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16章
天つ風 7
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「じょ、丈、どうしたんだ?」
やましいことが山ほどあって、声が上擦ってしまった。
勘のいい丈は、俺の動揺を絶対に見逃さない。
「洋、まさか私の留守中に何かあったのか」
「え! いや、なんでもない。何も無いさ!」
焦れば焦るほど空回りだ。
本当は夜のラブコールがかかってきたら、丈の制服を見つけたと真っ先に伝えようと思っていた。それから明日の夜戻ったら着て見せてくれと強請るつもりだった。
なのに、まさか俺が先に着てしまったとは言いにくい。
許可もなく勝手に着たこともあるが、丈の香りに包まれて自分の身体が発情しかけているのがバレるのも非常に気まずい。
「いや、様子が変だ。心配だ」
「だ、か、ら、何でもない」
「もしかして熱があるのか。ちょっと顔を見せろ」
「え!」
「洋、今すぐカメラに切り替えろ」
「うっ」
こうなると俺は丈の言葉に逆らえない。
それが分かっていて、わざと高圧的に丈が言うのも知っている。
「仕方ない……」
しぶしぶカメラに切り替え、俺は顔をどアップにして制服を隠す。
「おいおい、洋、そんなにアップでは顔色が見えない。診察が出来ないだろう」
「いちいち細かいな。ほら、元気そうだろ」
「……不自然だな。もっとカメラを引いて」
「うっ……」
カメラがぐらつき、襟元が映ってしまった。
「ん? 一体何の服を着ているのだ? そんな服を持っていたか。だがどこかで見たような」
あぁ、もう駄目だ。
隠し通すのも限界だ。
ならば開き直ろう。
「丈、よく見ろよ! 今宵は出血大サービスだ」
ん? 俺、流さんの影響受けすぎか。
「おいおい、流兄さん化しているぞ。一体どうした?」
スマホを机に立てて、俺はその場を離れた。
全身が映るように一歩二歩と引いて、強い眼差しを放った。
俺を見ろ、丈。
お前の視線で射抜けよ。
「これは丈の制服だ。俺と出会う前に丈が着ていたものだ」
「これは……お、驚いたな。私の制服をどこで見つけた? まさか取ってあるとは驚いた」
「ん……まぁね。薙くんが応援団で必要になって翠さんの学ランを探していたら見つけたのさ。綺麗に保管されていたから……ついね」
そこで、丈の声が途絶えた。
「お、おい? 怒っているのか」
「……違う」
「じゃあ、どうした?」
「参ったな。最高だ、今すぐ帰りたい」
「馬鹿、今日は当直だろ?」
そこで電話がぷつりと切れる。
「?」
急患が入ったのか。
こんな風に当直中は、電話が突然切れることは頻繁だ。
丈は医師だ。
優秀な外科医だ。
仕方がないのさ。
ただ……盛り上がっていた分、寂しさが押し寄せてきた。
「一気に冷めたな」
鏡にひとり映るのは、丈の制服を着た俺だけ。
丈が傍にいない。
そっと制服ごしに胸に触れた。
その手を腰に降ろし、そのまま……
冷めてなんかいない。
一度芽生えた熱は、丈に解放してもらえるまで、俺の身体でくすぶり続ける。
そういう身体になった。
だが、丈は今宵は当直だ。
丈の手を待っていても、やってこない。
ならば……
俺はそっとベッドボードにもたれて、足をそろりと開いた。
丈の制服を着ているので、丈の手だと想像するのは容易かった。
久しぶりだ、こんなことするのは。
手を動かし、そっと自らの高まりに触れた。
やましいことが山ほどあって、声が上擦ってしまった。
勘のいい丈は、俺の動揺を絶対に見逃さない。
「洋、まさか私の留守中に何かあったのか」
「え! いや、なんでもない。何も無いさ!」
焦れば焦るほど空回りだ。
本当は夜のラブコールがかかってきたら、丈の制服を見つけたと真っ先に伝えようと思っていた。それから明日の夜戻ったら着て見せてくれと強請るつもりだった。
なのに、まさか俺が先に着てしまったとは言いにくい。
許可もなく勝手に着たこともあるが、丈の香りに包まれて自分の身体が発情しかけているのがバレるのも非常に気まずい。
「いや、様子が変だ。心配だ」
「だ、か、ら、何でもない」
「もしかして熱があるのか。ちょっと顔を見せろ」
「え!」
「洋、今すぐカメラに切り替えろ」
「うっ」
こうなると俺は丈の言葉に逆らえない。
それが分かっていて、わざと高圧的に丈が言うのも知っている。
「仕方ない……」
しぶしぶカメラに切り替え、俺は顔をどアップにして制服を隠す。
「おいおい、洋、そんなにアップでは顔色が見えない。診察が出来ないだろう」
「いちいち細かいな。ほら、元気そうだろ」
「……不自然だな。もっとカメラを引いて」
「うっ……」
カメラがぐらつき、襟元が映ってしまった。
「ん? 一体何の服を着ているのだ? そんな服を持っていたか。だがどこかで見たような」
あぁ、もう駄目だ。
隠し通すのも限界だ。
ならば開き直ろう。
「丈、よく見ろよ! 今宵は出血大サービスだ」
ん? 俺、流さんの影響受けすぎか。
「おいおい、流兄さん化しているぞ。一体どうした?」
スマホを机に立てて、俺はその場を離れた。
全身が映るように一歩二歩と引いて、強い眼差しを放った。
俺を見ろ、丈。
お前の視線で射抜けよ。
「これは丈の制服だ。俺と出会う前に丈が着ていたものだ」
「これは……お、驚いたな。私の制服をどこで見つけた? まさか取ってあるとは驚いた」
「ん……まぁね。薙くんが応援団で必要になって翠さんの学ランを探していたら見つけたのさ。綺麗に保管されていたから……ついね」
そこで、丈の声が途絶えた。
「お、おい? 怒っているのか」
「……違う」
「じゃあ、どうした?」
「参ったな。最高だ、今すぐ帰りたい」
「馬鹿、今日は当直だろ?」
そこで電話がぷつりと切れる。
「?」
急患が入ったのか。
こんな風に当直中は、電話が突然切れることは頻繁だ。
丈は医師だ。
優秀な外科医だ。
仕方がないのさ。
ただ……盛り上がっていた分、寂しさが押し寄せてきた。
「一気に冷めたな」
鏡にひとり映るのは、丈の制服を着た俺だけ。
丈が傍にいない。
そっと制服ごしに胸に触れた。
その手を腰に降ろし、そのまま……
冷めてなんかいない。
一度芽生えた熱は、丈に解放してもらえるまで、俺の身体でくすぶり続ける。
そういう身体になった。
だが、丈は今宵は当直だ。
丈の手を待っていても、やってこない。
ならば……
俺はそっとベッドボードにもたれて、足をそろりと開いた。
丈の制服を着ているので、丈の手だと想像するのは容易かった。
久しぶりだ、こんなことするのは。
手を動かし、そっと自らの高まりに触れた。
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