おい? ちょ、ちょっと待てって。
その先は……君にはどうみたって関係のない売り場だぞ?
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