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発展編
想い寄せ合って 3
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声を掛けられたので振り返ると、芽生と幼稚園で一緒のコータくんとそのお母さんが立っていた。
「あっ!どうも」
「こんにちは~こんな所で会うなんて偶然ですね!滝沢さんも芽生くんと?」
「えぇ……まぁ」
瑞樹も一緒だが、言うべきか迷うな。
「メイ来てるの?一緒にあそびたい!」
「ありがとう。芽生も喜ぶよ」
コータくんというのは、芽生の話によく登場する男の子だ。なるほど、なかなか凛々しい面持ちの子供だ。
「おじさん、メイはどこにいるの?」
ん?おじさん……か、未だに慣れないよな。いやいや贅沢言えないか。
「向こうのトロッコの所だよ」
結局コーラとジュースを買って、コータくんたちとトロッコ乗り場に戻ることになった。既に瑞樹と芽生はトロッコから降りて俺を探してキョロキョロしていた。すぐに芽生が俺を見つけて、嬉しそうに走って来た。
「パパ~!どこに行ってたの?」
「おお悪い。ほらジュース。それからコータくんに会ったよ」
「え!」
芽生の頬がパッとバラ色に染まる。うーん……果たしてこれでいいのか。この歳にして……男が好きとか。
「コータくん!」
「メイ!」
「まぁメイくんとコータは本当にいつも仲良しですね」
「えぇ、本当に仲良くしてくれてありがとうございます」
二人が両手を取り合ってじゃれ合っている様子を、コータくんのお母さんと目を細めて見つめた。おっと、こんなことしている場合じゃない。
瑞樹が居場所のない心もとない表情を浮かべてぽつんと立っていた。
悪い!そんな顔させるつもりじゃなかった。
「瑞樹、こちらは幼稚園で一緒のコータくんとそのお母さんだよ」
「あの……はじめまして」
急に話しかけられた瑞樹は、驚きと戸惑いを含んだ眼差しで俺を見つめた。
「あっ!あらあらあら、やだっちょっと」
コータくんのお母さんに腕を引っ張られる。
(滝沢さんってばデート中だったんですか。道理で妙に若づくりなカッコだと思ったわ)
(それはひどいな。でもまぁそういうことです。初めてのデート中なんですからご配慮くださいよ)
(まぁ!じゃあ協力しなくちゃ)
流石バス停のママ友さん!気が利くな。世のお母さん方の頭の回転の速さには感服するよ。
「あのよかったら向こうのキッズプレイランドで今から一時間程遊ばせようと思っていたの。よかったら芽生くんも一緒にいきませんか。その時間は私が見ているので滝沢さん達はフリータイムでいいですよ」
(おお……素晴らしい!感謝だ)
「わーたのしそう!パパ、行きたい。コータくんと遊びたい」
「本当にいいのですか」
「もちろんですよ(がんばって!)」
ウインクされて、送り出された。おまけにメイにも「パパチャンスだよー」と言われる始末だ。
****
「瑞樹、どうした?浮かない顔をして」
せっかく二人きりになれたというのに、瑞樹の表情が冴えないのが気になった。
「すいません。なんでもないんです」
きっと何か言いたいことがあるのに、口に出せないんだな。
瑞樹は自分自身に厳しい。だから感情を表に出さずセーブしてしまう所がある。たぶん別れた彼とも、そうだったんじゃないか。何でもひとりで抱えて被って………結局、最後は抱えきれずに、あんなに野原で泣いたのだ。
「せっかくだから二人になれる乗り物に乗ろう。そうだな」
グルっと見渡すとこの遊園地名物のジェットコースターが見えた。ビルの間をすり抜け急降下していく巨大な奴だ。
「瑞樹はあれに乗れる?」
指で指し示すと、難色を示した。
「……乗ったことないです」
ふむ、前の彼とは乗らなかったのか、なら俺と乗ろう!瑞樹のはじめてを収集したくなるよ。
「よし行くぞ!」
「えっでも怖そう……」
「瑞樹は少し大声で叫んだ方がいいぞ」
「え?」
ジェットコースターは想像を絶する怖さだった。大の男が悲鳴を上げるほどに! まず垂直になるほど傾いた姿勢でグングン上昇し、そこから同じ角度でストンっと一気に落ちる。躰がふわっと浮くような感触の後、捩じるような急カーブの連続。ビルにぶつかりそうな程の位置をレールがグーっと伸びていく。
「わ──っ!」
「うぉぉぉ!わぁぁぁぁぁ!」
瑞樹が絶叫している。
だが俺も同じ位叫んでしまった。
コースターに乗っている人全員がずっと絶叫していた。
「瑞樹……大丈夫か」
降りた後も足元がふらつく瑞樹の肩を、さりげなく支えてやる。
「あぁ……怖かったです。いつも見ているだけで乗ってみたいとは思っていたけど、あいつが嫌がるから……あっ……すいません」
元カレの話か。
余計なことを言ってしまったと、瑞樹が困惑した表情を浮かべた。
「いいんだよ。瑞樹の過去は知っている。ちゃんと受け入れるから自然に話してくれ」
「すいません。とにかく、はぁ……怖かった。でもあんなに叫び続けたの初めてです。顎が痛いな」
目元を染めながら、ニコっと微笑む瑞樹。
もう可愛くてたまらない。
「まだ時間はあるな。じゃあ次は少し休憩がてら観覧車に乗ろう」
ちょうどジェットコースター乗り場の上が観覧車になっていた。
「……観覧車はちょっと」
「彼氏と乗ったから、ダメなのか」
「あっ……その」
「いいからおいで、昼間は初めてだろう」
「……はい」
「あっ!どうも」
「こんにちは~こんな所で会うなんて偶然ですね!滝沢さんも芽生くんと?」
「えぇ……まぁ」
瑞樹も一緒だが、言うべきか迷うな。
「メイ来てるの?一緒にあそびたい!」
「ありがとう。芽生も喜ぶよ」
コータくんというのは、芽生の話によく登場する男の子だ。なるほど、なかなか凛々しい面持ちの子供だ。
「おじさん、メイはどこにいるの?」
ん?おじさん……か、未だに慣れないよな。いやいや贅沢言えないか。
「向こうのトロッコの所だよ」
結局コーラとジュースを買って、コータくんたちとトロッコ乗り場に戻ることになった。既に瑞樹と芽生はトロッコから降りて俺を探してキョロキョロしていた。すぐに芽生が俺を見つけて、嬉しそうに走って来た。
「パパ~!どこに行ってたの?」
「おお悪い。ほらジュース。それからコータくんに会ったよ」
「え!」
芽生の頬がパッとバラ色に染まる。うーん……果たしてこれでいいのか。この歳にして……男が好きとか。
「コータくん!」
「メイ!」
「まぁメイくんとコータは本当にいつも仲良しですね」
「えぇ、本当に仲良くしてくれてありがとうございます」
二人が両手を取り合ってじゃれ合っている様子を、コータくんのお母さんと目を細めて見つめた。おっと、こんなことしている場合じゃない。
瑞樹が居場所のない心もとない表情を浮かべてぽつんと立っていた。
悪い!そんな顔させるつもりじゃなかった。
「瑞樹、こちらは幼稚園で一緒のコータくんとそのお母さんだよ」
「あの……はじめまして」
急に話しかけられた瑞樹は、驚きと戸惑いを含んだ眼差しで俺を見つめた。
「あっ!あらあらあら、やだっちょっと」
コータくんのお母さんに腕を引っ張られる。
(滝沢さんってばデート中だったんですか。道理で妙に若づくりなカッコだと思ったわ)
(それはひどいな。でもまぁそういうことです。初めてのデート中なんですからご配慮くださいよ)
(まぁ!じゃあ協力しなくちゃ)
流石バス停のママ友さん!気が利くな。世のお母さん方の頭の回転の速さには感服するよ。
「あのよかったら向こうのキッズプレイランドで今から一時間程遊ばせようと思っていたの。よかったら芽生くんも一緒にいきませんか。その時間は私が見ているので滝沢さん達はフリータイムでいいですよ」
(おお……素晴らしい!感謝だ)
「わーたのしそう!パパ、行きたい。コータくんと遊びたい」
「本当にいいのですか」
「もちろんですよ(がんばって!)」
ウインクされて、送り出された。おまけにメイにも「パパチャンスだよー」と言われる始末だ。
****
「瑞樹、どうした?浮かない顔をして」
せっかく二人きりになれたというのに、瑞樹の表情が冴えないのが気になった。
「すいません。なんでもないんです」
きっと何か言いたいことがあるのに、口に出せないんだな。
瑞樹は自分自身に厳しい。だから感情を表に出さずセーブしてしまう所がある。たぶん別れた彼とも、そうだったんじゃないか。何でもひとりで抱えて被って………結局、最後は抱えきれずに、あんなに野原で泣いたのだ。
「せっかくだから二人になれる乗り物に乗ろう。そうだな」
グルっと見渡すとこの遊園地名物のジェットコースターが見えた。ビルの間をすり抜け急降下していく巨大な奴だ。
「瑞樹はあれに乗れる?」
指で指し示すと、難色を示した。
「……乗ったことないです」
ふむ、前の彼とは乗らなかったのか、なら俺と乗ろう!瑞樹のはじめてを収集したくなるよ。
「よし行くぞ!」
「えっでも怖そう……」
「瑞樹は少し大声で叫んだ方がいいぞ」
「え?」
ジェットコースターは想像を絶する怖さだった。大の男が悲鳴を上げるほどに! まず垂直になるほど傾いた姿勢でグングン上昇し、そこから同じ角度でストンっと一気に落ちる。躰がふわっと浮くような感触の後、捩じるような急カーブの連続。ビルにぶつかりそうな程の位置をレールがグーっと伸びていく。
「わ──っ!」
「うぉぉぉ!わぁぁぁぁぁ!」
瑞樹が絶叫している。
だが俺も同じ位叫んでしまった。
コースターに乗っている人全員がずっと絶叫していた。
「瑞樹……大丈夫か」
降りた後も足元がふらつく瑞樹の肩を、さりげなく支えてやる。
「あぁ……怖かったです。いつも見ているだけで乗ってみたいとは思っていたけど、あいつが嫌がるから……あっ……すいません」
元カレの話か。
余計なことを言ってしまったと、瑞樹が困惑した表情を浮かべた。
「いいんだよ。瑞樹の過去は知っている。ちゃんと受け入れるから自然に話してくれ」
「すいません。とにかく、はぁ……怖かった。でもあんなに叫び続けたの初めてです。顎が痛いな」
目元を染めながら、ニコっと微笑む瑞樹。
もう可愛くてたまらない。
「まだ時間はあるな。じゃあ次は少し休憩がてら観覧車に乗ろう」
ちょうどジェットコースター乗り場の上が観覧車になっていた。
「……観覧車はちょっと」
「彼氏と乗ったから、ダメなのか」
「あっ……その」
「いいからおいで、昼間は初めてだろう」
「……はい」
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