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16章
翠雨の後 24
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【お詫び】
昨日の更新で薙と涼が初対面だと書いてしまったのですが、以前一度会っていました💦クリスマスの時は挨拶程度で、ゆっくり話すのは今回が初めてという流れに修正させていただきました。(昨日の更新は既に修正済)
参考までに……1011話『聖夜を迎えよう17』https://estar.jp/novels/25539945/viewer?page=1011&preview=1
では本編です。
****
「えっ!」
「涼、飛ぶぞ! 一緒に超えて行こう!」
突然僕の横に並んだ影は……
僕が会いたくてたまらなかった人。
安志さんだった!
「うん!」
「よしっ、それっ!」
「ハッ!」
息を揃えて、僕たちは生垣を次々に跳び越えた。
現実はこんなに上手くいかないと分かっているが、大好きな安志さんと飛べることが心から嬉しかった。
庭の最奥まで行くと、薙が振り向いて笑っていた。
「ははっ、参ったな。いつの間にかメンバーが増えてる!」
「やぁ、涼くん!」
「安志さん、こんばんは」
二人が軽くハイタッチをする。
「じゃあ、バトンタッチしようかな? そろそろ戻らないと父さんが心配するから」
「あぁ、そっか、明日は高校の入学式だったね」
「うん、涼は暫くいるの?」
「うーん、明日には帰るよ。薙のお陰でまた頑張ろうという気持ちになれたから」
「良かったな」
「うん、本当にありがとう」
今度は僕と薙がハイタッチ!
薙が来た道を駆け抜けていくと、また静寂が戻ってきた。
僕は安志さんと改めて向き合った。
「涼、やっと会えたな」
「……安志さん」
安志さんはセンターベンツのダークスーツ姿だった。
ボディガードのスーツの基本は「ブレンドイン」
その環境に最も適する目立たない恰好をするのが習わしだ。
だが月光を浴びる安志さんは、月よりも輝いて見えた。
白いワイシャツもシックなネクタイも、笑うと見える綺麗な歯並びの白い歯も、全部輝いて見えた。
「安志さん……安志さんっ」
「涼、大変だったな」
「ごめんなさい。あの流出した写真……あれは……違うんだ! 僕そんなつもりでは……」
安志さんが僕を抱きしめ、よしよしと背中を優しく撫でてくれた。
「涼……大丈夫だ。何も言わなくていい。あれは、あの日の朝だろう? 涼を迎えに来た時、駅で彼とすれ違ったから分かるんだ。あれは単なるお別れの挨拶だ。だから涼は何も心配するな」
「でも……僕……」
「ごめんな。俺たちの関係を人に言えないことが苦しいんだろう? 涼を悩ませているよな?」
「安志さん、どうして……知って」
「いいか、よく聞け。全てを曝け出すのが最善じゃない。万人に受け入れられる人なんていない。それより理解してくれる人との関係を大切にして、理解してして欲しい人に理解してもらえるように二人で努力していくことの方が大切さ」
安志さんの包容力が心地良い。
「本当にそうだね。僕は大切なことを見失っていたよ」
「深呼吸しよう。月影寺の空気は澄んでいる。そして俺たちが幸せになれる道を探そう」
「うん、うん――」
僕は安志さんにしがみついて、やっぱり少しだけ泣いてしまった。
安志さんが来てくれた安心感が半端なくて。
「涼、心細かったな。だが俺が来たからもう大丈夫だ。『ピンチはチャンス』って昔から言うだろう。この逆境を乗り越えることは、涼と俺にとっても大きな意味がある。だから一緒に頑張ろう!」
春風に抱かれるように、僕は安志さんの鼓動を聴きながら目を閉じた。
トクトク……トクトク……
好きな人と心を揃えていこう。
僕は一人じゃない。
僕には安志さんがいる。
それが心強い、春の夜だった。
昨日の更新で薙と涼が初対面だと書いてしまったのですが、以前一度会っていました💦クリスマスの時は挨拶程度で、ゆっくり話すのは今回が初めてという流れに修正させていただきました。(昨日の更新は既に修正済)
参考までに……1011話『聖夜を迎えよう17』https://estar.jp/novels/25539945/viewer?page=1011&preview=1
では本編です。
****
「えっ!」
「涼、飛ぶぞ! 一緒に超えて行こう!」
突然僕の横に並んだ影は……
僕が会いたくてたまらなかった人。
安志さんだった!
「うん!」
「よしっ、それっ!」
「ハッ!」
息を揃えて、僕たちは生垣を次々に跳び越えた。
現実はこんなに上手くいかないと分かっているが、大好きな安志さんと飛べることが心から嬉しかった。
庭の最奥まで行くと、薙が振り向いて笑っていた。
「ははっ、参ったな。いつの間にかメンバーが増えてる!」
「やぁ、涼くん!」
「安志さん、こんばんは」
二人が軽くハイタッチをする。
「じゃあ、バトンタッチしようかな? そろそろ戻らないと父さんが心配するから」
「あぁ、そっか、明日は高校の入学式だったね」
「うん、涼は暫くいるの?」
「うーん、明日には帰るよ。薙のお陰でまた頑張ろうという気持ちになれたから」
「良かったな」
「うん、本当にありがとう」
今度は僕と薙がハイタッチ!
薙が来た道を駆け抜けていくと、また静寂が戻ってきた。
僕は安志さんと改めて向き合った。
「涼、やっと会えたな」
「……安志さん」
安志さんはセンターベンツのダークスーツ姿だった。
ボディガードのスーツの基本は「ブレンドイン」
その環境に最も適する目立たない恰好をするのが習わしだ。
だが月光を浴びる安志さんは、月よりも輝いて見えた。
白いワイシャツもシックなネクタイも、笑うと見える綺麗な歯並びの白い歯も、全部輝いて見えた。
「安志さん……安志さんっ」
「涼、大変だったな」
「ごめんなさい。あの流出した写真……あれは……違うんだ! 僕そんなつもりでは……」
安志さんが僕を抱きしめ、よしよしと背中を優しく撫でてくれた。
「涼……大丈夫だ。何も言わなくていい。あれは、あの日の朝だろう? 涼を迎えに来た時、駅で彼とすれ違ったから分かるんだ。あれは単なるお別れの挨拶だ。だから涼は何も心配するな」
「でも……僕……」
「ごめんな。俺たちの関係を人に言えないことが苦しいんだろう? 涼を悩ませているよな?」
「安志さん、どうして……知って」
「いいか、よく聞け。全てを曝け出すのが最善じゃない。万人に受け入れられる人なんていない。それより理解してくれる人との関係を大切にして、理解してして欲しい人に理解してもらえるように二人で努力していくことの方が大切さ」
安志さんの包容力が心地良い。
「本当にそうだね。僕は大切なことを見失っていたよ」
「深呼吸しよう。月影寺の空気は澄んでいる。そして俺たちが幸せになれる道を探そう」
「うん、うん――」
僕は安志さんにしがみついて、やっぱり少しだけ泣いてしまった。
安志さんが来てくれた安心感が半端なくて。
「涼、心細かったな。だが俺が来たからもう大丈夫だ。『ピンチはチャンス』って昔から言うだろう。この逆境を乗り越えることは、涼と俺にとっても大きな意味がある。だから一緒に頑張ろう!」
春風に抱かれるように、僕は安志さんの鼓動を聴きながら目を閉じた。
トクトク……トクトク……
好きな人と心を揃えていこう。
僕は一人じゃない。
僕には安志さんがいる。
それが心強い、春の夜だった。
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