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16章
翠雨の後 20
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「ご飯って、お代わりある?」
「流石育ち盛り、よく食べるな」
「うん、ほっとしたら食欲が戻ってきたみたい」
「良かった」
隣でハンバーグを頬張る涼の明るい様子に、俺と丈は胸を撫で下ろした。
涼と安志。
二人の恋を、俺たちは心から応援している。
唯一無二の親友と双子のような従兄弟。
どうして、こんなにも俺と近しい間柄の二人が、男同士でまた結ばれたのか、何度考えても不思議だ。
俺と丈の場合……
初めから惹かれ合い、男同士という垣根を越えてすぐに結ばれたのには、前世からの深い縁の影響があったことが後に分かった。
もちろん輪廻転生の縁だけに縛られたわけではない。
俺はこの世で、丈に確かな恋心を抱いている。
だから俺から飛び込んだ。
過去のヨウや洋月の悲願もあっただろうが、一線を越えたのは、俺の意思だった。
涼が安志と結ばれたのも、やはり何か過去からの縁があったのではと考えたが、過去の俺はいつも独りで、兄弟、双子、従兄弟の存在は皆無だった。
もしかして俺と丈が放つ強力な輪廻転生の力に巻き込まれてしまったのか。
今生で生まれた恋の終着点は、俺には分からない。
安志と涼で力を合わせて、切り開いていく未来だ。
そのためにも互いに力を蓄えて欲しい。この先降りかかってくるかもしれない災難を薙ぎ払うパワーが必要だ。
この月影寺は内なる力を宿すのに最適な場所だ。
だからここで暫く身体を休ませて欲しい。
「ご馳走様でした! うう、食べ過ぎてお腹が苦しいよ。少し外で身体を動かしてきていい?」
「食べてすぐに運動するのは身体によくないぞ。なっ、丈」
「あぁ、食後すぐに運動をすると胃の中の食べ物を消化するために必要な血液を運動に必要な体の他の部位に送ることになり、消化不良を引き起こす可能性がある」
丈が真面目な顔で医学的に説明すると、涼はキョトンとした顔をしていた。
「……うん? だから?」
「だが食事して30分~1時間ほど経つと消化が始まり糖質が吸収され血糖値も上がるタイミングになるので、このタイミングで運動をするのは効果的だ。だから30分は待て」
「うーん、じゃあまずは大人しく夜風にあたってくるよ」
丈なりに噛み砕いて説明しているのに、涼には少し難しいようだ。
そんなまだ若く幼い涼が、俺は可愛くて堪らない。
「涼、どうか月影寺の中にいてくれ」
「うん、分かってる。出るつもりはないよ。ここはとても居心地がいいからね」
少し一人になりたいのかもしれない。
そんな気がしたので、俺は素直に見送った。
すると丈に背後から抱きしめられた。
「洋もついて行くのかと思ったが」
「涼には涼の時間があり、考えがある。俺はそっと寄り添ってやりたいんだ」
「あぁ、そうだな。私たちに私たちの時間があるように」
涼のために流さんを連れて来てくれて、故郷のアメリカンハンバーグを作ってくれてありがとう。
涼の身体を心配してくれてありがとう。涼の気持ちを尊重してくれて、ありがとう。
丈への感謝の気持ちが沸き上がってきた。
「丈、ありがとう!」
ふわりと抱きついて耳元で礼を言うと、丈は少し驚いていた。
「何か感謝されることをしたか。全ては洋のためにしただけだが――」
丈の男前の優しさは、俺だけでなく周囲にも広がっているのに気付いていないのか。俺も不器用だが、丈も不器用な男だ。
「あぁ、俺はそんな丈がとても好きだ」
丈を見上げそっと目を閉じると、優しく唇を重ねられた。
「私たちはもう何も乗り越えなくていい。ただ洋がいればいい」
俺は丈の広い背中に手を回し、強く抱き寄せた。
「あぁ、俺もお前がいないと、1日も生きていけない!」
そう断言出来るほど、俺は丈を愛してる!
「流石育ち盛り、よく食べるな」
「うん、ほっとしたら食欲が戻ってきたみたい」
「良かった」
隣でハンバーグを頬張る涼の明るい様子に、俺と丈は胸を撫で下ろした。
涼と安志。
二人の恋を、俺たちは心から応援している。
唯一無二の親友と双子のような従兄弟。
どうして、こんなにも俺と近しい間柄の二人が、男同士でまた結ばれたのか、何度考えても不思議だ。
俺と丈の場合……
初めから惹かれ合い、男同士という垣根を越えてすぐに結ばれたのには、前世からの深い縁の影響があったことが後に分かった。
もちろん輪廻転生の縁だけに縛られたわけではない。
俺はこの世で、丈に確かな恋心を抱いている。
だから俺から飛び込んだ。
過去のヨウや洋月の悲願もあっただろうが、一線を越えたのは、俺の意思だった。
涼が安志と結ばれたのも、やはり何か過去からの縁があったのではと考えたが、過去の俺はいつも独りで、兄弟、双子、従兄弟の存在は皆無だった。
もしかして俺と丈が放つ強力な輪廻転生の力に巻き込まれてしまったのか。
今生で生まれた恋の終着点は、俺には分からない。
安志と涼で力を合わせて、切り開いていく未来だ。
そのためにも互いに力を蓄えて欲しい。この先降りかかってくるかもしれない災難を薙ぎ払うパワーが必要だ。
この月影寺は内なる力を宿すのに最適な場所だ。
だからここで暫く身体を休ませて欲しい。
「ご馳走様でした! うう、食べ過ぎてお腹が苦しいよ。少し外で身体を動かしてきていい?」
「食べてすぐに運動するのは身体によくないぞ。なっ、丈」
「あぁ、食後すぐに運動をすると胃の中の食べ物を消化するために必要な血液を運動に必要な体の他の部位に送ることになり、消化不良を引き起こす可能性がある」
丈が真面目な顔で医学的に説明すると、涼はキョトンとした顔をしていた。
「……うん? だから?」
「だが食事して30分~1時間ほど経つと消化が始まり糖質が吸収され血糖値も上がるタイミングになるので、このタイミングで運動をするのは効果的だ。だから30分は待て」
「うーん、じゃあまずは大人しく夜風にあたってくるよ」
丈なりに噛み砕いて説明しているのに、涼には少し難しいようだ。
そんなまだ若く幼い涼が、俺は可愛くて堪らない。
「涼、どうか月影寺の中にいてくれ」
「うん、分かってる。出るつもりはないよ。ここはとても居心地がいいからね」
少し一人になりたいのかもしれない。
そんな気がしたので、俺は素直に見送った。
すると丈に背後から抱きしめられた。
「洋もついて行くのかと思ったが」
「涼には涼の時間があり、考えがある。俺はそっと寄り添ってやりたいんだ」
「あぁ、そうだな。私たちに私たちの時間があるように」
涼のために流さんを連れて来てくれて、故郷のアメリカンハンバーグを作ってくれてありがとう。
涼の身体を心配してくれてありがとう。涼の気持ちを尊重してくれて、ありがとう。
丈への感謝の気持ちが沸き上がってきた。
「丈、ありがとう!」
ふわりと抱きついて耳元で礼を言うと、丈は少し驚いていた。
「何か感謝されることをしたか。全ては洋のためにしただけだが――」
丈の男前の優しさは、俺だけでなく周囲にも広がっているのに気付いていないのか。俺も不器用だが、丈も不器用な男だ。
「あぁ、俺はそんな丈がとても好きだ」
丈を見上げそっと目を閉じると、優しく唇を重ねられた。
「私たちはもう何も乗り越えなくていい。ただ洋がいればいい」
俺は丈の広い背中に手を回し、強く抱き寄せた。
「あぁ、俺もお前がいないと、1日も生きていけない!」
そう断言出来るほど、俺は丈を愛してる!
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