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発展編
深まる秋・深まる恋 20
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それにしても……いい声で啼いているな。
どうやら声の主は夜通し啼かされているようで、少し掠れたハスキーな甘い喘ぎ声が、ゾクッとする程セクシーだった。
さっきから断続的に聞こえてくる男同士の情事の声に、つい聞き惚れてしまう。自分たち以外の声を聴く機会なんてないから刺激的だ。
しかしこんな明け方まで熱く求め合うなんてやるな。一体誰だろう? 俺たち以外にもこの宿坊の客人がいたというわけか。やっぱりこの寺はいい……俺と瑞樹にも、まだ見ぬカップルにもとても優しい環境だ。
世間はそうでないことは痛い程分かっている。簡単に受け入れてもらえないのも理解している。過去に何度もそれで苦しみ、結局……疲れ果てて女に逃げた俺だから。
だがもう俺は逃げない。この寺の外でも堂々としていたい。玲子の件で彼を苦しめ反省してしまった。だからこそ、もう絶対に瑞樹を泣かさないと誓った。
それにしても瑞樹の温かい寝息が胸を掠め、BGMにこの声だろう。参ったな。俺はもう三十代だっていうのに、立派な朝勃ちが起こりつつあって、これはまずい!
宗吾! しっかり抑え込めよ! もう片方の胸には愛しい息子がくっついているのだから。
堪らずモゾモゾと腰を動かすと、その振動で瑞樹が目を覚ましてしまった。
「あっ……宗吾さん、おはようございます」
俺の瑞樹は寝起きから爽やかだ。なんて可愛い笑顔を浮かべるのか。君の少し恥じらった優しい笑顔に見惚れてしまうよ。
「よく眠れたか」
「すっすみません。布団にお邪魔して……実は夜中に芽生くんとトイレに行って……その帰りに幽霊を見てしまって」
「へっ幽霊だって?」
また何を言い出すかと思ったら非現実的なことを。瑞樹がそんなことを言うとは意外だ。
「あっ本当ですよ! 笑わないでください! 」
「悪い悪いっ」
「真夜中に廊下の前方に見知らぬ二人の男性がいたんです。仮面をつけてタキシード姿でした。怖かったな。あれは絶対幽霊です! きっとハロウィンのお化けですよ」
「くくくっ……なるほどな」
「なるほどって、宗吾さんは見ていない癖に! 」
少し瑞樹が棘のある言い方をするので、俺、何かしたっけ? と不安になる。
「どうして怒っている? 俺何かしたか」
「宗吾さん、どんなに揺すっても起きてくれなくて」
「えっそうだったのか。それは悪かったな」
「……えぇ、肝心な時に起きてくれないので少し寂しかったです」
えー! 瑞樹にそんな思いをさせていたなんて、自分の寝付きの良さを呪うぜ!
「わっ悪かったよ。だがそれは幽霊じゃないよ」
「どうして分かるのですか」
「ちょっと耳を澄まして」
「……? 」
ふたりで耳を澄ませば、また聞こえて来た。今度はもっとはっきりと……会話が聞こえてしまった。
──あっ……もう駄目だ。そこ弄らないで! そこは弱いから──
──どこ? ちゃんと言ってくれないと、もっと触るよ──
──ち……くび──
「ち・く・び……!」
瑞樹がびっくりした声をあげて、慌てて自分の口を塞いだ。瑞樹の口からそんな言葉が出るとエロいもんだなぁとしみじみしていると、ふと彼の寝巻きがわりの浴衣がかなり着崩れていることに気が付いた。
俺に寄り添うような姿勢なので、俺から彼を見下ろすと、その胸元の奥に……あぁぁ見える! 確かに瑞樹の小さな胸の尖りがチラッと見えている!なんて可愛い突起だ! 他人の情事にあてられて俺の情動がまたグラっと動き出す。
そっと……瑞樹の胸元に指先を潜り込ませてしまった。
「えっ……あっ……」
明らかに動揺した瑞樹が慌てて体を伏せたので、俺の指だけぎゅっとそこに当たってしまうことになり、今度は逆に飛び跳ねたので、その腰に手を回して抑え込んだ。
「んんっ……」
頬を染め耐えるようなくぐもった声をあげ、そんな自分に猛烈に照れている瑞樹が可愛すぎて、もっと虐めたくなる。
芽生の様子を確認すると、まだグッスリ眠っている。
よし、ならば少しだけ。もう少しだけ触れたい。何度寸止めを喰らっても果敢にトライを目指す、ラグビー選手のような気分だ。
「瑞樹……君のここ……可愛いな」
尖った部分に触れたままの指を動かして、キュッと摘まんでみた。
「あっ……ん、そうごさん……駄目です。僕……そんなことされたら、もうっ! 」
涙目になっているのが可哀そうだが、今日こそはもう一歩進みたい。しかし邪魔が入りませんようにと願うのも虚しく……廊下から静かな声がした。
「あの……瑞樹くん起きてるかな? そろそろ時間だよ」
あぅぅぅ……なんてことだ!
今回はそっちから邪魔が入るのか!
思わず頭を抱え込んでしまう。
瑞樹は申し訳なさそうに俺を見上げ、自分から軽くキスしてくれた。
「宗吾さん……すみません。いつもいつも……でも僕はきっともうあまり長くは待たせません。早く心の整理をしたくて、実は翠さんに朝の読経と散歩をお願いしていました」
あまり待たせない……?
初めて聞く瑞樹からの積極的で前向きな言葉に、一瞬萎えた気持ちもメキメキと回復する。
「分かった。行っていいぞ。俺は……もう少し芽生と寝ているから」
どうやら声の主は夜通し啼かされているようで、少し掠れたハスキーな甘い喘ぎ声が、ゾクッとする程セクシーだった。
さっきから断続的に聞こえてくる男同士の情事の声に、つい聞き惚れてしまう。自分たち以外の声を聴く機会なんてないから刺激的だ。
しかしこんな明け方まで熱く求め合うなんてやるな。一体誰だろう? 俺たち以外にもこの宿坊の客人がいたというわけか。やっぱりこの寺はいい……俺と瑞樹にも、まだ見ぬカップルにもとても優しい環境だ。
世間はそうでないことは痛い程分かっている。簡単に受け入れてもらえないのも理解している。過去に何度もそれで苦しみ、結局……疲れ果てて女に逃げた俺だから。
だがもう俺は逃げない。この寺の外でも堂々としていたい。玲子の件で彼を苦しめ反省してしまった。だからこそ、もう絶対に瑞樹を泣かさないと誓った。
それにしても瑞樹の温かい寝息が胸を掠め、BGMにこの声だろう。参ったな。俺はもう三十代だっていうのに、立派な朝勃ちが起こりつつあって、これはまずい!
宗吾! しっかり抑え込めよ! もう片方の胸には愛しい息子がくっついているのだから。
堪らずモゾモゾと腰を動かすと、その振動で瑞樹が目を覚ましてしまった。
「あっ……宗吾さん、おはようございます」
俺の瑞樹は寝起きから爽やかだ。なんて可愛い笑顔を浮かべるのか。君の少し恥じらった優しい笑顔に見惚れてしまうよ。
「よく眠れたか」
「すっすみません。布団にお邪魔して……実は夜中に芽生くんとトイレに行って……その帰りに幽霊を見てしまって」
「へっ幽霊だって?」
また何を言い出すかと思ったら非現実的なことを。瑞樹がそんなことを言うとは意外だ。
「あっ本当ですよ! 笑わないでください! 」
「悪い悪いっ」
「真夜中に廊下の前方に見知らぬ二人の男性がいたんです。仮面をつけてタキシード姿でした。怖かったな。あれは絶対幽霊です! きっとハロウィンのお化けですよ」
「くくくっ……なるほどな」
「なるほどって、宗吾さんは見ていない癖に! 」
少し瑞樹が棘のある言い方をするので、俺、何かしたっけ? と不安になる。
「どうして怒っている? 俺何かしたか」
「宗吾さん、どんなに揺すっても起きてくれなくて」
「えっそうだったのか。それは悪かったな」
「……えぇ、肝心な時に起きてくれないので少し寂しかったです」
えー! 瑞樹にそんな思いをさせていたなんて、自分の寝付きの良さを呪うぜ!
「わっ悪かったよ。だがそれは幽霊じゃないよ」
「どうして分かるのですか」
「ちょっと耳を澄まして」
「……? 」
ふたりで耳を澄ませば、また聞こえて来た。今度はもっとはっきりと……会話が聞こえてしまった。
──あっ……もう駄目だ。そこ弄らないで! そこは弱いから──
──どこ? ちゃんと言ってくれないと、もっと触るよ──
──ち……くび──
「ち・く・び……!」
瑞樹がびっくりした声をあげて、慌てて自分の口を塞いだ。瑞樹の口からそんな言葉が出るとエロいもんだなぁとしみじみしていると、ふと彼の寝巻きがわりの浴衣がかなり着崩れていることに気が付いた。
俺に寄り添うような姿勢なので、俺から彼を見下ろすと、その胸元の奥に……あぁぁ見える! 確かに瑞樹の小さな胸の尖りがチラッと見えている!なんて可愛い突起だ! 他人の情事にあてられて俺の情動がまたグラっと動き出す。
そっと……瑞樹の胸元に指先を潜り込ませてしまった。
「えっ……あっ……」
明らかに動揺した瑞樹が慌てて体を伏せたので、俺の指だけぎゅっとそこに当たってしまうことになり、今度は逆に飛び跳ねたので、その腰に手を回して抑え込んだ。
「んんっ……」
頬を染め耐えるようなくぐもった声をあげ、そんな自分に猛烈に照れている瑞樹が可愛すぎて、もっと虐めたくなる。
芽生の様子を確認すると、まだグッスリ眠っている。
よし、ならば少しだけ。もう少しだけ触れたい。何度寸止めを喰らっても果敢にトライを目指す、ラグビー選手のような気分だ。
「瑞樹……君のここ……可愛いな」
尖った部分に触れたままの指を動かして、キュッと摘まんでみた。
「あっ……ん、そうごさん……駄目です。僕……そんなことされたら、もうっ! 」
涙目になっているのが可哀そうだが、今日こそはもう一歩進みたい。しかし邪魔が入りませんようにと願うのも虚しく……廊下から静かな声がした。
「あの……瑞樹くん起きてるかな? そろそろ時間だよ」
あぅぅぅ……なんてことだ!
今回はそっちから邪魔が入るのか!
思わず頭を抱え込んでしまう。
瑞樹は申し訳なさそうに俺を見上げ、自分から軽くキスしてくれた。
「宗吾さん……すみません。いつもいつも……でも僕はきっともうあまり長くは待たせません。早く心の整理をしたくて、実は翠さんに朝の読経と散歩をお願いしていました」
あまり待たせない……?
初めて聞く瑞樹からの積極的で前向きな言葉に、一瞬萎えた気持ちもメキメキと回復する。
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