重なる月

志生帆 海

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17章

月光の岬、光の矢 37

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 仕事を終え、洋の待つ家に向けてアクセルを踏む。

 急坂を駆け上がると、ぼんやりと月影寺の山門の灯りが見えてくる。

 洋に早く会いたくてたまらなくなる。

 何度も見た光景で、何度も抱いた感情だ。

 この一人ぼっちの帰路は、もう間もなく終わる。

 おそらくこのペースでいけば、月が美しい季節に開業となりそうだ。
 
 あと数ヶ月経てば、助手席に洋を乗せ、時には洋の運転で、月影寺と由比ヶ浜を行き来するようになる。




 車から降りると、今宵の月も美しかった。

 山門を潜り右手の竹林に目をやると、離れの灯りが消えていた。
 
 ということは、洋は母屋で兄さんたちと一緒にいるのか。

 それはそれで安心だ。

 何しろ、兄さんたちは、洋を猫可愛がりしているから。




 持ち帰った私物をクローゼットの中に入れ、パソコンの電源を入れた。

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