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発展編
実らせたい想い 7
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気になって気になって……しょうがない。
ニューヨークへの出張中も毎日電話で話そうと旅立つ前に約束していたのに、突然瑞樹との連絡が途絶えてしまった。
瑞樹は芽生の運動会の日から徐々に元気がなくなってしまい……ここ数日、全く話せていない。
「一体どうした? 何か心配事があるのだろう。俺に話して欲しい」
何度聞いても、瑞樹は何も言わないで、貝のように口を閉ざしてしまう。
「宗吾さんが心配するようなことはありませんよ。明日は撮影なんですよね。大切な日ですからもう休んで下さい」
「そんな事よりも、君のことが心配だ」
「本当に何も変わらないですよ。大丈夫です」
受話器の向こうに悲しみを堪えた目で……静かに微笑む瑞樹が見えてくる。そんな笑顔を浮かべる時は、きまって何かを我慢している。
出逢った当初の瑞樹を彷彿し胸が苦しくなる。
あれこれとその原因を考えたがやはり運動会の日が怪しい。
芽生にもう一度様子を聞いてみよう。先日電話したときは「おにいちゃんが来てくれてうれしかった」と言っていたが。芽生を問い詰めるような行為は酷だが、どうか許してくれ。
****
「どうしたの? 芽生最近何だかちょっと元気ないわね。パパに会いたくなったの?」
「おばあちゃん。あのね、うーん」
「何か心配事?」
「あのね……メイね……パパにウソをついちゃったの」
「まぁどんなウソを?」
「えっとね……おこらない?」
「おばあちゃんには話してみて」
「うん……あのね……そうだ、運動会の日にママがきてくれたの。びっくりしちゃった」
「あら? 玲子さん本当に来てくれたのね、あの人ったら私に何も言わないんだから」
「あっもしかしておばあちゃんがたのんでくれたの?」
「えぇそうよ」
「そうだったのかぁ」
玲子さんと離婚後、生まれ変わったように品行方正になった宗吾。慣れない育児に奮闘する息子の姿を見て、それまで啀み合っていた心も解れ、私は芽生の子育てに協力することにしたの。
まぁ……宗吾の性癖に理解のない主人が亡くなったのも、影響しているけれども。とにかく芽生は目の中に入れても痛くない程の存在……可愛い孫なのよ。
宗吾……今回の出張は長すぎたわね。芽生も流石にパパが恋しいを通り越して、ママも恋しくなってしまったみたい。何度か寝言で「ママ……」と呼んでいて胸が塞がったわ。
宗吾の元妻の玲子さんと私は気が合うとは言えなかったけれども、芽生の子育てに関してはしっかりしていたわね。離婚の理由には色々思う所はあるわ。でも私が出る幕ではない。ただ純粋に母親を恋しがる芽生のために何かしてあげたいと思って、つい孫可愛さと運動会にぎっくり腰で行けなくなってしまった事もあり、玲子さんに電話してしまったの。
私が余計なことをしたのかしら?
「ママがどうかしたの? 久しぶりに会ってどうだった?」
「うん……やさしかったよ。ギュッと抱っこもしてくれた。でもね……」
「でも?」
「おにいちゃんと何かしゃべっていたのに、ママはちがうって言うの」
芽生はポロポロと涙を流し始めた。
「どうしたの? なんで泣くの? その、おにいちゃんってどなた?」
「パパのすごくすきなひとだよ」
「えっ……好きな人って。あぁそういうことね。宗吾にもそういう人ができたのね」
「すごくきれいでやさしいママみたいな人だよ、メイね、ナイショでママって呼んでるの」
「そうなの? ならよかった。でもどうして芽生は不安に思っているの? さっき話していた嘘って何?」
芽生は不安そうに私を見上げた。
まだ小さな子供にこんな顔をさせてしまうなんて、祖母失格ね。玲子さんに勝手に電話するなんて……やはり余計なことをしたみたいね。申し訳ないわ。
「あのね……パパにもきかれたの……おにいちゃんのようすを」
「そうだったのね。それで何て答えたの?」
「うん……芽生ね……パパにうそついちゃったの。ママとあったことも、ママにおにいちゃんのこと聞かれたのも言えなかった。ねぇおばあちゃん、かってにおにいちゃんのなまえをママに言っちゃったけど、それってわるいことなの」
「まぁ、そうだったのね。分かったわ。全部おばあちゃんからパパに話しておくわ。おばあちゃんも悪かったわだから芽生は心配しないでもう寝なさい」
そこまで吐き出して芽生はようやくほっとした表情になっていた。
そこにちょうど宗吾からの国際電話が。
****
二日間会社を休んで仕事に復帰すると、すぐに上司に呼ばれた。
「葉山、君に新しい仕事が入った。急ぎで頼まれてくれないか」
ニューヨークへの出張中も毎日電話で話そうと旅立つ前に約束していたのに、突然瑞樹との連絡が途絶えてしまった。
瑞樹は芽生の運動会の日から徐々に元気がなくなってしまい……ここ数日、全く話せていない。
「一体どうした? 何か心配事があるのだろう。俺に話して欲しい」
何度聞いても、瑞樹は何も言わないで、貝のように口を閉ざしてしまう。
「宗吾さんが心配するようなことはありませんよ。明日は撮影なんですよね。大切な日ですからもう休んで下さい」
「そんな事よりも、君のことが心配だ」
「本当に何も変わらないですよ。大丈夫です」
受話器の向こうに悲しみを堪えた目で……静かに微笑む瑞樹が見えてくる。そんな笑顔を浮かべる時は、きまって何かを我慢している。
出逢った当初の瑞樹を彷彿し胸が苦しくなる。
あれこれとその原因を考えたがやはり運動会の日が怪しい。
芽生にもう一度様子を聞いてみよう。先日電話したときは「おにいちゃんが来てくれてうれしかった」と言っていたが。芽生を問い詰めるような行為は酷だが、どうか許してくれ。
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「どうしたの? 芽生最近何だかちょっと元気ないわね。パパに会いたくなったの?」
「おばあちゃん。あのね、うーん」
「何か心配事?」
「あのね……メイね……パパにウソをついちゃったの」
「まぁどんなウソを?」
「えっとね……おこらない?」
「おばあちゃんには話してみて」
「うん……あのね……そうだ、運動会の日にママがきてくれたの。びっくりしちゃった」
「あら? 玲子さん本当に来てくれたのね、あの人ったら私に何も言わないんだから」
「あっもしかしておばあちゃんがたのんでくれたの?」
「えぇそうよ」
「そうだったのかぁ」
玲子さんと離婚後、生まれ変わったように品行方正になった宗吾。慣れない育児に奮闘する息子の姿を見て、それまで啀み合っていた心も解れ、私は芽生の子育てに協力することにしたの。
まぁ……宗吾の性癖に理解のない主人が亡くなったのも、影響しているけれども。とにかく芽生は目の中に入れても痛くない程の存在……可愛い孫なのよ。
宗吾……今回の出張は長すぎたわね。芽生も流石にパパが恋しいを通り越して、ママも恋しくなってしまったみたい。何度か寝言で「ママ……」と呼んでいて胸が塞がったわ。
宗吾の元妻の玲子さんと私は気が合うとは言えなかったけれども、芽生の子育てに関してはしっかりしていたわね。離婚の理由には色々思う所はあるわ。でも私が出る幕ではない。ただ純粋に母親を恋しがる芽生のために何かしてあげたいと思って、つい孫可愛さと運動会にぎっくり腰で行けなくなってしまった事もあり、玲子さんに電話してしまったの。
私が余計なことをしたのかしら?
「ママがどうかしたの? 久しぶりに会ってどうだった?」
「うん……やさしかったよ。ギュッと抱っこもしてくれた。でもね……」
「でも?」
「おにいちゃんと何かしゃべっていたのに、ママはちがうって言うの」
芽生はポロポロと涙を流し始めた。
「どうしたの? なんで泣くの? その、おにいちゃんってどなた?」
「パパのすごくすきなひとだよ」
「えっ……好きな人って。あぁそういうことね。宗吾にもそういう人ができたのね」
「すごくきれいでやさしいママみたいな人だよ、メイね、ナイショでママって呼んでるの」
「そうなの? ならよかった。でもどうして芽生は不安に思っているの? さっき話していた嘘って何?」
芽生は不安そうに私を見上げた。
まだ小さな子供にこんな顔をさせてしまうなんて、祖母失格ね。玲子さんに勝手に電話するなんて……やはり余計なことをしたみたいね。申し訳ないわ。
「あのね……パパにもきかれたの……おにいちゃんのようすを」
「そうだったのね。それで何て答えたの?」
「うん……芽生ね……パパにうそついちゃったの。ママとあったことも、ママにおにいちゃんのこと聞かれたのも言えなかった。ねぇおばあちゃん、かってにおにいちゃんのなまえをママに言っちゃったけど、それってわるいことなの」
「まぁ、そうだったのね。分かったわ。全部おばあちゃんからパパに話しておくわ。おばあちゃんも悪かったわだから芽生は心配しないでもう寝なさい」
そこまで吐き出して芽生はようやくほっとした表情になっていた。
そこにちょうど宗吾からの国際電話が。
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二日間会社を休んで仕事に復帰すると、すぐに上司に呼ばれた。
「葉山、君に新しい仕事が入った。急ぎで頼まれてくれないか」
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