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16章
翠雨の後 26
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「あ……」
「どうした?」
「月が雲に……」
夕食後、月見窓から空をゆったりと見上げていた翠が呟いた。
俺も背後から近づいて一緒に夜空を見上げると、月が雲隠れしていた。
翠が納得した様子で、ふっと表情を緩める。
「あぁ、そうか……今宵は離れに恥ずかしがり屋さんがお泊まりだからか」
可愛いことを言うので、俺は月見窓の傍らで翠の顎に手をかけて、上を向かせた。
「どんな明るさでも、俺には翠が見えるぞ」
「流……それは……僕も同じだよ」
翠が月影寺を出て行ってしまった時、俺は人知れず翠を思った。
わざと冷たくして突き放しても、離れがたい兄だった。
夜な夜な夢想しては、夢の中で翠を乱し、感極まった顔に見入っていた。
とは言えないが……
「流……あのね、僕は……目が見えなくなっても、流の顔だけは忘れないように……毎晩……その……」
翠も同じだったのか。
当時はお互い素直になれずに言えなかったが……
今は……俺が翠の頬に手を添えれば、翠も躊躇いもなく添えてくれる。
「今は俺の翠か」
「うん」
住職の顔、兄の顔、父の顔と忙しい1日だった。
ようやく夜の帳が下りたのか。
「明日は入学式だから、今宵は口づけだけでいい」
「……ならば、流……僕から与えたい」
翠が俺の唇を積極的に吸ってくれる。
更に優しく舌を忍ばせて……
翠の愛情で、俺を優しく満たしてくれる。
深く交わるだけではない。
ほんの少し触れるだけで胸が高鳴っていた初心を思い出せる口づけだった。
****
「涼っ」
「わ!」
安志さんにガバッと抱きしめられ下半身を擦りつけるように揺さぶられると、あっという間に高まってしまった。
「あっ! 駄目」
「駄目なのか」
「……ううん、いい」
「だろ?」
「もうっ」
安志さんと触れ合うのは、いつぶりだろう?
大学の進級がかかっていたし撮影も重なって、ずっと会えなかった。
「涼……やっと捕まえた!」
「安志さん」
「なぁ、あんなニュース、もう気にすんなよ。俺がちゃんと分かっているんだから大丈夫だ。それにあのニュースのお陰でさ、俺たちこんなこと出来てるんだし」
僕の胴体に跨がる安志さんがニカッと笑うので、なんだか拍子抜けしてしまった。
僕、一人で悩んで……思い詰め過ぎていた。
「あ……確かに」
安志さんは悪いことを、良いことに変えてくれる人。
「涼、抱くぞ」
お互いに協力して、あっという間に一糸纏わぬ姿になった。
「俺、ちょっと、がっついているか」
「僕もだから気にしなくていいよ」
「よかった。あのさ、今日は涼の顔をじっくり見ながらしたい」
「えっ」
そのまま仰向けに押し倒され、顎をクイッと掴まれ上を向かされたと思ったら、深く口づけされた。
舌を絡め取られ口腔内をまさぐられるのって……気持ちいい。
するとそのまま、いつかのように手首を掴まれて顔に頭上で一纏めにされてしまった。
「あ……それはっ」
「いやか」
「……あの時、すごくドキドキしたよ」
「可愛いことを……今日も恥ずかしい顔見せてくれよ。最高に可愛いから」
「あ……んっ、んっ」
うん……僕も……見せたいよ。
夢中にさせて欲しい。
安志さんに溺れさせてよ。
何もかも忘れる程、強く深く……僕を抱いて!
安志さんに首筋から胸元を辿るように舐められると、僕の身体はビクビクと驚くほど過敏に反応した。
「どうした?」
「月が雲に……」
夕食後、月見窓から空をゆったりと見上げていた翠が呟いた。
俺も背後から近づいて一緒に夜空を見上げると、月が雲隠れしていた。
翠が納得した様子で、ふっと表情を緩める。
「あぁ、そうか……今宵は離れに恥ずかしがり屋さんがお泊まりだからか」
可愛いことを言うので、俺は月見窓の傍らで翠の顎に手をかけて、上を向かせた。
「どんな明るさでも、俺には翠が見えるぞ」
「流……それは……僕も同じだよ」
翠が月影寺を出て行ってしまった時、俺は人知れず翠を思った。
わざと冷たくして突き放しても、離れがたい兄だった。
夜な夜な夢想しては、夢の中で翠を乱し、感極まった顔に見入っていた。
とは言えないが……
「流……あのね、僕は……目が見えなくなっても、流の顔だけは忘れないように……毎晩……その……」
翠も同じだったのか。
当時はお互い素直になれずに言えなかったが……
今は……俺が翠の頬に手を添えれば、翠も躊躇いもなく添えてくれる。
「今は俺の翠か」
「うん」
住職の顔、兄の顔、父の顔と忙しい1日だった。
ようやく夜の帳が下りたのか。
「明日は入学式だから、今宵は口づけだけでいい」
「……ならば、流……僕から与えたい」
翠が俺の唇を積極的に吸ってくれる。
更に優しく舌を忍ばせて……
翠の愛情で、俺を優しく満たしてくれる。
深く交わるだけではない。
ほんの少し触れるだけで胸が高鳴っていた初心を思い出せる口づけだった。
****
「涼っ」
「わ!」
安志さんにガバッと抱きしめられ下半身を擦りつけるように揺さぶられると、あっという間に高まってしまった。
「あっ! 駄目」
「駄目なのか」
「……ううん、いい」
「だろ?」
「もうっ」
安志さんと触れ合うのは、いつぶりだろう?
大学の進級がかかっていたし撮影も重なって、ずっと会えなかった。
「涼……やっと捕まえた!」
「安志さん」
「なぁ、あんなニュース、もう気にすんなよ。俺がちゃんと分かっているんだから大丈夫だ。それにあのニュースのお陰でさ、俺たちこんなこと出来てるんだし」
僕の胴体に跨がる安志さんがニカッと笑うので、なんだか拍子抜けしてしまった。
僕、一人で悩んで……思い詰め過ぎていた。
「あ……確かに」
安志さんは悪いことを、良いことに変えてくれる人。
「涼、抱くぞ」
お互いに協力して、あっという間に一糸纏わぬ姿になった。
「俺、ちょっと、がっついているか」
「僕もだから気にしなくていいよ」
「よかった。あのさ、今日は涼の顔をじっくり見ながらしたい」
「えっ」
そのまま仰向けに押し倒され、顎をクイッと掴まれ上を向かされたと思ったら、深く口づけされた。
舌を絡め取られ口腔内をまさぐられるのって……気持ちいい。
するとそのまま、いつかのように手首を掴まれて顔に頭上で一纏めにされてしまった。
「あ……それはっ」
「いやか」
「……あの時、すごくドキドキしたよ」
「可愛いことを……今日も恥ずかしい顔見せてくれよ。最高に可愛いから」
「あ……んっ、んっ」
うん……僕も……見せたいよ。
夢中にさせて欲しい。
安志さんに溺れさせてよ。
何もかも忘れる程、強く深く……僕を抱いて!
安志さんに首筋から胸元を辿るように舐められると、僕の身体はビクビクと驚くほど過敏に反応した。
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