1,384 / 1,657
14章
クリスマス特別編 月影寺の救世主 4
しおりを挟む
「お気をつけてお帰り下さい」
「ご住職さまも、よいお年をお迎えください~」
「ありがとう」
「きゃー♡ 今度は初詣に来ますね」
はぁ~ 聞き飽きたぜ。
さっきから何度も何度も、同じ台詞が繰り返されている。
やれやれ、やはり皆、写経より翠が目当なんだな。
いずれにせよ年内の写経会は、今日で終わりだ。
「やれやれ……皆、帰ったか」
「もう少しだよ」
翠の希望で、今宵の月影寺はクリスマススペシャルだ。
中庭の枯れ枝に白い月明かりのようなイルミネーションを灯らせているので、帰り際、皆、立ち止まって見蕩れている。
「流、とても綺麗だね」
「翠も気に入ってくれたか」
「うん、僕の夢を叶えてくれてありがとう」
「ん? ……これは翠の夢だったのか」
翠は俺と肩を並べ、たおやかな笑みを浮かべている。
「ずっと……流とクリスマスイブに夜景見物に行きたかったんだ。なぁ、こんなの変か」
はぁぁ参ったな。
小首を傾げてそんな甘い台詞を吐くなんて……可愛すぎる。
翠は俺をどこまでも甘やかしてくれる。
「なら、特等席で見よう」
「どこへ?」
「こっちだ!」
俺は翠の手を引いて、母屋の二階に駆け上がり、狭い納戸に連れ込んだ。
「納戸?」
「ここの窓からが一番よく見える」
「そうなのか」
まるで探検ごっこのように納戸に積み上げた衣装箱をすり抜けて窓辺に立つと、群がっていた人は消えて、中庭に静寂が戻っていた。
「ほら、高い場所から見ると映えるように配置したんだ」
「あっ、えっ?」
「こんなのベタだろ? ありきたりで面白みがないよな」
「驚いたよ」
イルミネーションを上方から見下ろすと、ハートを描くように配置したのは遊び心だった。
「こんなこと自分がやるとはな」
照れ臭くて鼻の頭を擦ると、翠が背伸びして口づけしてくれた。
「流、ありがとう。僕は案外こういうロマンチックな演出に弱いんだよ」
「じゃあ喜んでもらえたのか」
「あぁ、流はカッコイイよ。最高だ」
嬉しさのあまり、翠の細腰に手を回し、ギュッと足が浮くほど抱きしめてしまった。
途端にムラムラしてくる。
「もう、いいか」
「もう、いいよ」
「もう俺だけの翠になってくれるか」
「あぁ……もうお前だけの僕だ」
そんなに可愛い顔をされたら、このまま、ここで抱きたくなる。
「翠……待てない」
「流……あっ」
翠の袈裟を着崩していく。
露わにした胸をまさぐり突起を指で愛撫すれば、翠の肌は淡く色づき、甘い吐息が漏れ出す。
「ん……っ、ん……」
口づけを繰り返しながら、愛撫を繰り返していると、翠は小さなくしゃみをした。
「悪い、ここじゃ寒いな」
「ん……冷えてきたね。小森くん、風邪を引いていないといいけど……無事に辿り着いたかな」
「アイツなら、今ごろ、菅野くんの懐に潜り込んでいるんじゃないか」
「くすっ でも、それでは看病にならないよ」
「うーん、なんだか心配だな。アイツぼんやりしているから無事に辿りついたかな」
「そうだねぇ、一応電話してみよう」
「あぁ、そうしないと落ち着いて翠を抱けない」
俺たちは一旦衣類を整えて、小森に電話をしてみた。
ところが出たのは菅野くんだった。
「どうして君が? 寝込んでいるんじゃ?小森に変わってくれ」
「あー、こもりん、寝ちゃってます」
「へ?」
「すみません、玄関で待たせてしまったのが悪かったみたいで、風邪ひいたみたいで」
「えっ、君の看病に行ったのに?」
「はい、ふたりで風邪っぴきです」
「しょうがないな。今日は暖かくして眠れ」
「そうします!」
やれやれ小森らしいな、看病するどころか風邪をひいたのか。
「流、明日行っておやりよ。ふたりで風邪を引いたんじゃ可哀想だ」
「どうして俺が」
「だって……小森くんは僕の息子のようだから心配なんだ」
「分かったよ。その代わり今日は翠、俺の言うこと聞けよ」
挑むように翠を見つめると、翠はふっと微笑んでいた。
「いいよ、流のしたいことをしよう」
「翠、後悔するなよ」
「いいよ、縛ってもいい……繋いでもいい」
翠が大胆なことを言うので驚いた。
「いや、やっぱり何もしない。今宵はクリスマスイブだ。ただ翠を抱ける……それだけでどんなに幸せか……感謝する夜だから」
「……そうか、分かった。流、もう離れに行こう」
「あぁ二人だけのクリスマスを祝福しよう」
「ご住職さまも、よいお年をお迎えください~」
「ありがとう」
「きゃー♡ 今度は初詣に来ますね」
はぁ~ 聞き飽きたぜ。
さっきから何度も何度も、同じ台詞が繰り返されている。
やれやれ、やはり皆、写経より翠が目当なんだな。
いずれにせよ年内の写経会は、今日で終わりだ。
「やれやれ……皆、帰ったか」
「もう少しだよ」
翠の希望で、今宵の月影寺はクリスマススペシャルだ。
中庭の枯れ枝に白い月明かりのようなイルミネーションを灯らせているので、帰り際、皆、立ち止まって見蕩れている。
「流、とても綺麗だね」
「翠も気に入ってくれたか」
「うん、僕の夢を叶えてくれてありがとう」
「ん? ……これは翠の夢だったのか」
翠は俺と肩を並べ、たおやかな笑みを浮かべている。
「ずっと……流とクリスマスイブに夜景見物に行きたかったんだ。なぁ、こんなの変か」
はぁぁ参ったな。
小首を傾げてそんな甘い台詞を吐くなんて……可愛すぎる。
翠は俺をどこまでも甘やかしてくれる。
「なら、特等席で見よう」
「どこへ?」
「こっちだ!」
俺は翠の手を引いて、母屋の二階に駆け上がり、狭い納戸に連れ込んだ。
「納戸?」
「ここの窓からが一番よく見える」
「そうなのか」
まるで探検ごっこのように納戸に積み上げた衣装箱をすり抜けて窓辺に立つと、群がっていた人は消えて、中庭に静寂が戻っていた。
「ほら、高い場所から見ると映えるように配置したんだ」
「あっ、えっ?」
「こんなのベタだろ? ありきたりで面白みがないよな」
「驚いたよ」
イルミネーションを上方から見下ろすと、ハートを描くように配置したのは遊び心だった。
「こんなこと自分がやるとはな」
照れ臭くて鼻の頭を擦ると、翠が背伸びして口づけしてくれた。
「流、ありがとう。僕は案外こういうロマンチックな演出に弱いんだよ」
「じゃあ喜んでもらえたのか」
「あぁ、流はカッコイイよ。最高だ」
嬉しさのあまり、翠の細腰に手を回し、ギュッと足が浮くほど抱きしめてしまった。
途端にムラムラしてくる。
「もう、いいか」
「もう、いいよ」
「もう俺だけの翠になってくれるか」
「あぁ……もうお前だけの僕だ」
そんなに可愛い顔をされたら、このまま、ここで抱きたくなる。
「翠……待てない」
「流……あっ」
翠の袈裟を着崩していく。
露わにした胸をまさぐり突起を指で愛撫すれば、翠の肌は淡く色づき、甘い吐息が漏れ出す。
「ん……っ、ん……」
口づけを繰り返しながら、愛撫を繰り返していると、翠は小さなくしゃみをした。
「悪い、ここじゃ寒いな」
「ん……冷えてきたね。小森くん、風邪を引いていないといいけど……無事に辿り着いたかな」
「アイツなら、今ごろ、菅野くんの懐に潜り込んでいるんじゃないか」
「くすっ でも、それでは看病にならないよ」
「うーん、なんだか心配だな。アイツぼんやりしているから無事に辿りついたかな」
「そうだねぇ、一応電話してみよう」
「あぁ、そうしないと落ち着いて翠を抱けない」
俺たちは一旦衣類を整えて、小森に電話をしてみた。
ところが出たのは菅野くんだった。
「どうして君が? 寝込んでいるんじゃ?小森に変わってくれ」
「あー、こもりん、寝ちゃってます」
「へ?」
「すみません、玄関で待たせてしまったのが悪かったみたいで、風邪ひいたみたいで」
「えっ、君の看病に行ったのに?」
「はい、ふたりで風邪っぴきです」
「しょうがないな。今日は暖かくして眠れ」
「そうします!」
やれやれ小森らしいな、看病するどころか風邪をひいたのか。
「流、明日行っておやりよ。ふたりで風邪を引いたんじゃ可哀想だ」
「どうして俺が」
「だって……小森くんは僕の息子のようだから心配なんだ」
「分かったよ。その代わり今日は翠、俺の言うこと聞けよ」
挑むように翠を見つめると、翠はふっと微笑んでいた。
「いいよ、流のしたいことをしよう」
「翠、後悔するなよ」
「いいよ、縛ってもいい……繋いでもいい」
翠が大胆なことを言うので驚いた。
「いや、やっぱり何もしない。今宵はクリスマスイブだ。ただ翠を抱ける……それだけでどんなに幸せか……感謝する夜だから」
「……そうか、分かった。流、もう離れに行こう」
「あぁ二人だけのクリスマスを祝福しよう」
10
お気に入りに追加
445
あなたにおすすめの小説
【完結】双子の伯爵令嬢とその許婚たちの物語
ひかり芽衣
恋愛
伯爵令嬢のリリカとキャサリンは二卵性双生児。生まれつき病弱でどんどん母似の美女へ成長するキャサリンを母は溺愛し、そんな母に父は何も言えない……。そんな家庭で育った父似のリリカは、とにかく自分に自信がない。幼い頃からの許婚である伯爵家長男ウィリアムが心の支えだ。しかしある日、ウィリアムに許婚の話をなかったことにして欲しいと言われ……
リリカとキャサリン、ウィリアム、キャサリンの許婚である公爵家次男のスターリン……彼らの物語を一緒に見守って下さると嬉しいです。
⭐︎2023.4.24完結⭐︎
※2024.2.8~追加・修正作業のため、2話以降を一旦非公開にしていました。
→2024.3.4再投稿。大幅に追加&修正をしたので、もしよければ読んでみて下さい(^^)


そんなの真実じゃない
イヌノカニ
BL
引きこもって四年、生きていてもしょうがないと感じた主人公は身の周りの整理し始める。自分の部屋に溢れる幼馴染との思い出を見て、どんなパソコンやスマホよりも自分の事を知っているのは幼馴染だと気付く。どうにかして彼から自分に関する記憶を消したいと思った主人公は偶然見た広告の人を意のままに操れるというお香を手に幼馴染に会いに行くが———?
彼は本当に俺の知っている彼なのだろうか。
==============
人の証言と記憶の曖昧さをテーマに書いたので、ハッキリとせずに終わります。

代わりでいいから
氷魚彰人
BL
親に裏切られ、一人で生きていこうと決めた青年『護』の隣に引っ越してきたのは強面のおっさん『岩間』だった。
不定期に岩間に晩御飯を誘われるようになり、何時からかそれが護の楽しみとなっていくが……。
ハピエンですがちょっと暗い内容ですので、苦手な方、コメディ系の明るいお話しをお求めの方はお気を付け下さいませ。
他サイトに投稿した「隣のお節介」をタイトルを変え、手直ししたものになります。
六日の菖蒲
あこ
BL
突然一方的に別れを告げられた紫はその後、理由を目の当たりにする。
落ち込んで行く紫を見ていた萌葱は、図らずも自分と向き合う事になった。
▷ 王道?全寮制学園ものっぽい学園が舞台です。
▷ 同室の紫と萌葱を中心にその脇でアンチ王道な展開ですが、アンチの影は薄め(のはず)
▷ 身代わりにされてた受けが幸せになるまで、が目標。
▷ 見た目不良な萌葱は不良ではありません。見た目だけ。そして世話焼き(紫限定)です。
▷ 紫はのほほん健気な普通顔です。でも雰囲気補正でちょっと可愛く見えます。
▷ 章や作品タイトルの頭に『★』があるものは、個人サイトでリクエストしていただいたものです。こちらではいただいたリクエスト内容やお礼などの後書きを省略させていただいています。
消えない思い
樹木緑
BL
オメガバース:僕には忘れられない夏がある。彼が好きだった。ただ、ただ、彼が好きだった。
高校3年生 矢野浩二 α
高校3年生 佐々木裕也 α
高校1年生 赤城要 Ω
赤城要は運命の番である両親に憧れ、両親が出会った高校に入学します。
自分も両親の様に運命の番が欲しいと思っています。
そして高校の入学式で出会った矢野浩二に、淡い感情を抱き始めるようになります。
でもあるきっかけを基に、佐々木裕也と出会います。
彼こそが要の探し続けた運命の番だったのです。
そして3人の運命が絡み合って、それぞれが、それぞれの選択をしていくと言うお話です。

愛する貴方の心から消えた私は…
矢野りと
恋愛
愛する夫が事故に巻き込まれ隣国で行方不明となったのは一年以上前のこと。
周りが諦めの言葉を口にしても、私は決して諦めなかった。
…彼は絶対に生きている。
そう信じて待ち続けていると、願いが天に通じたのか奇跡的に彼は戻って来た。
だが彼は妻である私のことを忘れてしまっていた。
「すまない、君を愛せない」
そう言った彼の目からは私に対する愛情はなくなっていて…。
*設定はゆるいです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる