238 / 1,730
発展編
幸せを呼ぶ 24
しおりを挟む
「瑞樹、静かにしているんだぞ」
甘い声と熱い視線で、宗吾さんに覗き込まれて……ただコクコクと静かに頷くしかなかった。
こんな状態、至近距離過ぎて……震えてしまうよ。
「可愛いな、震えて」
「あっあの、だって」
「鍵をかけたろう? ドアが急に開くことはないから安心しろ」
いやいや、ドアの向こうには同期と後輩が眠っている状態で、こんな状態は絶対にまずい。なのに……僕も宗吾さんになら何をされてもいいという気持ちが増してしまって、息を呑んで固まっていた。
「瑞樹がこうして欲しいと思ったんだけど、違うならやめるよ」
腰に回された手は這い上がり、僕の背中を支えてきた。僕の上半身はぐっと持ち上げられるような形になって、宗吾さんの胸元と密着していた。
あ……宗吾さんの浴衣の襟元が緩み、素肌が見えている。弾力のある逞しい胸筋が、上下しているのが分かる。直に肌と肌が触れると、ますます妙な期待が高まってしまう。
「嫌か」
「うっ……宗吾さんは意地悪です。……や……めないで……ください」
「よく言えたな」
チュッとおでこにキスをひとつ。それから僕の髪を指先に絡めて遊び出した。
「なっ……何をして?」
「ふぅん……瑞樹の髪って小さな子供みたいに猫っ毛で柔らかいんだな。もともと栗毛色だけど、日に透けるともっと明るくなって綺麗な色だよ」
「そっそうですか」
「うん、芽生のより柔らかいな。あの子は最近俺に似て」
「そっそうでしょうか」
「あぁ将来が色々と心配だ」
こんな状況で芽生くんの名前を出されると居たたまれない。『ごめん……パパとこんなことして!』と心の中で必死に謝ってしまった。
「あっあの……」
「何?」
「もっもう……そろそろ寝ませんか」
こんな風にベッドで宗吾さんに抱きしめられた状態で眠れるか分からないけれども、このままだと、どうにかなってしまいそうなので、無理やりにでも寝るしかない。
「駄目だよ。お休みのキスがまだだろう?」
「あっ……」
今度の口づけは唇に真っすぐ降りて来た。
「んっ……」
「偉いな。今日は酒、飲まなかったんだな」
「何、言って……」
「花のにおいしかしない」
「いつも……そんなことばかり」
一馬にも、いつもこの部屋でそんなことを言われながら抱かれたのを一瞬思い出してしまった。でも、それはもう……自ら上書きする。
僕の方からも積極的に口づけを求めた。
「宗吾さん……」
「瑞樹……」
隣の部屋に聞こえないように、小さな声で交わす愛。
宗吾さんの柔らかい唇が触れれば、温もりを感じる。そのまま舌先でノックされる。
「あっ」
そっと口を開くと、舌が中にやってきて、深い口づけに移っていく。こんなんじゃ興奮して眠れないのに。しかも声……声を出したら絶対に駄目なのに。
「んっ……ん」
深まっていく行為に翻弄され、必死に宗吾さんの広い背中にしがみ付く。
「そうだ。しっかり掴まってろよ」
「ん……」
僕も宗吾さんも長い時間をかけて、たっぷりと口づけのみで愛を交わした。
もしかしたら……宗吾さんも不安だったのかもしれない、僕と同じように。
僕は不安だった。始まったばかりの社会生活。そのスピードについていくのに必死だったし、急に部下が出来て、前より多くの仕事を依頼され、もっとしっかり男らしく上司らしくやっていかないと……そんな気負いで息切れしそうだった。
だからかな、今日は……無性に宗吾さんに甘えたくなっていた。
昨日より今日、今日より明日、僕の宗吾さんへの愛は深まるばかり。
「瑞樹は偉いよ。まだ復帰したばかりなのに頑張っているな。今日飲み屋で君の様子を見てほっとしたよ。君はとても周囲の人に愛されているんだな」
宗吾さんが甘く囁いてくれる。僕の欲しかった言葉で甘やかしてくれる。
「宗吾さん……宗吾さん……僕の宗吾さん」
「そうだよ。俺は瑞樹のものだ」
一段と深い口づけになっていく。
ぬくもりは、熱に変わり、
想いは重なって、弾けそうだ。
もうっ──
甘い声と熱い視線で、宗吾さんに覗き込まれて……ただコクコクと静かに頷くしかなかった。
こんな状態、至近距離過ぎて……震えてしまうよ。
「可愛いな、震えて」
「あっあの、だって」
「鍵をかけたろう? ドアが急に開くことはないから安心しろ」
いやいや、ドアの向こうには同期と後輩が眠っている状態で、こんな状態は絶対にまずい。なのに……僕も宗吾さんになら何をされてもいいという気持ちが増してしまって、息を呑んで固まっていた。
「瑞樹がこうして欲しいと思ったんだけど、違うならやめるよ」
腰に回された手は這い上がり、僕の背中を支えてきた。僕の上半身はぐっと持ち上げられるような形になって、宗吾さんの胸元と密着していた。
あ……宗吾さんの浴衣の襟元が緩み、素肌が見えている。弾力のある逞しい胸筋が、上下しているのが分かる。直に肌と肌が触れると、ますます妙な期待が高まってしまう。
「嫌か」
「うっ……宗吾さんは意地悪です。……や……めないで……ください」
「よく言えたな」
チュッとおでこにキスをひとつ。それから僕の髪を指先に絡めて遊び出した。
「なっ……何をして?」
「ふぅん……瑞樹の髪って小さな子供みたいに猫っ毛で柔らかいんだな。もともと栗毛色だけど、日に透けるともっと明るくなって綺麗な色だよ」
「そっそうですか」
「うん、芽生のより柔らかいな。あの子は最近俺に似て」
「そっそうでしょうか」
「あぁ将来が色々と心配だ」
こんな状況で芽生くんの名前を出されると居たたまれない。『ごめん……パパとこんなことして!』と心の中で必死に謝ってしまった。
「あっあの……」
「何?」
「もっもう……そろそろ寝ませんか」
こんな風にベッドで宗吾さんに抱きしめられた状態で眠れるか分からないけれども、このままだと、どうにかなってしまいそうなので、無理やりにでも寝るしかない。
「駄目だよ。お休みのキスがまだだろう?」
「あっ……」
今度の口づけは唇に真っすぐ降りて来た。
「んっ……」
「偉いな。今日は酒、飲まなかったんだな」
「何、言って……」
「花のにおいしかしない」
「いつも……そんなことばかり」
一馬にも、いつもこの部屋でそんなことを言われながら抱かれたのを一瞬思い出してしまった。でも、それはもう……自ら上書きする。
僕の方からも積極的に口づけを求めた。
「宗吾さん……」
「瑞樹……」
隣の部屋に聞こえないように、小さな声で交わす愛。
宗吾さんの柔らかい唇が触れれば、温もりを感じる。そのまま舌先でノックされる。
「あっ」
そっと口を開くと、舌が中にやってきて、深い口づけに移っていく。こんなんじゃ興奮して眠れないのに。しかも声……声を出したら絶対に駄目なのに。
「んっ……ん」
深まっていく行為に翻弄され、必死に宗吾さんの広い背中にしがみ付く。
「そうだ。しっかり掴まってろよ」
「ん……」
僕も宗吾さんも長い時間をかけて、たっぷりと口づけのみで愛を交わした。
もしかしたら……宗吾さんも不安だったのかもしれない、僕と同じように。
僕は不安だった。始まったばかりの社会生活。そのスピードについていくのに必死だったし、急に部下が出来て、前より多くの仕事を依頼され、もっとしっかり男らしく上司らしくやっていかないと……そんな気負いで息切れしそうだった。
だからかな、今日は……無性に宗吾さんに甘えたくなっていた。
昨日より今日、今日より明日、僕の宗吾さんへの愛は深まるばかり。
「瑞樹は偉いよ。まだ復帰したばかりなのに頑張っているな。今日飲み屋で君の様子を見てほっとしたよ。君はとても周囲の人に愛されているんだな」
宗吾さんが甘く囁いてくれる。僕の欲しかった言葉で甘やかしてくれる。
「宗吾さん……宗吾さん……僕の宗吾さん」
「そうだよ。俺は瑞樹のものだ」
一段と深い口づけになっていく。
ぬくもりは、熱に変わり、
想いは重なって、弾けそうだ。
もうっ──
11
お気に入りに追加
832
あなたにおすすめの小説
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
『別れても好きな人』
設樂理沙
ライト文芸
大好きな夫から好きな女性ができたから別れて欲しいと言われ、離婚した。
夫の想い人はとても美しく、自分など到底敵わないと思ったから。
ほんとうは別れたくなどなかった。
この先もずっと夫と一緒にいたかった……だけど世の中には
どうしようもないことがあるのだ。
自分で選択できないことがある。
悲しいけれど……。
―――――――――――――――――――――――――――――――――
登場人物紹介
戸田貴理子 40才
戸田正義 44才
青木誠二 28才
嘉島優子 33才
小田聖也 35才
2024.4.11 ―― プロット作成日
💛イラストはAI生成自作画像
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!
当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。
しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。
彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。
このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。
しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。
好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。
※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*)
※他のサイトにも重複投稿しています。
お腹の子と一緒に逃げたところ、結局お腹の子の父親に捕まりました。
下菊みこと
恋愛
逃げたけど逃げ切れなかったお話。
またはチャラ男だと思ってたらヤンデレだったお話。
あるいは今度こそ幸せ家族になるお話。
ご都合主義の多分ハッピーエンド?
小説家になろう様でも投稿しています。
あなたの子ですが、内緒で育てます
椿蛍
恋愛
「本当にあなたの子ですか?」
突然現れた浮気相手、私の夫である国王陛下の子を身籠っているという。
夫、王妃の座、全て奪われ冷遇される日々――王宮から、追われた私のお腹には陛下の子が宿っていた。
私は強くなることを決意する。
「この子は私が育てます!」
お腹にいる子供は王の子。
王の子だけが不思議な力を持つ。
私は育った子供を連れて王宮へ戻る。
――そして、私を追い出したことを後悔してください。
※夫の後悔、浮気相手と虐げられからのざまあ
※他サイト様でも掲載しております。
※hotランキング1位&エールありがとうございます!
公爵様、契約通り、跡継ぎを身籠りました!-もう契約は満了ですわよ・・・ね?ちょっと待って、どうして契約が終わらないんでしょうかぁぁ?!-
猫まんじゅう
恋愛
そう、没落寸前の実家を助けて頂く代わりに、跡継ぎを産む事を条件にした契約結婚だったのです。
無事跡継ぎを妊娠したフィリス。夫であるバルモント公爵との契約達成は出産までの約9か月となった。
筈だったのです······が?
◆◇◆
「この結婚は契約結婚だ。貴女の実家の財の工面はする。代わりに、貴女には私の跡継ぎを産んでもらおう」
拝啓、公爵様。財政に悩んでいた私の家を助ける代わりに、跡継ぎを産むという一時的な契約結婚でございましたよね・・・?ええ、跡継ぎは産みました。なぜ、まだ契約が完了しないんでしょうか?
「ちょ、ちょ、ちょっと待ってくださいませええ!この契約!あと・・・、一体あと、何人子供を産めば契約が満了になるのですッ!!?」
溺愛と、悪阻(ツワリ)ルートは二人がお互いに想いを通じ合わせても終わらない?
◆◇◆
安心保障のR15設定。
描写の直接的な表現はありませんが、”匂わせ”も気になる吐き悪阻体質の方はご注意ください。
ゆるゆる設定のコメディ要素あり。
つわりに付随する嘔吐表現などが多く含まれます。
※妊娠に関する内容を含みます。
【2023/07/15/9:00〜07/17/15:00, HOTランキング1位ありがとうございます!】
こちらは小説家になろうでも完結掲載しております(詳細はあとがきにて、)
懐妊を告げずに家を出ます。最愛のあなた、どうかお幸せに。
梅雨の人
恋愛
最愛の夫、ブラッド。
あなたと共に、人生が終わるその時まで互いに慈しみ、愛情に溢れる時を過ごしていけると信じていた。
その時までは。
どうか、幸せになってね。
愛しい人。
さようなら。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる