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14章
クリスマス特別編 月影寺の救世主 1
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こんにちは、うみです。
今日から3日間、時季外れですが、クリスマスの話になります。
『幸せな存在』のハートフルクリスマスと連動する仕掛けになっています。
****
『月影寺の救世主』
あっという間に、今日はクリスマスイブだ。
お寺にクリスマスなんて関係ないだろうと去年まで思っていたが、今年は違う。
翠は春に火傷痕を消す手術をしてから、グッと精力的になった。
おっと精力的なのは仕事のことだ。
あ、いや……夜の営みも色気が増して絶品だ。
「流、さっきから何をにやけている?」
翠が冷ややかな目で見るので、背筋を正した。鼻の下を伸ばすのは宗吾だけでいい。俺はもっと凜々しい恋人を目指しているのだから。
艶やかに咲く翠に相応しい男でありたい。
「何でもないさ」
「ふぅん……イルミネーションの準備は整ったのかい?」
「ばっちりだ。特注の饅頭の手配も出来ている」
翠は、最近寺に新しい風を吹かせている。
つまり新たな試みに挑戦するようになったのだ。
毎週金曜日の夜に開催するナイター写経会もその一つだ。
早朝座禅会は聞いたことがあるが、ナイター写経は初耳で心配したが、仕事帰りの人でも気軽に寄れるので、好評だ。
「なぁ翠、今日はクリスマス・イブなんだから、写経会は休んでも良かったんじゃないか」
「だが、皆さん来週も是非よろしくって仰るから」
馬鹿だなぁ、それは翠目当てだからだと突っ込みたくなったが、グッと我慢した。
「流……思う存分仕事をした後って、心置きなく……没頭できるんだ」
翠が意味深なことを口走る。
おい! それって期待していいってことか。
俺の翠は、俺を甘やかす天才だ。
いや人参をぶら下げられているのかもしれないと苦笑した。
「流……今宵はクリスマスイブだね。だから……離れで会おう」
****
さっきから庭が騒がしいな。
ペンを置きコートを羽織って外に出ると、作務衣姿の流さんが中庭の木々に照明を取り付けていた。
「何をしているんですか」
「洋くん、悪いが、そっちを持ってくれるか」
「はい。あ……去年はイルミネーションを灯して下さってありがとうございました」
「あぁ、あれな。丈も気に入ったようで、アイツが翠に話したせいで、寺の庭全体をライトアップせよと、翠がご所望だ」
「え? どうしてですか」
「ほらアレだよ、クリスマスイブにわざわざ写経に訪れる人に贈りたいんだと」
「成程、翠さんらしいですね」
「ありがとうな。洋は仕事中だろ? あとは小森にやらせるよ」
「あ、はい」
少し名残惜しい気持ちになってしまった。
俺も……もっと手伝いたい。
そう告げようと思った時に、コートのポケットのスマホが鳴った。
相手は瑞樹くんだった。
こんな時間になんだろう?
「瑞樹くん、夏以来だね、どうしたの?」
「あ、あの……小森くんはいますか。彼って、今日は忙しいですか」
「うーん、どうだろう? 何かあった?」
「実は菅野が高熱で早退してしまって」
「えっ、あの菅野くんが?」
「そうなんです。アイツ一人暮らしだから心配で。僕は彼の仕事を引き受けたので様子を見に行ってやれなくて、その……」
とても控えめに言うので最初はピンとこなかったが、ハッとした。
管野くんと小森くんはこの夏からお付き合いしている。つまり……
「瑞樹くん、大丈夫だよ。小森くんに今からお見舞いに行かせるよ、俺も心配だし」
「本当? そうしてくれると安心できるよ」
「了解」
電話を切ると、流さんがニヤニヤと笑っていた。
「なるほど、今日は洋が小森くんの代わりに働いてくれるんだな」
「あ……勝手に決めちゃってすみません」
「いいって。恋人が病気なら看病するのが当然さ。但し風邪をもらわないようにしないとな。こもりー! どこだぁ」
流さんは頭の回転が速いので、すぐに小森くんに旅支度をさせた。
「いいか、マスクは外すな。それから栄養ゼリーとドリンク、あとお粥のレシピと……カイロと、これは小森に差し入れの饅頭だ」
「わぁクリスマス限定のお饅頭ですね。 キラキラしていて綺麗ですねぇ。ありがとうございます。では、小森風太、菅野くんのお見舞いに行って参ります」
小森くんは大きな風呂敷を抱えて、山門を駆け下りていった。
「おーい、転ぶなよ」
「はーい! お饅頭が入っているので、気をつけます~」
そこ?
菅野くんとは暫く会えていなかったようで、小森くんは顔を赤くして飛び出していった。
その様子を見守って、付き合いたてってピュアでいいなと少し羨ましくもなり、同時に今宵俺は……丈とどんな濃厚なクリスマスイブを過ごすのか楽しみにもなった。
今日から3日間、時季外れですが、クリスマスの話になります。
『幸せな存在』のハートフルクリスマスと連動する仕掛けになっています。
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『月影寺の救世主』
あっという間に、今日はクリスマスイブだ。
お寺にクリスマスなんて関係ないだろうと去年まで思っていたが、今年は違う。
翠は春に火傷痕を消す手術をしてから、グッと精力的になった。
おっと精力的なのは仕事のことだ。
あ、いや……夜の営みも色気が増して絶品だ。
「流、さっきから何をにやけている?」
翠が冷ややかな目で見るので、背筋を正した。鼻の下を伸ばすのは宗吾だけでいい。俺はもっと凜々しい恋人を目指しているのだから。
艶やかに咲く翠に相応しい男でありたい。
「何でもないさ」
「ふぅん……イルミネーションの準備は整ったのかい?」
「ばっちりだ。特注の饅頭の手配も出来ている」
翠は、最近寺に新しい風を吹かせている。
つまり新たな試みに挑戦するようになったのだ。
毎週金曜日の夜に開催するナイター写経会もその一つだ。
早朝座禅会は聞いたことがあるが、ナイター写経は初耳で心配したが、仕事帰りの人でも気軽に寄れるので、好評だ。
「なぁ翠、今日はクリスマス・イブなんだから、写経会は休んでも良かったんじゃないか」
「だが、皆さん来週も是非よろしくって仰るから」
馬鹿だなぁ、それは翠目当てだからだと突っ込みたくなったが、グッと我慢した。
「流……思う存分仕事をした後って、心置きなく……没頭できるんだ」
翠が意味深なことを口走る。
おい! それって期待していいってことか。
俺の翠は、俺を甘やかす天才だ。
いや人参をぶら下げられているのかもしれないと苦笑した。
「流……今宵はクリスマスイブだね。だから……離れで会おう」
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さっきから庭が騒がしいな。
ペンを置きコートを羽織って外に出ると、作務衣姿の流さんが中庭の木々に照明を取り付けていた。
「何をしているんですか」
「洋くん、悪いが、そっちを持ってくれるか」
「はい。あ……去年はイルミネーションを灯して下さってありがとうございました」
「あぁ、あれな。丈も気に入ったようで、アイツが翠に話したせいで、寺の庭全体をライトアップせよと、翠がご所望だ」
「え? どうしてですか」
「ほらアレだよ、クリスマスイブにわざわざ写経に訪れる人に贈りたいんだと」
「成程、翠さんらしいですね」
「ありがとうな。洋は仕事中だろ? あとは小森にやらせるよ」
「あ、はい」
少し名残惜しい気持ちになってしまった。
俺も……もっと手伝いたい。
そう告げようと思った時に、コートのポケットのスマホが鳴った。
相手は瑞樹くんだった。
こんな時間になんだろう?
「瑞樹くん、夏以来だね、どうしたの?」
「あ、あの……小森くんはいますか。彼って、今日は忙しいですか」
「うーん、どうだろう? 何かあった?」
「実は菅野が高熱で早退してしまって」
「えっ、あの菅野くんが?」
「そうなんです。アイツ一人暮らしだから心配で。僕は彼の仕事を引き受けたので様子を見に行ってやれなくて、その……」
とても控えめに言うので最初はピンとこなかったが、ハッとした。
管野くんと小森くんはこの夏からお付き合いしている。つまり……
「瑞樹くん、大丈夫だよ。小森くんに今からお見舞いに行かせるよ、俺も心配だし」
「本当? そうしてくれると安心できるよ」
「了解」
電話を切ると、流さんがニヤニヤと笑っていた。
「なるほど、今日は洋が小森くんの代わりに働いてくれるんだな」
「あ……勝手に決めちゃってすみません」
「いいって。恋人が病気なら看病するのが当然さ。但し風邪をもらわないようにしないとな。こもりー! どこだぁ」
流さんは頭の回転が速いので、すぐに小森くんに旅支度をさせた。
「いいか、マスクは外すな。それから栄養ゼリーとドリンク、あとお粥のレシピと……カイロと、これは小森に差し入れの饅頭だ」
「わぁクリスマス限定のお饅頭ですね。 キラキラしていて綺麗ですねぇ。ありがとうございます。では、小森風太、菅野くんのお見舞いに行って参ります」
小森くんは大きな風呂敷を抱えて、山門を駆け下りていった。
「おーい、転ぶなよ」
「はーい! お饅頭が入っているので、気をつけます~」
そこ?
菅野くんとは暫く会えていなかったようで、小森くんは顔を赤くして飛び出していった。
その様子を見守って、付き合いたてってピュアでいいなと少し羨ましくもなり、同時に今宵俺は……丈とどんな濃厚なクリスマスイブを過ごすのか楽しみにもなった。
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