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発展編
若葉風にそよぐ 4
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何度目かの口づけを落とすと、宗吾さんの腕が僕を探すように動き出した。
「あっ……」
起きちゃったかな。
慌てて身を引こうと思ったのに、宗吾さんの手が背中に回され、僕たちの距離はぐっと縮まった。
ぴったり寄り添うと、宗吾さんと僕の体温がとろけるように混ざり合う。
なんだか今日は宗吾さんの方から抱きついてくれるような感じだな。いつもなら僕をぐっと抱き寄せるのに、勝手が違う。
まるで宗吾さんに甘えられているみたいで、くすぐったい。
「……みず……き」
宗吾さんに名前を呼ばれた。
でも寝ぼけているのか、まだ目は開かない。
好きな人が、僕の名を愛おし気に呼んでくれる。
ただそれだけの事が嬉しくて、僕も彼の名を呼び返す。
「そうごさん」
「みずき……」
「何ですか」
宗吾さんの手のひらが僕の躰のラインを確認するように辿っていく。最初は背中……少し横にずれて腰……やがて双丘を辿り窪みを撫で……足の付け根に入り込む。
「んっ……あっ」
いやらしい手の動きに、心拍数があがってドキドキする。
宗吾さんの大きな手のひらで撫でられると、その部分がどんどん開花していくようだ。
「ふっいい触り心地だな」
「あっ! やっぱりもうバッチリ起きているんですね」
「いや……まだ寝ぼけている」
「もうっ」
「……君に甘えている」
その言葉に、さっき覗き込んだ時の苦し気な表情を思い出してしまった。
もしかして……そう思った瞬間、僕の胸元に宗吾さんが潜り込むような体勢になった。そのまま腰に両手を回され深く抱きしめられた。
彼は少し落ち込んでいるのか……元気がない。
思い当たるのはさっきの芽生くんの告白だ。
「ん……宗吾さん? もしかして……さっきの話、もしかして聞いていたのですか」
「……あぁ、かっこ悪いよな。俺……咄嗟になんて答えたらいいのか分からなくてな」
やっぱりそうなのか。そのもどかしい想い……痛い程分かる。
「……父親失格だな」
どこか自嘲的に宗吾さんは、そう言い捨てた。
「そんなことないですよ。宗吾さんは芽生くんにとっていいお父さんですよ。僕も宗吾さんみたいなお父さんが欲しい位です」
「瑞樹……ありがとう」
「宗吾さん……」
僕の方から宗吾さんを抱きしめた。
彼を優しく労わるように……
「宗吾さんはいつも頑張っています。だから僕はそんな宗吾さんを見ていると元気がもらえるんです」
「なぁ……俺はちゃんと周りをみているか。独りよがりになっていないか」
「大丈夫です。宗吾さんはまるで……僕の『道しるべ』みたいです」
「ん? それどういう意味だ?」
宗吾さんが不思議そうな顔で見上げて来た。
「以前外国の小説を読んで、心に残っているものがあって」
「へぇどんな話?」
「それは『ランドマーク』というタイトルで……イギリスの小説でした。愛し合っていたのに一度離れてしまった二人が、長い時を経てもう一度歩み寄っていく物語で……ずっと待っていた彼の姿を道しるべに、海を渡り戻って行くシーンが好き過ぎて」
「いいね、俺も読んでみたいな。でも……それと俺が似てる?」
「あの、上手く言えないんですけど、宗吾さんが僕の前にいつも立っていてくれるので、僕はもう過去のように間違えないで歩んでいけます。僕は宗吾さんがいてくれるだけで、本当に心強いです」
生きていると、人は様々な困難に出遭う。
そして……その時その時で人は進むべき道を選択しなくてはならない。でもどの道を選べばいいかその方向性がわからなくなることもある。
僕は以前……自分から、自分を取り巻く環境を拗らせてしまったのだ。せっかく引き取ってくれた新しい家での生活も、潤との関係も……拗らせた。
でも今の僕には、宗吾さんがいる。
明るく前を向きズンズンと歩んでいく宗吾さんが僕の指針だ。
明るい方、光のさす方向を、宗吾さんは知っている。そういうパワーを持っている人だ。
「瑞樹にそんな風に俺は思ってもらえるのか、言ってもらるのか」
「はい、宗吾さんだからです。そんな宗吾さんだから好きです」
以前僕がもらった言葉をそのまま贈ろう。
『瑞樹だから、瑞樹の過去も含めて愛す』
「僕も……宗吾さんの過去を含めて、今の宗吾さんを愛しています」
「嬉しいことを……正直、離婚した玲子と俺の関係は……もう前のようなものではない。感情がついていかない。だが芽生にとっては永遠に産みの母なんだよな。そのことが抜け落ちていて恥ずかしかったよ」
「はい……」
「君がいてくれてよかった。さっき……瑞樹が芽生に寄り添ってくれるのを聞いていて涙が出たよ。俺は……不器用なんだ。そういうことに」
「宗吾さん、大丈夫です。人には得手不得手があるものです。それに僕の存在が潤滑油のようになるのなら嬉しいです。僕がここにいていいと思えるから……」
宗吾さんと話していて、ハッとした。
僕が芽生くんとお母さん、宗吾さんと前の奥さんの間に入ればいい。
僕という存在が、少しは役に立つかもしれないと思った。
「なんだかホッとしたな」
「僕もです」
お互い見つめ合って笑った。
宗吾さんが僕を跨ぐように身を乗り出して、顔を近づけて来た。
「函館は家族旅行だ」
「……ですね」
「……母も一緒だ」
「そうですね。函館に着けば、僕の母もいますよ」
「知っている」
「あ……兄もいますね」
「だからだ!」
「何がです?」
「今のうちにしておこう!」
「くすっ……はい」
宗吾さんの優しい口づけが合図で、僕たちは互いの躰を愛撫しあう。
お互いが大切な存在だと確かめるように……
「あっ……」
起きちゃったかな。
慌てて身を引こうと思ったのに、宗吾さんの手が背中に回され、僕たちの距離はぐっと縮まった。
ぴったり寄り添うと、宗吾さんと僕の体温がとろけるように混ざり合う。
なんだか今日は宗吾さんの方から抱きついてくれるような感じだな。いつもなら僕をぐっと抱き寄せるのに、勝手が違う。
まるで宗吾さんに甘えられているみたいで、くすぐったい。
「……みず……き」
宗吾さんに名前を呼ばれた。
でも寝ぼけているのか、まだ目は開かない。
好きな人が、僕の名を愛おし気に呼んでくれる。
ただそれだけの事が嬉しくて、僕も彼の名を呼び返す。
「そうごさん」
「みずき……」
「何ですか」
宗吾さんの手のひらが僕の躰のラインを確認するように辿っていく。最初は背中……少し横にずれて腰……やがて双丘を辿り窪みを撫で……足の付け根に入り込む。
「んっ……あっ」
いやらしい手の動きに、心拍数があがってドキドキする。
宗吾さんの大きな手のひらで撫でられると、その部分がどんどん開花していくようだ。
「ふっいい触り心地だな」
「あっ! やっぱりもうバッチリ起きているんですね」
「いや……まだ寝ぼけている」
「もうっ」
「……君に甘えている」
その言葉に、さっき覗き込んだ時の苦し気な表情を思い出してしまった。
もしかして……そう思った瞬間、僕の胸元に宗吾さんが潜り込むような体勢になった。そのまま腰に両手を回され深く抱きしめられた。
彼は少し落ち込んでいるのか……元気がない。
思い当たるのはさっきの芽生くんの告白だ。
「ん……宗吾さん? もしかして……さっきの話、もしかして聞いていたのですか」
「……あぁ、かっこ悪いよな。俺……咄嗟になんて答えたらいいのか分からなくてな」
やっぱりそうなのか。そのもどかしい想い……痛い程分かる。
「……父親失格だな」
どこか自嘲的に宗吾さんは、そう言い捨てた。
「そんなことないですよ。宗吾さんは芽生くんにとっていいお父さんですよ。僕も宗吾さんみたいなお父さんが欲しい位です」
「瑞樹……ありがとう」
「宗吾さん……」
僕の方から宗吾さんを抱きしめた。
彼を優しく労わるように……
「宗吾さんはいつも頑張っています。だから僕はそんな宗吾さんを見ていると元気がもらえるんです」
「なぁ……俺はちゃんと周りをみているか。独りよがりになっていないか」
「大丈夫です。宗吾さんはまるで……僕の『道しるべ』みたいです」
「ん? それどういう意味だ?」
宗吾さんが不思議そうな顔で見上げて来た。
「以前外国の小説を読んで、心に残っているものがあって」
「へぇどんな話?」
「それは『ランドマーク』というタイトルで……イギリスの小説でした。愛し合っていたのに一度離れてしまった二人が、長い時を経てもう一度歩み寄っていく物語で……ずっと待っていた彼の姿を道しるべに、海を渡り戻って行くシーンが好き過ぎて」
「いいね、俺も読んでみたいな。でも……それと俺が似てる?」
「あの、上手く言えないんですけど、宗吾さんが僕の前にいつも立っていてくれるので、僕はもう過去のように間違えないで歩んでいけます。僕は宗吾さんがいてくれるだけで、本当に心強いです」
生きていると、人は様々な困難に出遭う。
そして……その時その時で人は進むべき道を選択しなくてはならない。でもどの道を選べばいいかその方向性がわからなくなることもある。
僕は以前……自分から、自分を取り巻く環境を拗らせてしまったのだ。せっかく引き取ってくれた新しい家での生活も、潤との関係も……拗らせた。
でも今の僕には、宗吾さんがいる。
明るく前を向きズンズンと歩んでいく宗吾さんが僕の指針だ。
明るい方、光のさす方向を、宗吾さんは知っている。そういうパワーを持っている人だ。
「瑞樹にそんな風に俺は思ってもらえるのか、言ってもらるのか」
「はい、宗吾さんだからです。そんな宗吾さんだから好きです」
以前僕がもらった言葉をそのまま贈ろう。
『瑞樹だから、瑞樹の過去も含めて愛す』
「僕も……宗吾さんの過去を含めて、今の宗吾さんを愛しています」
「嬉しいことを……正直、離婚した玲子と俺の関係は……もう前のようなものではない。感情がついていかない。だが芽生にとっては永遠に産みの母なんだよな。そのことが抜け落ちていて恥ずかしかったよ」
「はい……」
「君がいてくれてよかった。さっき……瑞樹が芽生に寄り添ってくれるのを聞いていて涙が出たよ。俺は……不器用なんだ。そういうことに」
「宗吾さん、大丈夫です。人には得手不得手があるものです。それに僕の存在が潤滑油のようになるのなら嬉しいです。僕がここにいていいと思えるから……」
宗吾さんと話していて、ハッとした。
僕が芽生くんとお母さん、宗吾さんと前の奥さんの間に入ればいい。
僕という存在が、少しは役に立つかもしれないと思った。
「なんだかホッとしたな」
「僕もです」
お互い見つめ合って笑った。
宗吾さんが僕を跨ぐように身を乗り出して、顔を近づけて来た。
「函館は家族旅行だ」
「……ですね」
「……母も一緒だ」
「そうですね。函館に着けば、僕の母もいますよ」
「知っている」
「あ……兄もいますね」
「だからだ!」
「何がです?」
「今のうちにしておこう!」
「くすっ……はい」
宗吾さんの優しい口づけが合図で、僕たちは互いの躰を愛撫しあう。
お互いが大切な存在だと確かめるように……
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