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発展編
分かり合えること 4
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「瑞樹さぁ……やっぱり俺に何か隠してないか」
風呂上がりの兄さんに真顔で聞かれて動揺してしまった。やっぱりさっきの一馬の捨てられなかった私物がまずかったのか。
隠していることなら山ほどあるよ。でもどれも話せない。兄さんを悲しませたり驚かせることばかりだから。僕がひとりで抱えれば済むことなんだ。ごめん……
「……兄さん」
「あーもうそんな顔するな。瑞樹のその顔に俺は弱い。もういいよ。無理に話せって言ってもお前は絶対に話さないだろう。その代わり……そうだ!やっぱり今日は昔みたいに一緒に寝るか。お前のベッド借りるぞ。あれセミダブル?何だか贅沢だなぁ」
「え?あっ……うん」
兄さんは、僕のベッドにあっという間に潜り込んでしまった。
僕が兄さんの家に引き取られた当初は、毎晩のように悲惨な交通事故現場を思い出す悪夢にうなされて叫んでしまった。そんな時いつも一緒の布団で眠ってくれたんだ。
(瑞樹、大丈夫……怖くない……お前はもう一人じゃない)
その言葉にどんなに励まされたことか。逞しくて暖かい優しい兄と慈悲深い母に恵まれなかったら、僕は人を妬み恨んで生きていたかもしれない。もしくは人生を捨てていたかも……
函館で引き取られた家は、花屋を営んでいた。
僕は最初は……交通事故で一度に家族を亡くしたショックで、小学校に行けなかった。
(瑞樹、一緒にお店番してみない?この花屋はね、広樹や潤のお父さんが遺してくれた大事なお店なのよ)
(花屋を?)
(そうよ。さぁいらっしゃい。きっとあなたの心も休めてくれるわ)
それからは学校にも行かず店の片隅で、やってくるお客さんの様子をぼんやりと眺める日々が続いた。
(花屋さんなんて興味なかったけど、面白いなぁ……)
自分の家庭を彩るために……誰かを励ますために、祝うために、見舞うために……時に悼むために……目的を持って、人は花を買う。
そうか……人は……誰かのために何かをしたくなる生き物なんだな。
花を買い求める行為には、それが目に見えてよく見える。
なんだか心が和むよ。僕がこの家に引き取られたのも、そういう気持ちからだったのかな。ならば僕も少しでもこの新しい家と新しい家族のために何か出来るといいな。だからいつか僕も手伝えるように……
広樹兄さんや母さんに花の事を沢山学んだ。でもその夢は潤からの嫌がらせによって『早くここを出たい、東京に行きたい』という夢にすり替わってしまった。
ただ……それでも花に携わっていきたいという夢だけは枯らさなかった。それが縁あって花屋に引き取られて花と共に成長してきた僕の……せめてもの想いだった。
「瑞樹……まだ寝ないのかぁ。早く来いよ」
兄さんに手首を掴まれてドキっとした。逞しい腕に掴まれれば……嫌でも一馬とこのベッドでしたことを思い出してしまう。
(瑞樹……好きだ。アイシテル……アイシテル)
一晩中……愛の言葉が降ってきた日もあった。
「兄さん……ごめん」
「何を謝る?」
「……ごめんなさい」
「理由も言わずにひたすらに謝るのは……奨学金と推薦をもらって東京に出たいと話した時と一緒だな」
「……うん」
「……お前さ………潤と何かあったのか」
突然聞かれて驚いた。兄さんや母さんは絶対に気が付いてないと思ったから。だが簡単に答えられる内容ではなかった。僕が受けた仕打ちは……
「……」
「まぁ……言いたくないか。いや、言えないよな……あいつも何も言わない。だけどそのせいで家に居づらくなったのなら悪かった。だからどこでもいい。ここでいい。瑞樹が幸せで笑っていてくれたら、それでいいんだ。多少のことは驚かないから話してみろ」
「……兄さん」
とうとう我慢できなくて、泣いてしまった。
兄さんの前でポロポロと泣いてしまった。
「よしよし……瑞樹……やっと泣いたな。お前は頑固だから滅多に泣かないのに……よっぽど溜まっていたんだな」
「うっ……うう」
兄さんが優しく背中を擦ってくれる。
「お前はもう東京にずっといるんだろ?ここで……俺の代わりに誰かお前を支えてくれる人がいればいいのにな。いつも傍にいてやれなくて……ごめんな」
「兄さん……」
頭の中で……滝沢さんのことを思い出していた。どうして滝沢さんの前だと僕は最初からすべてをさらけ出して泣けたのだろう。
滝沢さんの前だと素直になれる。
素直に笑って泣いて喜怒哀楽がしっかり出来る。
なんだか今すぐ瀧沢さんに会いたくなってしまった。
そして兄さんにも滝沢さんのことを知って欲しいとも思った。
え……なんで……こんな気持ちに?
一馬のことは絶対に話せないと思ったのに、どうしてだろう?
どうして滝沢さんだと……こうも違うのか。
****
今日で50話達成しました!いつも読んでくださってありがとうございます。
いつもリアクションを贈ってくださり感謝しています。更新の糧♡になっています。
ここ数日……瑞樹の過去に触れているので、シリアスが続いてすいません。
これも全て……この後の滝沢さんとのラブラブにつながるエッセンスです。
風呂上がりの兄さんに真顔で聞かれて動揺してしまった。やっぱりさっきの一馬の捨てられなかった私物がまずかったのか。
隠していることなら山ほどあるよ。でもどれも話せない。兄さんを悲しませたり驚かせることばかりだから。僕がひとりで抱えれば済むことなんだ。ごめん……
「……兄さん」
「あーもうそんな顔するな。瑞樹のその顔に俺は弱い。もういいよ。無理に話せって言ってもお前は絶対に話さないだろう。その代わり……そうだ!やっぱり今日は昔みたいに一緒に寝るか。お前のベッド借りるぞ。あれセミダブル?何だか贅沢だなぁ」
「え?あっ……うん」
兄さんは、僕のベッドにあっという間に潜り込んでしまった。
僕が兄さんの家に引き取られた当初は、毎晩のように悲惨な交通事故現場を思い出す悪夢にうなされて叫んでしまった。そんな時いつも一緒の布団で眠ってくれたんだ。
(瑞樹、大丈夫……怖くない……お前はもう一人じゃない)
その言葉にどんなに励まされたことか。逞しくて暖かい優しい兄と慈悲深い母に恵まれなかったら、僕は人を妬み恨んで生きていたかもしれない。もしくは人生を捨てていたかも……
函館で引き取られた家は、花屋を営んでいた。
僕は最初は……交通事故で一度に家族を亡くしたショックで、小学校に行けなかった。
(瑞樹、一緒にお店番してみない?この花屋はね、広樹や潤のお父さんが遺してくれた大事なお店なのよ)
(花屋を?)
(そうよ。さぁいらっしゃい。きっとあなたの心も休めてくれるわ)
それからは学校にも行かず店の片隅で、やってくるお客さんの様子をぼんやりと眺める日々が続いた。
(花屋さんなんて興味なかったけど、面白いなぁ……)
自分の家庭を彩るために……誰かを励ますために、祝うために、見舞うために……時に悼むために……目的を持って、人は花を買う。
そうか……人は……誰かのために何かをしたくなる生き物なんだな。
花を買い求める行為には、それが目に見えてよく見える。
なんだか心が和むよ。僕がこの家に引き取られたのも、そういう気持ちからだったのかな。ならば僕も少しでもこの新しい家と新しい家族のために何か出来るといいな。だからいつか僕も手伝えるように……
広樹兄さんや母さんに花の事を沢山学んだ。でもその夢は潤からの嫌がらせによって『早くここを出たい、東京に行きたい』という夢にすり替わってしまった。
ただ……それでも花に携わっていきたいという夢だけは枯らさなかった。それが縁あって花屋に引き取られて花と共に成長してきた僕の……せめてもの想いだった。
「瑞樹……まだ寝ないのかぁ。早く来いよ」
兄さんに手首を掴まれてドキっとした。逞しい腕に掴まれれば……嫌でも一馬とこのベッドでしたことを思い出してしまう。
(瑞樹……好きだ。アイシテル……アイシテル)
一晩中……愛の言葉が降ってきた日もあった。
「兄さん……ごめん」
「何を謝る?」
「……ごめんなさい」
「理由も言わずにひたすらに謝るのは……奨学金と推薦をもらって東京に出たいと話した時と一緒だな」
「……うん」
「……お前さ………潤と何かあったのか」
突然聞かれて驚いた。兄さんや母さんは絶対に気が付いてないと思ったから。だが簡単に答えられる内容ではなかった。僕が受けた仕打ちは……
「……」
「まぁ……言いたくないか。いや、言えないよな……あいつも何も言わない。だけどそのせいで家に居づらくなったのなら悪かった。だからどこでもいい。ここでいい。瑞樹が幸せで笑っていてくれたら、それでいいんだ。多少のことは驚かないから話してみろ」
「……兄さん」
とうとう我慢できなくて、泣いてしまった。
兄さんの前でポロポロと泣いてしまった。
「よしよし……瑞樹……やっと泣いたな。お前は頑固だから滅多に泣かないのに……よっぽど溜まっていたんだな」
「うっ……うう」
兄さんが優しく背中を擦ってくれる。
「お前はもう東京にずっといるんだろ?ここで……俺の代わりに誰かお前を支えてくれる人がいればいいのにな。いつも傍にいてやれなくて……ごめんな」
「兄さん……」
頭の中で……滝沢さんのことを思い出していた。どうして滝沢さんの前だと僕は最初からすべてをさらけ出して泣けたのだろう。
滝沢さんの前だと素直になれる。
素直に笑って泣いて喜怒哀楽がしっかり出来る。
なんだか今すぐ瀧沢さんに会いたくなってしまった。
そして兄さんにも滝沢さんのことを知って欲しいとも思った。
え……なんで……こんな気持ちに?
一馬のことは絶対に話せないと思ったのに、どうしてだろう?
どうして滝沢さんだと……こうも違うのか。
****
今日で50話達成しました!いつも読んでくださってありがとうございます。
いつもリアクションを贈ってくださり感謝しています。更新の糧♡になっています。
ここ数日……瑞樹の過去に触れているので、シリアスが続いてすいません。
これも全て……この後の滝沢さんとのラブラブにつながるエッセンスです。
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