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16章
雲外蒼天 16
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今日は最初に宣伝をさせて下さい。
流と翠の幼少時からの軌跡を『忍ぶれど…(翠と流編 完全版)として、先日、エブリスタにて連載スタートしました。翠と流のビジュアルも決まりましたので、表紙絵だけでも、ぜひご覧いただけたら嬉しいです。
それに伴い『忍ぶれど…』『色は匂へど』は掲載終了しました。完全版として加筆修正しながら一つにまとめていきます。今に自然に繋がるように、翠や流の心情も随時書き加えていきますので、お楽しみ下さい。
⇩他サイトで申し訳ありません。
https://estar.jp/novels/26116829
本日5スター特典も追加しました。
若い頃の二人のほっこり系エピソードです。
では『重なる月』本文です。
****
離れの茶室に翠を連れ込み、すぐに袈裟を脱がしてやった。
衣擦れの音が、雅な音を奏でる。
「ふぅ……暑かったから、すっきりしたよ。流、ありがとう」
翠はほっとした表情で、俺にコトンともたれてきた。
その背中に手を回すと、素肌がしっとりと濡れていた。
相変わらず翠の汗は、芳しい香りがするな。
こんなこと言ったら変態かとまた怒られそうだが、昔から翠は汗臭いのではなく、いい匂いがするのだ。
翠の清らかな心が透明な雫となり表に現れたようだ。
どこまでも澄んでいる。
「やっぱり汗ばんでいたな」
「うん、急に暑くなったからね」
固く絞ったおしぼりで白い背中を丁寧に拭いてやると、翠が困った顔をする。
「ん? 嫌か」
「嫌ではなくて……なんだか……シタ後みたいで恥ずかしいね」
「ブホッ!」
参ったな、また鼻血を吹くかと思ったぜ!
「急に変なこと言うな」
「だよね。あーあ、僕はいつの間にかこんなになってしまったよ。一体誰のせいかな?」
開き直ったような口調で口を尖らせる仕草が幼く可愛く見えたので、顎を掴んで腰を引き寄せ、深いキスを落とした。
「ん……」
翠も積極的に応じてくれるのが嬉しかった。
だが今はお勤めの最中だ。
だからこれ以上の触れ合いは律しないと駄目だ。
唇を離すと、名残惜しそうな吐息が届いた。
「もしかして、俺に甘えているのか」
「……僕だって誰かに甘えたくなる時がある」
「あぁ、それでいい。翠は皆を守っているから、翠は俺が守る」
俺は翠の身体に、夏物の肌襦袢を羽織らせてやった。
翠の艶めかしい素肌は、今は目の毒だ。
続いて絽の生地を使用した夏用の袈裟を着せようとすると、翠がもう少しこのまま涼んでいたいと言う。
参ったな。
このままでいると、畳に押し倒してしまうぞ。
肌襦袢からうっすら透ける胸の淡い粒に、ゴクリと喉が鳴る。
連鎖反応のように、作務衣の中の息子がムクリを頭をもたげてきてしまった。
ヤバイ、ヤバイ!
茶室に二人きり。
このまま、なだれ込む勢いだ。
自制せよ!
もうすぐ洋や涼くん、もしかすると白江さんも一緒に帰って来る。
今、翠を抱くのは駄目だ!
「流、どうした?」
「ううう……」
こんな時は、いつも俺はどうしていたか。
ふと押し入れからはみ出た布団が目に入った。
「そうだ!」
布団を引っ張り出し、畳に丸まって布団を頭まで被った。
「え? 流、何事?」
「ちょっと隠れる」
「ちょ……くすっ、いいよ、流、しばらくそのままでいるといい」
****
久しぶりに流が布団を頭まで被って丸まってしまった。
ふふ、昔はすっぽり隠れられたのに、今は足が出ている。
大きくなったね。
本当に大きくなった。
そして懐かしいね。
小さい頃、いつもふてくされたり、困ったことがあるとこんな風に布団を頭まで被って丸まっていたね。
「りゅーう」
「……昔みたいに呼ぶな」
「だって昔みたいだから」
「……覚えているのか」
「当たり前だよ。流のことなら何でも覚えているよ。僕は昔から流一筋だよ」
布団の中の流の背中が少し震えたような気がした。
「りゅーう、大好きだよ」
「……もっと」
「ふふ、流、愛してる」
ガバッと流が起上がり、僕を抱きしめた。
「本当は……こんな風にしたかった! あの時もあの時も」
「そうだったんだね。僕もこんな風にしたかったよ」
僕も流の広い背中に手を回て、抱きしめた。
「あの頃出来なかった事や、してみたかった事があるのなら、これから叶えていけばいい。僕たちは、まだまだこれからだ」
流と翠の幼少時からの軌跡を『忍ぶれど…(翠と流編 完全版)として、先日、エブリスタにて連載スタートしました。翠と流のビジュアルも決まりましたので、表紙絵だけでも、ぜひご覧いただけたら嬉しいです。
それに伴い『忍ぶれど…』『色は匂へど』は掲載終了しました。完全版として加筆修正しながら一つにまとめていきます。今に自然に繋がるように、翠や流の心情も随時書き加えていきますので、お楽しみ下さい。
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離れの茶室に翠を連れ込み、すぐに袈裟を脱がしてやった。
衣擦れの音が、雅な音を奏でる。
「ふぅ……暑かったから、すっきりしたよ。流、ありがとう」
翠はほっとした表情で、俺にコトンともたれてきた。
その背中に手を回すと、素肌がしっとりと濡れていた。
相変わらず翠の汗は、芳しい香りがするな。
こんなこと言ったら変態かとまた怒られそうだが、昔から翠は汗臭いのではなく、いい匂いがするのだ。
翠の清らかな心が透明な雫となり表に現れたようだ。
どこまでも澄んでいる。
「やっぱり汗ばんでいたな」
「うん、急に暑くなったからね」
固く絞ったおしぼりで白い背中を丁寧に拭いてやると、翠が困った顔をする。
「ん? 嫌か」
「嫌ではなくて……なんだか……シタ後みたいで恥ずかしいね」
「ブホッ!」
参ったな、また鼻血を吹くかと思ったぜ!
「急に変なこと言うな」
「だよね。あーあ、僕はいつの間にかこんなになってしまったよ。一体誰のせいかな?」
開き直ったような口調で口を尖らせる仕草が幼く可愛く見えたので、顎を掴んで腰を引き寄せ、深いキスを落とした。
「ん……」
翠も積極的に応じてくれるのが嬉しかった。
だが今はお勤めの最中だ。
だからこれ以上の触れ合いは律しないと駄目だ。
唇を離すと、名残惜しそうな吐息が届いた。
「もしかして、俺に甘えているのか」
「……僕だって誰かに甘えたくなる時がある」
「あぁ、それでいい。翠は皆を守っているから、翠は俺が守る」
俺は翠の身体に、夏物の肌襦袢を羽織らせてやった。
翠の艶めかしい素肌は、今は目の毒だ。
続いて絽の生地を使用した夏用の袈裟を着せようとすると、翠がもう少しこのまま涼んでいたいと言う。
参ったな。
このままでいると、畳に押し倒してしまうぞ。
肌襦袢からうっすら透ける胸の淡い粒に、ゴクリと喉が鳴る。
連鎖反応のように、作務衣の中の息子がムクリを頭をもたげてきてしまった。
ヤバイ、ヤバイ!
茶室に二人きり。
このまま、なだれ込む勢いだ。
自制せよ!
もうすぐ洋や涼くん、もしかすると白江さんも一緒に帰って来る。
今、翠を抱くのは駄目だ!
「流、どうした?」
「ううう……」
こんな時は、いつも俺はどうしていたか。
ふと押し入れからはみ出た布団が目に入った。
「そうだ!」
布団を引っ張り出し、畳に丸まって布団を頭まで被った。
「え? 流、何事?」
「ちょっと隠れる」
「ちょ……くすっ、いいよ、流、しばらくそのままでいるといい」
****
久しぶりに流が布団を頭まで被って丸まってしまった。
ふふ、昔はすっぽり隠れられたのに、今は足が出ている。
大きくなったね。
本当に大きくなった。
そして懐かしいね。
小さい頃、いつもふてくされたり、困ったことがあるとこんな風に布団を頭まで被って丸まっていたね。
「りゅーう」
「……昔みたいに呼ぶな」
「だって昔みたいだから」
「……覚えているのか」
「当たり前だよ。流のことなら何でも覚えているよ。僕は昔から流一筋だよ」
布団の中の流の背中が少し震えたような気がした。
「りゅーう、大好きだよ」
「……もっと」
「ふふ、流、愛してる」
ガバッと流が起上がり、僕を抱きしめた。
「本当は……こんな風にしたかった! あの時もあの時も」
「そうだったんだね。僕もこんな風にしたかったよ」
僕も流の広い背中に手を回て、抱きしめた。
「あの頃出来なかった事や、してみたかった事があるのなら、これから叶えていけばいい。僕たちは、まだまだこれからだ」
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