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14章
身も心も 1
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ホテルの一室で、目覚めた。
昨夜は夜景を楽しみながら抱き合ったので、カーテンを開けっぱなしだった。だから……朝日が大量に差し込んで、私達を光の洪水で包んでいた。
目映いまでの、白い世界。
私の隣りで……真っ白なシーツに埋もれる洋の寝顔を美しくて、見惚れてしまった。
清らかな顔立ちは、年を重ねても衰えを知らず、ますます匂い立つようだ。長い睫毛が朝日に照らされ、陰影を作っている。
お互いにまだ何も身につけていなかったので、洋も白い背中を無防備に剥き出しにして寝息を立てていた。
洋の……薄い肩……肩甲骨を、そっと指で辿ってみた。
昨日はどこまでも執拗に抱いてしまった。
私の手によって洋の感情を高めて艶めかせるのが、溜らないのだ。
私の色に染まり、はしたなく喘ぐ洋は絶品だった。
「初めて会った時、テラスハウスで……この背中に羽が生えているように見えたな」
「ん……丈、もう起きていたのか。お……はよう」
「おはよう、洋」
擦れた声で気怠げな様子の洋の肩を、今一度抱いて、温もりを確かめた。
「出逢った頃はいつも不安だった。洋がどこかに消えてしまいそうで。美しい羽で羽ばたいていってしまうのではと……心配だったんだ」
「知っているよ。だから俺を縛り付けるように抱いていたよな」
「すまない」
「いや、嬉しかった。どこにも行けないように抱いてもらうのも……丈だから嬉しかった」
「束縛してないか」
「ふっ、今更何を? 俺は全部許しているのに」
洋の顎を掴んで、チュッと唇を重ねた。
うっすらと桜色に染まった唇を塞ぐと、洋は艶めいた声をあげた。
「あっ……」
背中を撫でていた手を、胸元に回し……乳首を指で挟んで揺らしてやると……洋が困惑した顔で見上げてきた。
「じょ……丈? またするのか」
「駄目か。チェックアウトの前に、もう一度……洋が欲しい」
「ん……いいよ。丈……とても清々しい朝だ、丈に抱かれる所から始めたい」
「洋……」
洋は私を見上げ、そのままゆっくりと目を閉じた。
「来て……」
甘い誘いで目覚める朝。
こんな朝もいい。
洋だから、洋とだけ、味わえる特別な朝だった。
****
月影寺―― 翠、入院前夜。
「流、ちょっといい?」
「何? 母さん」
「翠の入院の支度は、もう整ったの?」
「大体は……そうだ、病院の室内履きと羽織るガウンを探しているんだ。知らないか」
すると、翠の入院のために一時的に戻っている母がニヤリと笑った。
どうにも不吉な笑みだと後ずさりして怯むと、母は苦笑した。
「なぁに、その顔は? いやな子ね、警戒しちゃって……あなたが喜ぶと思って声をかけたのに」
「なんだ? あるのか」
俺が喜ぶことって、絶対に翠のことだよな?
「そうよ、納戸の桐箪笥の整理をしていたら、翠の高校時代のものが沢山出てきて、何か入院に使えるものがあるかもしれないから、流が確認してみて」
「高校時代! どれだ! どこだ!」
俺は母を押し退け、納戸の引き戸に手をかけた。
昨夜は夜景を楽しみながら抱き合ったので、カーテンを開けっぱなしだった。だから……朝日が大量に差し込んで、私達を光の洪水で包んでいた。
目映いまでの、白い世界。
私の隣りで……真っ白なシーツに埋もれる洋の寝顔を美しくて、見惚れてしまった。
清らかな顔立ちは、年を重ねても衰えを知らず、ますます匂い立つようだ。長い睫毛が朝日に照らされ、陰影を作っている。
お互いにまだ何も身につけていなかったので、洋も白い背中を無防備に剥き出しにして寝息を立てていた。
洋の……薄い肩……肩甲骨を、そっと指で辿ってみた。
昨日はどこまでも執拗に抱いてしまった。
私の手によって洋の感情を高めて艶めかせるのが、溜らないのだ。
私の色に染まり、はしたなく喘ぐ洋は絶品だった。
「初めて会った時、テラスハウスで……この背中に羽が生えているように見えたな」
「ん……丈、もう起きていたのか。お……はよう」
「おはよう、洋」
擦れた声で気怠げな様子の洋の肩を、今一度抱いて、温もりを確かめた。
「出逢った頃はいつも不安だった。洋がどこかに消えてしまいそうで。美しい羽で羽ばたいていってしまうのではと……心配だったんだ」
「知っているよ。だから俺を縛り付けるように抱いていたよな」
「すまない」
「いや、嬉しかった。どこにも行けないように抱いてもらうのも……丈だから嬉しかった」
「束縛してないか」
「ふっ、今更何を? 俺は全部許しているのに」
洋の顎を掴んで、チュッと唇を重ねた。
うっすらと桜色に染まった唇を塞ぐと、洋は艶めいた声をあげた。
「あっ……」
背中を撫でていた手を、胸元に回し……乳首を指で挟んで揺らしてやると……洋が困惑した顔で見上げてきた。
「じょ……丈? またするのか」
「駄目か。チェックアウトの前に、もう一度……洋が欲しい」
「ん……いいよ。丈……とても清々しい朝だ、丈に抱かれる所から始めたい」
「洋……」
洋は私を見上げ、そのままゆっくりと目を閉じた。
「来て……」
甘い誘いで目覚める朝。
こんな朝もいい。
洋だから、洋とだけ、味わえる特別な朝だった。
****
月影寺―― 翠、入院前夜。
「流、ちょっといい?」
「何? 母さん」
「翠の入院の支度は、もう整ったの?」
「大体は……そうだ、病院の室内履きと羽織るガウンを探しているんだ。知らないか」
すると、翠の入院のために一時的に戻っている母がニヤリと笑った。
どうにも不吉な笑みだと後ずさりして怯むと、母は苦笑した。
「なぁに、その顔は? いやな子ね、警戒しちゃって……あなたが喜ぶと思って声をかけたのに」
「なんだ? あるのか」
俺が喜ぶことって、絶対に翠のことだよな?
「そうよ、納戸の桐箪笥の整理をしていたら、翠の高校時代のものが沢山出てきて、何か入院に使えるものがあるかもしれないから、流が確認してみて」
「高校時代! どれだ! どこだ!」
俺は母を押し退け、納戸の引き戸に手をかけた。
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