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14章
クリスマス特別編 月影寺の救世主 4
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「お気をつけてお帰り下さい」
「ご住職さまも、よいお年をお迎えください~」
「ありがとう」
「きゃー♡ 今度は初詣に来ますね」
はぁ~ 聞き飽きたぜ。
さっきから何度も何度も、同じ台詞が繰り返されている。
やれやれ、やはり皆、写経より翠が目当なんだな。
いずれにせよ年内の写経会は、今日で終わりだ。
「やれやれ……皆、帰ったか」
「もう少しだよ」
翠の希望で、今宵の月影寺はクリスマススペシャルだ。
中庭の枯れ枝に白い月明かりのようなイルミネーションを灯らせているので、帰り際、皆、立ち止まって見蕩れている。
「流、とても綺麗だね」
「翠も気に入ってくれたか」
「うん、僕の夢を叶えてくれてありがとう」
「ん? ……これは翠の夢だったのか」
翠は俺と肩を並べ、たおやかな笑みを浮かべている。
「ずっと……流とクリスマスイブに夜景見物に行きたかったんだ。なぁ、こんなの変か」
はぁぁ参ったな。
小首を傾げてそんな甘い台詞を吐くなんて……可愛すぎる。
翠は俺をどこまでも甘やかしてくれる。
「なら、特等席で見よう」
「どこへ?」
「こっちだ!」
俺は翠の手を引いて、母屋の二階に駆け上がり、狭い納戸に連れ込んだ。
「納戸?」
「ここの窓からが一番よく見える」
「そうなのか」
まるで探検ごっこのように納戸に積み上げた衣装箱をすり抜けて窓辺に立つと、群がっていた人は消えて、中庭に静寂が戻っていた。
「ほら、高い場所から見ると映えるように配置したんだ」
「あっ、えっ?」
「こんなのベタだろ? ありきたりで面白みがないよな」
「驚いたよ」
イルミネーションを上方から見下ろすと、ハートを描くように配置したのは遊び心だった。
「こんなこと自分がやるとはな」
照れ臭くて鼻の頭を擦ると、翠が背伸びして口づけしてくれた。
「流、ありがとう。僕は案外こういうロマンチックな演出に弱いんだよ」
「じゃあ喜んでもらえたのか」
「あぁ、流はカッコイイよ。最高だ」
嬉しさのあまり、翠の細腰に手を回し、ギュッと足が浮くほど抱きしめてしまった。
途端にムラムラしてくる。
「もう、いいか」
「もう、いいよ」
「もう俺だけの翠になってくれるか」
「あぁ……もうお前だけの僕だ」
そんなに可愛い顔をされたら、このまま、ここで抱きたくなる。
「翠……待てない」
「流……あっ」
翠の袈裟を着崩していく。
露わにした胸をまさぐり突起を指で愛撫すれば、翠の肌は淡く色づき、甘い吐息が漏れ出す。
「ん……っ、ん……」
口づけを繰り返しながら、愛撫を繰り返していると、翠は小さなくしゃみをした。
「悪い、ここじゃ寒いな」
「ん……冷えてきたね。小森くん、風邪を引いていないといいけど……無事に辿り着いたかな」
「アイツなら、今ごろ、菅野くんの懐に潜り込んでいるんじゃないか」
「くすっ でも、それでは看病にならないよ」
「うーん、なんだか心配だな。アイツぼんやりしているから無事に辿りついたかな」
「そうだねぇ、一応電話してみよう」
「あぁ、そうしないと落ち着いて翠を抱けない」
俺たちは一旦衣類を整えて、小森に電話をしてみた。
ところが出たのは菅野くんだった。
「どうして君が? 寝込んでいるんじゃ?小森に変わってくれ」
「あー、こもりん、寝ちゃってます」
「へ?」
「すみません、玄関で待たせてしまったのが悪かったみたいで、風邪ひいたみたいで」
「えっ、君の看病に行ったのに?」
「はい、ふたりで風邪っぴきです」
「しょうがないな。今日は暖かくして眠れ」
「そうします!」
やれやれ小森らしいな、看病するどころか風邪をひいたのか。
「流、明日行っておやりよ。ふたりで風邪を引いたんじゃ可哀想だ」
「どうして俺が」
「だって……小森くんは僕の息子のようだから心配なんだ」
「分かったよ。その代わり今日は翠、俺の言うこと聞けよ」
挑むように翠を見つめると、翠はふっと微笑んでいた。
「いいよ、流のしたいことをしよう」
「翠、後悔するなよ」
「いいよ、縛ってもいい……繋いでもいい」
翠が大胆なことを言うので驚いた。
「いや、やっぱり何もしない。今宵はクリスマスイブだ。ただ翠を抱ける……それだけでどんなに幸せか……感謝する夜だから」
「……そうか、分かった。流、もう離れに行こう」
「あぁ二人だけのクリスマスを祝福しよう」
「ご住職さまも、よいお年をお迎えください~」
「ありがとう」
「きゃー♡ 今度は初詣に来ますね」
はぁ~ 聞き飽きたぜ。
さっきから何度も何度も、同じ台詞が繰り返されている。
やれやれ、やはり皆、写経より翠が目当なんだな。
いずれにせよ年内の写経会は、今日で終わりだ。
「やれやれ……皆、帰ったか」
「もう少しだよ」
翠の希望で、今宵の月影寺はクリスマススペシャルだ。
中庭の枯れ枝に白い月明かりのようなイルミネーションを灯らせているので、帰り際、皆、立ち止まって見蕩れている。
「流、とても綺麗だね」
「翠も気に入ってくれたか」
「うん、僕の夢を叶えてくれてありがとう」
「ん? ……これは翠の夢だったのか」
翠は俺と肩を並べ、たおやかな笑みを浮かべている。
「ずっと……流とクリスマスイブに夜景見物に行きたかったんだ。なぁ、こんなの変か」
はぁぁ参ったな。
小首を傾げてそんな甘い台詞を吐くなんて……可愛すぎる。
翠は俺をどこまでも甘やかしてくれる。
「なら、特等席で見よう」
「どこへ?」
「こっちだ!」
俺は翠の手を引いて、母屋の二階に駆け上がり、狭い納戸に連れ込んだ。
「納戸?」
「ここの窓からが一番よく見える」
「そうなのか」
まるで探検ごっこのように納戸に積み上げた衣装箱をすり抜けて窓辺に立つと、群がっていた人は消えて、中庭に静寂が戻っていた。
「ほら、高い場所から見ると映えるように配置したんだ」
「あっ、えっ?」
「こんなのベタだろ? ありきたりで面白みがないよな」
「驚いたよ」
イルミネーションを上方から見下ろすと、ハートを描くように配置したのは遊び心だった。
「こんなこと自分がやるとはな」
照れ臭くて鼻の頭を擦ると、翠が背伸びして口づけしてくれた。
「流、ありがとう。僕は案外こういうロマンチックな演出に弱いんだよ」
「じゃあ喜んでもらえたのか」
「あぁ、流はカッコイイよ。最高だ」
嬉しさのあまり、翠の細腰に手を回し、ギュッと足が浮くほど抱きしめてしまった。
途端にムラムラしてくる。
「もう、いいか」
「もう、いいよ」
「もう俺だけの翠になってくれるか」
「あぁ……もうお前だけの僕だ」
そんなに可愛い顔をされたら、このまま、ここで抱きたくなる。
「翠……待てない」
「流……あっ」
翠の袈裟を着崩していく。
露わにした胸をまさぐり突起を指で愛撫すれば、翠の肌は淡く色づき、甘い吐息が漏れ出す。
「ん……っ、ん……」
口づけを繰り返しながら、愛撫を繰り返していると、翠は小さなくしゃみをした。
「悪い、ここじゃ寒いな」
「ん……冷えてきたね。小森くん、風邪を引いていないといいけど……無事に辿り着いたかな」
「アイツなら、今ごろ、菅野くんの懐に潜り込んでいるんじゃないか」
「くすっ でも、それでは看病にならないよ」
「うーん、なんだか心配だな。アイツぼんやりしているから無事に辿りついたかな」
「そうだねぇ、一応電話してみよう」
「あぁ、そうしないと落ち着いて翠を抱けない」
俺たちは一旦衣類を整えて、小森に電話をしてみた。
ところが出たのは菅野くんだった。
「どうして君が? 寝込んでいるんじゃ?小森に変わってくれ」
「あー、こもりん、寝ちゃってます」
「へ?」
「すみません、玄関で待たせてしまったのが悪かったみたいで、風邪ひいたみたいで」
「えっ、君の看病に行ったのに?」
「はい、ふたりで風邪っぴきです」
「しょうがないな。今日は暖かくして眠れ」
「そうします!」
やれやれ小森らしいな、看病するどころか風邪をひいたのか。
「流、明日行っておやりよ。ふたりで風邪を引いたんじゃ可哀想だ」
「どうして俺が」
「だって……小森くんは僕の息子のようだから心配なんだ」
「分かったよ。その代わり今日は翠、俺の言うこと聞けよ」
挑むように翠を見つめると、翠はふっと微笑んでいた。
「いいよ、流のしたいことをしよう」
「翠、後悔するなよ」
「いいよ、縛ってもいい……繋いでもいい」
翠が大胆なことを言うので驚いた。
「いや、やっぱり何もしない。今宵はクリスマスイブだ。ただ翠を抱ける……それだけでどんなに幸せか……感謝する夜だから」
「……そうか、分かった。流、もう離れに行こう」
「あぁ二人だけのクリスマスを祝福しよう」
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