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発展編
分かり合えること 17
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早朝四時にアラーム音でパッと目覚めた。いよいよ今日は依頼されたスズランを使う披露宴の当日だ。早朝からホテルで活け込みをするから、気合をいれないと。
「んーっ」
おもいっきり伸びをして新鮮な空気を吸おうと思ったのに、鼻先に届いた異臭にムッと顔をしかめてしまった。
「すごい匂い……」
部屋が滅茶苦茶酒臭い!
もうっ兄さん飲みすぎだろ?
とにかく早く換気しよう。
それにしても昨日は滝沢さんが乱入してドタバタだったな。僕は……途中で無性に恥ずかしくなってベッドに潜り込み、結局そのまま寝てしまったのか。
ハァ……まったくいつも兄さんのペースに振り回される。それにしても滝沢さんはあれからどうしたのだろう。ちゃんと家に帰れたかな。
あれこれ昨夜のことを振り返りながら部屋の電気をつけると、ギョッとする光景だった。同時にプッと噴き出してしまった。だって兄さんと滝沢さんが……ソファの下で肌を寄せ合って眠っているもんだから。うわぁ大柄な男ふたりが並ぶとすごい圧迫感だ。
兄さんは上半身裸のままだし、滝沢さん……あなたまで、そんな姿になるなんて。
つまり、兄さんと滝沢さんが上半身裸で寝っ転がっていた。明かりが眩しかったのか、滝沢さんが目を擦りながらモゾモゾしだした。
「んっ……みずきか……どこだ」
僕を探す手が兄さんの胸元を彷徨いだしたので、更にギョッとした。
ちょっとそれは……まずい!さすがにまずい!
「滝沢さんっ!もうっ寝惚けないでください」
「ん?みずきの声だな……あぁおはよう、あれ?君の胸って……こんなに逞しかったっけ……」
寝ぼけ眼で兄さんの大胸筋あたりを滝沢さんが揉むように触れると、兄さんは、くすぐったかったみたいで「ヒャッヒャッ」と寝ぼけながら笑いだした。
その光景が不気味過ぎて……なんだかもう可笑しくて、腹を抱えて笑ってしまった。
「ぷぷっ……あははっ」
「え!うぉ?うわぁー」
やっと正気に戻った滝沢さんが自分の手を辿って、目を白黒させている。
「しーっ静かに。滝沢さん、兄さんに手を出すなんて酷いですね」
「え?ちょっと待ってくれ!これは、その……誤解だぁ!」
「プププ……昨日どんだけ飲んだんですか?もしかしてまだ酔っぱらっているとか」
「ごっごめん瑞樹。君の兄さんに勧められるがままに飲んで、潰されたようだ。あたた……頭が痛い」
「あっ……大丈夫ですか。水を汲んできますね」
兄は気に入った人とじゃないと深酒はしない。
兄さん……昨日は僕のことで本当に驚かせたよね。カミングアウトしたも同然の事態だった。でも僕のことを受け入れてくれようと必死になってくれた。それが嬉しかった。
僕が眠った後……滝沢さんとふたりで何を話したのか分からないが、ふたりで酔いつぶれるまで飲めたってことは……良い方向になったのかな。
「はい、まずは水を飲んでください」
「あぁ悪いな」
水を渡すと滝沢さんは決まり悪そうな顔をした。でも僕は彼の表情よりも逞しい胸元につい目がいってしまった。
わぁ……やっぱりすごく鍛えられた厚い胸板だな。逞しく男らしいエロスさえ感じる。まるでモデルのような美丈夫で……あぁ朝から僕は何を考えているのだか。
「瑞樹?そんなにじっと見られても……恥ずかしいのだが」
「あっすいません!」
「いや、あぁそうか、昨日のお返しをされたんだな。俺もじっと見たからな、瑞樹のここ」
滝沢さんが僕の胸元を指差したので、昨日裸を見られたことや、兄さんに湿布を貼ってもらう時、彼の視線が胸の尖りに集まったことなど、まざまざと思い出して、朝から茹蛸のようになってしまった。
「たっ滝沢さん!」
咎めるように叫ぶと、彼はシャツを着ながら笑っていた。
「瑞樹はすぐ赤くなる所が可愛いな。でもこれで同罪だな。さぁもう仕事に出るんだろ?部屋は片付けておいてやるし、朝ごはんも作ってあげるから、早く支度をしておいで」
「え……でもそれじゃ」
「いいから。今日は大事な仕事だろう?早くしないと」
「あっハイ」
ここは素直に言う事を聞くことにした。
こういう時の滝沢さんって、本当にテキパキと冷静でカッコいい。きっと仕事でもこんな風にクールにこなしているのだろう。
しかし……偶然や必然が重なり、物事というものは前に進んでいくものだな。
互いのことを知り、互いの状況を分かり合えるということは、信頼への第一歩だ。
僕ひとりだったら、兄さんに滝沢さんを紹介するなんて到底無理だったろうし、滝沢さんに兄さんを紹介することも無理だった気がする。勇気が出ない事だった。でも昨夜からの怒涛の流れは、全部それをクリアにしてくれた。
僕は……幸せになってもいい。
そう誰かが背中を押してくれているような、力強い朝を迎えていた。
急いで顔を洗いスーツに着替えリビングにもう一度戻ると、昨日の残骸はあっという間に片付いて、エプロン姿の滝沢さんが爽やかなスマイルで待っていてくれた。
「おはよう!瑞樹」
こんな朝が来るなんて……
幸せな光景が眩しかったので少し目を細めて、僕も挨拶を交わした。
「おはようございます。滝沢さん」
『分かり合えること』了
****
『分かり合えること』の段もやっと終わりました。最後までお付き合いくださってありがとうございます。次はピクニックデートですね~芽生くんを登場させたいです。
夏休みは海へ旅行してきました。行先は瑞樹にぴったりな葉山のビーチ。夏らしい海で妄想膨らませて帰宅しましたので、今後……彼らの夏休みのお話も書きたいと思っています。
志生帆海より
「んーっ」
おもいっきり伸びをして新鮮な空気を吸おうと思ったのに、鼻先に届いた異臭にムッと顔をしかめてしまった。
「すごい匂い……」
部屋が滅茶苦茶酒臭い!
もうっ兄さん飲みすぎだろ?
とにかく早く換気しよう。
それにしても昨日は滝沢さんが乱入してドタバタだったな。僕は……途中で無性に恥ずかしくなってベッドに潜り込み、結局そのまま寝てしまったのか。
ハァ……まったくいつも兄さんのペースに振り回される。それにしても滝沢さんはあれからどうしたのだろう。ちゃんと家に帰れたかな。
あれこれ昨夜のことを振り返りながら部屋の電気をつけると、ギョッとする光景だった。同時にプッと噴き出してしまった。だって兄さんと滝沢さんが……ソファの下で肌を寄せ合って眠っているもんだから。うわぁ大柄な男ふたりが並ぶとすごい圧迫感だ。
兄さんは上半身裸のままだし、滝沢さん……あなたまで、そんな姿になるなんて。
つまり、兄さんと滝沢さんが上半身裸で寝っ転がっていた。明かりが眩しかったのか、滝沢さんが目を擦りながらモゾモゾしだした。
「んっ……みずきか……どこだ」
僕を探す手が兄さんの胸元を彷徨いだしたので、更にギョッとした。
ちょっとそれは……まずい!さすがにまずい!
「滝沢さんっ!もうっ寝惚けないでください」
「ん?みずきの声だな……あぁおはよう、あれ?君の胸って……こんなに逞しかったっけ……」
寝ぼけ眼で兄さんの大胸筋あたりを滝沢さんが揉むように触れると、兄さんは、くすぐったかったみたいで「ヒャッヒャッ」と寝ぼけながら笑いだした。
その光景が不気味過ぎて……なんだかもう可笑しくて、腹を抱えて笑ってしまった。
「ぷぷっ……あははっ」
「え!うぉ?うわぁー」
やっと正気に戻った滝沢さんが自分の手を辿って、目を白黒させている。
「しーっ静かに。滝沢さん、兄さんに手を出すなんて酷いですね」
「え?ちょっと待ってくれ!これは、その……誤解だぁ!」
「プププ……昨日どんだけ飲んだんですか?もしかしてまだ酔っぱらっているとか」
「ごっごめん瑞樹。君の兄さんに勧められるがままに飲んで、潰されたようだ。あたた……頭が痛い」
「あっ……大丈夫ですか。水を汲んできますね」
兄は気に入った人とじゃないと深酒はしない。
兄さん……昨日は僕のことで本当に驚かせたよね。カミングアウトしたも同然の事態だった。でも僕のことを受け入れてくれようと必死になってくれた。それが嬉しかった。
僕が眠った後……滝沢さんとふたりで何を話したのか分からないが、ふたりで酔いつぶれるまで飲めたってことは……良い方向になったのかな。
「はい、まずは水を飲んでください」
「あぁ悪いな」
水を渡すと滝沢さんは決まり悪そうな顔をした。でも僕は彼の表情よりも逞しい胸元につい目がいってしまった。
わぁ……やっぱりすごく鍛えられた厚い胸板だな。逞しく男らしいエロスさえ感じる。まるでモデルのような美丈夫で……あぁ朝から僕は何を考えているのだか。
「瑞樹?そんなにじっと見られても……恥ずかしいのだが」
「あっすいません!」
「いや、あぁそうか、昨日のお返しをされたんだな。俺もじっと見たからな、瑞樹のここ」
滝沢さんが僕の胸元を指差したので、昨日裸を見られたことや、兄さんに湿布を貼ってもらう時、彼の視線が胸の尖りに集まったことなど、まざまざと思い出して、朝から茹蛸のようになってしまった。
「たっ滝沢さん!」
咎めるように叫ぶと、彼はシャツを着ながら笑っていた。
「瑞樹はすぐ赤くなる所が可愛いな。でもこれで同罪だな。さぁもう仕事に出るんだろ?部屋は片付けておいてやるし、朝ごはんも作ってあげるから、早く支度をしておいで」
「え……でもそれじゃ」
「いいから。今日は大事な仕事だろう?早くしないと」
「あっハイ」
ここは素直に言う事を聞くことにした。
こういう時の滝沢さんって、本当にテキパキと冷静でカッコいい。きっと仕事でもこんな風にクールにこなしているのだろう。
しかし……偶然や必然が重なり、物事というものは前に進んでいくものだな。
互いのことを知り、互いの状況を分かり合えるということは、信頼への第一歩だ。
僕ひとりだったら、兄さんに滝沢さんを紹介するなんて到底無理だったろうし、滝沢さんに兄さんを紹介することも無理だった気がする。勇気が出ない事だった。でも昨夜からの怒涛の流れは、全部それをクリアにしてくれた。
僕は……幸せになってもいい。
そう誰かが背中を押してくれているような、力強い朝を迎えていた。
急いで顔を洗いスーツに着替えリビングにもう一度戻ると、昨日の残骸はあっという間に片付いて、エプロン姿の滝沢さんが爽やかなスマイルで待っていてくれた。
「おはよう!瑞樹」
こんな朝が来るなんて……
幸せな光景が眩しかったので少し目を細めて、僕も挨拶を交わした。
「おはようございます。滝沢さん」
『分かり合えること』了
****
『分かり合えること』の段もやっと終わりました。最後までお付き合いくださってありがとうございます。次はピクニックデートですね~芽生くんを登場させたいです。
夏休みは海へ旅行してきました。行先は瑞樹にぴったりな葉山のビーチ。夏らしい海で妄想膨らませて帰宅しましたので、今後……彼らの夏休みのお話も書きたいと思っています。
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