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発展編
心寄せる人 4
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四宮先生から……個人的に夕食の誘い?
その真意が分からなくて、戸惑ってしまった。
仕事先の大事な先生ではあるが……何でわざわざ……
僕が勘繰り過ぎているのか。
いや……これは単なる飲みの誘いだ。
割り切って少しの時間付き合えばいいのか。
「いいよね?もう少しこのデザインのことも話したいし、ちょっと付き合ってよ」
「あっ……はい」
口では了承したが気乗りしなかった。
「丁度このホテルにいいBARがあるんだ。そこで酒でも飲みながら何か食べよう」
「……はい」
先生は強引で有無言わさぬ勢いだった。
でも先生とはこれからも仕事上で付き合いがあるので、機嫌を損ねるわけにはいかない。
だから後ろをついて行くしかなかった。
エレベーターが高層階に着くと、眼下には都心の煌めく夜景が広がっていて、男二人で入るには躊躇するような洒落た店だった。
せめて人目に付くカウンター席がいいと思ったが、先生は慣れた足取りで奥まったソファ席を希望した。
「やっと誘いに乗ってくれたね」
「え?」
「君とは何度か仕事をしたが……いつも最後の方は時計を気にしていて、終わったらすっ飛ぶように帰ってしまうからね。今日みたいに誘う暇がなかったよ」
「……すいません」
先生の仕事はウエディング関係なので、僕と仕事で絡むのは金曜日が多かった。
週末の金曜日は、いつも一馬とデートの約束があったから。
ナイターで映画を観たり、展望台から夜景を楽しむデートもしたっけ。一馬はマメで、いろんな所に連れて行ってくれた。
夜の水族館にイルカショーも幻想的だった。
でもどんなにお洒落なデートをしても、帰りには結局二人でコンビニで缶ビールを買って帰宅したよな。
風呂上がりのビールはいつも半分まで。
乾ききらない髪を一馬の指で梳かれ、顎を摘まれて口づけされた。
深まる口づけは官能への誘い。
そのままベッドにもつれるように移動して、抱かれた。
翌日が休みだということもあり、お互いに少し貪欲に少し情熱的に……愛を分け合うのが金曜日の夜だった。
「瑞樹くん、花の命を奪い、俺の手で作り変えるのがね、俺には快感なんだよ」
「……はぁ」
四宮先生とが話すことは大してないので、適当に相槌を打ちながら何杯目かのカクテルを口にした。
甘いはずのカクテルは苦く、空腹をピリピリと刺激した。何か食べないと……でも食欲が湧かない……これでは悪酔いしてしまう。
そのまま小一時間に渡り仕事の話というか……先生のフラワーデザインへの持論を延々と聞かされた。
その人なりの芸術を尊重したいが、本音を言うと僕はあまり先生のデザインが好きではなかった。自然の花を人工的に作り変えてしまう冷たさを持っていたから。
僕は野に咲くシロツメクサやクローバーなどが好きだ。踏まれても踏まれてもそれでも必死に生きて、咲く花がいい。
「いやぁ実にいい気分だ。さぁもう一杯飲もう」
「……」
深い青色のカクテルは涙色。
寂しく一馬への思い出を重ねていると、突然四宮先生の手が、グラスを持つ僕の手に重ねられたので驚いた。
ビクッと肩を震わせて……見上げると、先生の眼が……ギラっと光っているようで、ぞっとした。
「瑞樹くん……寂しそうな眼をしているね。失恋でもしたの?」
「えっ……そんなことないです」
「俺でよかったら慰めてあげるよ。俺に抱かれてみないか。男もいいもんだよ。あぁ驚かないで、この業界じゃ珍しいことではないだろう」
「なっ……」
「君の顔が前から好みだったんだ。なぁ……どうだい?俺なら君の寂しい躰を温めてあげられるよ」
「すっすいません……」
突然驚くことを言われ、頬をざらりと撫でられ反射的に化粧室に駆け込んでしまった。
「何だったんだ……今のは」
もうこのまま帰りたいと思ったが、大事な書類の入った鞄をまだ椅子に置いたままなことに気づきがっくしと肩を落とした。
先生があんな目で僕を見ていたなんて……気持ち悪い。
背筋が凍るって、このことを言うのか。
僕は……いつの間にそんな隙を見せたのか。
自分の浅はかな行いが悔やまれ、化粧室で顔を洗った。
冷静になれ!堂々としろ!
別に悪いことなんてしていない。
あんな同情はいらない。
舐めまわすような視線を浴びたことへの嫌悪感と羞恥心で、洗面台に置いた手が震えた。
滝沢さんに見つめられた時は、胸がときめいてドキドキしたのに、今は違う。恐怖でドキドキしている。
隙を見せたのは僕だ。
でも……僕はそんな風に自分を安売りしたいなんて、これっぽっちも思っていない。
猛烈に滝沢さんのことが恋しくなった。
あなたは僕が失恋したことを知っても……あんな侮辱したような言い方や行動を一切しなかった。むしろ僕の方から好感を持てる程の、穏やかな愛を注いでくれていた。
助けて欲しい。
戻るに戻れない状況に追い込まれていることを実感していた。
このホテルは、僕の会社を贔屓にしてくれている大切な所で……こんな所で一介の社員の僕が騒ぎを起こすべきでないことは重々分かっていた。
滝沢さんの名刺……あそこには電話番号が書かれていた。
間に合うかどうか、分からないが電話を……
震える手でスマホを取り出した。
突然化粧室のドアが開き、はっと振り向くと酒に酔った目をした四宮先生が突然押し入ってきた。
そのまま勢いでガバっと抱きしめられて、声を失うほど驚いた。
「やっ……」
「瑞樹くん遅いから心配したよ。あぁ君を抱きしめてみたかったよ。やっぱり花の匂いがするね。もう我慢出来ない。君の躰を早く裸に剥いてみたいよ」
信じられないことを耳元で囁かれ、嫌悪に震えた。
そのまま腰を強く抱かれ、下半身をこすり付けられた。硬いものが股にあたり、吐くほど気持ち悪いと思った。
「やめてくださいっ」
逃げを打つと、逆に個室に力任せに押し込まれた。
「おいおい、大声を出すと人が来ちゃうよ~こんな姿見られたら、君も困るだろう」
先生の手が僕の股間の縮こまったモノを辿り、ぎゅっと握ったので悲鳴をあげそうになった。
「ヒッ……」
あまりに思いがけない行為に驚きすぎて声が出なかった。そのまま口づけされそうになり、必死に顔を背けると逆に首筋をべろりと舐められた。
「やっ……」
酒臭い息が漂って吐きたくなる…一方では力任せに股間を握られ、痛みで生理的な涙が滲み出る。
「やっぱり泣き顔もいいね。ソソラレルよ。早く啼かせてみたいな」
こんなホテルの化粧室で……なんという蛮行を!
滝沢さんっ……
こんなことならもっと早く連絡を取っておけばよかった。
僕は馬鹿だ。
こんなんじゃ……幸せは掴めない。
助けて!
助けて……
その真意が分からなくて、戸惑ってしまった。
仕事先の大事な先生ではあるが……何でわざわざ……
僕が勘繰り過ぎているのか。
いや……これは単なる飲みの誘いだ。
割り切って少しの時間付き合えばいいのか。
「いいよね?もう少しこのデザインのことも話したいし、ちょっと付き合ってよ」
「あっ……はい」
口では了承したが気乗りしなかった。
「丁度このホテルにいいBARがあるんだ。そこで酒でも飲みながら何か食べよう」
「……はい」
先生は強引で有無言わさぬ勢いだった。
でも先生とはこれからも仕事上で付き合いがあるので、機嫌を損ねるわけにはいかない。
だから後ろをついて行くしかなかった。
エレベーターが高層階に着くと、眼下には都心の煌めく夜景が広がっていて、男二人で入るには躊躇するような洒落た店だった。
せめて人目に付くカウンター席がいいと思ったが、先生は慣れた足取りで奥まったソファ席を希望した。
「やっと誘いに乗ってくれたね」
「え?」
「君とは何度か仕事をしたが……いつも最後の方は時計を気にしていて、終わったらすっ飛ぶように帰ってしまうからね。今日みたいに誘う暇がなかったよ」
「……すいません」
先生の仕事はウエディング関係なので、僕と仕事で絡むのは金曜日が多かった。
週末の金曜日は、いつも一馬とデートの約束があったから。
ナイターで映画を観たり、展望台から夜景を楽しむデートもしたっけ。一馬はマメで、いろんな所に連れて行ってくれた。
夜の水族館にイルカショーも幻想的だった。
でもどんなにお洒落なデートをしても、帰りには結局二人でコンビニで缶ビールを買って帰宅したよな。
風呂上がりのビールはいつも半分まで。
乾ききらない髪を一馬の指で梳かれ、顎を摘まれて口づけされた。
深まる口づけは官能への誘い。
そのままベッドにもつれるように移動して、抱かれた。
翌日が休みだということもあり、お互いに少し貪欲に少し情熱的に……愛を分け合うのが金曜日の夜だった。
「瑞樹くん、花の命を奪い、俺の手で作り変えるのがね、俺には快感なんだよ」
「……はぁ」
四宮先生とが話すことは大してないので、適当に相槌を打ちながら何杯目かのカクテルを口にした。
甘いはずのカクテルは苦く、空腹をピリピリと刺激した。何か食べないと……でも食欲が湧かない……これでは悪酔いしてしまう。
そのまま小一時間に渡り仕事の話というか……先生のフラワーデザインへの持論を延々と聞かされた。
その人なりの芸術を尊重したいが、本音を言うと僕はあまり先生のデザインが好きではなかった。自然の花を人工的に作り変えてしまう冷たさを持っていたから。
僕は野に咲くシロツメクサやクローバーなどが好きだ。踏まれても踏まれてもそれでも必死に生きて、咲く花がいい。
「いやぁ実にいい気分だ。さぁもう一杯飲もう」
「……」
深い青色のカクテルは涙色。
寂しく一馬への思い出を重ねていると、突然四宮先生の手が、グラスを持つ僕の手に重ねられたので驚いた。
ビクッと肩を震わせて……見上げると、先生の眼が……ギラっと光っているようで、ぞっとした。
「瑞樹くん……寂しそうな眼をしているね。失恋でもしたの?」
「えっ……そんなことないです」
「俺でよかったら慰めてあげるよ。俺に抱かれてみないか。男もいいもんだよ。あぁ驚かないで、この業界じゃ珍しいことではないだろう」
「なっ……」
「君の顔が前から好みだったんだ。なぁ……どうだい?俺なら君の寂しい躰を温めてあげられるよ」
「すっすいません……」
突然驚くことを言われ、頬をざらりと撫でられ反射的に化粧室に駆け込んでしまった。
「何だったんだ……今のは」
もうこのまま帰りたいと思ったが、大事な書類の入った鞄をまだ椅子に置いたままなことに気づきがっくしと肩を落とした。
先生があんな目で僕を見ていたなんて……気持ち悪い。
背筋が凍るって、このことを言うのか。
僕は……いつの間にそんな隙を見せたのか。
自分の浅はかな行いが悔やまれ、化粧室で顔を洗った。
冷静になれ!堂々としろ!
別に悪いことなんてしていない。
あんな同情はいらない。
舐めまわすような視線を浴びたことへの嫌悪感と羞恥心で、洗面台に置いた手が震えた。
滝沢さんに見つめられた時は、胸がときめいてドキドキしたのに、今は違う。恐怖でドキドキしている。
隙を見せたのは僕だ。
でも……僕はそんな風に自分を安売りしたいなんて、これっぽっちも思っていない。
猛烈に滝沢さんのことが恋しくなった。
あなたは僕が失恋したことを知っても……あんな侮辱したような言い方や行動を一切しなかった。むしろ僕の方から好感を持てる程の、穏やかな愛を注いでくれていた。
助けて欲しい。
戻るに戻れない状況に追い込まれていることを実感していた。
このホテルは、僕の会社を贔屓にしてくれている大切な所で……こんな所で一介の社員の僕が騒ぎを起こすべきでないことは重々分かっていた。
滝沢さんの名刺……あそこには電話番号が書かれていた。
間に合うかどうか、分からないが電話を……
震える手でスマホを取り出した。
突然化粧室のドアが開き、はっと振り向くと酒に酔った目をした四宮先生が突然押し入ってきた。
そのまま勢いでガバっと抱きしめられて、声を失うほど驚いた。
「やっ……」
「瑞樹くん遅いから心配したよ。あぁ君を抱きしめてみたかったよ。やっぱり花の匂いがするね。もう我慢出来ない。君の躰を早く裸に剥いてみたいよ」
信じられないことを耳元で囁かれ、嫌悪に震えた。
そのまま腰を強く抱かれ、下半身をこすり付けられた。硬いものが股にあたり、吐くほど気持ち悪いと思った。
「やめてくださいっ」
逃げを打つと、逆に個室に力任せに押し込まれた。
「おいおい、大声を出すと人が来ちゃうよ~こんな姿見られたら、君も困るだろう」
先生の手が僕の股間の縮こまったモノを辿り、ぎゅっと握ったので悲鳴をあげそうになった。
「ヒッ……」
あまりに思いがけない行為に驚きすぎて声が出なかった。そのまま口づけされそうになり、必死に顔を背けると逆に首筋をべろりと舐められた。
「やっ……」
酒臭い息が漂って吐きたくなる…一方では力任せに股間を握られ、痛みで生理的な涙が滲み出る。
「やっぱり泣き顔もいいね。ソソラレルよ。早く啼かせてみたいな」
こんなホテルの化粧室で……なんという蛮行を!
滝沢さんっ……
こんなことならもっと早く連絡を取っておけばよかった。
僕は馬鹿だ。
こんなんじゃ……幸せは掴めない。
助けて!
助けて……
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