重なる月

志生帆 海

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14章

よく晴れた日に 19

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 上気した洋の頬は、美しい薔薇色に染まっていた。

 唇は熟れて濡れそぼり、感じる度に頭を振って乱れたせいで、長めのクセ毛が、汗ばんだ頬に張り付いていた。

 こんなにも淫らな洋の顔を見られるのは、私だけだ。

 そう思うと下半身の高まりが、また嵩を増してしまった。
 
  いつまでも消えないのは、独占欲。

 洋は出逢った時よりずっと逞しく男らしくなった。そして幸せになった。

 だが……私が抱く時は、私に支配される洋が見たくなる。

 こんなの酷いか、こんなの嫌か。

 問いかけるように、洋の唇を荒々しく吸い上げる。

「んっ……ううっ」

 彼の小ぶりなものを手ですっぽりと包み込んで扱きながら、胸への愛撫を続けると、洋はどんどん艶めいていく。

 磨けば光る石のように、私の手の中で喘ぎ震える肢体が愛おしい。

「洋……愛している。こんな風に抱かせてくれて、ありがとう」
「丈……丈になら……俺、何をされてもいい」
「また、そんなことを」
「あっ……あっ……あうっ」

 素早い動きで洋の屹立を扱いてやった。

「じょ……丈、丈……もうっ」

 溢れ出た蜜がとろりと私の指に垂れたので、それをペロリと舐めると、洋は真っ赤になった。

「よせっ」
「そろそろ一度出せ」
「あああっ――」

 洋が達せられるように、激しく擦って誘導してやると、洋は身体を強張らせて呆気なく達してしまった。

「んあっ――」

 その後は身体を弛緩させ……はぁはぁと乱れた息で、薄い胸を上下させる姿も艶っぽい。

 洋は扇情的な表情で、私を見上げてくる。

「丈……の、丈の……早く欲しい」
「よく言えたな」

 潤滑剤をたっぷりあてがい、洋の足を大きく開かせた。
 
「恥ずかしい……」
「私にだけは見せろ」
「ん……」

 何度抱いても初々しい反応が溜まらない。柔らかくなった洋のものを再び揉んでやると、またすぐに芯を作り出すのも愛おしい。

「もう感じているのか」
「言うな……っ」

 潤滑剤で濡らした部分に、指をあてがった。

「ん……」
「また慎ましく閉じてしまったな」
「あっ……うっ」

 洋の蕾に指をグッと挿入し内部の薄い襞を撫でて……くちゅりと音をわざと立てると、洋の腰が期待に震えた。

 
****

「流……流……っ」

 湯船に腰掛けた僕は、流を掻き抱き、悶えていた。

 ひっきりなしに舞い降りてくる口づけはもう止まらない。

 先ほどから胸も性器も、流の熱い息を浴び続けている。

 僕……身体の内部から、じわりと濡れている。

「あ……そんなにしたら……」

 このまま流に食べ尽くされそうで……怖いよ。

「翠、怖いのか」
「ん……少し」
「ふっ、相変わらず怖がりな翠だな」
「流が激し過ぎるんだ」
「ははっ、悪いな、がっつき過ぎたか」
「いや……嫌じゃ……ない」

 顔を上げると、流と目が合った。

  今はもう、こんなにも優しく視線が絡み合うのが嬉しいよ。

 僕も目を細めると、翠が僕の頭を幼子のように撫でてくれた。

 あぁ、駄目だ。僕は流に依存してしまう。

 ここでは頑張らなくていい、甘えていい。

 それが居心地良くて溜らない。

「ここでは翠の身体に負担がかかるな。茶室に布団を敷いたんだ」
「……うん」

 お手前のための茶室で、僕は流と情を交わしている。
 
 茶事の主人が客を招き、茶を出してもてなすために造られた空間なのに……僕が差し出すのは、僕の肉体だなんて。

 だがそれでいい。何も恐れないよ。もう、どこまでも流と生きる道しか見えないのだから。

「流、ずっと傍にいるよ」
「翠……信じている。翠がすべてだ」

 僕たちはこんなにも一直線に重なっている。

 僕たちはこの道を、今日も明日も走っていく。
 
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