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発展編
任せる勇気 1
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「さぁ瑞樹、早く食べろ」
「すごい!これを短時間で?それに家にこんなに食材ありましたか」
「あぁ冷蔵庫にいろいろ入っていたので勝手に使わせてもらったぞ」
「あ、そうか……兄さんが用意してくれたんだ」
「君のお兄さんはかなりのブラコンだな。瑞樹は相当愛されている」
ん……誰の声だ。
瑞樹と話している浮ついた声の主は……
「そんな……でも兄はすごく優しいから大好きです」
「ははっ分かるよ。最高の兄弟だ、妬けるほどにな」
「そんな、でもありがとうございます。兄さんのこと、そんな風に言ってもらえて嬉しいです」
「いや、こちらこそ瑞樹の兄さんにあれ以上殴られなくてよかったよ。昨夜は延々とサシで飲んで、少しは認められたような気がする」
「すごい!兄さんとサシで飲める人なんて滅多にいませんよ。それに兄さんがまだ寝てるということは、滝沢さんの勝ちなのかな」
「そうか!嬉しいぞ」
楽しそうな話し声で、目覚めた。同時に背中が強張っているのを感じた。
イテテ……あー参ったな。また床で寝ちまったのか。
視界にはフローリングの床とラグが見える。その先には二人の足。
瑞樹だ。あの細い足首が特徴的ですぐに分かる。昔から沢山食べさせても太らない体質で、骨が細いのか華奢なのは26歳になっても相変わらず変わらないな。
しかし昨日は一度にいろんなことがあり過ぎて疲れた。それに酒を飲み過ぎた。自分の吐く息がまだ酒臭いな。滝沢って奴には参ったな。酒が俺より強いのか……潰すのに時間がかかったぜ。
最後はアイツも俺と同じ格好にさせてやった。
ププっ──見た目より可愛げもあって、思い出せば愉快な夜だった。
それにしてもさっきの会話、甘ったるい会話だな……朝っぱらから、まるで恋人同士じゃないか。いや本当に二人は恋人同士だったな。俺の弟の恋人は男なんだと、改めて実感してしまった。
「ふわぁ……おはよっす」
ノロノロと起きてボサボサ髪のまま台所を覗くと、滝沢がフライパンで目玉焼きを焼いていた。
「あっ!それ俺のエプロン」
「あっおはようございます。お借りしてますよ。早く瑞樹に食事を取らせないと」
「おっおう!それもそうだな」
瑞樹のことを出されると何も言えなくなる。しかも目玉焼きは瑞樹の好物だ。
そうそう、少し端を焦がしてやってくれ。焦げ目が好物だ。そして仕上げに醤油を少しかけてジュっとあぶる感じで……
頭の中で命令した通りに、滝沢の手は動く。
うむむ、完璧だ。
「お兄さんも食べます?」
『お兄さん』って、まさか俺のことか。おいおいそれを口にするのは百年早いぜっと叫ぼうとしたら、またしても瑞樹が……
「滝沢さん、兄の分は両面しっかり焼いてくださいね。ねっ兄さん、それでいいかな」
「あぁもちろんだ」
俺の好みを熟知している可愛い弟に、ついデレッとなる自分がいた。
「兄さんどうしたの?」
「いや……お前は昔から変わらないな。いい子のままだ」
「……そんなことないよ……だって僕は兄さんや母さんに言えないようなことを沢山していた……」
瑞樹の表情が一気に暗くなったので、慌てて付け足してしまった。
「まぁ……そのだな、滝沢にならお前を任せられる」
「えっ?」
「えっ!本当ですか」
瑞樹と滝沢が、顔を見合わせ驚いた。
「兄さんに、そんな風に言ってもらえるなんて……夢にも思わなかった」
瑞樹は感激のあまり泣きそうになっていた。あぁ俺の胸に抱いてやりてぇと思うが、もう出番じゃないんだ。今にも泣きそうな瑞樹の背中を、滝沢が優しくさすっていた。
「瑞樹、良かったな。ずっと不安だったろう。君にとって……隠し事をするのは負担が重そうで心配になる。これからはもっと俺のことを頼ってくれ」
「……はい」
朝から熱々のラブシーンを見せつけられてしまったが、俺の方もじんわりと温かい気持ちになっていた。
瑞樹……良かったな。お前、頼り甲斐のあるいい奴と出逢ったんだな。
****
「兄さん、本当に手伝ってくれるの?」
「もちろんだ。お前が肩を痛めた原因は俺のせいだからな」
「でも……今日はせっかく都内の観光をするのを楽しみにしていたのに」
「いいって!東京タワーは逃げないよ。観光なんかより大事だ」
俺のパンチが強烈だったようで、朝になっても瑞樹の薄い肩は腫れたままだった。しかも腕を上げると少し痛むようで本当に申し訳ない。可愛い弟を殴ってしまったことに対して猛反省中だ。
瑞樹はそんな俺のことを、いつものように優しく信頼のこもった目で見つめ、可愛らしくニコっと微笑んでくれた。
あぁ俺はこの笑顔に滅法弱い。
「ありがとう兄さんがいてくれるの、心強いよ」
「おぅ!俺は瑞樹の兄だ。これからもずっと」
たとえ男の恋人がいても……俺の兄としてのポジションだけは保持させてくれよ。
「もちろんだよ。僕の兄さんは広樹兄さんだけだ」
「すごい!これを短時間で?それに家にこんなに食材ありましたか」
「あぁ冷蔵庫にいろいろ入っていたので勝手に使わせてもらったぞ」
「あ、そうか……兄さんが用意してくれたんだ」
「君のお兄さんはかなりのブラコンだな。瑞樹は相当愛されている」
ん……誰の声だ。
瑞樹と話している浮ついた声の主は……
「そんな……でも兄はすごく優しいから大好きです」
「ははっ分かるよ。最高の兄弟だ、妬けるほどにな」
「そんな、でもありがとうございます。兄さんのこと、そんな風に言ってもらえて嬉しいです」
「いや、こちらこそ瑞樹の兄さんにあれ以上殴られなくてよかったよ。昨夜は延々とサシで飲んで、少しは認められたような気がする」
「すごい!兄さんとサシで飲める人なんて滅多にいませんよ。それに兄さんがまだ寝てるということは、滝沢さんの勝ちなのかな」
「そうか!嬉しいぞ」
楽しそうな話し声で、目覚めた。同時に背中が強張っているのを感じた。
イテテ……あー参ったな。また床で寝ちまったのか。
視界にはフローリングの床とラグが見える。その先には二人の足。
瑞樹だ。あの細い足首が特徴的ですぐに分かる。昔から沢山食べさせても太らない体質で、骨が細いのか華奢なのは26歳になっても相変わらず変わらないな。
しかし昨日は一度にいろんなことがあり過ぎて疲れた。それに酒を飲み過ぎた。自分の吐く息がまだ酒臭いな。滝沢って奴には参ったな。酒が俺より強いのか……潰すのに時間がかかったぜ。
最後はアイツも俺と同じ格好にさせてやった。
ププっ──見た目より可愛げもあって、思い出せば愉快な夜だった。
それにしてもさっきの会話、甘ったるい会話だな……朝っぱらから、まるで恋人同士じゃないか。いや本当に二人は恋人同士だったな。俺の弟の恋人は男なんだと、改めて実感してしまった。
「ふわぁ……おはよっす」
ノロノロと起きてボサボサ髪のまま台所を覗くと、滝沢がフライパンで目玉焼きを焼いていた。
「あっ!それ俺のエプロン」
「あっおはようございます。お借りしてますよ。早く瑞樹に食事を取らせないと」
「おっおう!それもそうだな」
瑞樹のことを出されると何も言えなくなる。しかも目玉焼きは瑞樹の好物だ。
そうそう、少し端を焦がしてやってくれ。焦げ目が好物だ。そして仕上げに醤油を少しかけてジュっとあぶる感じで……
頭の中で命令した通りに、滝沢の手は動く。
うむむ、完璧だ。
「お兄さんも食べます?」
『お兄さん』って、まさか俺のことか。おいおいそれを口にするのは百年早いぜっと叫ぼうとしたら、またしても瑞樹が……
「滝沢さん、兄の分は両面しっかり焼いてくださいね。ねっ兄さん、それでいいかな」
「あぁもちろんだ」
俺の好みを熟知している可愛い弟に、ついデレッとなる自分がいた。
「兄さんどうしたの?」
「いや……お前は昔から変わらないな。いい子のままだ」
「……そんなことないよ……だって僕は兄さんや母さんに言えないようなことを沢山していた……」
瑞樹の表情が一気に暗くなったので、慌てて付け足してしまった。
「まぁ……そのだな、滝沢にならお前を任せられる」
「えっ?」
「えっ!本当ですか」
瑞樹と滝沢が、顔を見合わせ驚いた。
「兄さんに、そんな風に言ってもらえるなんて……夢にも思わなかった」
瑞樹は感激のあまり泣きそうになっていた。あぁ俺の胸に抱いてやりてぇと思うが、もう出番じゃないんだ。今にも泣きそうな瑞樹の背中を、滝沢が優しくさすっていた。
「瑞樹、良かったな。ずっと不安だったろう。君にとって……隠し事をするのは負担が重そうで心配になる。これからはもっと俺のことを頼ってくれ」
「……はい」
朝から熱々のラブシーンを見せつけられてしまったが、俺の方もじんわりと温かい気持ちになっていた。
瑞樹……良かったな。お前、頼り甲斐のあるいい奴と出逢ったんだな。
****
「兄さん、本当に手伝ってくれるの?」
「もちろんだ。お前が肩を痛めた原因は俺のせいだからな」
「でも……今日はせっかく都内の観光をするのを楽しみにしていたのに」
「いいって!東京タワーは逃げないよ。観光なんかより大事だ」
俺のパンチが強烈だったようで、朝になっても瑞樹の薄い肩は腫れたままだった。しかも腕を上げると少し痛むようで本当に申し訳ない。可愛い弟を殴ってしまったことに対して猛反省中だ。
瑞樹はそんな俺のことを、いつものように優しく信頼のこもった目で見つめ、可愛らしくニコっと微笑んでくれた。
あぁ俺はこの笑顔に滅法弱い。
「ありがとう兄さんがいてくれるの、心強いよ」
「おぅ!俺は瑞樹の兄だ。これからもずっと」
たとえ男の恋人がいても……俺の兄としてのポジションだけは保持させてくれよ。
「もちろんだよ。僕の兄さんは広樹兄さんだけだ」
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