重なる月

志生帆 海

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14章

よく晴れた日に 22

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 丈によって揺さぶられる身体。

 俺は熱に浮かされたように身を投げ出して、手足を丈に絡めて、丈を呼んでいた。

「丈……丈、俺……幸せだ、最近、幸せ過ぎて……怖いくらいだ」
「洋の幸せは、洋の努力によって手に入れたものだ。だから両手を広げて享受しろ」
「う……ん……んっ」

 丈が愛おしげに俺の頬を撫で、唇を何度も何度も吸い上げていく。

 感じ過ぎて、おかしくなりそうだ

 丈とは何度、身体を重ねただろう。

 もう数え切れない程だ。

 だが一回一回が新鮮で、こんなにも愛おしい。

 先ほどから絶え間なく抽挿され、俺の体内に丈の気配を感じ、丈の大きさを覚えさせられている。

「お……大きい」
「ふっ」

 次から次に湧き上がってくる快楽の海に溺れそうだ。

「しっかり掴まっていろ」

 長い間……喘ぎ続けてしまった。

 都心のホテルというシチュエーションのせいか、丈もいつもよりハードに動き、俺も……いつもより深く乱れた。

 後だけで、精を放つ身体になった。

 俺の体内を丈が熱くしてくれるのが、心地良いと感じるようになった。

「あぁっ――」
「くっ」

 繋がり合ったまま、俺は泣いていた。
 気持ち良すぎて、丈が好き過ぎて……

 丈によって抱きすくめられて、耳元で愛を囁かれる。

「洋、愛している」
「丈……俺も愛してる」

 何度も何度も唇を重ね合って、余韻を楽しんでいく。

 心と身体が満たされ、心地良い眠りに落ちていく。

 丈に抱かれたまま、よく晴れた朝を迎えるだろう。


 ****

「もう、おかしくなりそうだ」

 感じ過ぎて戦慄く唇を、流が舌で宥めてくれる。

 流は満足そうに僕を見下ろし、僕の中にやってきた。

「あ……あぁっ、あ……」

 声を上げてしまう。今までの茶室は外に音が漏れてしまうので、必死に抑えていたのに。

「いいぞ、もっと、もっと聞かせてくれよ。翠が俺に感じている声が聞きたい」
「うっ……あぁ」

 流の愛撫は止まらない。

 挿入された部分はパンパンに張り詰め、ヒクヒクと流のものを咥え込んでいた。

 過敏に尖った乳首を指先で捏ねられると、身体がシーツから浮くほど跳ねた。 身体を仰け反らせると、背中から回された流の手が僕の腰を抱き上げ、下半身同士を擦り合わせられる。

 流が激しく上下に動けば、摩擦で火がつきそうだ。じんじんと疼いて溜まらない。

「翠……大丈夫か。悪い……激しくし過ぎた」
「いい……流になら、何をされてもいい」

 ふと洋くんのことを思いだした。彼も丈に抱かれる時このような心地になるのか。僕にも分かるよ。委ねられる相手になら、何をされてもいいと…… 僕の身体が流の全てを受け止められることが嬉しい。

 身体の中に流を受け入れれば、流の心も同時に入ってくる。

 愛されている。
 愛している。

 言葉が重なれば、また一段と愛が深まっていく。

「流、もっと……」
「翠……」
「もっと欲しい」

 感激した流の顔。

 もうなりふり構っていられない、本能のままに流を求めていく。

 全身を激しくゆずぶられ、切羽詰まった声が茶室に響き渡り……最奥に熱を感じ、僕も流も果てた。

 互いに興奮が冷めずに、続けて二度目の逢瀬に入った。

  ****

 深い逢瀬から数日後。

「流、そろそろ入院の準備をしようか」
「そうだな」
「いよいよだな」
「おい、身体が熱いな。まさか風邪でも?」
「違う……ここ数日……沢山抱いてもらったから」

 流の傍に近づくだけで、身体が悦んでしまうんだよ。

 恋の病なのかもと思う程、僕の身体は、素直に流を欲していた。

 火照る身体を静めるために、僕は窓を開け……朝の空気を招きいれた。

「流……今日もよく晴れているな」




                       『よく晴れた日に』 了
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